あなたが座っている場所について 考えてみましょう 時間を巻き戻してみると そこは浅海の底に 沈んでいたのかもしれませんし 何キロもの厚さの岩石の下に 埋もれていたか それとも 熱でドロドロ溶けた地獄のような 風景の中を漂っていたのかもしれません しかし 約46億年ほど前にまで遡ると あなたは 新たに生まれた星の周りを周回する ― 塵とガスからなる巨大な雲の まっただ中にいることでしょう これは最も大きく 小さくもある 物理学のミステリーです 宇宙塵でできた「綿ぼこり」の謎です 星と星の間の 一見何もないような空間には 実は たいていの場合 超新星によって吹き飛ばされた ガスや塵の雲が含まれています 密度の濃い雲がジーンズ質量という 一定のしきい値に達すると 自ら崩壊します 雲が縮んでいくと どんどん速く回転し 温度が上昇してゆき ついには その核にある水素が 燃焼するほどに熱くなります この時点で星が生まれます 新しい星で核融合が始まると 雲の上下にガスを噴出し ガスと原始惑星系円盤からなる 周回するリングを後に残します ここでは驚異的に強い風が 吹いています ガスの渦巻が粒子を四散させ そして粒子同士を衝突させます 塵は小さな金属の破片 岩石の粒と 奇妙なことに氷で作られています 私たちはこれらの円盤を 何千個も夜空に観測してきました それらは塵が どんどん大きな塊になっていく ― さまざまな発達の段階にあります 塵の粒は人間の髪の太さの 100分の1で ファンデルワールス力によって 互いに付着します この時 電子雲が 分子の一方の側に移動し 片側は負に帯電し 反対側では正に帯電します 異種の電荷同士は引合いますが ファンデルワールス力は 微小なものの結合だけを可能にします ここで問題に突き当たります 一旦 塵の塊がある大きさになると 風が強い円盤の環境によって 塵の塊同士が衝突するときに 塊が壊れるはずです なぜ大きくなり続けるかは 「綿ぼこり」の最初の謎です これに答えるために ある理論は静電気に注目します 強力なガンマ線やX線 そして紫外線の光子が 円盤の中の気体の原子から 電子を弾き出し 陽イオンと 負の電荷をもった電子を 作り出します 電子は塵に衝突して付着し 塵を負に帯電させます そして風が塊を押し出すと 同種の電荷同士は反発し 衝突の際に減速します 穏やかな衝突では バラバラになりませんが 反発が強すぎると 大きくはなりません ある理論では 高エネルギーの粒子は 塵の塊からより多くの電子を 弾き出すことができ 塵の塊は正に帯電します 異種の電荷同士はまた引合い 塊は急速に大きくなります ですが やがてまた 新たな謎が現れます 隕石にみられる証拠から これらのフワフワな「綿ぼこり」が やがて熱されて 溶け その後に冷やされて コンドルール(球粒) という固体の小粒になることが知られています それがどのようにして なぜ起きるのかは不明なのです その上 それらの小粒ができたら どう互いに付くのでしょうか 以前からあった静電気力では 弱すぎますし 小さい岩石は 重力による結合も無理です 重力は関わる物体の質量に 比例して大きくなります そのため小さな山ほどの サイズの小惑星でも あなたは足の力のみで難なく 脱出することができるのです では重力でないなら 何でしょうか おそらく塵です 小粒の外側に集まった フワフワした塵の縁が マジックテープのように 作用するのかもしれません これに関する証拠が隕石にあり そこでは多くのコンドルールが 縁を非常に細かい物質 ― おそらくは 凝集した塵で 覆われています ついにはコンドルールの小粒が より大きい岩石の中で接合して その幅が1キロ程になると やっと重力により形を 保てるようになります 衝突と合体は続き どんどん大きい物体になります 私たちが現在知っている 惑星もそういう物体です 最終的に 私たちの知る天体の初期の状態 ― 惑星の大きさや 太陽系での位置 そして元素の成分は とてつもなく多くの 偶然の衝突で決まったのです 塵の雲が少し変わるだけで 地球で生命が誕生するための条件が 整わなかったかもしれません