WEBVTT 00:00:01.082 --> 00:00:03.449 今日は皆さんに 00:00:03.769 --> 00:00:06.436 嘘つきと 訴訟と 00:00:06.606 --> 00:00:08.336 笑いの話をします 00:00:08.910 --> 00:00:12.004 ホロコースト否定説について 初めて聞いた時は 00:00:12.004 --> 00:00:13.476 笑ってしまいました 00:00:13.970 --> 00:00:15.882 ホロコーストの「否定」ですって? 00:00:16.187 --> 00:00:19.601 大量虐殺事件の中でも 世界一 記録が充実していて 00:00:19.601 --> 00:00:24.136 悪名高き あのホロコーストを? 00:00:24.846 --> 00:00:27.172 否定して 一体誰が信じるのでしょう? NOTE Paragraph 00:00:28.066 --> 00:00:29.649 考えてみてください 00:00:30.243 --> 00:00:32.522 もしも否定者らが正しいなら 00:00:32.522 --> 00:00:34.992 誤証言していることになるのは 誰でしょうか? 00:00:35.011 --> 00:00:37.827 まず犠牲者が挙げられます 00:00:37.827 --> 00:00:43.128 自らの悲痛な体験を証言した 生存者たちです 00:00:43.721 --> 00:00:46.029 他には誰がいるでしょう? 00:00:46.029 --> 00:00:48.006 目撃者です 00:00:48.006 --> 00:00:52.204 東部戦線の数多ある 街や村や都市の住民が 00:00:52.224 --> 00:00:54.010 目の当たりにしたのは 00:00:54.014 --> 00:00:55.490 隣近所に住む人々が 00:00:55.510 --> 00:00:59.697 老若男女問わず一斉に検挙され 00:00:59.697 --> 00:01:02.451 街の外れまで連行された揚げ句 00:01:02.451 --> 00:01:05.483 銃殺され 野ざらしにされる姿でした 00:01:05.985 --> 00:01:07.328 そしてポーランド人もです 00:01:07.348 --> 00:01:11.899 絶滅収容所近郊の 町や村に住んでいた彼らが 00:01:12.034 --> 00:01:14.354 毎日のように目にしたのは 00:01:14.354 --> 00:01:17.180 大勢の人を詰め込んだ列車が 収容所へと向かい 00:01:17.191 --> 00:01:19.281 空っぽになって戻る光景でした NOTE Paragraph 00:01:19.793 --> 00:01:23.500 しかし 何よりも重大な 誤証言は 誰のものになるでしょう? 00:01:24.005 --> 00:01:25.360 加害者たちです 00:01:26.112 --> 00:01:27.979 こう証言する人々です 00:01:27.979 --> 00:01:30.997 「我々がやった」 「私がやった」 00:01:30.997 --> 00:01:33.210 こんな 一言が続くかもしれません 00:01:33.210 --> 00:01:37.780 「やむを得なかった 強要されたんだ」 00:01:38.032 --> 00:01:40.773 それでも やはり 「私がやった」とは言うのです 00:01:41.938 --> 00:01:43.483 考えてみてください 00:01:43.483 --> 00:01:49.446 第二次世界大戦終結以降の 戦争犯罪裁判において 00:01:49.446 --> 00:01:56.112 「そんな事実はない」と言う 戦争犯罪者は どの国にもいません 00:01:57.078 --> 00:02:01.154 「やらされた」とは言っても 「なかった」とは言いません 00:02:01.654 --> 00:02:03.932 その時は じっくり考えた結果 00:02:04.272 --> 00:02:07.003 この件は放っておくことにしました 00:02:07.043 --> 00:02:10.849 私には研究や 論文や 心配事など もっと大事なことがあるし と 00:02:10.849 --> 00:02:12.373 気持ちを切り替えました NOTE Paragraph 00:02:12.911 --> 00:02:15.724 それから10年と少し経った頃 00:02:15.724 --> 00:02:17.550 2人の偉い学者から― 00:02:17.550 --> 00:02:20.732 ホロコースト研究で最も著名な 歴史学者である2人ですが― 00:02:20.732 --> 00:02:21.903 声をかけられました 00:02:21.903 --> 00:02:23.826 「一緒にコーヒーでもどうだい? 