1 00:00:01,029 --> 00:00:03,000 お名前は何と言いますか (観客)ハワード 2 00:00:03,000 --> 00:00:07,610 ハワード? 私の席はハワードの隣でした 見てのとおり 知り合いではありません 3 00:00:07,610 --> 00:00:10,000 彼は席を立ちますが みなさん 後に続かないように 4 00:00:10,000 --> 00:00:13,585 (笑) 5 00:00:17,000 --> 00:00:19,200 いや素晴らしいパフォーマンスでした 6 00:00:19,200 --> 00:00:23,291 あやうくこれからの話を きれいさっぱり忘れるところでした 7 00:00:23,291 --> 00:00:29,000 まあ話をはじめましょう 私の興味対象はー 8 00:00:29,000 --> 00:00:33,483 今見たものとある意味似ていますが 体を使ったりはしません(笑) 9 00:00:34,518 --> 00:00:37,927 人間の身体によって 10 00:00:37,927 --> 00:00:44,000 時間や空間の認識を発展させる代わりに 11 00:00:44,000 --> 00:00:46,111 私は 無機的な世界で 12 00:00:46,727 --> 00:00:50,738 いわば不活性物質に取り組み それを体系化していきます 13 00:00:50,942 --> 00:00:55,773 建築家の仕事は ダンス集団などとは少し違います 14 00:00:56,000 --> 00:00:59,517 最後に残る違いは 建築家は 2つの世界の交渉を行うということです 15 00:00:59,750 --> 00:01:02,420 一方は私的な世界 概念的で 16 00:01:02,420 --> 00:01:08,320 アイデアと憧れと革新に満ちた世界 17 00:01:08,320 --> 00:01:15,000 もう一方は外的世界 制約や否定的意見に満ちた世界 18 00:01:15,000 --> 00:01:18,000 これまでの仕事の経験を通じて 19 00:01:18,000 --> 00:01:21,000 絶え間なく存在したのは “無理だ”という声でした 20 00:01:21,000 --> 00:01:23,000 私が今まで行ったことや 試みてきたことにかかわらず 21 00:01:23,000 --> 00:01:25,100 不可能だと 皆に言われました 22 00:01:25,181 --> 00:01:28,390 そのような声は 現実世界の至る所に隈なく存在し 23 00:01:28,390 --> 00:01:31,000 アイデアの前に立ちはだかります 24 00:01:31,000 --> 00:01:36,000 建築家とは 右と左とをどうにか 折り合わせる仕事です 25 00:01:36,000 --> 00:01:40,169 アイデアが生ずる私的空間と 外の世界の間に立ち 26 00:01:40,169 --> 00:01:44,000 アイデアを理解させる仕事です 27 00:01:44,000 --> 00:01:48,690 議論は どこからでも始められます なぜなら私が思うに このプロセスは 28 00:01:48,880 --> 00:01:52,000 午前中の他の講演のアイデアとは 大きく異なっているからです 29 00:01:52,000 --> 00:01:56,000 非常に明快で真っすぐなアイデアでした 30 00:01:56,000 --> 00:01:58,000 ハワードのアイデアもそうです 31 00:01:58,362 --> 00:02:02,528 しかし 私の考える建築の創造の過程 つまり設計の過程は 32 00:02:02,528 --> 00:02:06,000 非常に遠回りで 迷宮のようです 33 00:02:06,426 --> 00:02:10,000 カルビーノの考えによれば 2点の間を最速で結ぶのは 34 00:02:10,000 --> 00:02:12,342 直線ではなく 回り道だと言います 35 00:02:12,460 --> 00:02:14,193 私の人生は まさに回り道の一部です 36 00:02:14,193 --> 00:02:15,730 まずは 物事を体系化するための 37 00:02:15,730 --> 00:02:17,770 シンプルな考え方から話します 38 00:02:17,770 --> 00:02:22,000 基本的に 我々が目指すのは 世界に一貫性を与えることです 39 00:02:22,000 --> 00:02:24,000 我々は物理的な建物を作ります 40 00:02:24,086 --> 00:02:27,000 建物は都市を形成する 付加過程の一部となります 41 00:02:27,150 --> 00:02:32,000 都市には その形成過程と誕生した時代が 42 00:02:32,000 --> 00:02:34,000 反映されるのです 43 00:02:34,190 --> 00:02:38,186 私が目指すものは 人間の世界観を 44 00:02:38,286 --> 00:02:44,373 生成的素材として有用な領域と 統合することです 45 00:02:45,094 --> 00:02:48,408 私は建築家として常々 46 00:02:48,464 --> 00:02:51,900 生成過程に興味を持ってきました  それこそが建築設計です 47 00:02:51,900 --> 00:02:54,000 生成過程は 先験的な知識に基づくものではありません 48 00:02:54,000 --> 00:02:58,230 私の脳内で何かを考え出し “これが完成図です”などと 