1
00:00:01,082 --> 00:00:03,449
今日は皆さんに

2
00:00:03,769 --> 00:00:06,436
嘘つきと 訴訟と

3
00:00:06,606 --> 00:00:08,336
笑いの話をします

4
00:00:08,910 --> 00:00:12,004
ホロコースト否定説について
初めて聞いた時は

5
00:00:12,004 --> 00:00:13,476
笑ってしまいました

6
00:00:13,970 --> 00:00:15,882
ホロコーストの「否定」ですって？

7
00:00:16,187 --> 00:00:19,601
大量虐殺事件の中でも
世界一 記録が充実していて

8
00:00:19,601 --> 00:00:24,136
悪名高き
あのホロコーストを？

9
00:00:24,846 --> 00:00:27,172
否定して
一体誰が信じるのでしょう？

10
00:00:28,066 --> 00:00:29,649
考えてみてください

11
00:00:30,243 --> 00:00:32,522
もしも否定者らが正しいなら

12
00:00:32,522 --> 00:00:34,992
誤証言していることになるのは
誰でしょうか？

13
00:00:35,011 --> 00:00:37,827
まず犠牲者が挙げられます

14
00:00:37,827 --> 00:00:43,128
自らの悲痛な体験を証言した
生存者たちです

15
00:00:43,721 --> 00:00:46,029
他には誰がいるでしょう？

16
00:00:46,029 --> 00:00:48,006
目撃者です

17
00:00:48,006 --> 00:00:52,204
東部戦線の数多ある
街や村や都市の住民が

18
00:00:52,224 --> 00:00:54,010
目の当たりにしたのは

19
00:00:54,014 --> 00:00:55,490
隣近所に住む人々が

20
00:00:55,510 --> 00:00:59,697
老若男女問わず一斉に検挙され

21
00:00:59,697 --> 00:01:02,451
街の外れまで連行された揚げ句

22
00:01:02,451 --> 00:01:05,483
銃殺され 野ざらしにされる姿でした

23
00:01:05,985 --> 00:01:07,328
そしてポーランド人もです

24
00:01:07,348 --> 00:01:11,899
絶滅収容所近郊の
町や村に住んでいた彼らが

25
00:01:12,034 --> 00:01:14,354
毎日のように目にしたのは

26
00:01:14,354 --> 00:01:17,180
大勢の人を詰め込んだ列車が
収容所へと向かい

27
00:01:17,191 --> 00:01:19,281
空っぽになって戻る光景でした

28
00:01:19,793 --> 00:01:23,500
しかし 何よりも重大な
誤証言は 誰のものになるでしょう？

29
00:01:24,005 --> 00:01:25,360
加害者たちです

30
00:01:26,112 --> 00:01:27,979
こう証言する人々です

31
00:01:27,979 --> 00:01:30,997
「我々がやった」
「私がやった」

32
00:01:30,997 --> 00:01:33,210
こんな 一言が続くかもしれません

33
00:01:33,210 --> 00:01:37,780
「やむを得なかった
強要されたんだ」

34
00:01:38,032 --> 00:01:40,773
それでも やはり
「私がやった」とは言うのです

35
00:01:41,938 --> 00:01:43,483
考えてみてください

36
00:01:43,483 --> 00:01:49,446
第二次世界大戦終結以降の
戦争犯罪裁判において

37
00:01:49,446 --> 00:01:56,112
「そんな事実はない」と言う
戦争犯罪者は どの国にもいません

38
00:01:57,078 --> 00:02:01,154
「やらされた」とは言っても
「なかった」とは言いません

39
00:02:01,654 --> 00:02:03,932
その時は じっくり考えた結果

40
00:02:04,272 --> 00:02:07,003
この件は放っておくことにしました

41
00:02:07,043 --> 00:02:10,849
私には研究や 論文や 心配事など
もっと大事なことがあるし と

42
00:02:10,849 --> 00:02:12,373
気持ちを切り替えました

43
00:02:12,911 --> 00:02:15,724
それから10年と少し経った頃

44
00:02:15,724 --> 00:02:17,550
２人の偉い学者から―

45
00:02:17,550 --> 00:02:20,732
ホロコースト研究で最も著名な
歴史学者である２人ですが―

46
00:02:20,732 --> 00:02:21,903