00:02:23.826 --> 00:02:27.239 君にぴったりな 研究課題があるんだが」 00:02:27.457 --> 00:02:31.284 私を見込んで わざわざ 課題を持ってきてくれたことに 00:02:31.284 --> 00:02:32.875 好奇心と自尊心をくすぐられ 00:02:32.875 --> 00:02:35.171 「どんな内容ですか?」と尋ねました 00:02:35.665 --> 00:02:38.684 「ホロコースト否定説だよ」 00:02:39.353 --> 00:02:41.848 笑ったのは これが2度目でした 00:02:42.336 --> 00:02:44.244 ホロコースト否定説? 00:02:44.244 --> 00:02:46.254 地球平面説の類? 00:02:46.254 --> 00:02:48.425 プレスリー生存説みたいな? 00:02:48.501 --> 00:02:50.876 そんなこと言っている人たちを調べろと? 00:02:51.256 --> 00:02:52.633 すると こう言われました 00:02:52.647 --> 00:02:54.980 「そうとも 興味があるんだ 00:02:54.992 --> 00:02:56.638 一体 何者なのか? 00:02:56.638 --> 00:02:58.342 何が目的なのか? 00:02:58.342 --> 00:03:02.036 どうやって人々を 納得させているのか?」 NOTE Paragraph 00:03:02.756 --> 00:03:06.248 そこでこう思いました 教授たちが調べる価値があると考えるなら 00:03:06.248 --> 00:03:09.706 ちょっとの間 気晴らしにやってみよう 00:03:09.706 --> 00:03:12.588 1年か2年 長くてせいぜい4年 00:03:12.588 --> 00:03:15.027 学術界では 数年は「ちょっとの間」ですから NOTE Paragraph 00:03:15.027 --> 00:03:16.079 (笑) NOTE Paragraph 00:03:16.093 --> 00:03:18.464 学者は仕事がとっても遅いのです NOTE Paragraph 00:03:18.464 --> 00:03:20.086 (笑) NOTE Paragraph 00:03:20.100 --> 00:03:21.912 よし 調べてみよう と思い 00:03:21.916 --> 00:03:23.005 研究を始めました 00:03:23.005 --> 00:03:25.998 その結果 いくつかの結論を導き出しました 00:03:25.998 --> 00:03:28.565 その中の2つを 皆さんにお話しします NOTE Paragraph 00:03:28.565 --> 00:03:29.892 1つは 00:03:29.892 --> 00:03:34.909 否定者は「羊の皮を被った狼」である ということです 00:03:35.712 --> 00:03:38.661 本質はナチスやネオナチと同類です 00:03:38.661 --> 00:03:41.928 「ネオ」を付けるかどうかは お任せします 00:03:42.786 --> 00:03:45.113 ただ 見た限りでは 00:03:45.113 --> 00:03:49.853 ナチス親衛隊のような制服を 着ているわけでも 00:03:49.853 --> 00:03:53.028 壁に「かぎ十字」があるわけでもなく 00:03:53.028 --> 00:03:55.125 ナチス式敬礼「ジークハイル」を 00:03:55.129 --> 00:03:56.768 やる人もいませんでした 00:03:56.768 --> 00:03:58.499 代わりに出てきたのは 00:03:59.581 --> 00:04:04.289 いかにも立派な学者さながらに 振る舞う人々でした NOTE Paragraph 00:04:04.735 --> 00:04:06.217 彼らには何があったかというと 00:04:06.217 --> 00:04:07.943 研究所を作っていました 00:04:07.943 --> 00:04:11.886 その名も「歴史見直し研究所」 00:04:12.352 --> 00:04:14.930 一見 それらしい 機関誌も出していました 00:04:14.930 --> 00:04:17.924 『ジャーナル・オブ・ ヒストリカルレビュー』 00:04:18.398 --> 00:04:21.078 脚注のびっしり入った論文が 00:04:21.078 --> 00:04:23.292 詰まった機関誌です 