49 00:02:58,295 --> 00:03:00,650 言うことには 私は一切興味ありません 50 00:03:00,650 --> 00:03:03,000 エバンの講演の紹介の時だったか 51 00:03:03,000 --> 00:03:05,000 建築家とは何かという話で 52 00:03:05,000 --> 00:03:07,410 誰かが言ったようですが ビジネスや経営の世界の住人が 53 00:03:07,410 --> 00:03:09,664 建築家のところにやって来ては 54 00:03:09,664 --> 00:03:13,248 最終的にこんな外観を希望しますって? いやはや 55 00:03:13,248 --> 00:03:15,000 私の考える建築は そんな風にはできません 56 00:03:15,000 --> 00:03:17,000 そのようなものに 一切興味はありません 57 00:03:17,000 --> 00:03:19,000 建築は 何かのはじまりです 58 00:03:19,060 --> 00:03:23,270 第一原理 つまり 絶対的な原理に関わることを怠り 59 00:03:23,270 --> 00:03:28,000 生成過程の始まりを抑えなければ ケーキの装飾と変わりありません 60 00:03:28,000 --> 00:03:31,000 別にケーキ装飾やその職人に 恨みはありませんよ 61 00:03:31,000 --> 00:03:33,000 ケーキの装飾に関わる人が いらっしゃったら 62 00:03:33,000 --> 00:03:35,000 私は興味がないという話です (笑) 63 00:03:35,000 --> 00:03:37,394 さて 物体を形成するとき 64 00:03:37,394 --> 00:03:43,000 つまり形態を与え具体化する際に 65 00:03:43,000 --> 00:03:46,000 その出発点は 人は物事をいかに 体系化するのかという概念です 66 00:03:46,000 --> 00:03:51,380 私が30年間 興味を抱き続けているのは こうした複雑な事象の連なりです 67 00:03:51,600 --> 00:03:54,220 つまり まず様々な 内外の圧力が加えられ 68 00:03:54,220 --> 00:03:58,470 その結果辿り着いた最終結果から 本質を理解した上で 69 00:03:58,470 --> 00:04:00,412 建物として体現するという 過程です 70 00:04:01,620 --> 00:04:06,703 私的なものである創案と いつも私にとって重要である現実世界は 71 00:04:06,703 --> 00:04:09,089 絶えず関係し合っています 72 00:04:09,159 --> 00:04:14,000 このプロジェクトは10年前に コペンハーゲンの展示会に出品したもので 73 00:04:14,000 --> 00:04:16,030 海馬の形状モデルです 74 00:04:16,497 --> 00:04:19,000 海馬とは人間の脳内で 短期記憶を留めておく領域です 75 00:04:19,000 --> 00:04:23,000 図面一式は 想像上の記録文書です 76 00:04:23,000 --> 00:04:28,760 つまり海馬の経験を 図面を通して体系化しようとしたのです 77 00:04:28,760 --> 00:04:32,160 1キロメートルの歩行ということを 切り口にしました 78 00:04:32,500 --> 00:04:35,000 1キロ歩くごとに これはという所望の物体を観察し 79 00:04:35,000 --> 00:04:37,000 それを図面に書き込むのです 80 00:04:37,000 --> 00:04:40,000 つまり 物事の体系化にあたっては 連続した一貫性がなくとも 81 00:04:40,000 --> 00:04:46,000 不連続でランダムな基礎の上でも 体系化が可能だという考え方です 82 00:04:46,050 --> 00:04:49,000 私はこのランダムさという概念に 非常に興味があります 83 00:04:49,000 --> 00:04:51,000 ランダムさが 建築作品を生みます 84 00:04:51,000 --> 00:04:53,000 また 付加過程という 都市の概念にも 85 00:04:53,000 --> 00:04:55,000 結びつくことも間違いありません 86 00:04:55,000 --> 00:04:58,000 このプロジェクトでは 多様な体系化のアイデアを得ました 87 00:04:58,000 --> 00:05:01,120 そして建物に対する捉え方も 広がりました 88 00:05:01,120 --> 00:05:05,080 建物とは 膨大な数のシステムを束ねて 合意に至るものです 89 00:05:05,433 --> 00:05:08,170 作品を作るのは決して たった1つのシステムではありません 90 00:05:08,170 --> 00:05:09,410 関係性が作るのです 91 00:05:09,410 --> 00:05:15,250 システム間に働く動的な力が 変形させ 考案させ 建築を生み出すのです 92 00:05:15,250 --> 00:05:18,410 これなしに 建築は存在し得ません 93 00:05:20,000 --> 00:05:23,598 システムを特定し グルーピングすることも できるかもしれません 94 00:05:23,598 --> 00:05:27,683 現代では コンピュータ技術や 短納期の試作技術を適用できるので 95 00:05:27,683 --> 00:05:31,001 これらのシステムを理解しそれに応じて 96 00:05:31,001 --> 00:05:38,240 多様な機能の要求に沿って 調整する仕組みを活用できます 97 00:05:38,240 --> 00:05:40,280 これが 我々のやっている 仕事全てなのです 98 00:05:40,280 --> 00:05:43,000 我々は 人間活動を受け入れるための 空間を作っています 99 00:05:43,000 --> 00:05:46,000 私が興味を惹かれるのは 見かけを整えることではなく 100 00:05:46,000 --> 00:05:51,000 空間の関係性です なぜなら 関係性によって 活動は強化されるのです 101 00:05:52,000 --> 00:05:55,000 これは都市づくりのアイデアにも 直接つながっています 102 00:05:55,000 --> 00:05:57,000 先日終了した ペナンのプロジェクトです 103 00:05:57,000 --> 00:06:01,000 非常に大規模な都市プロジェクトで 先に述べたプロセスから生まれたものです 104 00:06:01,000 --> 00:06:05,220 つまり 都市を生み出すための 膨大な数の様々な力の 結果なのです 105 00:06:07,000 --> 00:06:09,000 さてこれも途方もないコンペでしたが 106 00:06:09,000 --> 00:06:11,000 敷地はニューヨークのハドソン川沿いです 107 00:06:11,000 --> 00:06:14,000 3年前に依頼を受けて設計し 同様のプロセスを適用しました 108 00:06:14,000 --> 00:06:17,000 この作品は ひとつの方法論を 109 00:06:17,000 --> 00:06:23,000 都市の形成に適用することへの 可能性を示しています 110 00:06:23,000 --> 00:06:26,000 つまり 都市が集合体として ますます大規模化していく場合に 111 00:06:26,000 --> 00:06:31,000 その設計に関わる 重大かつ複雑な問題を 112 00:06:31,000 --> 00:06:34,470 多数の力という概念を用いて 処理するのです 113 00:06:34,470 --> 00:06:36,469 なぜなら これは今日の 課題の一つなのです 114 00:06:36,469 --> 00:06:41,000 経済上の集合体が 開発の集合体化を推進し 115 00:06:41,000 --> 00:06:43,000 集合体が大きくなるほど 116 00:06:43,000 --> 00:06:48,250 問題解決のために より複雑な探求の過程が要求されます 117 00:06:48,510 --> 00:06:51,000 これは次に オリンピック村の プロジェクトへつながりました 118 00:06:51,000 --> 00:06:54,000 月曜にニューヨークで IOC相手にプレゼンしました 119 00:06:54,000 --> 00:06:58,000 コンペに勝ったのは たしか9ヶ月ほど前です 120 00:06:58,000 --> 00:07:01,963 非常に複雑かつ大規模な 有機体を開発するために 121 00:07:01,963 --> 00:07:06,000 同じプロセスを適用しました 122 00:07:06,000 --> 00:07:09,000 また幅広い戦略も利用しました 123 00:07:09,000 --> 00:07:14,000 ここでは25万平方メートルの敷地のうち わずか6万平方メートルを使用し 124 00:07:14,000 --> 00:07:18,286 残り19万平方メートルは公園とし オリンピック終了後も残される予定です 125 00:07:18,286 --> 00:07:22,000 クイーンズ地区で2番目に大きな 公園ともなるはずです 126 00:07:22,861 --> 00:07:26,000 立地は マンハッタン中心部の ハンターズポイントです 127 00:07:26,000 --> 00:07:30,000 都市づくりの アイデアの幅が広がると 128 00:07:30,000 --> 00:07:33,000 建築も影響を受け始めます 129 00:07:33,000 --> 00:07:36,000 建物自体が その計画の幅を広げ 130 00:07:36,000 --> 00:07:39,000 我々を導いてくれるようになります 131 00:07:41,000 --> 00:07:43,080 私にとって建築とは 132 00:07:43,080 --> 00:07:47,000 まさにあらゆる場所から出現する 膨大な数の力を 研究することです 133 00:07:47,616 --> 00:07:51,630 だからこの議論は どの地点からでも始められるのです 134 00:07:51,630 --> 00:07:54,000 ここまでいくつかの観点を 紹介してきました 135 00:07:54,136 --> 00:08:02,000 また 建築が接する 136 00:08:02,000 --> 00:08:03,000 広大な領域にも興味があります 137 00:08:03,000 --> 00:08:08,000 知識ベースという意味では 建築はまさに すべてに繋がっています 138 00:08:08,147 --> 00:08:12,750 何らかの形で結合組織が 伸びていない領域など存在しません 139 00:08:12,750 --> 00:08:16,648 これはジム・ダインの作品です 存在の不在とか そのようなものです 140 00:08:16,648 --> 00:08:20,010 表皮としての衣服であり 人物は不在です 141 00:08:20,210 --> 00:08:24,000 作品の表面という概念について ここからあるアイデアが生まれました 142 00:08:24,000 --> 00:08:29,000 あるプロジェクトにそのアイデアを使い 表面に切り込んでいくことに成功しました 143 00:08:29,000 --> 00:08:33,000 造形に関するアイデアで 表面を折りたたむことで 144 00:08:33,000 --> 00:08:36,000 きわめて複雑な空間を作るのです 145 00:08:36,000 --> 00:08:39,520 空間の関係性という アイデアです 146 00:08:39,520 --> 00:08:42,682 画像を折り曲げることで 空間が生まれます 147 00:08:42,682 --> 00:08:47,640 明快な画像や形状と 空間との間に 弁証法的な対立が発生し 148 00:08:47,776 --> 00:08:52,000 両者の対話の中から 空間の複雑性が生じます 149 00:08:52,091 --> 00:08:55,300 このようにして 我々は 仕事や創造の仕方についての全概念を 150 00:08:55,300 --> 00:08:57,000 再考させられました 151 00:08:57,000 --> 00:09:01,400 そして 服飾デザインに近い 考え方に至りました 152 00:09:01,400 --> 00:09:06,000 表面を平面上に展開してから まとめ直し 空間上の結びつきを生み出すのです 153 00:09:06,000 --> 00:09:09,000 韓国の 最初のプロトタイプです 154 00:09:09,000 --> 00:09:12,000 ここで扱っているのは 生き生きと振る舞う外皮であり 155 00:09:12,000 --> 00:09:15,000 布地と同じ特徴を もつものです 156 00:09:15,000 --> 00:09:20,000 素材としての独自性があり 透光性で 多孔質です 157 00:09:20,000 --> 00:09:24,000 我々は 建物の外皮の定義について 全く違った概念を得ることができました 158 00:09:24,000 --> 00:09:26,000 すぐに別の作品にも 適用しました 159 00:09:26,000 --> 00:09:29,000 ロサンゼルスの カルトランスビルです 160 00:09:29,000 --> 00:09:33,000 見えているのは外皮で 建物とは別物です 161 00:09:33,000 --> 00:09:35,000 やはり きわめて単純な概念です 162 00:09:35,000 --> 00:09:37,000 建物を目にする際 たいていは外装が見え 163 00:09:37,000 --> 00:09:39,000 それが建物本体でもあります 164 00:09:39,000 --> 00:09:41,000 我々はそれを 唐突に引き剥がしました 165 00:09:41,000 --> 00:09:43,000 外皮は本体から 切り離されています 166 00:09:43,000 --> 00:09:45,000 これにより性能基準の幅が広がります 167 00:09:45,000 --> 00:09:47,000 これについては また後で話しましょう 168 00:09:47,000 --> 00:09:49,000 ご覧の外皮は 本体とは分離しつつ 169 00:09:49,000 --> 00:09:51,000 垂れ下がって 本体を覆っています 170 00:09:51,000 --> 00:09:54,000 建物本体について 話しましょう 171 00:09:54,000 --> 00:09:57,000 ロサンゼルス中心部 市庁舎の真向かいにあります 172 00:09:57,000 --> 00:10:00,000 建物の動きが 大地の一部を拾い上げて 建物が起き上がるようです 173 00:10:00,000 --> 00:10:02,000 建物は標識の役目も果たします 174 00:10:02,000 --> 00:10:04,000 つまりロサンゼルスの 遺物とも言えるーー 175 00:10:04,000 --> 00:10:07,000 二次元や三次元の 標識の一部となるのです 176 00:10:08,750 --> 00:10:12,000 人々は この作品の中を 通り抜けられるようになっています 177 00:10:12,000 --> 00:10:16,000 透明性をもつことで 理解の助けになると私は考えます 178 00:10:16,000 --> 00:10:18,000 どんな建物であれ 一番面白いのは 179 00:10:18,000 --> 00:10:21,000 実際に造り上げる建設プロセスです 180 00:10:21,000 --> 00:10:26,000 おそらく建築家の仕事のうち 最も強烈な領域です 181 00:10:26,000 --> 00:10:28,000 誰のものでもない領域です 182 00:10:28,000 --> 00:10:30,540 なぜなら 建築が最も面白いのは 183 00:10:30,540 --> 00:10:33,000 複数のメカニズムが 機能性から切り離された時です 184 00:10:33,000 --> 00:10:35,000 建設段階では それが可能になるのです 185 00:10:35,000 --> 00:10:38,000 さて次に 外皮は 別の素材へ変貌を始めます 186 00:10:38,000 --> 00:10:40,000 この建物では 照明を建築素材として使用しました 