声をかけられました

47
00:02:21,903 --> 00:02:23,826
「一緒にコーヒーでもどうだい？

48
00:02:23,826 --> 00:02:27,239
君にぴったりな
研究課題があるんだが」

49
00:02:27,457 --> 00:02:31,284
私を見込んで わざわざ
課題を持ってきてくれたことに

50
00:02:31,284 --> 00:02:32,875
好奇心と自尊心をくすぐられ

51
00:02:32,875 --> 00:02:35,171
「どんな内容ですか？」と尋ねました

52
00:02:35,665 --> 00:02:38,684
「ホロコースト否定説だよ」

53
00:02:39,353 --> 00:02:41,848
笑ったのは これが２度目でした

54
00:02:42,336 --> 00:02:44,244
ホロコースト否定説？

55
00:02:44,244 --> 00:02:46,254
地球平面説の類？

56
00:02:46,254 --> 00:02:48,425
プレスリー生存説みたいな？

57
00:02:48,501 --> 00:02:50,876
そんなこと言っている人たちを調べろと？

58
00:02:51,256 --> 00:02:52,633
すると こう言われました

59
00:02:52,647 --> 00:02:54,980
「そうとも 興味があるんだ

60
00:02:54,992 --> 00:02:56,638
一体 何者なのか？

61
00:02:56,638 --> 00:02:58,342
何が目的なのか？

62
00:02:58,342 --> 00:03:02,036
どうやって人々を
納得させているのか？」

63
00:03:02,756 --> 00:03:06,248
そこでこう思いました
教授たちが調べる価値があると考えるなら

64
00:03:06,248 --> 00:03:09,706
ちょっとの間
気晴らしにやってみよう

65
00:03:09,706 --> 00:03:12,588
１年か２年 長くてせいぜい４年

66
00:03:12,588 --> 00:03:15,027
学術界では
数年は「ちょっとの間」ですから

67
00:03:15,027 --> 00:03:16,079
（笑）

68
00:03:16,093 --> 00:03:18,464
学者は仕事がとっても遅いのです

69
00:03:18,464 --> 00:03:20,086
（笑）

70
00:03:20,100 --> 00:03:21,912
よし 調べてみよう と思い

71
00:03:21,916 --> 00:03:23,005
研究を始めました

72
00:03:23,005 --> 00:03:25,998
その結果
いくつかの結論を導き出しました

73
00:03:25,998 --> 00:03:28,565
その中の２つを
皆さんにお話しします

74
00:03:28,565 --> 00:03:29,892
１つは

75
00:03:29,892 --> 00:03:34,909
否定者は「羊の皮を被った狼」である
ということです

76
00:03:35,712 --> 00:03:38,661
本質はナチスやネオナチと同類です

77
00:03:38,661 --> 00:03:41,928
「ネオ」を付けるかどうかは
お任せします

78
00:03:42,786 --> 00:03:45,113
ただ 見た限りでは

79
00:03:45,113 --> 00:03:49,853
ナチス親衛隊のような制服を
着ているわけでも

80
00:03:49,853 --> 00:03:53,028
壁に「かぎ十字」があるわけでもなく

81
00:03:53,028 --> 00:03:55,125
ナチス式敬礼「ジークハイル」を

82
00:03:55,129 --> 00:03:56,768
やる人もいませんでした

83
00:03:56,768 --> 00:03:58,499
代わりに出てきたのは

84
00:03:59,581 --> 00:04:04,289
いかにも立派な学者さながらに
振る舞う人々でした

85
00:04:04,735 --> 00:04:06,217
彼らには何があったかというと

86
00:04:06,217 --> 00:04:07,943
研究所を作っていました

87
00:04:07,943 --> 00:04:11,886
その名も「歴史見直し研究所」

88
00:04:12,352 --> 00:04:14,930
一見 それらしい
機関誌も出していました

89
00:04:14,930 --> 00:04:17,924
『ジャーナル・オブ・
ヒストリカルレビュー』

90
00:04:18,398 --> 00:04:21,078
脚注のびっしり入った論文が

91
00:04:21,078 --> 00:04:23,292
詰まった機関誌です

92
00:04:23,923 --> 00:04:26,433
新たな呼び名までありました

93