00:04:23.923 --> 00:04:26.433 新たな呼び名までありました 00:04:26.433 --> 00:04:28.642 「ネオナチ」ではなく 00:04:28.642 --> 00:04:31.212 「反ユダヤ主義者」でもありません 00:04:31.212 --> 00:04:33.004 「修正主義者」です 00:04:33.004 --> 00:04:35.280 口上はこうです 「我々は修正主義者である 00:04:35.280 --> 00:04:37.907 我々の目的は1つ 00:04:37.907 --> 00:04:41.557 誤った歴史認識を修正することだ」 00:04:42.239 --> 00:04:47.779 しかし うわべをはぎとり 少し内側を覗くと 本性が見えます 00:04:47.783 --> 00:04:49.710 何が見えたと思います? 00:04:49.714 --> 00:04:52.224 当時と変わらぬヒトラー賛美に 00:04:52.228 --> 00:04:54.117 第三帝国や反ユダヤ主義 00:04:54.117 --> 00:04:57.056 人種主義や偏見への賞賛でした 00:04:57.909 --> 00:04:59.914 関心を惹かれたのはそこでした 00:04:59.914 --> 00:05:07.371 反ユダヤ主義 人種主義 偏見が いかにも理性的な説の姿を装っていたのです NOTE Paragraph 00:05:08.730 --> 00:05:10.311 もう1つ発見したことがあります 00:05:10.311 --> 00:05:13.600 私たちはよく 物事には事実と見解がある という考え方を教えられます 00:05:13.621 --> 00:05:15.500 しかし 否定者たちを研究してから 00:05:15.500 --> 00:05:17.030 考え方が変わりました 00:05:17.438 --> 00:05:19.080 「事実」があって 00:05:19.080 --> 00:05:20.778 「見解」があり 00:05:20.778 --> 00:05:22.910 そして「嘘」があるのです 00:05:22.988 --> 00:05:27.281 否定者たちのもくろみはこうです まず 自分たちの嘘を 00:05:28.436 --> 00:05:30.191 「見解」として装います 00:05:30.191 --> 00:05:32.185 例えば「斬新な見解」や 00:05:32.185 --> 00:05:34.938 「型破りな見解」といった調子です 00:05:34.938 --> 00:05:36.762 しかしその後 これは「見解」だから 00:05:36.762 --> 00:05:38.532 議論すべきだと言ってきます 00:05:38.532 --> 00:05:41.925 その後 否定者たちは 事実を歪めます NOTE Paragraph 00:05:43.305 --> 00:05:44.942 私は研究内容を 00:05:44.942 --> 00:05:46.066 本にして出版しました 00:05:46.080 --> 00:05:49.476 『ホロコーストの真実 ― 大量虐殺否定者たちの嘘ともくろみ』 00:05:49.476 --> 00:05:51.056 この本は世界各国で出版されました 00:05:51.056 --> 00:05:53.720 ここイギリスでは ペンギンブックスから出ました 00:05:53.770 --> 00:05:57.400 出版社とのやりとりも済んで 次に移ろうとしていた時です 00:05:58.163 --> 00:06:01.871 ペンギンブックスから 手紙が届きました 00:06:02.434 --> 00:06:05.832 笑ってしまいました これで3度目でした 00:06:07.088 --> 00:06:08.708 笑いごとではなかったのですが 00:06:08.972 --> 00:06:10.696 封筒を開けると 00:06:10.696 --> 00:06:16.608 デイヴィッド・アーヴィングが ホロコースト否定者と呼ばれたことに対し 00:06:16.608 --> 00:06:18.209 イギリスの法廷で 00:06:18.209 --> 00:06:21.445 私を名誉毀損で訴えようとしている という知らせでした NOTE Paragraph 00:06:21.953 --> 00:06:24.281 私を訴えると言う デイヴィッド・アーヴィングとは 00:06:24.281 --> 00:06:25.089 何者でしょうか? 