0:00:00.000,0:00:04.000 アウシュビッツ強制収容所のようなイメージが 0:00:04.000,0:00:09.000 20世紀を通して 我々の意識に焼きついて 0:00:09.000,0:00:14.000 我々という人間の正体や 我々のたどった道 我々が生きる時代の 0:00:14.000,0:00:17.000 新しい解釈をもたらしました 0:00:17.000,0:00:21.000 20世紀には数々の残虐行為が見られました 0:00:21.000,0:00:26.000 スターリン ヒトラー 毛沢東 ポルポト ルワンダやその他の集団虐殺 0:00:26.000,0:00:30.000 21世紀に突入して まだ7年しか経過していませんが 0:00:30.000,0:00:34.000 既に ダルフール紛争やイラクの日常となった 0:00:34.000,0:00:36.000 酷い状況を目にしてきました 0:00:37.000,0:00:40.000 こうしてある共通の理解に至りました 0:00:40.000,0:00:44.000 現代社会は 暴力にあふれ 0:00:44.000,0:00:47.000 調和のとれた原始の時代から離れてしまったから今の危難があるのです 0:00:47.000,0:00:52.000 例えば 数年前の感謝祭のときの 0:00:52.000,0:00:55.000 ボストングローブ紙の論評です 0:00:55.000,0:00:58.000 “インディアンの生活は苦しいものであったが 0:00:59.000,0:01:02.000 雇用問題は無く 仲間意識が強く 0:01:02.000,0:01:04.000 薬物乱用など存在せず 0:01:05.000,0:01:08.000 犯罪は ほぼ皆無で 部族間の争いは 0:01:09.000,0:01:12.000 主に儀式的で 無差別虐殺や 0:01:12.000,0:01:16.000 大量虐殺につながることは滅多になかった” よく聞くお話です 0:01:17.000,0:01:20.000 子どもに教え テレビや絵本でも耳にします 0:01:20.000,0:01:25.000 このセッションのテーマは“常識を疑う” ですが 0:01:25.000,0:01:28.000 今述べた常識的な理解の誤りについて 0:01:28.000,0:01:31.000 論証したいと思います 0:01:31.000,0:01:35.000 実際に我々の祖先は非常に残虐で 0:01:35.000,0:01:38.000 暴力は長い事 減少してきており 0:01:39.000,0:01:42.000 我々は おそらく人類史上 もっとも平和な時を生きています 0:01:42.000,0:01:46.000 ダルフールやイラクでの紛争が起きている時代に 0:01:47.000,0:01:50.000 このような陳述は 幻覚か不当にすら感じますが 0:01:50.000,0:01:53.000 これが正しい理解であると説明していきます 0:01:53.000,0:01:59.000 暴力の減少はフラクタル現象です 0:01:59.000,0:02:02.000 これは数千年 数百年 数十年 0:02:02.000,0:02:05.000 そして数年のスケールで観測できます 0:02:06.000,0:02:08.000 16世紀の理性の時代の始まりが 0:02:08.000,0:02:12.000 転換点だったようです 0:02:12.000,0:02:15.000 一様ではなくとも世界中に見られます 0:02:16.000,0:02:18.000 啓蒙運動の時代 英国やオランダで始まり 0:02:19.000,0:02:21.000 特に西洋では顕著です 0:02:22.000,0:02:25.000 では数千年から数年のスケールで 0:02:26.000,0:02:28.000 説明していきましょう 0:02:28.000,0:02:32.000 一万年前まで人間は狩猟採集型の生活をして 0:02:32.000,0:02:35.000 永住地や政府はありませんでした 0:02:35.000,0:02:38.000 これは一般に原始的な調和の一つとして 0:02:38.000,0:02:43.000 考えられる状態ですが 0:02:44.000,0:02:48.000 考古学者のローレンス キーリーは 0:02:48.000,0:02:51.000 現代の狩猟採取者の死亡率を参考にして 0:02:52.000,0:02:58.000 狩猟採取社会の新しい姿を描きました 0:02:58.000,0:03:00.000 キーリーはこんなグラフに 0:03:00.000,0:03:03.000 数々の狩猟採取社会での 0:03:03.000,0:03:07.000 争いによる男性死者の割合をまとめました 0:03:08.000,0:03:14.000 赤い棒線は 自然死ではなくて 