00:04:26,433 --> 00:04:28,642
「ネオナチ」ではなく

94
00:04:28,642 --> 00:04:31,212
「反ユダヤ主義者」でもありません

95
00:04:31,212 --> 00:04:33,004
「修正主義者」です

96
00:04:33,004 --> 00:04:35,280
口上はこうです
「我々は修正主義者である

97
00:04:35,280 --> 00:04:37,907
我々の目的は１つ

98
00:04:37,907 --> 00:04:41,557
誤った歴史認識を修正することだ」

99
00:04:42,239 --> 00:04:47,779
しかし うわべをはぎとり
少し内側を覗くと 本性が見えます

100
00:04:47,783 --> 00:04:49,710
何が見えたと思います？

101
00:04:49,714 --> 00:04:52,224
当時と変わらぬヒトラー賛美に

102
00:04:52,228 --> 00:04:54,117
第三帝国や反ユダヤ主義

103
00:04:54,117 --> 00:04:57,056
人種主義や偏見への賞賛でした

104
00:04:57,909 --> 00:04:59,914
関心を惹かれたのはそこでした

105
00:04:59,914 --> 00:05:07,371
反ユダヤ主義 人種主義 偏見が
いかにも理性的な説の姿を装っていたのです

106
00:05:08,730 --> 00:05:10,311
もう１つ発見したことがあります

107
00:05:10,311 --> 00:05:13,600
私たちはよく 物事には事実と見解がある
という考え方を教えられます

108
00:05:13,621 --> 00:05:15,500
しかし 否定者たちを研究してから

109
00:05:15,500 --> 00:05:17,030
考え方が変わりました

110
00:05:17,438 --> 00:05:19,080
「事実」があって

111
00:05:19,080 --> 00:05:20,778
「見解」があり

112
00:05:20,778 --> 00:05:22,910
そして「嘘」があるのです

113
00:05:22,988 --> 00:05:27,281
否定者たちのもくろみはこうです
まず 自分たちの嘘を

114
00:05:28,436 --> 00:05:30,191
「見解」として装います

115
00:05:30,191 --> 00:05:32,185
例えば「斬新な見解」や

116
00:05:32,185 --> 00:05:34,938
「型破りな見解」といった調子です

117
00:05:34,938 --> 00:05:36,762
しかしその後
これは「見解」だから

118
00:05:36,762 --> 00:05:38,532
議論すべきだと言ってきます

119
00:05:38,532 --> 00:05:41,925
その後 否定者たちは
事実を歪めます

120
00:05:43,305 --> 00:05:44,942
私は研究内容を

121
00:05:44,942 --> 00:05:46,066
本にして出版しました

122
00:05:46,080 --> 00:05:49,476
『ホロコーストの真実 ―
大量虐殺否定者たちの嘘ともくろみ』

123
00:05:49,476 --> 00:05:51,056
この本は世界各国で出版されました

124
00:05:51,056 --> 00:05:53,720
ここイギリスでは
ペンギンブックスから出ました

125
00:05:53,770 --> 00:05:57,400
出版社とのやりとりも済んで
次に移ろうとしていた時です

126
00:05:58,163 --> 00:06:01,871
ペンギンブックスから
手紙が届きました

127
00:06:02,434 --> 00:06:05,832
笑ってしまいました
これで３度目でした

128
00:06:07,088 --> 00:06:08,708
笑いごとではなかったのですが

129
00:06:08,972 --> 00:06:10,696
封筒を開けると

130
00:06:10,696 --> 00:06:16,608
デイヴィッド・アーヴィングが
ホロコースト否定者と呼ばれたことに対し

131
00:06:16,608 --> 00:06:18,209
イギリスの法廷で

132
00:06:18,209 --> 00:06:21,445
私を名誉毀損で訴えようとしている
という知らせでした

133
00:06:21,953 --> 00:06:24,281
私を訴えると言う
デイヴィッド・アーヴィングとは

134
00:06:24,281 --> 00:06:25,089
何者でしょうか？

135
00:06:25,089 --> 00:06:27,730
デイヴィッド・アーヴィングは
歴史著述家です

136
00:06:27,730 --> 00:06:29,883
著書のほとんどは
第二次世界大戦についてです

137
00:06:29,883 --> 00:06:33,110