00:06:25.089 --> 00:06:27.730 デイヴィッド・アーヴィングは 歴史著述家です 00:06:27.730 --> 00:06:29.883 著書のほとんどは 第二次世界大戦についてです 00:06:29.883 --> 00:06:33.110 著書のほぼ全てにおいて 展開している主張が 00:06:33.110 --> 00:06:36.602 ナチスは実はそんなに悪ではなく 00:06:36.602 --> 00:06:39.740 連合国は実はそんなに善ではなかった というものです 00:06:39.740 --> 00:06:41.629 ユダヤ人に何が起きたにしても 00:06:41.629 --> 00:06:43.786 まあ自業自得だったのだという主張です 00:06:44.146 --> 00:06:45.697 証拠資料があることも承知で 00:06:45.701 --> 00:06:47.128 事実を知りながらも 00:06:47.128 --> 00:06:50.836 どうにか歪めて こういった結論を出していたのです 00:06:50.836 --> 00:06:53.528 昔から否定者だった訳では ありません 00:06:53.552 --> 00:06:55.293 しかし80年代後半に 00:06:55.317 --> 00:06:57.854 否定説を 非常に精力的に 支持するようになりました NOTE Paragraph 00:06:59.517 --> 00:07:01.526 私が笑ってしまったのは 00:07:01.546 --> 00:07:05.380 この男がホロコーストを 否定するだけでなく 00:07:05.384 --> 00:07:07.093 否定説に誇らしげだったからです 00:07:07.093 --> 00:07:08.831 こんなことを言った男です 00:07:09.301 --> 00:07:12.645 「私が戦艦アウシュビッツを沈める」 00:07:13.225 --> 00:07:14.181 さらに 00:07:14.181 --> 00:07:18.671 生存者の腕に掘られた 数字のタトゥーを指さして 00:07:19.716 --> 00:07:21.308 「その腕のタトゥーで 00:07:21.312 --> 00:07:24.732 今までにいくら稼いだ?」 と言い放った男です 00:07:25.549 --> 00:07:27.291 こんなことも言った男です 00:07:27.461 --> 00:07:31.731 「ケネディ上院議員の チャパキディック事件の犠牲者は 00:07:31.751 --> 00:07:35.085 アウシュビッツの ガス室の犠牲者よりも多い」 00:07:35.175 --> 00:07:38.472 アメリカの事件ですが 事実か調べてみてください 00:07:39.406 --> 00:07:42.394 まったく恥も外聞もなく 00:07:42.394 --> 00:07:44.826 ホロスコートを否定していた男です NOTE Paragraph 00:07:45.096 --> 00:07:48.890 さて たくさんの学者仲間に こう忠告されました 00:07:48.890 --> 00:07:50.840 「そんな奴 相手にするな」と 00:07:50.840 --> 00:07:54.452 名誉毀損訴訟は 無視できないと説明すると 00:07:54.452 --> 00:07:57.763 「一体誰が彼を信じるというのか」 と言われました 00:07:57.763 --> 00:07:59.863 しかし問題がありました 00:07:59.867 --> 00:08:05.059 イギリスの法律では 被告つまり私の側に立証責任があるのです 00:08:05.189 --> 00:08:07.925 自分が言ったことが真実だと 証明しなくてはなりません 00:08:07.925 --> 00:08:10.712 これとは対照的にアメリカや 00:08:10.712 --> 00:08:12.290 その他多くの国々であれば 00:08:12.290 --> 00:08:15.516 原告側である彼に立証責任があります NOTE Paragraph 00:08:15.921 --> 00:08:17.416 つまり こういうことです 00:08:17.416 --> 00:08:20.756 私が戦わなかったとしたら 00:08:20.756 --> 00:08:23.232 自動的に彼の勝訴になるのです 00:08:23.791 --> 00:08:25.490 そして彼が勝訴した場合 00:08:25.500 --> 00:08:28.205 こんなことを言っても 正当な主張になってしまいます 00:08:28.205 --> 00:08:32.923 「デイヴィッド・アーヴィング版 ホロコーストは正規の見解である 00:08:33.565 --> 00:08:35.773 デボラ・リップシュタットは 私を否定者と呼び 00:08:35.773 --> 00:08:37.574 これには名誉毀損が成立した 00:08:37.574 --> 00:08:41.769 したがって 私デイヴィット・アーヴィングは ホロコースト否定者ではない」 00:08:42.206 --> 00:08:44.138 アーヴィング版とはこんな内容です 00:08:44.431 --> 00:08:47.411 「ユダヤ人虐殺計画は存在しなかった 00:08:47.411 --> 00:08:49.503 ガス室も存在せず 00:08:49.507 --> 00:08:51.407 銃による大虐殺もなかった 00:08:51.407 --> 00:08:54.572 ヒトラーはこの惨劇に 一切関連していない 00:08:54.572 --> 00:08:58.407 これらは全て ユダヤ人のでっち上げである 00:08:58.411 --> 00:09:02.503 ドイツ人から金をせしめ ユダヤ人国家を作るのが目的だ 00:09:02.524 --> 00:09:06.091 ユダヤ人は 連合国の支援と協力の下 00:09:06.091 --> 00:09:09.450 資料や証拠を ねつ造したのだ」 NOTE Paragraph 00:09:10.460 --> 00:09:12.824 これを黙認してしまったら 00:09:12.824 --> 00:09:17.463 生存者や生存者の子供たちに 顔向けができないと思いました 00:09:17.792 --> 00:09:19.968 これを黙認してしまったら 00:09:19.968 --> 00:09:24.319 歴史学者として失格だと思いました 00:09:25.187 --> 00:09:26.776 というわけで 戦いました 00:09:26.776 --> 00:09:28.872 映画『否定と肯定』を まだ観ていない人は 00:09:28.872 --> 00:09:30.405 ネタバレ注意ですよ 00:09:30.405 --> 00:09:31.703 私たちが勝ちました NOTE Paragraph 00:09:31.703 --> 00:09:32.982 (笑) NOTE Paragraph 00:09:32.986 --> 00:09:36.483 (拍手) NOTE Paragraph 00:09:39.988 --> 00:09:44.229 判決はこのような内容でした 「デイヴィッド・アーヴィングは 00:09:44.253 --> 00:09:47.578 嘘つきであり 00:09:47.578 --> 00:09:48.855 人種差別主義者であり 00:09:48.855 --> 00:09:50.079 反ユダヤ主義者である 00:09:50.079 --> 00:09:52.427 偏向した歴史観を持ち 00:09:52.427 --> 00:09:54.357 嘘を並べ 真実を歪めた 00:09:54.357 --> 00:09:57.024 そして最も由々しきことに 00:09:57.028 --> 00:09:59.187 これを意図的に行った」 00:09:59.191 --> 00:10:03.234 私たちが示したパターンは25件以上の 目立った実例から導き出されました 00:10:03.234 --> 00:10:04.578 些細な誤りではありません 00:10:04.578 --> 00:10:07.467 会場には執筆経験のある方も 多いと思いますが 00:10:07.487 --> 00:10:11.177 間違いは つきものです だから再版はありがたいのです 00:10:11.177 --> 00:10:12.463 誤りを修正できますからね NOTE Paragraph 00:10:12.463 --> 00:10:13.567 (笑) NOTE Paragraph 00:10:14.634 --> 00:10:17.770 しかし このケースでは どの例も方向性は同じでした 00:10:18.618 --> 00:10:20.829 ユダヤ人を非難し 00:10:20.853 --> 00:10:23.028 ナチスの無実を主張するものです NOTE Paragraph 00:10:23.700 --> 00:10:25.344 では どうやって勝ったというと 00:10:26.196 --> 00:10:31.576 アーヴィングの脚注を辿り 情報源を突き止めたのです 00:10:32.190 --> 00:10:33.973 こうして判明したのは何かというと 00:10:33.981 --> 00:10:35.500 大多数の事例でも 00:10:35.500 --> 00:10:37.442 圧倒的多数の事例でもなく 00:10:37.442 --> 00:10:41.737 何らかの形でホロコーストに 触れていた全ての事例において 00:10:41.737 --> 00:10:46.053 証拠であるとされたものは 歪められており 00:10:46.053 --> 00:10:47.513 