187 00:10:40,000 --> 00:10:42,000 ニューヨークの キース・ソニアとの協同です 188 00:10:42,000 --> 00:10:44,000 広い屋外空間が 189 00:10:44,000 --> 00:10:46,800 ロサンゼルスの地で 実現されました 190 00:10:46,800 --> 00:10:51,000 これは 渋谷、メキシコシティ、 サンパウロ等で見られるような 191 00:10:51,030 --> 00:10:56,000 現代の都市環境を そっくり反映するもので 192 00:10:56,000 --> 00:11:00,000 従来より長期的スパンでの 都市活性化という考え方を持ちます 193 00:11:00,000 --> 00:11:02,000 このプロジェクトにおいて その考え方は 194 00:11:02,000 --> 00:11:05,000 都市が目指すものという概念の 大部分を占めています 195 00:11:06,533 --> 00:11:10,000 この箇所も全て 同様に透明性を促進しています 196 00:11:10,000 --> 00:11:17,000 この写真が 媒体としての照明利用を 上手く表現しているかもしれません 197 00:11:17,000 --> 00:11:20,000 照明はまさに 建築素材になっています 198 00:11:20,000 --> 00:11:24,000 瞬時に 照明の幅は広がり 領域となりました 199 00:11:24,000 --> 00:11:28,000 サンフランシスコのビルの 初期スケッチです 200 00:11:28,000 --> 00:11:29,736 私の現時点の理解では 201 00:11:29,736 --> 00:11:33,000 外皮とは 地面とタワーの間で 推移する存在となり得ます 202 00:11:33,000 --> 00:11:36,000 このビルは 現在建設中ですが 203 00:11:36,000 --> 00:11:40,000 広く物議を醸すことになりました 204 00:11:40,000 --> 00:11:42,000 それは性能に関わるもので 205 00:11:42,000 --> 00:11:44,240 米国で初となる 空調不使用を目指し 206 00:11:44,240 --> 00:11:47,000 いや 空調設備なしとまでは言えませんが ハイブリッドの建物です 207 00:11:47,000 --> 00:11:49,000 純粋な建物をめざしましたが そこまでは実現しませんでした 208 00:11:49,000 --> 00:11:52,000 実際はハイブリッドの方が 面白いだろうに 妙なものです 209 00:11:52,000 --> 00:11:54,000 我々は タワー部分には 空調機器を配置しませんでした 210 00:11:54,000 --> 00:11:56,000 低層部に少しだけ 残されています 211 00:11:56,000 --> 00:11:58,000 外皮は流体の作用で動きます 212 00:11:58,000 --> 00:12:02,000 無風の際は ベンチュリ効果で 空気の流れを作ります 213 00:12:02,000 --> 00:12:05,000 常時調整がなされます だから空調は設置しませんでした 214 00:12:05,000 --> 00:12:09,000 莫大な差です 年間50万ドルの差が生じます 215 00:12:09,000 --> 00:12:11,000 こんなビルが10棟もあれば 216 00:12:11,000 --> 00:12:13,000 広さ8万平方メートル程度ですが 217 00:12:13,000 --> 00:12:16,000 差異が サウサリート市の 電力に相当します 218 00:12:16,000 --> 00:12:18,770 ご覧の通り 219 00:12:18,770 --> 00:12:24,000 プロジェクトのスケールが拡大するほど 直面する問題も増えます 220 00:12:24,040 --> 00:12:29,320 すると 性能という面では 可能性が拡大します 221 00:12:30,290 --> 00:12:32,000 さて 建築設計の出発点は 他にもあります 222 00:12:32,000 --> 00:12:34,000 より生物学的な意味で 223 00:12:34,000 --> 00:12:38,000 建物と地面との関係性を 捉えることも可能です 224 00:12:38,000 --> 00:12:41,000 私のような 60年代後半に 学生だった世代の取り組みは 225 00:12:41,000 --> 00:12:43,000 間違いなく ひとつの流れを作りました 226 00:12:43,000 --> 00:12:49,000 建築だけに注力し 建築領域だけを見るという 227 00:12:49,000 --> 00:12:51,000 内向きな考え方から脱したのです 228 00:12:51,000 --> 00:12:53,000 映画や芸術分野の潮流に 229 00:12:53,000 --> 00:12:55,000 影響を受けた世代でもあります 230 00:12:55,000 --> 00:12:57,000 マイケル・ハイザーの作品です 231 00:12:57,000 --> 00:13:01,000 写真 そして現地で これを見た瞬間 232 00:13:01,000 --> 00:13:05,000 私の考え方はすっかり 変えられてしまいました 233 00:13:05,000 --> 00:13:07,360 実に建物とは 地表面を拡張したものになり得ると 234 