著書のほぼ全てにおいて
展開している主張が

138
00:06:33,110 --> 00:06:36,602
ナチスは実はそんなに悪ではなく

139
00:06:36,602 --> 00:06:39,740
連合国は実はそんなに善ではなかった
というものです

140
00:06:39,740 --> 00:06:41,629
ユダヤ人に何が起きたにしても

141
00:06:41,629 --> 00:06:43,786
まあ自業自得だったのだという主張です

142
00:06:44,146 --> 00:06:45,697
証拠資料があることも承知で

143
00:06:45,701 --> 00:06:47,128
事実を知りながらも

144
00:06:47,128 --> 00:06:50,836
どうにか歪めて
こういった結論を出していたのです

145
00:06:50,836 --> 00:06:53,528
昔から否定者だった訳では
ありません

146
00:06:53,552 --> 00:06:55,293
しかし80年代後半に

147
00:06:55,317 --> 00:06:57,854
否定説を 非常に精力的に
支持するようになりました

148
00:06:59,517 --> 00:07:01,526
私が笑ってしまったのは

149
00:07:01,546 --> 00:07:05,380
この男がホロコーストを
否定するだけでなく

150
00:07:05,384 --> 00:07:07,093
否定説に誇らしげだったからです

151
00:07:07,093 --> 00:07:08,831
こんなことを言った男です

152
00:07:09,301 --> 00:07:12,645
「私が戦艦アウシュビッツを沈める」

153
00:07:13,225 --> 00:07:14,181
さらに

154
00:07:14,181 --> 00:07:18,671
生存者の腕に掘られた
数字のタトゥーを指さして

155
00:07:19,716 --> 00:07:21,308
「その腕のタトゥーで

156
00:07:21,312 --> 00:07:24,732
今までにいくら稼いだ？」
と言い放った男です

157
00:07:25,549 --> 00:07:27,291
こんなことも言った男です

158
00:07:27,461 --> 00:07:31,731
「ケネディ上院議員の
チャパキディック事件の犠牲者は

159
00:07:31,751 --> 00:07:35,085
アウシュビッツの
ガス室の犠牲者よりも多い」

160
00:07:35,175 --> 00:07:38,472
アメリカの事件ですが
事実か調べてみてください

161
00:07:39,406 --> 00:07:42,394
まったく恥も外聞もなく

162
00:07:42,394 --> 00:07:44,826
ホロスコートを否定していた男です

163
00:07:45,096 --> 00:07:48,890
さて たくさんの学者仲間に
こう忠告されました

164
00:07:48,890 --> 00:07:50,840
「そんな奴 相手にするな」と

165
00:07:50,840 --> 00:07:54,452
名誉毀損訴訟は
無視できないと説明すると

166
00:07:54,452 --> 00:07:57,763
「一体誰が彼を信じるというのか」
と言われました

167
00:07:57,763 --> 00:07:59,863
しかし問題がありました

168
00:07:59,867 --> 00:08:05,059
イギリスの法律では
被告つまり私の側に立証責任があるのです

169
00:08:05,189 --> 00:08:07,925
自分が言ったことが真実だと
証明しなくてはなりません

170
00:08:07,925 --> 00:08:10,712
これとは対照的にアメリカや

171
00:08:10,712 --> 00:08:12,290
その他多くの国々であれば

172
00:08:12,290 --> 00:08:15,516
原告側である彼に立証責任があります

173
00:08:15,921 --> 00:08:17,416
つまり こういうことです

174
00:08:17,416 --> 00:08:20,756
私が戦わなかったとしたら

175
00:08:20,756 --> 00:08:23,232
自動的に彼の勝訴になるのです

176
00:08:23,791 --> 00:08:25,490
そして彼が勝訴した場合

177
00:08:25,500 --> 00:08:28,205
こんなことを言っても
正当な主張になってしまいます

178
00:08:28,205 --> 00:08:32,923
「デイヴィッド・アーヴィング版
ホロコーストは正規の見解である

179
00:08:33,565 --> 00:08:35,773
デボラ・リップシュタットは
私を否定者と呼び

180
00:08:35,773 --> 00:08:37,574
