WEBVTT 00:00:00.000 --> 00:00:02.000 最初にお話ししたいことは　 みんな音楽が大好きだ　ということです 00:00:02.000 --> 00:00:04.790 これはとても大事なことです 00:00:05.000 --> 00:00:07.900 聞くだけでなく　 自分で音楽を作ることができれば NOTE Paragraph 00:00:08.000 --> 00:00:11.000 もっと音楽は力強いものになります 00:00:11.000 --> 00:00:13.000 これが最初のテーマです　 00:00:13.000 --> 00:00:15.000 さて皆さん「モーツァルト効果」をご存知ですね？ 00:00:15.000 --> 00:00:17.000 10年ほど前から良く聞かれる話です 00:00:17.000 --> 00:00:21.000 胎内の赤ちゃんに音楽を聞かせたり 音楽を演奏してあげたりするだけで 00:00:21.000 --> 00:00:25.000 IQが10から30も良くなると言うのです NOTE Paragraph 00:00:25.000 --> 00:00:28.000 素晴らしい考えなんですが そうはいきません 00:00:28.000 --> 00:00:30.333 ただ音楽を聞くだけではダメなんです　 00:00:30.333 --> 00:00:32.666 何らかの方法で音楽を創る必要があるんですよ 00:00:32.666 --> 00:00:34.110 そして付け加えたいことは 00:00:34.110 --> 00:00:35.554 これはただ単に音楽を創るというのではなく 00:00:35.554 --> 00:00:37.000 われわれは皆 誰でも 00:00:37.000 --> 00:00:39.000 非常にダイナミックな方法で音楽を創造し 00:00:39.000 --> 00:00:41.000 音楽そのものの一部となる能力が ある ということなんです 00:00:41.000 --> 00:00:43.000 これが私の研究の大事なテーマです 00:00:43.000 --> 00:00:45.000 MITメディアラボでこれまで長期に渡り 00:00:45.000 --> 00:00:46.333 我々が取り組んできたのが 00:00:46.333 --> 00:00:48.536 能動的音楽（アクティブ・ミュージック） と呼ばれるプロジェクトです 00:00:48.596 --> 00:00:49.930 誰にでも音楽体験に 参加できるようにするためには 00:00:49.930 --> 00:00:52.000 どんな方法があるか？　というのがテーマです 00:00:52.000 --> 00:00:54.000 単に音楽を聞くだけでなく 00:00:54.000 --> 00:00:56.000 音楽を創造することを可能にする方法が あるのでしょうか？ NOTE Paragraph 00:00:56.000 --> 00:00:58.000 まず最高の音楽家向けの特別な楽器を 開発することから着手しました 00:00:58.000 --> 00:01:00.333 我々が「ハイパーインスツルメント」と 名付けた楽器は ヨー・ヨー・マ 00:01:00.333 --> 00:01:02.666 ピーター・ガブリエル、プリンスや 00:01:02.666 --> 00:01:04.444 オーケストラやロックバンド向きに開発されました 00:01:04.444 --> 00:01:06.222 楽器には あらゆる種類のセンサーが組み込まれて 00:01:06.222 --> 00:01:08.000 楽器がどのように演奏されているのかを 把握することが出来るわけです 00:01:08.000 --> 00:01:11.000 把握した演奏状態データの 解釈や感覚を変えて 00:01:11.000 --> 00:01:13.000 チェロの音色を人の音声に変換することや 00:01:13.000 --> 00:01:15.000 大きなオーケストラの演奏に 00:01:15.000 --> 00:01:17.000 また誰も聞いた事がない音楽にも変換できます NOTE Paragraph 00:01:17.000 --> 00:01:19.000 これらの楽器を開発するようになったとき 00:01:19.000 --> 00:01:21.000 このような素晴らしい楽器を一般の人向けに 00:01:21.000 --> 00:01:23.000 つまり ヨー・ヨー・マやプリンスのように 00:01:23.000 --> 00:01:24.333 才能ある音楽家ではない一般の人向けにも 00:01:24.333 --> 00:01:25.666 作ってみようと考えるようになったのです 00:01:25.666 --> 00:01:27.000 その結果 我々は一連の楽器を開発しました 00:01:27.000 --> 00:01:30.000 これらを集大成したものの一つが 「ブレイン・オペラ」です 00:01:30.000 --> 00:01:32.000 100種類もの楽器からなる