1 00:00:04,440 --> 00:00:06,965 学校で生徒たちに話す機会があると 2 00:00:06,965 --> 00:00:09,353 必ず聞くことがあります 3 00:00:10,186 --> 00:00:11,874 「なぜGoogle検索するの? 4 00:00:11,874 --> 00:00:15,477 なぜ検索にGoogleしか使わないの?」 5 00:00:16,158 --> 00:00:18,771 不思議と 返ってくる答えは同じで この3つです 6 00:00:18,771 --> 00:00:20,717 1つ目は「うまく検索できるから」 7 00:00:20,717 --> 00:00:23,487 ご名答です 私も同じ理由でGoogleを使っています 8 00:00:23,487 --> 00:00:25,771 2つ目は― 9 00:00:25,771 --> 00:00:28,533 「ほかの検索エンジンを知らないから」 10 00:00:28,921 --> 00:00:32,018 ちょっと惜しい たいてい 私はこう返します 11 00:00:32,018 --> 00:00:34,037 「Googleで『検索エンジン』を 12 00:00:34,037 --> 00:00:36,660 検索してごらん ほかにも面白いのがあるよ」 13 00:00:36,660 --> 00:00:38,635 そして トリとなる3つ目です 14 00:00:38,635 --> 00:00:42,660 必ず 手を挙げて 満を持して言う子がいるんです 15 00:00:42,684 --> 00:00:47,713 「Googleを使うと 絶対に 常に最高で公正な検索結果が得られるから」 16 00:00:48,643 --> 00:00:54,610 絶対に 常に最高で公正な 検索結果が得られる― 17 00:00:56,550 --> 00:00:58,866 これを耳にするたび デジタル世代とはいえ 18 00:00:58,866 --> 00:01:01,111 人類のひとりとして 19 00:01:01,111 --> 00:01:02,883 虫唾(むしず)が走ります 20 00:01:02,883 --> 00:01:07,773 みんながGoogleを愛し 大事にしているからこそ 21 00:01:07,773 --> 00:01:11,737 「公正な検索結果」と信じ 考えるのだと わかっていてもです 22 00:01:12,062 --> 00:01:16,118 公正な結果など 哲学的にほぼありえません なぜかご説明しましょう 23 00:01:16,118 --> 00:01:19,361 でも まず検索の基本原理について 少しだけお話しさせてください 24 00:01:19,361 --> 00:01:22,758 みんな 忘れてしまいがちなことです 25 00:01:23,253 --> 00:01:25,391 Googleで何かを検索するとき 26 00:01:25,391 --> 00:01:29,359 まず考えるべきは 「個別の事実を知りたいのか?」 27 00:01:29,845 --> 00:01:32,525 フランスの首都はどこか 28 00:01:32,960 --> 00:01:35,288 水分子の構成元素は何か といったものです 29 00:01:35,288 --> 00:01:37,743 この場合は ぜひGoogle検索しましょう 30 00:01:38,051 --> 00:01:41,048 科学者といえども 答えは「ロンドン」と「H30」だなんて 31 00:01:41,048 --> 00:01:42,928 証明できやしませんから 32 00:01:42,928 --> 00:01:45,279 ここに何の陰謀もありません 33 00:01:45,279 --> 00:01:46,951 こうした個別の事実については 34 00:01:46,951 --> 00:01:49,621 世界全体で 答えが何か 一致しているのです 35 00:01:49,621 --> 00:01:54,801 でも 質問をほんの少し複雑にして こんな風にしたらどうでしょう 36 00:01:54,801 --> 00:01:57,718 「なぜパレスチナ問題が起こっているのか?」 37 00:01:58,461 --> 00:02:01,113 もはや 求めているのは ただ一つの「事実」ではなく 38 00:02:01,113 --> 00:02:02,973 「知識」ということになります 39 00:02:02,973 --> 00:02:05,775 知識は はるかに複雑で繊細なものです 40 00:02:06,016 --> 00:02:07,602 そうした知識を得るには 41 00:02:07,602 --> 00:02:10,627 10 、20 または100の事実を集め 自分のものにし 42 00:02:10,627 --> 00:02:13,476 「これらは すべて真実だ」と 言えないといけません 43 00:02:13,476 --> 00:02:15,203 でも ひとは 44 00:02:15,203 --> 00:02:17,687 年齢や人種、性的趣向に関わらず 45 00:02:17,687 --> 00:02:19,306 違う価値観を持っています 46 00:02:19,306 --> 00:02:21,018 ですから「確かに これは真実だけど 47 00:02:21,018 --> 00:02:23,119 