0:03:14.000,0:03:17.000 誰かに殺される確率を示しています 0:03:17.000,0:03:21.000 ニューギニア高地やアマゾン熱帯雨林の 0:03:21.000,0:03:24.000 様々な原住民社会におけるものです 0:03:25.000,0:03:28.000 殺される確率が60%の場所もあれば 0:03:28.000,0:03:31.000 わずか15%の場所もあります 0:03:32.000,0:03:36.000 左下に見られる短い青い棒線は 0:03:36.000,0:03:39.000 20世紀の欧米の統計を表わしたもので 0:03:40.000,0:03:44.000 2度の世界大戦の犠牲者を含んでいます 0:03:44.000,0:03:49.000 もし同じ死亡率のまま20世紀を迎えていたら 0:03:49.000,0:03:55.000 1億人どころか20億人が死んでいたでしょう 0:03:55.000,0:03:58.000 千年スケールの話の続きですが 聖書から 0:03:58.000,0:04:03.000 古代文明における社会の風習を見ることができます 0:04:03.000,0:04:08.000 道徳的価値の源泉と考えられる聖書の中に 0:04:08.000,0:04:12.000 戦争に対する見方がわかる記述があります 0:04:12.000,0:04:15.000 例えば 31章には“わが主がモーゼに命令すると 0:04:15.000,0:04:18.000 彼らはミデヤン人と戦い 彼らは 0:04:18.000,0:04:21.000 すべての男どもを殺した そしてモーゼは言った 0:04:21.000,0:04:25.000 女は生かしておいたか? 直ちに 男の子たちを皆 殺せ 0:04:25.000,0:04:28.000 男と寝て男を知っている女も皆殺せ 0:04:28.000,0:04:32.000 ただし 男を知らない娘は あなたたちのために 0:04:32.000,0:04:35.000 生かしておくがよい” と書かれています 0:04:35.000,0:04:40.000 これは男や子どもは殺し 処女を見つけた時は生かしておいて 0:04:40.000,0:04:42.000 強姦してもよい という意味です 0:04:43.000,0:04:47.000 聖書には このような記述が4~5か所に見られます 0:04:47.000,0:04:50.000 また聖書によると 死刑が容認される罪は 0:04:50.000,0:04:55.000 同性愛 姦通 冒涜 0:04:55.000,0:04:59.000 偶像崇拝 親への口答え 0:04:59.000,0:05:03.000 安息日に枝を拾うことなどが含まれます 0:05:03.000,0:05:06.000 では一桁分ズームインして 0:05:06.000,0:05:09.000 世紀のスケールで見てみましょう 0:05:09.000,0:05:13.000 中世から現代に至る期間の 戦争の統計はありませんが 0:05:14.000,0:05:15.000 歴史をたどれば 社会的に 0:05:15.000,0:05:18.000 容認された暴力が減少してきたのは 0:05:18.000,0:05:22.000 はっきりとしています 0:05:22.000,0:05:25.000 例えば どんな社会でも 手足の切断や拷問は 0:05:25.000,0:05:29.000 刑罰として規定された形式でした 0:05:29.000,0:05:32.000 現在 違反行為に課せられるのは罰金ですが 0:05:32.000,0:05:36.000 当時は舌や耳を切られたり 目をつぶされたり 0:05:36.000,0:05:40.000 手を切断されたりしたのです 0:05:40.000,0:05:42.000 死刑も火あぶりや解体刑 車裂きの刑 0:05:42.000,0:05:46.000 八つ裂きの刑など 0:05:47.000,0:05:49.000 残酷なものは多々ありました 0:05:50.000,0:05:52.000 王様の批判や パン泥棒など 暴力とは関係のない罪にも 0:05:53.000,0:05:57.000 死刑は適用され 労働力を確保するために 0:05:57.000,0:06:01.000 奴隷制が多用されていました 0:06:02.000,0:06:05.000 娯楽も残酷で 一番強烈なのは 0:06:06.000,0:06:09.000 猫の火あぶりです 吊るされた猫が 0:06:09.000,0:06:12.000 火の中に入れられ 痛みで鳴き声を上げ 0:06:12.000,0:06:15.000 焼死する姿を見て 観客はギャーッと声をあげながら 0:06:15.000,0:06:20.000 笑っていたのです 0:06:21.000,0:06:23.000 殺人に関しては 多くの行政機関が 