オーケストラのようなものです 00:01:32.000 --> 00:01:34.000 全て 特別な練習をすることなく 00:01:34.000 --> 00:01:36.000 誰もが演奏できるように設計されています 00:01:36.000 --> 00:01:37.666 つまりテレビゲームで遊ぶように 00:01:37.666 --> 00:01:39.332 音楽の中を車で駆け抜けたり 00:01:39.332 --> 00:01:41.000 身振りで大量の音をコントロールしたり 00:01:41.000 --> 00:01:43.333 特殊加工された表面に触れて メロディーを創り上げたり 00:01:43.333 --> 00:01:45.666 自分の音声で音楽に独特の雰囲気を加えたり することが可能になります 00:01:45.666 --> 00:01:48.000 ブレイン・オペラの公演では 一般の観客を招き 00:01:48.000 --> 00:01:49.333 この楽器を使ってもらい 00:01:49.333 --> 00:01:50.666 我々と共演してもらうことで 00:01:50.666 --> 00:01:52.000 毎回の公演を 一緒に創り上げることにしたのです 00:01:52.000 --> 00:01:53.666 ブレイン・オペラは長期に渡って 公演ツアーされました 00:01:53.666 --> 00:01:55.332 現在ではウィーンに常設されていて 00:01:55.332 --> 00:01:57.000 そこでは博物館の中にあります NOTE Paragraph 00:01:57.000 --> 00:02:00.000 これは皆さんが良くご存知の あるモノにつながりました 00:02:00.000 --> 00:02:01.333 ギター・ヒーロー（Activision社のゲームソフト）は 00:02:01.333 --> 00:02:02.666 我々の研究から生まれたものでした 00:02:02.666 --> 00:02:04.320 私の二人の十代の娘や 00:02:04.340 --> 00:02:06.434 MITメディアラボの多くの学生たちを見れば 00:02:06.434 --> 00:02:08.460 適切なインターフェイスを創れれば 00:02:08.460 --> 00:02:11.000 どんな人でも 音楽の中に身を置くことに興味を持ち 00:02:11.000 --> 00:02:14.000 何度も繰り返し演奏することができる ということが分かると思います NOTE Paragraph 00:02:14.000 --> 00:02:16.000 これで基本的なモデルが うまくいくことは分かりましたが 00:02:16.000 --> 00:02:18.000 これはまだ氷山の一角です 00:02:18.000 --> 00:02:19.666 つまり私の二番目のアイディアでは 00:02:19.666 --> 00:02:21.332 ギター・ヒーローのようなゲームの中で 00:02:21.332 --> 00:02:23.000 単に音楽を作りたい というだけでは不十分だからです 00:02:23.000 --> 00:02:24.333 つまり 音楽はとても楽しいものではありますが 00:02:24.333 --> 00:02:25.666 もっと変化させる力を持つものでもあるからです 00:02:25.666 --> 00:02:27.000 これはとても大事なことです 00:02:27.000 --> 00:02:28.666 音楽は他の何にも増して 00:02:28.666 --> 00:02:30.332 人生を変えるような力を持っています 00:02:30.332 --> 00:02:31.888 音楽は人々がお互いにコミュニケートする仕方を 00:02:31.888 --> 00:02:33.444 変えることができます 00:02:33.444 --> 00:02:35.296 音楽は人の身体を変えることも 心を変える力も持っています 00:02:35.296 --> 00:02:37.148 そこで 我々は 00:02:37.148 --> 00:02:39.000 ギター・ヒーローの次の段階に進むべく プロジェクトを開始したのです 00:02:39.000 --> 00:02:41.333 我々は教育と深い関係があります　 00:02:41.333 --> 00:02:43.666 トイ・シンフォニーという長期間のプロジェクトでは 00:02:43.666 --> 00:02:45.777 幼い子供は別として 小さな子供たちが夢中になってしまうような 00:02:45.777 --> 00:02:47.888 様々な楽器を開発しました 00:02:47.888 --> 00:02:50.000 知らず知らずに 音楽を作ることに引き込まれてしまい 00:02:50.000 --> 00:02:52.000 時間を忘れてのめりこみ 00:02:52.000 --> 00:02:54.000 しかも「この楽器はどうして音が出るのだろう」 とか 00:02:54.000 --> 00:02:56.000 「もっと音楽を作るにはどうすれば よいのだろう？」