部分的な真実であり 00:10:47.517 --> 00:10:48.855 日付は書き換えられ 00:10:48.855 --> 00:10:51.066 順序は並べ替えられ 00:10:51.066 --> 00:10:53.244 議事録には 出席してもいない人物が加えられ 00:10:53.244 --> 00:10:55.999 つまり 証拠など存在しなかった ということです 00:10:55.999 --> 00:10:58.112 出された証拠では 証明にならなかったのです 00:10:58.112 --> 00:11:00.985 私たちは「何が起きたか」ではなく 00:11:01.588 --> 00:11:04.091 アーヴィングが 事実であると主張した内容も 00:11:04.091 --> 00:11:07.005 ついでに 全ての否定者の主張も— アーヴィングが彼らを引用するか 00:11:07.005 --> 00:11:09.506 逆に引用されるかのどちらかですから— 00:11:09.510 --> 00:11:10.760 誤りだと証明しました 00:11:10.780 --> 00:11:11.963 彼らの主張を 00:11:11.963 --> 00:11:14.915 立証する証拠がなかったのです NOTE Paragraph 00:11:16.609 --> 00:11:21.317 さて 私の話は単なる物語に とどまりません 00:11:21.317 --> 00:11:25.178 奇特な 6年にもわたる 長く困難な訴訟の物語— 00:11:25.178 --> 00:11:30.171 アメリカ人の大学教授が 法廷闘争に引きずり込まれ 00:11:30.171 --> 00:11:33.259 相手には「ネオナチの論客」 という判決が下る— 00:11:33.259 --> 00:11:35.523 そんな物語では終わりません 00:11:35.553 --> 00:11:37.806 どんなメッセージがあるのか? 00:11:37.806 --> 00:11:40.843 真実とは何かという 話においては 00:11:40.843 --> 00:11:43.243 実に重要なメッセージが 込められています 00:11:43.243 --> 00:11:45.042 なぜなら 現代では 00:11:45.042 --> 00:11:46.752 皆さんご存知のように 00:11:46.752 --> 00:11:50.958 真実や事実は 言わば 「攻撃」を受けているからです 00:11:51.702 --> 00:11:54.954 ソーシャルメディアが 様々な恩恵をもたらしながらも 00:11:54.958 --> 00:11:57.533 同時に 招いてしまった事態があります 00:11:57.563 --> 00:12:02.314 「事実」それも客観的な 既成事実と「嘘」との違いがなくなり 00:12:02.314 --> 00:12:04.302 同列になってしまったのです NOTE Paragraph 00:12:05.022 --> 00:12:06.500 そして3つ目が 00:12:06.504 --> 00:12:08.085 過激主義です 00:12:08.754 --> 00:12:12.558 KKKの白装束という形や 00:12:12.558 --> 00:12:14.697 十字架を燃やす儀式としては表れず 00:12:14.727 --> 00:12:18.592 あからさまに白人至上主義者的な 言葉さえ聞かないかもしれません 00:12:18.986 --> 00:12:23.932 「オルタナ右翼」や「国民戦線」 のように呼び名は様々ですが 00:12:23.936 --> 00:12:30.775 しかし根底は いかにも理性的な説を装う ホロコースト否定説に見られた— 00:12:30.795 --> 00:12:33.185 同じ過激思想なのです NOTE Paragraph 00:12:35.056 --> 00:12:39.810 今の時代 言ってみれば 「真実」は「防御態勢」にあります 00:12:40.355 --> 00:12:42.783 最近『ザ・ニューヨーカー』に載った— 00:12:42.783 --> 00:12:45.397 クイズ番組を題材にした 風刺漫画を思い出します 00:12:45.397 --> 00:12:48.363 司会者が出演者の1人に言います 00:12:48.363 --> 00:12:50.982 「はい あなたが正解です 00:12:50.986 --> 00:12:53.499 でも対戦相手の方が 大声で叫んだので 00:12:53.503 --> 00:12:55.048 彼のポイントになります」 NOTE Paragraph 00:12:56.208 --> 00:12:58.000 私たちには何ができるのか? 