WEBVTT 00:00:07.238 --> 00:00:09.119 2300年前 00:00:09.119 --> 00:00:11.801 アレクサンドリアの支配者は 行動を開始しました 00:00:11.801 --> 00:00:14.196 人類の最も大胆な目標の一つ 00:00:14.196 --> 00:00:18.590 世界のあらゆる知識をひとつの建物に 集めようというものです 00:00:18.590 --> 00:00:19.824 最盛期には 00:00:19.824 --> 00:00:23.623 アレクサンドリア図書館は 前代未聞の数の本を所蔵しており 00:00:23.623 --> 00:00:27.157 世界最高レベルにある ギリシア人の学者たちを惹きつけました 00:00:27.157 --> 00:00:31.697 しかし5世紀の終わりまでには この偉大な図書館は消えてしまいました 00:00:31.697 --> 00:00:35.227 大規模な火災が原因だと 信じられていましたが 00:00:35.227 --> 00:00:39.483 この図書館の盛衰の真実は もっと複雑です NOTE Paragraph 00:00:39.483 --> 00:00:42.776 建設を思いついたのは アレクサンダー大王です 00:00:42.776 --> 00:00:45.038 征服者として名を轟かせたあと 00:00:45.038 --> 00:00:46.980 アリストテレスの教え子である彼は 00:00:46.980 --> 00:00:52.524 自分の名のついた都市を 知識の都にすることに目を向けました 00:00:52.524 --> 00:00:54.732 彼は建設が始まる前に亡くなりましたが 00:00:54.732 --> 00:00:56.745 後継者のプトレマイオス1世が 00:00:56.745 --> 00:01:01.354 アレクサンダー大王の計画のうち 博物館と図書館の建設を実行に移しました NOTE Paragraph 00:01:01.354 --> 00:01:03.740 都市のなかの王家の区画にあった 00:01:03.740 --> 00:01:05.266 アレクサンドリア図書館には 00:01:05.266 --> 00:01:08.105 壮大なヘレニズム式の柱があったのか 00:01:08.105 --> 00:01:09.940 エジプト文化の影響があったのか 00:01:09.940 --> 00:01:15.061 あるいは両文化が混在していたのか その外観は今となってはわかりませんが 00:01:15.061 --> 00:01:20.089 講義室や教室 そしてもちろん 本棚があったことは確かです 00:01:20.089 --> 00:01:21.958 建物が完成するとすぐに 00:01:21.958 --> 00:01:26.441 プトレマイオス1世は主にギリシャと エジプトの巻物を納めはじめました 00:01:26.441 --> 00:01:30.842 私費を投じて 学者たちを アレクサンドリアに招き研究をさせました 00:01:30.842 --> 00:01:34.490 学者たち自身の原稿によって 図書館は拡大してきましたが 00:01:34.490 --> 00:01:39.695 アレキサンドリアの支配者たちは なおも世界中の書物の写本を求めました NOTE Paragraph 00:01:39.695 --> 00:01:44.332 アレクサンドリアは地中海を航行する 船にとってのハブ港でした 00:01:44.332 --> 00:01:49.441 プトレマイオス3世は 停泊する全ての船に 00:01:49.441 --> 00:01:51.943 複写のため書物を差し出すよう 命じました 00:01:51.943 --> 00:01:55.080 図書館専属の書記が書物を写すと 00:01:55.080 --> 00:01:58.553 原本を収め 複製品を船に戻しました 00:01:58.553 --> 00:02:02.094 また 新しい文書を探すために人を雇い 00:02:02.094 --> 00:02:03.912 地中海周辺地域を 探し回らせました 00:02:03.912 --> 00:02:06.735 アレクサンドリアの支配者たちは ライバルの真似を防ぐために 00:02:06.735 --> 00:02:12.173 巻物に用いるエジプト産の パピルス紙の輸出を止めさせました NOTE Paragraph 00:02:12.173 --> 00:02:16.274 努力は重なり 図書館には 何十万冊もの本が集まりました 00:02:16.274 --> 00:02:17.825 図書館が大きくなるにつれて 00:02:17.825 --> 00:02:21.856 かつてないほど多くの分野の情報が 得られるようになりました 00:02:21.856 --> 00:02:26.689 しかし知りたい情報を見つけ出すのは どんどん難しくなりました 00:02:26.689 --> 00:02:32.059 