と 00:02:56.000 --> 00:02:58.000 要求するものを開発したのです　 その一つが握ることで音の出る楽器で 00:02:58.000 --> 00:02:59.666 「ミュージック・シェイパー｣と名付けたものです これは指に流れる電流を測って音楽にします 00:02:59.666 --> 00:03:01.332 これは指に流れる電流を測って音楽にします 00:03:01.332 --> 00:03:03.000 「ビート・バグ」と名付けた楽器は 軽く叩くとそのリズムを自動的に拾い上げ 00:03:03.000 --> 00:03:04.666 バトンタッチをするようにそのリズムを 人から人へと受け渡します 00:03:04.666 --> 00:03:06.332 受け取った人は 00:03:06.332 --> 00:03:08.000 そのリズムを真似したり 反応したりしなければなりません 00:03:08.000 --> 00:03:10.666 「ハイパー・スコア」という名のソフトウェアも 開発しました 00:03:10.666 --> 00:03:13.332 これを使うとどんな人でもディスプレイ上に 線を引いたり それに色をつけたりする事で 00:03:13.332 --> 00:03:15.554 相当に高度な音楽を作り出すことができます　 00:03:15.554 --> 00:03:17.776 また極めて操作が容易で 一度使えば 00:03:17.776 --> 00:03:20.517 どんなスタイルの音楽にも のめりこむことが可能になります　 00:03:20.517 --> 00:03:23.258 しかも ボタン一つで 00:03:23.258 --> 00:03:26.000 譜面に変換して プロの演奏家が 演奏することだって出来るんです NOTE Paragraph 00:03:26.000 --> 00:03:29.000 世界中の子供たちに大きな影響がありました 00:03:29.000 --> 00:03:32.000 あらゆる年代の人が 「ハイパー・スコア」を使います 00:03:32.000 --> 00:03:36.000 このような創造的な活動をもっと広い領域で しかもあらゆる人々に対して 00:03:36.000 --> 00:03:38.000 展開することに益々興味がわいてきたのです 00:03:38.000 --> 00:03:41.000 普段 音楽を作るチャンスなどないような人達に対して使うことに関心が湧いてきたわけです 00:03:41.000 --> 00:03:42.713 MITメディアラボにおいて我々が取り組んでいて 00:03:42.733 --> 00:03:44.426 しかも拡大している領域の一つが 00:03:44.446 --> 00:03:46.070 音楽と心と健康の領域です 00:03:46.080 --> 00:03:48.000 多くの方が オリバー・サックスの 素晴らしい新刊をご存知と思います 00:03:48.000 --> 00:03:52.000 「ミュジコフィリア―音楽嗜好症」 素晴らしい本です 00:03:52.000 --> 00:03:54.000 是非お読み下さい　 著者自身 ピアニストです 00:03:54.000 --> 00:03:58.000 この本で彼は 自らの体験から 尋常でない境遇におかれた人々に対して 00:03:58.000 --> 00:04:03.000 音楽がいかに大きな影響を与えたか 述べています NOTE Paragraph 00:04:03.000 --> 00:04:06.000 例えば アルツハイマー症患者で症状が進行しても 00:04:06.000 --> 00:04:10.000 最後まで音楽には反応することが 知られています 00:04:10.000 --> 00:04:12.000 皆さんのご家族でこのような経験を お持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか？ 00:04:12.000 --> 00:04:14.000 例えば鏡に映った自分を見ても 誰か認識できないような症状であったり 00:04:14.000 --> 00:04:17.000 家族も認識できなくなった患者でも 音楽には反応することがあります 00:04:17.000 --> 00:04:21.000 突然椅子から飛び起きて 歌い出すこともあります 00:04:21.000 --> 00:04:23.000 このように記憶や人格を 一部でも取り戻すことがあるのです 00:04:23.000 --> 00:04:25.000 脳卒中のために言語障害のある人でも 00:04:25.000 --> 00:04:27.000 音楽は言語能力を取り戻すのに 最も良い方法なんです 00:04:27.000 --> 00:04:29.000 あるいは パーキンソン病の人に運動能力を 取り戻す方法としても です 00:04:29.000 --> 00:04:31.860 うつ病や統合失調症など いろいろな病状の改善に音楽は大変役立ちます NOTE Paragraph 00:04:32.130 --> 