これには名誉毀損が成立した

181
00:08:37,574 --> 00:08:41,769
したがって 私デイヴィット・アーヴィングは
ホロコースト否定者ではない」

182
00:08:42,206 --> 00:08:44,138
アーヴィング版とはこんな内容です

183
00:08:44,431 --> 00:08:47,411
「ユダヤ人虐殺計画は存在しなかった

184
00:08:47,411 --> 00:08:49,503
ガス室も存在せず

185
00:08:49,507 --> 00:08:51,407
銃による大虐殺もなかった

186
00:08:51,407 --> 00:08:54,572
ヒトラーはこの惨劇に
一切関連していない

187
00:08:54,572 --> 00:08:58,407
これらは全て
ユダヤ人のでっち上げである

188
00:08:58,411 --> 00:09:02,503
ドイツ人から金をせしめ
ユダヤ人国家を作るのが目的だ

189
00:09:02,524 --> 00:09:06,091
ユダヤ人は
連合国の支援と協力の下

190
00:09:06,091 --> 00:09:09,450
資料や証拠を ねつ造したのだ」

191
00:09:10,460 --> 00:09:12,824
これを黙認してしまったら

192
00:09:12,824 --> 00:09:17,463
生存者や生存者の子供たちに
顔向けができないと思いました

193
00:09:17,792 --> 00:09:19,968
これを黙認してしまったら

194
00:09:19,968 --> 00:09:24,319
歴史学者として失格だと思いました

195
00:09:25,187 --> 00:09:26,776
というわけで 戦いました

196
00:09:26,776 --> 00:09:28,872
映画『Denial』を
まだ観ていない人は

197
00:09:28,872 --> 00:09:30,405
ネタバレ注意ですよ

198
00:09:30,405 --> 00:09:31,703
私たちが勝ちました

199
00:09:31,703 --> 00:09:32,982
（笑）

200
00:09:32,986 --> 00:09:36,483
（拍手）

201
00:09:39,988 --> 00:09:44,229
判決はこのような内容でした
「デイビッド・アーヴィングは

202
00:09:44,253 --> 00:09:47,578
嘘つきであり

203
00:09:47,578 --> 00:09:48,855
人種差別主義者であり

204
00:09:48,855 --> 00:09:50,079
反ユダヤ主義者である

205
00:09:50,079 --> 00:09:52,427
偏向した歴史観を持ち

206
00:09:52,427 --> 00:09:54,357
嘘を並べ 真実を歪めた

207
00:09:54,357 --> 00:09:57,024
そして最も由々しきことに

208
00:09:57,028 --> 00:09:59,187
これを意図的に行った」

209
00:09:59,191 --> 00:10:03,234
私たちが示したパターンは25件以上の
目立った実例から導き出されました

210
00:10:03,234 --> 00:10:04,578
些細な誤りではありません

211
00:10:04,578 --> 00:10:07,467
会場には執筆経験のある方も
多いと思いますが

212
00:10:07,487 --> 00:10:11,177
間違いは つきものです
だから再版はありがたいのです

213
00:10:11,177 --> 00:10:12,463
誤りを修正できますからね

214
00:10:12,463 --> 00:10:13,567
（笑）

215
00:10:14,634 --> 00:10:17,770
しかし このケースでは
どの例も方向性は同じでした

216
00:10:18,618 --> 00:10:20,829
ユダヤ人を非難し

217
00:10:20,853 --> 00:10:23,028
ナチスの無実を主張するものです

218
00:10:23,700 --> 00:10:25,344
では どうやって勝ったというと

219
00:10:26,196 --> 00:10:31,576
アーヴィングの脚注を辿り
情報源を突き止めたのです

220
00:10:32,190 --> 00:10:33,973
こうして判明したのは何かというと

221
00:10:33,981 --> 00:10:35,500
大多数の事例でも

222
00:10:35,500 --> 00:10:37,442
圧倒的多数の事例でもなく

223
00:10:37,442 --> 00:10:41,737
何らかの形でホロコーストに
触れていた全ての事例において

224
00:10:41,737 --> 00:10:46,053
証拠であるとされたものは
歪められており

225
00:10:46,053 --> 00:10:47,513