こっちのほうが重要だ」となります 48 00:02:23,119 --> 00:02:25,262 ここからが面白いのです 49 00:02:25,262 --> 00:02:27,399 私たちが人間らしさを発揮するからです 50 00:02:27,399 --> 00:02:30,327 私たちは互いに議論し 社会を形成し始めます 51 00:02:30,327 --> 00:02:33,461 本当に答えを出すには まず事実をすべて ふるいにかけます 52 00:02:33,461 --> 00:02:36,256 友だちやご近所さん 両親、子どもたち、同僚 53 00:02:36,256 --> 00:02:38,471 そして新聞や雑誌を通じて ふるいにかけ 54 00:02:38,471 --> 00:02:41,381 ようやく 真の知識にたどりつくのです 55 00:02:41,381 --> 00:02:45,799 ここで検索エンジンは あまり役に立ちません 56 00:02:46,673 --> 00:02:52,477 さきほど 真に純粋で客観的な知識を 手にするのが なぜ難しいか 57 00:02:52,981 --> 00:02:56,588 例をお見せするとお話ししました 58 00:02:56,588 --> 00:02:58,098 皆さんにお考えいただきましょう 59 00:02:58,098 --> 00:03:01,798 まず いくつか簡単な検索をしてみます 60 00:03:01,798 --> 00:03:05,487 まずは「ミシェル・オバマ」 61 00:03:06,332 --> 00:03:08,341 アメリカのファーストレディです 62 00:03:08,365 --> 00:03:10,094 「画像」をクリックします 63 00:03:10,643 --> 00:03:13,279 ご覧のとおり うまく行っていますね 64 00:03:13,303 --> 00:03:16,331 まあ 完ぺきな検索結果です 65 00:03:16,355 --> 00:03:19,105 写真には ミシェル一人だけ 大統領さえいません 66 00:03:19,257 --> 00:03:20,977 どうなっているんでしょう 67 00:03:21,317 --> 00:03:22,825 とてもシンプルです 68 00:03:22,825 --> 00:03:25,951 Googleは 色々頭を使っていますが 簡単に言うと 69 00:03:25,951 --> 00:03:28,532 2つのことに着目しています 70 00:03:28,556 --> 00:03:33,712 1つは 各ウェブサイトの写真の下にある キャプションの内容です 71 00:03:33,736 --> 00:03:35,951 写真の下に「ミシェル・オバマ」とあれば 72 00:03:35,975 --> 00:03:38,331 彼女の写真の可能性が高いですね 73 00:03:38,355 --> 00:03:40,741 つぎにGoogleが見るのは 写真ファイル 74 00:03:40,765 --> 00:03:43,515 ウェブサイトにアップロードされた ファイルの名前です 75 00:03:43,515 --> 00:03:46,376 「MichellObama.jpeg」というファイルなら 76 00:03:46,376 --> 00:03:49,422 クリント・イーストウッドの写真 ということはないでしょう 77 00:03:49,422 --> 00:03:53,404 この2つを手がかりにすると こんな検索結果になるんです―普通は 78 00:03:53,404 --> 00:03:59,457 さて2009年 ミシェル・オバマに 人種差別攻撃の矛先が向きました 79 00:03:59,991 --> 00:04:04,317 検索結果を通じて侮辱されたのです 80 00:04:04,682 --> 00:04:07,578 ある写真がばらまかれ インターネットを席巻します 81 00:04:07,578 --> 00:04:10,358 彼女の顔が サルのように ゆがめられた写真です 82 00:04:10,358 --> 00:04:13,344 写真は インターネット上の あらゆるところに掲載されました 83 00:04:13,680 --> 00:04:17,141 しかも 検索結果の上位に表示されるよう 84 00:04:17,141 --> 00:04:19,178 非常に意図的な形でネット掲載されました 85 00:04:19,178 --> 00:04:22,345 キャプションには必ず 「ミシェル・オバマ」と書かれ 86 00:04:22,345 --> 00:04:26,309 ファイル名も 「MichelleObama.jpeg」などとされたのです 87 00:04:26,309 --> 00:04:28,837 そう 検索結果を操作するためです 88 00:04:28,837 --> 00:04:30,323 確かに それは成功し 89 00:04:30,323 --> 00:04:33,119 Googleで「ミシェル・オバマ」を 画像検索すると 90 00:04:33,119 --> 00:04:36,464 2009年当時 サル顔に変形された写真が 結果上位に表示されました 91 00:04:36,464 --> 00:04:39,851 さて 検索結果には自浄作用があります 92 00:04:39,851 --> 00:04:41,678 