00:04:35.000 そこで 私たちはなぜこういう効果があるのか 00:04:35.000 --> 00:04:37.000 その根本原理を理解しようと研究を進めています 00:04:37.000 --> 00:04:39.000 音楽を用いて人々の健康を改善するような 活動を開発しようとしています 00:04:39.000 --> 00:04:41.000 様々なアプローチからこれに取り組んでいます　 00:04:41.000 --> 00:04:43.000 例えば複数の病院と 共同研究に取り組んでいます 00:04:43.000 --> 00:04:45.000 一つが ボストン近郊の テュークスベリー病院です 00:04:45.000 --> 00:04:47.000 ここは長期療養の州立病院ですが 数年前から 00:04:47.000 --> 00:04:51.000 この病院の身体や精神に障害をもった患者達に ハイパー・スコアを使った取り組みをはじめました 00:04:51.000 --> 00:04:55.000 テュークスベリー病院における治療の 中心を占めるようになって 00:04:55.000 --> 00:04:59.000 皆が音楽活動をしたくて ウズウズしている状態なんです 00:04:59.000 --> 00:05:03.000 これは患者に対する治療を 最も向上させる活動と言えると思います 00:05:03.000 --> 00:05:07.000 これが病院中に音楽活動で結びついた 共同体意識をもたらしているのです 00:05:07.000 --> 00:05:11.000 これまでのプロジェクトをまとめた 短い映像をご覧に入れましょう 00:05:52.000 --> 00:05:54.000 これは子供たちがリズムを 操作しているところです 00:05:54.000 --> 00:05:58.000 リズムを演奏したり聞いたりすることを 学ぶだけでなく 00:05:58.000 --> 00:06:03.000 音楽的な記憶力や 人に合わせて 合奏することを学べるのです 00:06:03.000 --> 00:06:07.000 自分自身で曲を作ったり 変えたり 00:06:07.000 --> 00:06:09.000 自分自身の曲にしていくことも出来るんです 00:06:09.000 --> 00:06:12.633 つまりハイパースコアでは まったくゼロの状態から 00:06:12.633 --> 00:06:14.876 短期間で始める事ができるのです 00:06:19.710 --> 00:06:22.838 誰もが非常に深いレベルで音楽を 体験することが出来るのです 00:06:22.838 --> 00:06:24.990 それには今までにない道具を作る 必要があります NOTE Paragraph 00:06:41.000 --> 00:06:47.000 今日お話ししたい三つ目のテーマは ちょっと逆説的ですが 00:06:47.000 --> 00:06:50.000 自分自身について語るためには音楽の方が 00:06:50.000 --> 00:06:52.000 言葉よりもすぐれた方法だ ということです　 00:06:52.000 --> 00:06:54.000 私自身皆さんの前でお話しするのは好きですが 00:06:54.000 --> 00:06:56.000 音楽を演奏するのに比べれば 少しドキドキしてしまいます 00:06:56.000 --> 00:06:59.880 もしチェロやシンセサイザーを弾いたり 私の曲をみなさんに披露するのであれば 00:06:59.880 --> 00:07:04.000 言葉では伝えきれない もっと個人的でより深いことも 00:07:04.000 --> 00:07:07.000 皆さんにお伝えすることができるでしょう NOTE Paragraph 00:07:07.000 --> 00:07:09.000 多くの人もそうだと思います　 00:07:09.000 --> 00:07:11.000 ここで音楽が我々と自分以外とを 00:07:11.000 --> 00:07:13.000 結びつける最も有力な道具であるという 二つの例を 00:07:13.000 --> 00:07:15.000 お話しましょう 00:07:15.000 --> 00:07:19.000 最初の例は 今我々が取り組んでいる 変わったプロジェクトで 00:07:19.000 --> 00:07:21.000 Death and the Powers（死とパワーズ）という 大きなオペラです 00:07:21.000 --> 00:07:25.000 おそらく現在作られているオペラの中で 大規模なものの一つになるでしょう 00:07:25.000 --> 00:07:30.000 大成功し権力もある富豪で 不死の力を手に入れたいと願う男の物語です 00:07:30.000 --> 00:07:32.000 男は自分自身に関わるあらゆるデータを 00:07:32.000 --> 00:07:35.000 一連の本の中にダウンロードしようとします 00:07:35.000 --> 00:07:38.000 これで男は永遠の命を 手に入れようとするのです 