0:06:23.000,0:06:26.000 死因を記録しているので 統計データが出されています 0:06:26.000,0:06:32.000 犯罪学者のマヌエル アイズナーは 0:06:32.000,0:06:36.000 ヨーロッパ全域で見つけた 0:06:37.000,0:06:39.000 殺人の全記録を研究し そのデータを 0:06:39.000,0:06:44.000 国家の統計と 0:06:44.000,0:06:46.000 継ぎ合わせました 0:06:46.000,0:06:49.000 対数スケールでプロットすると 年間に10万人あたり100件の殺人という 0:06:50.000,0:06:57.000 中世の代表的な値から始まりますが 0:06:57.000,0:07:03.000 その数字はどんどん低下して 0:07:03.000,0:07:08.000 ヨーロッパ諸国では 年間に 10万人あたり1件以下まで減ります 0:07:08.000,0:07:12.000 そして 1960年に少し上昇が見られます 0:07:13.000,0:07:17.000 ロックンロールが道徳的価値観を下げるという指摘は 0:07:17.000,0:07:21.000 あながち間違いとも言えないようです 0:07:21.000,0:07:24.000 ともかく 殺人件数は現代に至るまで 0:07:25.000,0:07:28.000 16世紀初頭を境に 0:07:29.000,0:07:31.000 少なくとも二桁の減少を遂げました 0:07:32.000,0:07:35.000 10年単位で見てみましょう 0:07:37.000,0:07:39.000 非政府組織の統計によれば 0:07:39.000,0:07:41.000 ヨーロッパと南北アメリカでは1945年以来 0:07:42.000,0:07:46.000 戦争や犠牲者を出す民族暴動 0:07:46.000,0:07:49.000 虐殺や軍事クーデターは減少しています 0:07:50.000,0:07:54.000 世界的にも 戦争による犠牲者は激減しています 0:07:54.000,0:07:58.000 黄色の棒線は1950年から現在に至るまでの 0:07:58.000,0:08:03.000 一つの戦争の年間犠牲者を示しています 0:08:04.000,0:08:08.000 50年代には一つの戦争の年間犠牲者数が 6万5千人でしたが 0:08:09.000,0:08:13.000 2000年以降は酷い状況とは言え 0:08:13.000,0:08:17.000 年間犠牲者数は2千人以下まで減少しています 0:08:17.000,0:08:21.000 一年スケールで見ても 暴力の減少がわかります 0:08:21.000,0:08:24.000 冷戦終結の後 内戦や集団虐殺は減りました 0:08:25.000,0:08:28.000 第二次世界大戦後 90%の減少です 0:08:28.000,0:08:34.000 殺人や暴力犯罪における60年代の上昇分も取り返しました 0:08:34.000,0:08:40.000 これは FBI がまとめた他殺の統計です 0:08:40.000,0:08:44.000 50年代と60年代は暴力が抑えられていましたが 0:08:44.000,0:08:47.000 その後 何十年か高めの数字を経て 0:08:48.000,0:08:52.000 1990年代に激減し始め 0:08:52.000,0:08:56.000 ほぼ60年代のレベルへと戻りました 0:08:56.000,0:09:00.000 クリントン大統領 ありがとう 0:09:00.000,0:09:02.000 (笑) 0:09:02.000,0:09:04.000 さて これだけ大切な事実に対し 0:09:04.000,0:09:07.000 誤解が生じる理由は多々あると思います 0:09:07.000,0:09:11.000 報道が充実したということも理由の一つです 0:09:11.000,0:09:14.000 AP通信は16世紀の修道士よりも 0:09:14.000,0:09:18.000 戦争に関して上をいく年代史家です 0:09:18.000,0:09:22.000 認知的錯覚によって ある具体的な事例を思い出すのが簡単になるほど 0:09:22.000,0:09:27.000 先入観が強くなるというのが 0:09:27.000,0:09:30.000 認知心理学の知見です 0:09:30.000,0:09:33.000 新聞で目にする残虐な写真やニュースは 0:09:33.000,0:09:36.000 老衰で亡くなるお年寄りよりも 記憶に焼きつきやすいのです 0:09:37.000,0:09:41.000 世論や政策提言における力学の問題として 0:09:41.000,0:09:46.000 状況は改善し続けていると訴え 注目をあびて 