00:12:58.485 --> 00:12:59.984 まず始めに 00:12:59.984 --> 00:13:05.443 もっともらしい見た目に だまされないこと 00:13:05.453 --> 00:13:07.166 その下の中身に目を向ければ 00:13:07.166 --> 00:13:10.007 過激主義が隠れているのです 00:13:10.991 --> 00:13:12.342 そして次に 00:13:12.971 --> 00:13:19.082 「相対的な真実」など存在しないと 理解しなくてはなりません 00:13:21.137 --> 00:13:22.595 3つ目に 00:13:22.595 --> 00:13:26.298 私たちは 「攻め」に回らねばなりません 00:13:26.501 --> 00:13:28.251 「守り」ではいけません 00:13:28.676 --> 00:13:31.357 誰かが 荒唐無稽な主張をしてきたら 00:13:31.357 --> 00:13:34.805 相手が その国で 一番偉い立場の人だったとしても 00:13:34.805 --> 00:13:36.535 世界一偉い人だったとしても 00:13:36.830 --> 00:13:38.364 言わねばなりません 00:13:38.364 --> 00:13:40.344 「証拠はあるのか? 00:13:40.344 --> 00:13:41.907 根拠は何なのか?」 00:13:42.535 --> 00:13:45.272 言質を問わねばなりません 00:13:45.486 --> 00:13:50.112 彼らの嘘を 事実と同列に 扱ってはいけません NOTE Paragraph 00:13:51.395 --> 00:13:54.586 先ほども言いましたが 相対的な真実などありません 00:13:54.939 --> 00:13:57.819 私たちの多くが 高等教育を受け 00:13:57.839 --> 00:13:59.610 良識あるリベラルな世界で育ち 00:13:59.634 --> 00:14:02.605 何にでも議論の余地があると 教わりました 00:14:03.164 --> 00:14:05.162 しかし それは間違いです 00:14:05.182 --> 00:14:09.122 確実に真実であるという 物事は存在し 00:14:09.122 --> 00:14:12.206 紛れもない事実や 00:14:12.206 --> 00:14:13.926 客観的真実もあります 00:14:14.519 --> 00:14:19.016 何世紀も前にガリレオが 教えてくれたことです 00:14:19.340 --> 00:14:24.011 地球が太陽の周りを 回っているという持説を 00:14:24.011 --> 00:14:26.664 バチカンに無理やり撤回させられた後も 00:14:26.664 --> 00:14:27.786 意見を表明しました 00:14:27.786 --> 00:14:30.120 何と言ったと伝えられていますか? 00:14:30.120 --> 00:14:33.982 「それでも地球は回っている」 NOTE Paragraph 00:14:35.342 --> 00:14:38.182 地球は平らではありません 00:14:38.186 --> 00:14:40.496 気候は変動しています 00:14:41.387 --> 00:14:43.685 プレスリーが生きているわけありません NOTE Paragraph 00:14:43.685 --> 00:14:45.264 (笑) NOTE Paragraph 00:14:45.264 --> 00:14:47.554 (拍手) NOTE Paragraph 00:14:47.558 --> 00:14:49.853 最も重要なのは 00:14:49.853 --> 00:14:54.562 真実と事実が「攻撃」されている ということです 00:14:55.289 --> 00:14:56.899 私たちの目の前にある— 00:14:56.899 --> 00:14:58.100 私たちに課された— 00:14:58.100 --> 00:14:59.738 目前に迫る困難は 00:14:59.738 --> 00:15:01.002 重大です 00:15:01.747 --> 00:15:04.494 戦える期間は短いのです 00:15:05.241 --> 00:15:08.184 今 行動しなければなりません 00:15:08.929 --> 00:15:12.158 後からでは もう手遅れなのです NOTE Paragraph 00:15:12.158 --> 00:15:13.660 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:15:13.660 --> 00:15:16.600 (拍手)