そこが素晴らしいところでもあり 93 00:04:41,678 --> 00:04:45,078 Googleは 毎日 毎時間 関連度を測っているのです 94 00:04:45,078 --> 00:04:47,972 でも このときGoogleは 黙ってはいませんでした 95 00:04:47,972 --> 00:04:50,903 「これは人種差別的で 悪い検索結果だから 96 00:04:50,903 --> 00:04:54,022 自らの手で きれいにしないといけない 97 00:04:54,343 --> 00:04:57,063 プログラムを書いて修正するんだ」と考え 98 00:04:57,063 --> 00:04:58,473 実際にそうしました 99 00:04:59,115 --> 00:05:02,792 皆さんのなかで これが悪いことと 思う方はいないでしょう 100 00:05:03,392 --> 00:05:04,599 私も そう思いません 101 00:05:06,367 --> 00:05:09,098 それから2年ほどして 102 00:05:09,401 --> 00:05:12,282 世界で最もGoogle検索されたアンネシュ 103 00:05:12,282 --> 00:05:14,648 アンネシュ・ベーリン・ブレイヴィークは 104 00:05:14,648 --> 00:05:16,219 こんなことをしました 105 00:05:16,443 --> 00:05:18,518 2011年7月22日 106 00:05:18,518 --> 00:05:21,172 ノルウェー史上 悲惨な日となったこの日 107 00:05:21,172 --> 00:05:25,011 この男―テロリストは 政府庁舎を爆破しました 108 00:05:25,011 --> 00:05:27,814 ここ ノルウェー・オスロの会場から 徒歩圏内の場所です 109 00:05:27,814 --> 00:05:29,864 その後 彼はウトヤ島に渡り 110 00:05:29,864 --> 00:05:32,239 子どもたちを銃撃し殺しました 111 00:05:32,487 --> 00:05:34,486 その日 80人近くの命が失われました 112 00:05:35,966 --> 00:05:40,621 多くの場合 このテロ行為には 2つの段階があったと語られます 113 00:05:40,621 --> 00:05:44,073 つまり 建物爆破と 子どもの銃殺 という2つの段階です 114 00:05:44,073 --> 00:05:45,580 実は違うのです 115 00:05:45,890 --> 00:05:47,851 3つの段階があったんです 116 00:05:47,851 --> 00:05:50,382 彼は建物を爆破し 子どもたちを銃殺し 117 00:05:50,382 --> 00:05:54,035 そして世界が彼を Google検索するのを待ったのです 118 00:05:54,771 --> 00:05:57,425 彼は この3つの段階すべてを 周到に準備していました 119 00:05:58,003 --> 00:06:00,730 彼の意図をすぐに見破ったのが 120 00:06:00,730 --> 00:06:02,525 スウェーデンのウェブ開発者で 121 00:06:02,525 --> 00:06:06,210 検索エンジン適正化の専門家 ストックホルムのニック・リンドクヴィストです 122 00:06:06,210 --> 00:06:07,952 自らも非常に政治的なニックは 123 00:06:07,952 --> 00:06:11,219 ブログやFacebookなど ソーシャルメディアを通じて 124 00:06:11,219 --> 00:06:12,671 みんなに訴えかけました 125 00:06:12,695 --> 00:06:15,150 「こいつが今ほしいものがあるとしたら 126 00:06:15,174 --> 00:06:17,633 自分のイメージをコントロールすることだ 127 00:06:18,291 --> 00:06:20,466 みんなで それを崩そうじゃないか 128 00:06:21,490 --> 00:06:25,467 文明社会のみんなの力をあわせて 彼の行為に対して抗議するんだ 129 00:06:25,491 --> 00:06:28,808 検索結果を通して彼を侮辱するんだ」 130 00:06:28,832 --> 00:06:30,019 でも どうやって? 131 00:06:30,332 --> 00:06:32,540 彼は以下のことをするよう呼びかけました 132 00:06:32,540 --> 00:06:34,451 インターネットで 133 00:06:34,451 --> 00:06:37,452 道端の犬のフンの写真を探し― 134 00:06:38,384 --> 00:06:40,536 道端の犬のフンの写真を探し― 135 00:06:40,536 --> 00:06:44,087 それをフィードやウェブサイト ブログに掲載するのです 136 00:06:44,087 --> 00:06:47,037 そのとき必ず キャプションにはテロリストの名前を書き 137 00:06:47,037 --> 00:06:51,386 ファイル名を「Breivik.jpeg」とするのです 138 00:06:51,386 --> 00:06:55,195 