0:09:47.000,0:09:52.000 支持や支援を集めることはできません 0:09:52.000,0:09:53.000 (笑) 0:09:54.000,0:09:56.000 先住民に対して罪悪感があるため 0:09:56.000,0:09:57.000 現代の知識人たちは西洋文化の特長を 0:09:57.000,0:09:59.000 素直に認めようとはしません 0:10:00.000,0:10:03.000 道徳の変化が行動の変化を追い抜くこともあるでしょう 0:10:03.000,0:10:05.000 暴力が減少した理由の一つは 0:10:06.000,0:10:10.000 人々が当時の大虐殺や残酷な行為に嫌気がさしたからです 0:10:11.000,0:10:13.000 今もそうですが 道徳が行動を追い越して 0:10:14.000,0:10:17.000 変化してしまうと 当時の歴史的な基準に照らした場合以上に 0:10:17.000,0:10:20.000 野蛮であったと見なされます 0:10:20.000,0:10:24.000 よって 15年の司法手続を経た殺人犯たちが 0:10:24.000,0:10:27.000 薬殺刑で死刑になることが 気にかかるのも無理はありません 0:10:27.000,0:10:31.000 数百年前であれば王様を批判したことで 0:10:31.000,0:10:37.000 10分程度の裁判にかけられ 0:10:37.000,0:10:41.000 火あぶりの刑に処せられたかもしれません 0:10:42.000,0:10:45.000 むしろ 幾度となく繰り返されたことだったでしょう 0:10:45.000,0:10:48.000 今日 死刑制度は野蛮な行為として 0:10:48.000,0:10:51.000 捉えられています 0:10:51.000,0:10:55.000 基準の向上とは見なされません 0:10:56.000,0:10:59.000 なぜ暴力が減少したのか 誰もわかりませんが 0:10:59.000,0:11:01.000 私が知っている4つの説明は どれも 0:11:03.000,0:11:06.000 ある程度うなずけるものです 0:11:06.000,0:11:10.000 一つ目はトマスホッブズが正しいというものです 0:11:11.000,0:11:14.000 ホッブズによると 人間の自然状態とは “孤独で貧しく 0:11:14.000,0:11:17.000 不機嫌で残酷 しかも短命” 0:11:17.000,0:11:22.000 血の渇望や 攻撃的な本能や 0:11:22.000,0:11:26.000 縄張り争いが原因なのではなく 0:11:26.000,0:11:29.000 無政府状態のロジックが原因だと言っています 0:11:29.000,0:11:32.000 無政府状態では やられる前にやらなければおしまいです 0:11:33.000,0:11:36.000 トーマス シェリングがこれについて 0:11:36.000,0:11:40.000 自宅の地下で物音がした状況で例示しています 0:11:40.000,0:11:43.000 アメリカ人の常として 0:11:43.000,0:11:45.000 ベッド脇から銃を掴み 階下へ降ります 0:11:46.000,0:11:48.000 目に飛び込んだのは 銃を持った侵入者 0:11:48.000,0:11:51.000 お互いに考えるのは 0:11:52.000,0:11:54.000 “人殺しはいやだが 撃たれるぐらいなら 0:11:55.000,0:11:56.000 その前に撃った方がよさそうだ 0:11:56.000,0:12:00.000 奴も殺す気はないかもしれないが 0:12:00.000,0:12:04.000 殺される可能性があることを 0:12:04.000,0:12:06.000 恐れているだろう” 0:12:06.000,0:12:09.000 狩猟採集の部族はこの一連の考えをたどり 0:12:09.000,0:12:11.000 襲われる恐怖から 相手を襲うのです 0:12:12.000,0:12:16.000 さて 抑止力がこの問題の解決策の一つです 0:12:17.000,0:12:20.000 先制攻撃はしませんが もしも侵略されたら 0:12:22.000,0:12:25.000 はげしく報復するという方針を公言しておくのです 0:12:25.000,0:12:30.000 このポリシーは 虚勢と見なされがちですが 0:12:30.000,0:12:33.000 本気だと思われたときにだけ効力を発揮します 0:12:33.000,0:12:35.000 本気と知らせるためには 全ての侵入に復讐を果たし 0:12:35.000,0:12:39.000 借りは必ず返して やがて血の復讐に至るのです 0:12:40.000,0:12:44.000 ギャング映画の世界です