00:13:07,360 --> 00:13:09,633 そう理解したのです 235 00:13:09,633 --> 00:13:14,310 建物の敷地に対する 基本的な考え方が変わりました 236 00:13:14,310 --> 00:13:17,209 彼はおそらく ナスカの地上絵を見たのでしょう 237 00:13:17,209 --> 00:13:24,000 700年前の 4キロに渡る 素晴らしい大地の彫刻です 238 00:13:24,000 --> 00:13:26,000 とにかく偉大としか 言いようがない 239 00:13:26,000 --> 00:13:30,000 こうして我々のデザイン手法や 仕事の進め方は 完全に再考させられました 240 00:13:30,000 --> 00:13:33,000 ポモナ市の高校の 最初のスケッチ図です 241 00:13:33,000 --> 00:13:37,000 いや 形状やコンセプトや アイデアを示したものと言うべきか 242 00:13:37,000 --> 00:13:41,000 地球を 占有使用できる形状に 作り変えました 243 00:13:41,000 --> 00:13:46,000 高校の機能を果たす 2万平方メートルの物体が 244 00:13:46,000 --> 00:13:48,000 地表面に置かれました 245 00:13:48,000 --> 00:13:51,460 次にこれを発展させ 形状を作りました 作品の片鱗が見えました 246 00:13:51,460 --> 00:13:55,300 それからさらに 構造学的な面を解決しました 247 00:13:55,300 --> 00:13:57,000 そして学校ができました 248 00:13:57,000 --> 00:13:58,530 もちろん我々は 249 00:13:58,530 --> 00:14:01,000 教育への参加にも 関心があります 250 00:14:01,000 --> 00:14:03,320 単に機能を羅列しただけの 建物づくりには 251 00:14:03,320 --> 00:14:05,000 私は一切興味がありません 252 00:14:05,000 --> 00:14:06,690 私が興味を抱いているのは 253 00:14:06,690 --> 00:14:10,000 このアイデアが 若者の教育過程に いかに寄与するかです 254 00:14:10,000 --> 00:14:12,000 そのため 一種の問いかけも要求されます 255 00:14:12,000 --> 00:14:14,000 建築はシステムであり 彫刻制作ではない 256 00:14:14,000 --> 00:14:17,000 このアイデアについては 最初に述べた通りです 257 00:14:17,000 --> 00:14:20,000 つまりは 幅広く一貫した 論理に関わるものです 258 00:14:20,000 --> 00:14:24,000 その論理は 建物が使用に供された時に 理解されるでしょう 259 00:14:24,000 --> 00:14:26,000 ここには 260 00:14:26,000 --> 00:14:29,000 変わった方法で土地に結びついた建物という 明白な概念があります 261 00:14:29,000 --> 00:14:31,000 少なくとも その概念を作ろうと試みました 262 00:14:31,000 --> 00:14:34,000 私は 訓示的な問題解決手法に 興味を引かれたのです 263 00:14:34,000 --> 00:14:36,000 理解下さる方もいるでしょう 264 00:14:36,000 --> 00:14:38,000 次はロサンゼルスで完成した ばかりの作品 265 00:14:38,000 --> 00:14:42,360 同じアイデアを一部採用しています 景観をアイデアの主要部とします 266 00:14:42,360 --> 00:14:45,000 次は 進行中のプロジェクト 267 00:14:45,000 --> 00:14:48,000 アメリカ海洋大気庁 (NOAA)本部です 268 00:14:48,000 --> 00:14:50,000 首都近郊の メリーランド州にあります 269 00:14:50,000 --> 00:14:52,257 こういう衛星写真を撮っています 270 00:14:52,257 --> 00:14:56,000 人工衛星22基を所有し 150キロ前後の高度を飛び回っています 271 00:14:56,000 --> 00:14:58,000 赤色部分が敷地です 272 00:14:58,000 --> 00:15:01,000 この中に建築家がいるかは 分かりませんが 273 00:15:01,000 --> 00:15:04,000 これはロージエの小屋です 始原の建築の概念です 274 00:15:04,000 --> 00:15:06,000 提唱されてから 結構な年月を経ていますが 275 00:15:06,000 --> 00:15:08,000 私は建築家として まさにこれを建てたかったのです 276 00:15:08,000 --> 00:15:12,000 NOAAは 世界の 管理人役を自認していますが 277 00:15:12,000 --> 00:15:14,330 我々は NOAA の衛星から 3万平方メートルのその敷地を 278 00:15:14,330 --> 00:15:16,000 見下ろして 欲しかったのです 279 00:15:16,000 --> 00:15:19,000 また痕跡を何も残さず 緑地のままとしたかったのです 280 00:15:19,000 --> 00:15:21,000 実際は 現在ここに 野球場が3つあり 281 