00:07:38.000 --> 00:07:42.000 オペラの最初に主演歌手が舞台から姿を消すと 00:07:42.000 --> 00:07:46.000 舞台全体が主人公の人格そのものになります NOTE Paragraph 00:07:46.000 --> 00:07:49.000 このオペラは 他人とそして愛する人と 何を分かち合えるのか 00:07:49.000 --> 00:07:51.000 何を伝えることが出来るのか そして何を伝えられないかについてです 00:07:51.000 --> 00:07:55.000 オペラの中では あらゆるモノが命をもった巨大な楽器になります 00:07:55.000 --> 00:07:58.000 例えば 舞台全体を覆うような 巨大なシャンデリアに見えるものは 00:07:58.000 --> 00:08:00.000 実はロボット化された楽器なんです 00:08:00.000 --> 00:08:04.000 この巨大なピアノの弦は 00:08:04.000 --> 00:08:07.000 小さなロボットによって制御されます 00:08:07.000 --> 00:08:12.000 小さな弓が弦を弾き プロペラは弦を叩き 00:08:12.000 --> 00:08:17.000 音が弦を震わせ ステージ上には多数のロボットも登場します 00:08:17.000 --> 00:08:21.000 これらのロボットは 主人公のサイモン・パワーズと 00:08:21.000 --> 00:08:25.000 家族との仲介役で 古代ギリシャ劇の合唱隊のようなもので 00:08:25.000 --> 00:08:27.666 舞台上の演技を見守っています　 00:08:27.666 --> 00:08:29.932 現在MITでテスト中のこの四角いロボットは 00:08:29.932 --> 00:08:32.221 オペラボットと呼ばれています 00:08:32.221 --> 00:08:34.110 オペラボットは音楽に合わせて作動します 00:08:34.110 --> 00:08:35.740 登場人物を追いかけます 00:08:35.740 --> 00:08:37.370 また 知的にできているので 00:08:37.370 --> 00:08:39.913 お互い衝突しないはずです 00:08:39.913 --> 00:08:42.456 ロボットは自動的に動き出し 00:08:42.456 --> 00:08:45.000 そして勿論 お望みのように 指を鳴らすと整列させることもできます 00:08:45.000 --> 00:08:47.000 単なる立方体に過ぎませんが 実際には個性を持っていると言えます NOTE Paragraph 00:08:54.000 --> 00:08:58.000 オペラの中で最も大きな舞台装置は 「システム」と呼ばれる 大量の本です 00:08:58.000 --> 00:09:02.000 本は全部がロボットで 動いたり音を出すことが出来ます 00:09:02.000 --> 00:09:06.000 全体が一体化するとこのような壁になります 00:09:06.000 --> 00:09:08.666 サイモンパワーズの 身振りや個性を表現するのです 00:09:08.666 --> 00:09:11.332 主人公は舞台上から姿を消しましたが 00:09:11.332 --> 00:09:14.000 舞台全体が主人公そのものに変化するのです 00:09:14.000 --> 00:09:17.000 このように自分自身を変身させるのが 主人公の意思だったからです 00:09:17.000 --> 00:09:20.666 本の背表紙には大量のLEDが仕掛けてあり 00:09:20.666 --> 00:09:24.332 映像を写すことができます 00:09:24.332 --> 00:09:25.888 これは著名なバリトン歌手 ジェームズ・マダレーナが 00:09:25.888 --> 00:09:27.444 システムに入るところです 00:09:27.444 --> 00:09:29.000 予告編をご覧ください 00:09:53.000 --> 00:09:55.666 このオペラは2009年９月に モナコで初演の予定です 00:09:55.666 --> 00:09:58.332 万一モナコに来られない方のために 00:09:58.332 --> 00:10:01.000 このプロジェクトの もう一つの応用例をご紹介しましょう 00:10:01.000 --> 00:10:03.666 このオペラは 自分自身の全てを音楽や環境によって 00:10:03.666 --> 00:10:06.332 遺産として残そうとする男の話です 00:10:06.332 --> 00:10:09.000 この作品をオンラインや 公共の場所で見られるようにしています 00:10:09.000 --> 00:10:13.000 自分自身や愛する人の遺産を残すために 00:10:13.000 --> 00:10:16.000 音楽や我々自身の映像を使うことです 00:10:16.000 --> 00:10:19.000 つまり 大仕掛けのオペラの代わりに 00:10:19.000 --> 00:10:21.000 パーソナル・オペラと言うべきものに なるわけです NOTE Paragraph 00:10:21.000 --> 00:10:22.666 パーソナル・オペラを開発する場合 00:10:22.666 --> 00:10:24.332 楽器はどうすればよいでしょう？ 