ホッブスの解決策である「リヴァイアサン」では 0:12:45.000,0:12:49.000 暴力の公使における正統性を 0:12:49.000,0:12:54.000 リヴァイアサンという民主的機関だけに帰属させた状態なら 0:12:54.000,0:12:58.000 攻撃の企てが減るというものでした 0:12:58.000,0:13:03.000 なぜなら いかなる攻撃も罰せられ 0:13:04.000,0:13:07.000 そこから得られるものは無いので 自分が襲われる恐怖からの 0:13:07.000,0:13:10.000 先制攻撃を抑止するのです 0:13:10.000,0:13:15.000 抑止力では 本気だと示すために一触即発で復讐する必要があったのが 0:13:15.000,0:13:19.000 不要となり こうして平和へと至るのです 0:13:19.000,0:13:23.000 先ほどお見せ出来なかった 殺人件数の割合を 0:13:23.000,0:13:26.000 グラフにしたアイズナーは 0:13:26.000,0:13:32.000 ヨーロッパで殺人が減少した時期は 0:13:32.000,0:13:34.000 中央集権国家の勃興と期を同じくすると指摘しています 0:13:35.000,0:13:38.000 リヴァイアサン理論のちょっとした裏付けです 0:13:39.000,0:13:43.000 今日 無政府状態の地域で暴力が吹き荒れることも 0:13:43.000,0:13:46.000 理論を裏付けます 破たん国家や崩壊した帝国 0:13:46.000,0:13:50.000 辺境地帯 マフィアやストリートギャング等です 0:13:50.000,0:13:54.000 二つ目の説明は 人生は取るに足らないものと 0:13:54.000,0:13:58.000 見られていた時代と場所が多かったことです 0:14:00.000,0:14:03.000 苦しみや若死にが普通であった昔 0:14:03.000,0:14:06.000 他人に危害を加えることに抵抗は感じませんでした 0:14:07.000,0:14:11.000 テクノロジーや経済効率が人生をより長く楽しくさせるにつれて 0:14:11.000,0:14:15.000 人間は一般的に人生への価値を高めるようになります 0:14:15.000,0:14:19.000 これは政治学者のジェームズ ペインの議論です 0:14:19.000,0:14:23.000 三つ目の説明は“非ゼロ和” の概念を連想させます 0:14:23.000,0:14:26.000 ジャーナリストであるロバート ライトは 0:14:27.000,0:14:31.000 ある種の状況下で 非暴力を含む協力は 0:14:31.000,0:14:35.000 双方に利益があると指摘しています 0:14:35.000,0:14:38.000 過剰な物資の貿易を行い 両者が争いをしないこと 又は 0:14:39.000,0:14:42.000 戦時編制を解き いわゆる平和の配当を分配することで 0:14:42.000,0:14:48.000 いかなる時でも 戦う必要がなくなることに 0:14:48.000,0:14:52.000 つながると言っています 0:14:52.000,0:14:55.000 ライトは 人が関わる 0:14:55.000,0:14:58.000 ポジティブサムゲームの件数が増えたと言います 0:14:59.000,0:15:01.000 テクノロジーが 物資やサービスやアイデアの交換を 0:15:01.000,0:15:05.000 より遠方と より大人数で行えるようにしたからです 0:15:06.000,0:15:09.000 その結果 死者よりも生きている他者の価値が高まり 0:15:09.000,0:15:12.000 自己中心的な理由での暴力は減るのです ライトに言わせると 0:15:13.000,0:15:16.000 “日本への爆弾投下はいけない 0:15:16.000,0:15:21.000 彼らは私のミニバンを作ってくれたのだ” 0:15:22.000,0:15:24.000 (笑) 0:15:24.000,0:15:27.000 四つ目の説明は哲学者であるピーター シンガーが書いた 0:15:27.000,0:15:29.000 本のタイトルに示されています 0:15:29.000,0:15:33.000 彼は 進化によって人間は共感できるようになったと論じています 0:15:33.000,0:15:36.000 他人の利害を自らのものとして考える力です 0:15:37.000,0:15:40.000 残念ながら 我々がそうするのは基本的に 0:15:40.000,0:15:45.000 非常に限られた仲間や身内だけです 0:15:45.000,0:15:49.000 それ以外の人は人間以下の扱いを受け 0:15:49.000,0:15:53.000 