キュレネのカリマクスという学者が 解決策に着手しました 00:02:32.059 --> 00:02:33.851 ピナケスという 00:02:33.851 --> 00:02:37.238 120巻からなる蔵書目録を 作ることです 00:02:37.238 --> 00:02:39.307 これは初めての試みでした NOTE Paragraph 00:02:39.307 --> 00:02:40.745 ピナケスのおかげで 00:02:40.745 --> 00:02:43.888 人々は増え続ける蔵書の在処を 把握できるようになりました 00:02:43.888 --> 00:02:46.721 そして驚くべきことが発見されました 00:02:46.721 --> 00:02:49.414 コロンブスが航海をする1600年前に 00:02:49.414 --> 00:02:52.732 エラトステネスは 地球が丸いことに気が付いただけでなく 00:02:52.732 --> 00:02:55.234 その周長と直径を計算しました 00:02:55.234 --> 00:02:57.728 その誤差は数キロ程度です 00:02:57.728 --> 00:03:01.330 アレクサンドリアのヘロンは世界初の 蒸気機関をつくりました 00:03:01.330 --> 00:03:03.205 それは産業革命によって 00:03:03.205 --> 00:03:06.638 ようやく再発明されるよりも 1千年以上も前のことです 00:03:06.638 --> 00:03:13.685 紀元前283年の創立から 約300年間 図書館は繁栄しました NOTE Paragraph 00:03:13.685 --> 00:03:19.211 しかし紀元前48年  カエサルがアレクサンドリアを包囲し 00:03:19.211 --> 00:03:21.800 湾内の船に火を放ちました 00:03:21.800 --> 00:03:26.827 長い間 識者の間では 図書館は火事で 焼失したのだと信じられていました 00:03:26.827 --> 00:03:30.314 確かに拡大していく蔵書の一部は 燃滅したかもしれませんが 00:03:30.314 --> 00:03:32.135 古代文書から 00:03:32.135 --> 00:03:36.661 学者たちがその後も長く図書館を 訪れていたことがわかっています 00:03:36.661 --> 00:03:41.235 それも この都市の変遷とともに 徐々に消えていきました 00:03:41.235 --> 00:03:42.266 ギリシアからローマ 00:03:42.266 --> 00:03:43.172 キリスト教徒 00:03:43.172 --> 00:03:45.177 そしてムスリムの手に 渡っていったのです 00:03:45.177 --> 00:03:48.323 支配者が変わるたびに 彼らは蔵書を誇りというよりも 00:03:48.323 --> 00:03:50.786 脅威とみなしました 00:03:50.786 --> 00:03:52.882 415年に 00:03:52.882 --> 00:03:56.288 キリスト教徒の支配者は 数学者ヒュパティアを 00:03:56.288 --> 00:03:59.956 図書館の古代ギリシャの文書を 研究したとして殺害しました 00:03:59.956 --> 00:04:02.379 その文書が冒涜的だと みなされたからです NOTE Paragraph 00:04:02.379 --> 00:04:06.903 アレクサンドリア図書館とその蔵書は とうの昔に消えてしまいましたが 00:04:06.903 --> 00:04:09.625 人類は今も最善の方法で 知識を集め 00:04:09.625 --> 00:04:10.557 使い 00:04:10.557 --> 00:04:12.506 保存することに取り組んでいます 00:04:12.506 --> 00:04:14.737 現代は情報量が増え 00:04:14.737 --> 00:04:17.383 その保存技術もはるかに発達していますが 00:04:17.383 --> 00:04:19.040 果たして 00:04:19.040 --> 00:04:22.487 今のデジタル文書は 00:04:22.487 --> 00:04:25.790 アレクサンドリアの インクと紙の巻物よりも長持ちするでしょうか 00:04:25.790 --> 00:04:29.406 蓄積した知識が 物理的には安全だとしても 00:04:29.406 --> 00:04:32.672 私たちはデジタル書庫を 破壊しようとする 00:04:32.672 --> 00:04:34.869 油断ならぬ力に 抵抗しなければなりません 00:04:34.869 --> 00:04:36.252 それは知識への恐れや 00:04:36.252 --> 00:04:39.791 過去を省みない横柄な態度です 00:04:39.791 --> 00:04:43.967 過去との違いは 現代の私たちは 対処の仕方を知っているということです