00:15:21,000 --> 00:15:22,000 今後も残るでしょう 282 00:15:22,000 --> 00:15:24,000 大きな構造を1つ 南北方向に置きました 283 00:15:24,000 --> 00:15:27,000 アンテナを支える部分が 側面から突出しています 284 00:15:27,000 --> 00:15:30,580 この下部に プロセスや打ち上げを司る管制室があり 285 00:15:30,580 --> 00:15:34,000 その他の空間はすべて 直下の地中に埋まっています 286 00:15:34,000 --> 00:15:36,120 これは空母の イメージなのです 287 00:15:36,120 --> 00:15:40,000 円錐形のパラボラアンテナの視野に 規定された形態です 288 00:15:40,000 --> 00:15:44,000 建物本体は 下部に占有空間が広がり 289 00:15:44,000 --> 00:15:46,000 一連の中庭で区切られた 290 00:15:46,000 --> 00:15:49,000 2万平方メートルのひと続きの 水平空間が広がっています 291 00:15:49,000 --> 00:15:52,000 管理事務などのオフィスになっています 292 00:15:52,000 --> 00:15:55,882 これは次に 更に大規模な プロジェクトにつながりました 293 00:15:55,882 --> 00:15:59,000 景観と建物の相互作用 という概念は 294 00:15:59,000 --> 00:16:01,000 この作品では 結合組織となりました 295 00:16:01,000 --> 00:16:07,000 4年前のもので 首都ベルリンでの 欧州中央銀行のコンペです 296 00:16:07,000 --> 00:16:09,000 先日終了し 297 00:16:09,000 --> 00:16:12,000 実はウィーンのコープ・ ヒンメルブラウが勝ちましたが 298 00:16:12,000 --> 00:16:18,000 我々の案では 建物は分割されて 複数の景観要素に分かれ 299 00:16:18,000 --> 00:16:24,055 河沿いの公園から伸びる 結合組織の一部をなしています 300 00:16:24,085 --> 00:16:30,000 建物自らが結合繊維になる というアイデアを発展させました 301 00:16:30,440 --> 00:16:35,000 社会、文化、景観、レクリエーションという 要素が都市を織り成すのです 302 00:16:35,000 --> 00:16:37,360 建物は もはや自立した存在とは 見なされません 303 00:16:37,360 --> 00:16:39,000 ただ その時その都市その場所に 304 00:16:39,000 --> 00:16:41,000 密接に結合したものなのです 305 00:16:41,000 --> 00:16:45,498 それを強く認識したのがこの作品 オーストリアの銀行です 306 00:16:45,498 --> 00:16:48,310 結合の類型というアイデアを ここでも採用しました 307 00:16:48,310 --> 00:16:51,000 従来の建築と形態とを 複合させたのです 308 00:16:51,000 --> 00:16:54,000 形態学とは 土地開発における 関係性のアイデアです 309 00:16:54,000 --> 00:16:58,000 この複合物は 部分的に見えている都市の その一片であり 310 00:16:58,000 --> 00:17:00,000 このように ただただ増大していきます 311 00:17:00,000 --> 00:17:03,000 土地の動きのアイデアとは  地面を持ち上げて使用するという 312 00:17:03,000 --> 00:17:04,000 単純なものですが 313 00:17:04,000 --> 00:17:07,854 こうした土地や 他の部分の動きは 更に活動的で強烈です 314 00:17:07,854 --> 00:17:10,190 強烈さについて話しましょう 315 00:17:10,190 --> 00:17:13,000 発生する事象同士の衝突 という意味で言えば 316 00:17:13,000 --> 00:17:15,520 強烈さとは システム間の統合と関連します 317 00:17:15,520 --> 00:17:19,000 その一部は地中へ 一部は逆に上方へ配されます 318 00:17:19,000 --> 00:17:22,710 人は建物へ入ると 地面から浮きあがり 319 00:17:22,710 --> 00:17:24,905 アイデアの一部となります 320 00:17:24,905 --> 00:17:27,630 そして 建物の外縁にある外皮が 321 00:17:27,630 --> 00:17:30,561 建物にダイナミックな動きを与えます 322 00:17:30,561 --> 00:17:35,000 土地が 地震のように変動し 地理学的に変動するのです 323 00:17:35,000 --> 00:17:38,210 この変動が 事象が起こる空間を生み 324 00:17:38,210 --> 00:17:41,430 空間は複数の場に分けられ その内部が可視化される 325 00:17:41,430 --> 00:17:44,370 そして内部空間は再び 執務空間の透過性を促すのです 326 00:17:44,370 --> 00:17:47,000 これこそが我々の 長年の興味対象です 327 00:17:49,000 --> 00:17:52,000 