当然のことのように食い物にされるのです しかし時間が経つうちに 0:15:53.000,0:15:56.000 その範囲は広がり 歴史上の記録には 0:15:56.000,0:16:00.000 村から一族へ 部族へ 0:16:00.000,0:16:04.000 国家へ 他の人種へ 男女へと広がり 0:16:04.000,0:16:07.000 シンガー自身の議論では 感覚をもつ他の種にも 0:16:08.000,0:16:11.000 広げるべきものだとしています 0:16:11.000,0:16:13.000 そこで この広がりの原動力は何かという問いが生じます 0:16:13.000,0:16:18.000 可能性はたくさんあります 0:16:18.000,0:16:21.000 ロバート ライトが論じる相互依存の輪の増加や黄金律などです 0:16:21.000,0:16:24.000 つまり他者のことを考え影響しあうほどに 0:16:24.000,0:16:28.000 相手に耳を傾けてほしい場合には 0:16:29.000,0:16:33.000 自分の利益を優先するのは 0:16:33.000,0:16:37.000 良くないことがわかります 0:16:37.000,0:16:41.000 自己中心的な態度は不適切です 0:16:41.000,0:16:44.000 自分が今いる場所が 0:16:44.000,0:16:47.000 宇宙の中で特別な場所だと言えないのと 0:16:47.000,0:16:49.000 同じことです 0:16:50.000,0:16:52.000 世界主義も理由かもしれません 0:16:53.000,0:16:55.000 歴史 報道 記憶 リアルな小説 旅行記 識字― 0:16:56.000,0:17:00.000 こうして かつて人間以下に見ていた他人の姿に 0:17:00.000,0:17:04.000 自分の姿を重ね合わせることを可能にして 0:17:04.000,0:17:08.000 自分の人生の立場が偶然の結果と気づかせます 0:17:08.000,0:17:12.000 誰にでも起こり得るということです 0:17:12.000,0:17:16.000 原因は何にせよ 暴力の減少には 0:17:16.000,0:17:19.000 深い意味があるため “なぜ戦争をするのか” と問わずに 0:17:21.000,0:17:24.000 “なぜ平和があるのか” と問うべきです 0:17:24.000,0:17:28.000 “我々の過ち” だけではなく “我々の正しい行い”も問うべきです 0:17:28.000,0:17:32.000 そこを追究するのは 0:17:33.000,0:17:36.000 価値あることだと思います 0:17:37.000,0:17:38.000 どうもありがとう 0:17:39.000,0:17:41.000 (拍手) 0:17:41.000,0:17:42.000 素晴らしい内容でした ピーターシンガーが書いた内容ですが 0:17:42.000,0:17:53.000 あの広がりとは テクノロジーや 0:17:53.000,0:17:57.000 目に見える他者の増加が 引き起こしたと 0:17:57.000,0:18:00.000 感じる人も多いと思います そして それゆえに世界が 0:18:00.000,0:18:03.000 小さくなっているという感覚 これも真実なのでしょうか? 0:18:03.000,0:18:07.000 はい どちらもライト氏の理論にあてはまります 0:18:07.000,0:18:10.000 ずっと大きな輪の中での協力はメリットが大きいのです 0:18:11.000,0:18:14.000 また 他人の立場に思いを馳せることの 0:18:15.000,0:18:18.000 手助けにもなっています 0:18:19.000,0:18:22.000 中世の恐ろしい拷問の話を読んだら 0:18:24.000,0:18:27.000 なぜ そんなことが出来たのか 0:18:27.000,0:18:30.000 犠牲者をかわいそうだと思わなかったのかと 0:18:30.000,0:18:32.000 思うでしょうが 彼らにとっては 0:18:32.000,0:18:34.000 自分と似た存在だとは思いようもない― 0:18:35.000,0:18:37.000 ただのよそ者に過ぎなかったのです 0:18:38.000,0:18:41.000 他人と立場を入れ替える想像を 0:18:41.000,0:18:44.000 容易にするものは何でも 他人への配慮を 0:18:44.000,0:18:46.000 高めるのです 0:18:47.000,0:18:50.000 大切なことなので 近いうちに報道機関にも聴いてもらいたいですね 0:18:50.000,0:18:51.000 どうもありがとう 0:18:51.000,0:18:55.000 どういたしまして