Googleに これがテロリストの顔だと 教えるのです 139 00:06:57,053 --> 00:06:58,584 効果てき面でした 140 00:06:59,612 --> 00:07:02,416 ミシェル・オバマ事件の2年後 141 00:07:02,416 --> 00:07:05,727 アンネシュ・ベーリン・ブレイヴィークの 検索結果が操作されました 142 00:07:05,727 --> 00:07:10,183 7月22日事件以降の数週間 スウェーデンから彼をGoogleで画像検索すると 143 00:07:10,183 --> 00:07:14,382 検索結果の上位に犬のフンの写真が 表示されるに至りました 144 00:07:14,382 --> 00:07:16,036 小さな抗議行動です 145 00:07:17,008 --> 00:07:21,176 奇妙なことに このとき Googleは介入しませんでした 146 00:07:22,074 --> 00:07:26,449 人為的に検索結果をきれいにしようとは しなかったのです 147 00:07:27,431 --> 00:07:29,360 さて ここで難しい質問です 148 00:07:29,360 --> 00:07:32,821 これら2つの現象は何が違うんでしょうか? 149 00:07:32,821 --> 00:07:36,128 ミシェル・オバマに起こったことと 150 00:07:36,128 --> 00:07:38,378 アンネシュに起こったことは違いますか? 151 00:07:38,402 --> 00:07:39,686 もちろん違いません 152 00:07:40,353 --> 00:07:42,022 まったく同じ事象です 153 00:07:42,022 --> 00:07:44,731 でも Googleは片方には介入し 他方にはしませんでした 154 00:07:44,731 --> 00:07:46,139 なぜでしょう 155 00:07:47,076 --> 00:07:50,125 それはミシェル・オバマが 尊敬に値する人物である一方 156 00:07:50,125 --> 00:07:53,228 アンネシュ・ベーリン・ブレイヴィークが 卑劣な人間だからです 157 00:07:53,707 --> 00:07:55,450 ご覧いただいたとおり 158 00:07:55,450 --> 00:07:58,491 ここには 人に対する評価が介在しています 159 00:07:58,491 --> 00:08:01,611 世界には 重要人物を決める権力を持つ― 160 00:08:02,148 --> 00:08:04,997 唯一の権力者がいるのです 161 00:08:05,701 --> 00:08:07,623 「君は好き 君は嫌い 162 00:08:07,647 --> 00:08:09,686 君は信じる 君は信じない 163 00:08:09,710 --> 00:08:12,257 君は正しい 君は間違っている 君は真実 君は嘘 164 00:08:12,281 --> 00:08:14,086 君はオバマで 君はブレイヴィーク」 165 00:08:14,412 --> 00:08:16,579 これが力というものです 166 00:08:18,609 --> 00:08:22,532 ですから覚えておいてください どんなアルゴリズムでも 167 00:08:22,532 --> 00:08:24,357 その後ろには 必ず人間がいるんです 168 00:08:24,357 --> 00:08:26,911 人間は それぞれ価値観を持っていて プログラムで 169 00:08:26,911 --> 00:08:29,397 その影響を 完全に消し去ることはできません 170 00:08:29,397 --> 00:08:31,935 私はこのメッセージを Googleだけではなく 171 00:08:31,935 --> 00:08:34,789 プログラムに信頼を寄せる 世界中のすべての人に伝えたい 172 00:08:34,789 --> 00:08:37,719 自らの偏見をしっかり認識し 173 00:08:37,719 --> 00:08:40,056 人間であることを自覚し 174 00:08:40,080 --> 00:08:42,571 責任を持たなければいけません 175 00:08:43,528 --> 00:08:46,459 このことを伝えたいのは 結束を今一度 176 00:08:46,459 --> 00:08:48,164 強くしなければいけない 177 00:08:48,164 --> 00:08:51,252 そんなときが来ていると 信じているからです 178 00:08:51,252 --> 00:08:53,751 人類と技術のつながり 179 00:08:54,077 --> 00:08:56,020 この結束を 今以上に強くするのです 180 00:08:56,020 --> 00:08:59,438 少なくとも 心地よく魅惑的に聞こえる― 181 00:08:59,438 --> 00:09:01,995 「公正で きれいな検索結果」というものは 182 00:09:01,995 --> 00:09:04,674 神話に過ぎず これからもそうだと 心に留めるべきです 183 00:09:05,390 --> 00:09:06,894 ありがとうございました 184 00:09:06,894 --> 00:09:08,726 (拍手)