部分的な真実であり

226
00:10:47,517 --> 00:10:48,855
日付は書き換えられ

227
00:10:48,855 --> 00:10:51,066
順序は並べ替えられ

228
00:10:51,066 --> 00:10:53,244
議事録には
出席してもいない人物が加えられ

229
00:10:53,244 --> 00:10:55,999
つまり 証拠など存在しなかった
ということです

230
00:10:55,999 --> 00:10:58,112
出された証拠では
証明にならなかったのです

231
00:10:58,112 --> 00:11:00,985
私たちは「何が起きたか」ではなく

232
00:11:01,588 --> 00:11:04,091
アーヴィングが
事実であると主張した内容も

233
00:11:04,091 --> 00:11:07,005
ついでに 全ての否定者の主張も—
アーヴィングが彼らを引用するか

234
00:11:07,005 --> 00:11:09,506
逆に引用されるかのどちらかですから—

235
00:11:09,510 --> 00:11:10,760
誤りだと証明しました

236
00:11:10,780 --> 00:11:11,963
彼らの主張を

237
00:11:11,963 --> 00:11:14,915
立証する証拠がなかったのです

238
00:11:16,609 --> 00:11:21,317
さて 私の話は単なる物語に
とどまりません

239
00:11:21,317 --> 00:11:25,178
奇特な ６年にもわたる
長く困難な訴訟の物語—

240
00:11:25,178 --> 00:11:30,171
アメリカ人の大学教授が
法廷闘争に引きずり込まれ

241
00:11:30,171 --> 00:11:33,259
相手には「ネオナチの論客」
という判決が下る—

242
00:11:33,259 --> 00:11:35,523
そんな物語では終わりません

243
00:11:35,553 --> 00:11:37,806
どんなメッセージがあるのか？

244
00:11:37,806 --> 00:11:40,843
真実とは何かという
話においては

245
00:11:40,843 --> 00:11:43,243
実に重要なメッセージが
込められています

246
00:11:43,243 --> 00:11:45,042
なぜなら 現代では

247
00:11:45,042 --> 00:11:46,752
皆さんご存知のように

248
00:11:46,752 --> 00:11:50,958
真実や事実は 言わば
「攻撃」を受けているからです

249
00:11:51,702 --> 00:11:54,954
ソーシャルメディアが
様々な恩恵をもたらしながらも

250
00:11:54,958 --> 00:11:57,533
同時に 招いてしまった事態があります

251
00:11:57,563 --> 00:12:02,314
「事実」それも客観的な
既成事実と「嘘」との違いがなくなり

252
00:12:02,314 --> 00:12:04,302
同列になってしまったのです

253
00:12:05,022 --> 00:12:06,500
そして３つ目が

254
00:12:06,504 --> 00:12:08,085
過激主義です

255
00:12:08,754 --> 00:12:12,558
KKKの白装束という形や

256
00:12:12,558 --> 00:12:14,697
十字架を燃やす儀式としては表れず

257
00:12:14,727 --> 00:12:18,592
あからさまに白人至上主義者的な
言葉さえ聞かないかもしれません

258
00:12:18,986 --> 00:12:23,932
「オルタナ右翼」や「国民戦線」
のような呼び名は様々ですが

259
00:12:23,936 --> 00:12:30,775
しかし根底は いかにも理性的な説を装う
ホロコースト否定説に見られた—

260
00:12:30,795 --> 00:12:33,185
同じ過激思想なのです

261
00:12:35,056 --> 00:12:39,810
今の時代 言ってみれば
「真実」は「防御態勢」にあります

262
00:12:40,355 --> 00:12:42,783
最近『ザ・ニューヨーカー』に載った—

263
00:12:42,783 --> 00:12:45,397
クイズ番組を題材にした
風刺漫画を思い出します

264
00:12:45,397 --> 00:12:48,363
司会者が出演者の１人に言います

265
00:12:48,363 --> 00:12:50,982
「はい あなたが正解です

266
00:12:50,986 --> 00:12:53,499
でも対戦相手の方が
大声で叫んだので

267
00:12:53,503 --> 00:12:55,048
彼のポイントになります」

268
00:12:56,208 --> 00:12:58,000
