0:00:07.076,0:00:11.433 私たちの多くにとって[br]2度の温度変化はわずかなものです 0:00:11.433,0:00:14.360 窓を少し開ける必要すらないかもしれません 0:00:14.360,0:00:18.657 しかし 科学者達は[br]大気中の二酸化炭素濃度が上昇し 0:00:18.657,0:00:22.473 気温が2度上昇しただけでも[br]世界に壊滅的な打撃をもたらすと 0:00:22.473,0:00:26.190 警鐘を鳴らしています 0:00:26.190,0:00:29.926 どうしてたった1つの要素の[br]小さくて測定可能な変化が 0:00:29.926,0:00:34.572 他の多くの要素に対する[br]著しく予測不能な変化を起こすのでしょうか 0:00:34.572,0:00:38.413 数学的な転換点の概念に[br]その答えは隠されており 0:00:38.413,0:00:42.346 身近な遊びであるビリヤードによって[br]理解することができます 0:00:42.346,0:00:44.430 ビリヤードの動きの基本法則とは 0:00:44.430,0:00:47.312 球は壁に当たるまで直進し 0:00:47.312,0:00:51.130 入射角と同じ角度で[br]跳ね返るというものです 0:00:51.130,0:00:54.040 単純化のために[br]摩擦がないと仮定すると 0:00:54.040,0:00:56.953 球は永遠に動き続けます 0:00:56.953,0:00:58.994 さらに単純化し 0:00:58.994,0:01:04.062 完全に円形な台での[br]たった1つの球の動きを見てみましょう 0:01:04.062,0:01:07.357 球が突かれ 法則に従って動き始めると 0:01:07.357,0:01:10.502 きれいな星のような模様を描きます 0:01:10.502,0:01:12.667 別の場所においた球で始めたり 0:01:12.667,0:01:16.418 異なる角度で突いたりすると[br]模様は多少変化しますが 0:01:16.418,0:01:19.685 ほとんど同じ形になります 0:01:19.685,0:01:22.747 何回かテストして[br]簡単な数学モデルを用いれば 0:01:22.747,0:01:26.321 私たちは 初期前提だけに基いて[br]球が動き始める前に 0:01:26.321,0:01:28.976 軌道を予測することができます 0:01:28.976,0:01:31.374 しかし ここにわずかな変化- 0:01:31.374,0:01:34.625 台を少し左右に引っ張って 0:01:34.625,0:01:39.411 2つの短い直線部分を上下に加えたら[br]どうなるでしょうか? 0:01:39.411,0:01:42.057 球が平らな面で跳ね返り 0:01:42.057,0:01:44.580 台全体を動き始めることが分かります 0:01:44.580,0:01:48.025 球はビリヤードの動きの法則に[br]依然として従っていますが 0:01:48.025,0:01:52.943 その結果が描く軌道は[br]模様としては認識できなくなります 0:01:52.943,0:01:55.300 システムの振舞いを決める[br]制約条件に 0:01:55.300,0:01:57.075 ほんのわずかな変更を加えるだけで 0:01:57.075,0:01:58.622 ビリヤードの動きは 0:01:58.622,0:02:01.750 安定的で予想できるものから 0:02:01.750,0:02:03.983 とても不安定で 0:02:03.983,0:02:08.144 数学者達が「カオス的運動」と[br]呼ぶものに変わったのです 0:02:08.144,0:02:11.765 台に直線の辺を加えることが[br]転換点になり 0:02:11.765,0:02:16.098 システムの働きを[br]規則的なものから 0:02:16.098,0:02:20.200 カオス的な別のものに変えます 0:02:20.200,0:02:24.249 では この単純な例は[br]ずっと複雑な地球の気候に関して 0:02:24.249,0:02:26.919 どのような意味をもたらすのでしょうか? 0:02:26.919,0:02:30.530 台の形は 二酸化炭素の量や 0:02:30.530,0:02:32.821 地球の平均気温と考えられます 0:02:32.821,0:02:35.117 球の動きや気候の振舞いなど 0:02:35.117,0:02:38.893 システムの結果に影響を与える[br]制約条件です 0:02:38.893,0:02:41.053 過去1万年間の間 0:02:41.053,0:02:44.533 大気中の二酸化炭素濃度は[br]270ppmでほぼ一定でした 0:02:44.533,0:02:50.594 気候の変化は比較的[br]規則的かつ自己安定的で 0:02:50.594,0:02:53.505 人類の生活にとっても[br]心地のよいのもでした 0:02:53.505,0:02:57.071 しかし二酸化炭素濃度は現在400ppmで 0:02:57.071,0:03:01.031 今後100年間で[br]500から800ppmまで 0:03:01.031,0:03:04.140 上昇すると予想されています[br]その結果 私たちは転換点に達し 0:03:04.140,0:03:07.736 地球の平均気温のわずかな変化が 0:03:07.736,0:03:11.448 テーブルの形を変えるのと同じように 0:03:11.448,0:03:14.275 気候に危険な変化を起こさせるかもしれません 0:03:14.275,0:03:16.414 強く激しい気象事象を伴い 0:03:16.414,0:03:21.672 予測が難しく 何よりも[br]人類の生活は不快なものになります 0:03:21.672,0:03:25.433 数学者が詳細に研究している[br]この仮想的モデルは 0:03:25.433,0:03:28.165 実際の状況とは異なるかもしれませんが 0:03:28.165,0:03:31.064 現実世界のもっと難しい問題を[br]理解するための 0:03:31.064,0:03:36.159 考え方の枠組みを与えてくれます 0:03:36.159,0:03:38.993 このケースでは[br]制約条件における小さな変化が 0:03:38.993,0:03:42.415 システム全体に大きな影響を[br]与えるということを理解すると 0:03:42.415,0:03:46.294 今すぐ五感で感じることが難しい[br]将来の危険の予想についても 0:03:46.294,0:03:49.739 もっと重大なことと考えるように[br]なるでしょう 0:03:49.739,0:03:54.599 実際に結果が見えたときには[br]もう遅すぎるかもしれないからです