次はもう少し伝統的な 背景を持った作品です 328 00:17:52,000 --> 00:17:54,000 トロントの大学院生の寮です 329 00:17:54,000 --> 00:17:56,780 この作品で強く扱ったのは 330 00:17:56,780 --> 00:18:00,000 都市への結合組織となる建物の 関係性というものです 331 00:18:00,000 --> 00:18:03,000 基本的アイデアは ゲートウェイです 332 00:18:03,000 --> 00:18:07,000 敷地を分割して 公的空間と私的空間の 両方を建物が占めます 333 00:18:07,000 --> 00:18:11,000 現地写真です 何度も訪れましたが 334 00:18:11,000 --> 00:18:14,000 2キロメートル先からでも 見えるような代物です 335 00:18:14,000 --> 00:18:18,000 この文字は街路の中央まで 突き出しています 336 00:18:18,000 --> 00:18:20,000 全体的な概念は 公的に関与させること 337 00:18:20,000 --> 00:18:25,000 都市の公的組織の一部として 建物を関与させることでした 338 00:18:26,000 --> 00:18:30,000 最後です 非常に興味深い 裁判所のプロジェクトです 339 00:18:30,000 --> 00:18:33,000 これはご存知 アメリカ合衆国最高裁判所です 340 00:18:33,000 --> 00:18:37,000 私は現在 オレゴン州裁判長の マイケル・ホーガンと検討を進めています 341 00:18:37,000 --> 00:18:41,000 相手との関係性や 裁判所についての先方の認識と 342 00:18:41,000 --> 00:18:45,000 自らの価値観との間で せめぎ合いが起こります 343 00:18:45,000 --> 00:18:49,000 この交渉なくしては 前に進めないのです 344 00:18:49,000 --> 00:18:52,000 私は彼に コルビュジエの サヴォワ邸を見せました 345 00:18:52,000 --> 00:18:55,000 1928年 モダニズム建築 初期のものです 346 00:18:55,000 --> 00:18:58,000 それからこの写真も見せました 347 00:18:58,000 --> 00:19:02,000 ここがプロジェクトの はじまりなのです 348 00:19:02,000 --> 00:19:07,000 私は現場で起こる現象に 興味があるのです 349 00:19:07,000 --> 00:19:11,000 我々は実際 現実を建設することを 論じているのです 350 00:19:11,000 --> 00:19:13,000 私という人間が 強く興味を惹かれるのは 351 00:19:13,000 --> 00:19:16,510 造られた現実の中に存在する 自然というものです 352 00:19:16,510 --> 00:19:19,850 なぜならもはや 自然など存在しません 消滅したのです 353 00:19:19,850 --> 00:19:22,000 自然とは19世紀の考え方です いいですか 354 00:19:22,000 --> 00:19:25,000 今日 自然とは文化的殿堂に すぎないのです 355 00:19:25,000 --> 00:19:28,170 人間が自然を造り 自然というアイデアを造るのです 356 00:19:28,170 --> 00:19:31,000 この男は カリフォルニアの知事 シュワルツェネッガーです 357 00:19:31,000 --> 00:19:36,000 驚くなかれ ホーガン判事とは コナンの映画の話もしました 358 00:19:36,000 --> 00:19:40,000 そして我々の住む 法律と芸術と建築の世界から 359 00:19:40,000 --> 00:19:42,000 全く異なる世界へ 話は発展していき 360 00:19:42,000 --> 00:19:45,060 実にいろいろな話をしました 361 00:19:45,060 --> 00:19:49,000 我々の仕事に対する考え方  仕事のダイナミクス 仕事の原動力など 362 00:19:49,000 --> 00:19:52,000 これが裁判所のプロジェクトに つながりました 363 00:19:52,000 --> 00:19:55,000 この裁判所は確実に 伝統的裁判所の要素と 364 00:19:55,000 --> 00:19:58,000 伝統そのものとの間の 交渉の結果です 365 00:19:58,000 --> 00:20:00,000 本家の連邦裁判所と 全く同じ長さの階段や 366 00:20:00,000 --> 00:20:03,000 ルネサンス期に使用された装置 ピアノ・ノビーレがあります 367 00:20:03,000 --> 00:20:05,030 裁判所はこのような造りで 368 00:20:05,030 --> 00:20:10,000 外皮は 田舎風の石積みを模した 層状のデザインで 369 00:20:10,000 --> 00:20:14,000 憲法の文言が周囲に 散りばめられています 370 00:20:14,000 --> 00:20:15,860 これもまた小さな プロセスの一部です 371 00:20:15,860 --> 00:20:18,000 コミュニティが 基礎の土台を規定しているのです 372 00:20:18,000 --> 00:20:20,000 ありがとうございました 373 00:20:20,000 --> 00:20:23,000 (拍手)