00:10:24.332 --> 00:10:26.000 ご覧に入れた ヨー・ヨー・マ用の ハイパー・チェロにしても 00:10:26.000 --> 00:10:28.666 子供用の握る楽器にしても 00:10:28.666 --> 00:10:31.332 大演奏家か子供なのかは別として 00:10:31.332 --> 00:10:34.000 みなある種のレベルの人のためのものでした 00:10:34.000 --> 00:10:37.000 もし私が普段通りの 身振り手ぶりだけで演奏できる 00:10:37.000 --> 00:10:41.000 楽器を開発したとしたらどうでしょう？ 00:10:41.000 --> 00:10:43.666 身振りや手振りは とてもうまくできるかも知れないし 00:10:43.666 --> 00:10:46.332 そうでないかも知れません 00:10:46.332 --> 00:10:48.221 これは未来のインターフェイスであり 未来の音楽 00:10:48.221 --> 00:10:50.110 そして未来の楽器になると思います NOTE Paragraph 00:10:50.110 --> 00:10:52.000 ここで 二人の特別なゲストを招きたいと思います 00:10:52.000 --> 00:10:58.000 きっとパーソナル楽器とは一体どんなものなのか お分かりいただけると思います 00:10:58.000 --> 00:11:03.000 MITの博士課程の学生 アダム・ブランジェーと 00:11:03.000 --> 00:11:10.000 ダン・エルシーを拍手でお迎えください 00:11:10.000 --> 00:11:13.666 ダンは TEDと ボンバルディア・フレックスジェット社のおかげで 00:11:13.666 --> 00:11:17.332 テュークスベリー病院から 今日ここまで来ることが出来ました 00:11:17.332 --> 00:11:21.000 彼はテュークスベリー病院の入院患者なんです 00:11:21.000 --> 00:11:25.000 これまでで最も病院から離れたところまで 足を伸ばしたことになると思います 00:11:25.000 --> 00:11:30.000 それは 彼が皆さんの前で 是非自分の音楽を披露したかったからなんです 00:11:30.000 --> 00:11:34.000 ダン まずは皆さんに一言ご挨拶をお願いします NOTE Paragraph 00:11:39.000 --> 00:11:47.000 こんにちは　私はダン・エルシーといいます　 34歳で 脳性麻痺の患者です 00:11:47.000 --> 00:11:53.000 私はずっと音楽が好きで この新しいソフトウェアを使って自分の曲を 00:11:53.000 --> 00:11:55.940 演奏出来るのでとてもワクワクしています NOTE Paragraph 00:11:57.000 --> 00:12:01.666 私たちもみな 君が今日ここに来てくれて ワクワクしていますよ NOTE Paragraph 00:12:06.332 --> 00:12:11.000 私たちがダンと出会ったのは ３年半ほど前のことで 00:12:11.000 --> 00:12:13.573 テュークスベリー病院で 研究を始めたときでした　 00:12:13.573 --> 00:12:16.566 病院で出会った人はみな素晴らしく 00:12:16.566 --> 00:12:18.876 音楽の才能に溢れていました　 00:12:18.876 --> 00:12:20.998 ダンはそれまで 作曲をしたことがありませんでした 00:12:20.998 --> 00:12:23.627 素晴らしい才能を持っていることが 分かったのです 00:12:23.627 --> 00:12:26.379 生まれつきの作曲家なんです 00:12:28.102 --> 00:12:31.000 とても恥ずかしがり屋なんですよね 00:12:31.000 --> 00:12:33.333 素晴らしい作曲家だと分かり 00:12:33.333 --> 00:12:35.666 その後数年に渡り 我々と一緒に仕事をしています 00:12:35.666 --> 00:12:38.000 彼は多くの曲を作曲してきました 00:12:38.000 --> 00:12:39.627 CDも出しました　 00:12:39.627 --> 00:12:42.060 彼はボストン地区では相当に有名なんです 00:12:42.060 --> 00:12:45.471 病院の患者たちや地域の子供たちに 作曲を教えています 00:12:45.493 --> 00:12:51.458 