私たちには何ができるのか？

269
00:12:58,485 --> 00:12:59,984
まず始めに

270
00:12:59,984 --> 00:13:05,443
もっともらしい見た目に
だまされないこと

271
00:13:05,453 --> 00:13:07,166
その下の中身に目を向ければ

272
00:13:07,166 --> 00:13:10,007
過激主義が隠れているのです

273
00:13:10,991 --> 00:13:12,342
そして次に

274
00:13:12,971 --> 00:13:19,082
「相対的な真実」など存在しないと
理解しなくてはなりません

275
00:13:21,137 --> 00:13:22,595
３つ目に

276
00:13:22,595 --> 00:13:26,298
私たちは 「攻め」に回らねばなりません

277
00:13:26,501 --> 00:13:28,251
「守り」ではいけません

278
00:13:28,676 --> 00:13:31,357
誰かが
荒唐無稽な主張をしてきたら

279
00:13:31,357 --> 00:13:34,805
相手が その国で
一番偉い立場の人だったとしても

280
00:13:34,805 --> 00:13:36,535
世界一偉い人だったとしても

281
00:13:36,830 --> 00:13:38,364
言わねばなりません

282
00:13:38,364 --> 00:13:40,344
「証拠はあるのか？

283
00:13:40,344 --> 00:13:41,907
根拠は何なのか？」

284
00:13:42,535 --> 00:13:45,272
言質を問わねばなりません

285
00:13:45,486 --> 00:13:50,112
彼らの嘘を 事実と同列に
扱ってはいけません

286
00:13:51,395 --> 00:13:54,586
先ほども言いましたが
相対的な真実などありません

287
00:13:54,939 --> 00:13:57,819
私たちの多くが 高等教育を受け

288
00:13:57,839 --> 00:13:59,610
良識あるリベラルな世界で育ち

289
00:13:59,634 --> 00:14:02,605
何にでも議論の余地があると
教わりました

290
00:14:03,164 --> 00:14:05,162
しかし それは間違いです

291
00:14:05,182 --> 00:14:09,122
確実に真実であるという
物事は存在し

292
00:14:09,122 --> 00:14:12,206
紛れもない事実や

293
00:14:12,206 --> 00:14:13,926
客観的真実もあります

294
00:14:14,519 --> 00:14:19,016
何世紀も前にガリレオが
教えてくれたことです

295
00:14:19,340 --> 00:14:24,011
地球が太陽の周りを
回っているという持説を

296
00:14:24,011 --> 00:14:26,664
バチカンに無理やり撤回させられた後も

297
00:14:26,664 --> 00:14:27,786
意見を表明しました

298
00:14:27,786 --> 00:14:30,120
何と言ったと伝えられていますか？

299
00:14:30,120 --> 00:14:33,982
「それでも地球は回っている」

300
00:14:35,342 --> 00:14:38,182
地球は平らではありません

301
00:14:38,186 --> 00:14:40,496
気候は変動しています

302
00:14:41,387 --> 00:14:43,685
プレスリーが生きているわけありません

303
00:14:43,685 --> 00:14:45,264
（笑）

304
00:14:45,264 --> 00:14:47,554
（拍手）

305
00:14:47,558 --> 00:14:49,853
最も重要なのは

306
00:14:49,853 --> 00:14:54,562
真実と事実が「攻撃」されている
ということです

307
00:14:55,289 --> 00:14:56,899
私たちの目の前にある—

308
00:14:56,899 --> 00:14:58,100
私たちに課された—

309
00:14:58,100 --> 00:14:59,738
目前に迫る困難は

310
00:14:59,738 --> 00:15:01,002
重大です

311
00:15:01,747 --> 00:15:04,494
戦える期間は短いのです

312
00:15:05,241 --> 00:15:08,184
今 行動しなければなりません

313
00:15:08,929 --> 00:15:12,158
後からでは もう手遅れなのです

314
00:15:12,158 --> 00:15:13,660
ありがとうございました

315
00:15:13,660 --> 00:15:16,600
（拍手）