ここでMIT博士課程の学生で音楽 技術 医学が専門のアダムをご紹介しましょう 00:12:51.458 --> 00:12:55.000 アダムはダンと一緒に研究してきました 00:12:55.000 --> 00:12:59.000 最近アダムが研究しているのは ダンが自分自身で作曲するために 00:12:59.000 --> 00:13:02.000 何をすれば良いのか と言うことだけではありません 00:13:02.000 --> 00:13:05.000 ダン自身がそれを演奏するのに 個人の楽器を使うということも研究してきました 00:13:05.000 --> 00:13:07.000 どんな研究をしているか 簡単に説明してくれるかい NOTE Paragraph 00:13:07.000 --> 00:13:10.720 ええ　テュークスベリー病院で研究をしていて 00:13:10.734 --> 00:13:16.438 ダンが大変表現豊かで知的で かつ創造的であるということを 00:13:16.478 --> 00:13:19.000 トッドと私で話したんです　 ダンは顔の表情や 00:13:19.000 --> 00:13:21.333 呼吸のしかた あるいは目でそれを表すんです　 00:13:21.333 --> 00:13:23.666 それなのに 彼自身の曲を なぜ自分で演奏できないのか？ 00:13:23.666 --> 00:13:26.000 それをできるようにするのが 我々の仕事だと思ったんです NOTE Paragraph 00:13:26.000 --> 00:13:29.000 ダンが身体的な障害を持っていても 微妙なニュアンスを表現し 00:13:29.000 --> 00:13:34.000 正確に彼自身の曲を演奏できるような技術を 00:13:34.000 --> 00:13:37.000 開発することにしたんです 00:13:37.000 --> 00:13:39.000 まずは処理過程と技術が必要です 00:13:39.000 --> 00:13:42.000 基本的には工学的な解決策が必要でした 00:13:42.000 --> 00:13:45.000 ご覧のようにコンピューターに接続されたカメラが赤外線による位置指示信号を関知します 00:13:45.000 --> 00:13:49.000 身振りや表情など ダンがすでに会話支援装置で使い慣れている方式を 00:13:49.000 --> 00:13:53.000 音楽表現のための方法として採用しました 00:13:53.000 --> 00:13:56.000 設計は一番面白くない部分でした 00:13:56.000 --> 00:13:59.000 何を入力信号にし 持続的追跡はどうするのか 00:13:59.000 --> 00:14:02.000 ソフトウェアはダンの動作のパターンを 認識していました NOTE Paragraph 00:14:02.000 --> 00:14:06.000 しかし本当に面白い仕事は 技術的な問題の次にやってきます 00:14:06.000 --> 00:14:09.000 我々は病院でダンの肩越しに ダンがどんな風に動くのか 00:14:09.000 --> 00:14:12.000 見守りながら プログラムを書いていたんです 00:14:12.000 --> 00:14:14.000 音楽表現をするために どんな動作が彼にとって役立つのか？ 00:14:14.000 --> 00:14:17.000 つまり 彼にとっての音楽表現とは何なのか？ ということです 00:14:17.000 --> 00:14:19.000 ダンにとって音楽のニュアンスを表現したり 伝えるためには 00:14:19.000 --> 00:14:22.240 どんなことが重要なのでしょうか？ 00:14:22.263 --> 00:14:25.013 変数の計算や技術を限界まで利用し 00:14:25.013 --> 00:14:28.000 ダンが音楽をぴったり表現できるようにしました 00:14:28.000 --> 00:14:34.000 これは考え方の転換です　 つまりこの技術さえあれば誰でも創造的な 00:14:34.000 --> 00:14:38.000 音楽を作れるようになるわけではありません 00:14:38.000 --> 00:14:41.000 表現とは一体なんでしょう？ 音楽家が素晴らしい曲を演奏する 00:14:41.000 --> 00:14:45.000 瞬間の表現はどうなるのでしょう？ 技術によって表現が可能になるのでしょうか？ 00:14:45.000 --> 00:14:47.666 技術でそんなことを可能にする 仕組みを作れるでしょうか？ 00:14:47.666 --> 00:14:50.332 技術に欠けている音楽表現と 00:14:50.332 --> 00:14:53.000 どう個人的にかかわっていくかということです 00:14:53.000 --> 00:14:56.000 そこでダンのために 我々には新しい設計方法や技術が必要でした 00:14:56.000 --> 00:15:01.000 ダンの動作や表現を演奏に結びつけるための 仕組みを発見する必要があったのです 00:15:01.000 --> 00:15:03.000 今日はそれをご披露します NOTE Paragraph 00:15:03.000 --> 00:15:05.000 ダン 今日これから君が演奏する曲について 00:15:05.000 --> 00:15:07.500 説明してくれるかい？ NOTE Paragraph 00:15:13.000 --> 00:15:15.165 これは「マイ・イーグル・ソング」といいます 00:15:17.000 --> 00:15:20.000 これからダンが演奏するのは彼が作曲した 「マイ・イーグル・ソング」です 00:15:20.000 --> 00:15:22.538 これはダンの曲の楽譜です 00:15:22.538 --> 00:15:25.150 ハイパースコアを使って 完全に一人で作曲しました 00:15:25.150 --> 00:15:29.942 彼は赤外線追跡装置を使って ハイパースコアを直接使うことが出来るんです 00:15:30.000 --> 00:15:33.000 実に素早く使うことが出来ます　 私よりも速いくらいです NOTE Paragraph 00:15:33.000 --> 00:15:35.000 （笑） NOTE Paragraph 00:15:37.000 --> 00:15:39.107 彼は謙虚ですしね 00:15:40.000 --> 00:15:46.000 ハイパースコアを使って まずはメロディーやリズムを作ります 00:15:46.000 --> 00:15:48.000 これを好きなところに動かすことが出来ます 00:15:48.000 --> 00:15:51.000 それぞれには色がついており 作曲ウィンドウにもどれば 00:15:51.000 --> 00:15:56.000 線をひいたり あらゆる要素を思いのままに 配置できます　ハイパースコアをみれば 00:15:56.000 --> 00:15:59.000 これがお分かりいただけると思います　 それぞれのセクションがどこにあるか 00:15:59.000 --> 00:16:04.000 ある部分はしばらく続き 変化したり 激しくなったり 最後には 00:16:04.000 --> 00:16:07.000 大きく爆発して終わったりします NOTE Paragraph 00:16:07.000 --> 00:16:10.000 こうやって彼は作曲したんです　 アダムがご説明したように 00:16:10.000 --> 00:16:17.000 私たちはダン自身が演奏できるようにするための 最良の仕組みも開発しました 00:16:17.000 --> 00:16:20.000 このカメラが 彼の動きを観測 分析し 00:16:20.000 --> 00:16:24.000 ダンが望むように 彼の曲の色々な特徴を引き出すことが出来ます 00:16:24.000 --> 00:16:27.000 スクリーン上の映像にお気づきになると思います 00:16:27.000 --> 00:16:33.000 学生に指示して カメラがどのように動作を 測定しているのかを映すことにしました 00:16:33.000 --> 00:16:37.580 カメラの映像そのままをお見せするのではなく 00:16:37.580 --> 00:16:41.280 画像を加工処理し グラフィックス表現にし 00:16:41.280 --> 00:16:45.000 どのように動作を分析しているのかを 分かり易くして見ました NOTE Paragraph 00:16:45.000 --> 00:16:49.000 これでダンの動作をどんな風に拾い上げているのか 分かっていただけると思います 00:16:49.000 --> 00:16:53.000 それだけでなく ダンが演奏する時の動作を見れば 00:16:53.000 --> 00:17:00.000 彼の動作が大変はっきりとして 正確で 00:17:00.000 --> 00:17:03.350 良く統制がとれており その上大変美しいことが分かると思います 00:17:03.350 --> 00:17:08.000 この曲を聞いていただければ 最初に申し上げた 音楽は素晴しい という 00:17:08.000 --> 00:17:09.666 ことがお分かりいただけると思います 00:17:09.666 --> 00:17:11.332 そしてダンがどんな人間であるかということも 00:17:11.332 --> 00:17:13.330 アダム 用意はいいかい？ NOTE Paragraph 00:17:13.330 --> 00:17:14.370 はい NOTE Paragraph 00:17:14.370 --> 00:17:18.656 OK　それではダンが「マイ・イーグル・ソング」を 皆さんのために演奏します 00:17:24.158 --> 00:17:26.691 (音楽) 00:19:43.225 --> 00:19:46.063 （拍手） NOTE Paragraph 00:20:07.000 --> 00:20:09.000 ブラボー！ 00:20:09.000 --> 00:20:11.686 （拍手）