1 00:00:07,694 --> 00:00:11,534 思考実験として想像してみましょう あなたは小さな村に住んでいます 2 00:00:11,534 --> 00:00:15,102 食事は村にある 養魚池の魚がたよりです 3 00:00:15,102 --> 00:00:18,071 その池を他の3人の村人と共有します 4 00:00:18,071 --> 00:00:23,412 12匹の魚から始まって 魚が繁殖します 5 00:00:23,412 --> 00:00:27,856 毎晩 2匹ごとに1匹の子魚が増えます 6 00:00:27,856 --> 00:00:30,424 では 食料の供給を最大にするためには 7 00:00:30,424 --> 00:00:34,266 1日何匹の魚を捕まえるべきなのでしょうか 8 00:00:34,266 --> 00:00:36,596 少し考えてみてください 9 00:00:36,596 --> 00:00:39,847 小魚もすぐに大きく成長して 10 00:00:39,847 --> 00:00:42,866 池はいっぱいになると仮定します 11 00:00:42,866 --> 00:00:46,726 捕る魚の性別などは 無視するとしましょう 12 00:00:46,726 --> 00:00:50,756 答えは? 1匹です あなただけではありません 13 00:00:50,756 --> 00:00:53,707 各村人への食料供給を 最大化するベストな方法は 14 00:00:53,707 --> 00:00:58,437 各漁師が1日に1匹だけ捕る方法です 15 00:00:58,437 --> 00:01:00,108 こうすれば数学的にうまくいきます 16 00:01:00,108 --> 00:01:04,734 もし各村人が魚1匹を捕れば 翌日には魚は8匹になります 17 00:01:04,734 --> 00:01:07,117 1組の魚が小魚1匹を産み 18 00:01:07,117 --> 00:01:12,187 次の日には 12匹になり 池は元どおり 魚が補充されるのです 19 00:01:12,187 --> 00:01:17,499 誰かが1匹以上捕れば 繁殖ペアの数は減少します 20 00:01:17,499 --> 00:01:20,708 魚の数が回復することはありません 21 00:01:22,408 --> 00:01:25,149 結局 池に魚はいなくなってしまい 22 00:01:25,149 --> 00:01:28,699 4人の飢えた村人たちが残るのです 23 00:01:28,699 --> 00:01:31,859 この魚が住む池は ある古典的問題の一例にすぎません 24 00:01:31,859 --> 00:01:34,937 「コモンズの悲劇」と呼ばれるものです 25 00:01:34,937 --> 00:01:37,508 この現象については 1833年に初めて小論文で記述されています 26 00:01:37,508 --> 00:01:42,177 経済学者ウィリアム・ フォースター・ロイドによるものです 27 00:01:42,177 --> 00:01:44,749 村の共有地における 28 00:01:44,749 --> 00:01:47,788 牛の過放牧について論じています 29 00:01:47,788 --> 00:01:52,628 100年以上後になって 環境学者の ギャレット・ハーディンがその概念を復活させ 30 00:01:52,628 --> 00:01:55,358 限りある資源を 多くの個人で 共有するとどうなるか 31 00:01:55,358 --> 00:01:58,200 説明しました 32 00:01:58,200 --> 00:01:59,689 例えば 放牧地や 33 00:01:59,689 --> 00:02:00,792 漁業水域 34 00:02:00,792 --> 00:02:01,889 居住地 35 00:02:01,889 --> 00:02:03,940 さらには清浄な空気に至るまでです 36 00:02:03,940 --> 00:02:08,039 ハーディンはこれらの状況は 短期的な自己利益のために 37 00:02:08,039 --> 00:02:10,249 公益を犠牲にするものだと 主張しました 38 00:02:10,249 --> 00:02:12,741 万民にとって悪い結末― 39 00:02:12,741 --> 00:02:14,140 過放牧や 40 00:02:14,140 --> 00:02:15,179 魚の乱獲 41 00:02:15,179 --> 00:02:16,489 人口過剰 42 00:02:16,489 --> 00:02:17,560 汚染 43 00:02:17,560 --> 00:02:20,760 その他の社会問題や 環境問題になってしまうのです 44 00:02:20,760 --> 00:02:23,270 「コモンズの悲劇」の重要な特徴は 45 00:02:23,270 --> 00:02:28,600 個人が利益を得る機会を生む一方で 46 00:02:28,600 --> 00:02:33,872 より大きな集団に対して あらゆる悪影響を及ぼすことです 47 00:02:33,872 --> 00:02:37,107 その意味を理解するために もう一度 養魚池に戻りましょう 48 00:02:37,107 --> 00:02:39,691 個々の漁師が自分のために 49 00:02:39,691 --> 00:02:42,952 できるだけ多くの魚を 捕ろうしたとしましょう 50 00:02:42,952 --> 00:02:45,571 一方で 魚の繁殖の減少も 51 00:02:45,571 --> 00:02:48,762 村全体で分け合うことになります 52 00:02:48,762 --> 00:02:51,453 隣人に取り分を奪われないように 53 00:02:51,453 --> 00:02:56,403 漁師は余分に魚を獲ることが 最優先だと考え 1匹— 54 00:02:56,403 --> 00:02:57,242 2匹— 55 00:02:57,242 --> 00:02:58,643 3匹と余分に捕ります 56 00:02:58,643 --> 00:03:02,591 残念ながら 他の漁師たちも 同じ結論に達します 57 00:03:02,591 --> 00:03:04,043 それが悲劇なのです 58 00:03:04,043 --> 00:03:10,419 自分にとっての短期的な最適化は 長期的には誰にとっても最適にはなりません 59 00:03:10,419 --> 00:03:13,303 これは単純化された例ですが 「コモンズの悲劇」は 60 00:03:13,303 --> 00:03:17,864 日常生活のさらに複雑なシステムにおいて 見られるものなのです 61 00:03:17,864 --> 00:03:22,783 抗生物質の過剰使用は 短期的には 畜産物の増産や 62 00:03:22,783 --> 00:03:25,023 ありふれた病気に対する治療に 利をもたらしますが 63 00:03:25,023 --> 00:03:30,003 種全体を脅かすような 抗生物質への耐性をもった 64 00:03:30,003 --> 00:03:32,843 バクテリアの進化にもつながります 65 00:03:32,843 --> 00:03:36,466 石炭火力発電所は消費者に安い電力を供給し 66 00:03:36,466 --> 00:03:38,563 オーナーに利益をもたらします 67 00:03:38,563 --> 00:03:41,225 こういう局所的な利益は 短期的には役立ちますが 68 00:03:41,225 --> 00:03:46,985 石炭の採掘や燃焼による汚染は 大気全体に広がり 69 00:03:46,985 --> 00:03:49,968 何千年にも渡って残り続けるのです 70 00:03:49,968 --> 00:03:52,108 例は他にも 71 00:03:52,108 --> 00:03:53,024 ゴミのポイ捨て 72 00:03:53,024 --> 00:03:54,188 水不足 73 00:03:54,188 --> 00:03:55,495 森林破壊 74 00:03:55,495 --> 00:03:56,728 交通渋滞 75 00:03:56,728 --> 00:03:59,541 さらにペットボトルに入った 水の購入などもあります 76 00:03:59,541 --> 00:04:05,295 でも 人間の文明には優れたことを 実現する力があることは明らかです 77 00:04:05,295 --> 00:04:06,785 社会契約を作り 78 00:04:06,785 --> 00:04:08,595 共同社会での協定を作り 79 00:04:08,595 --> 00:04:10,146 政府を選挙で決め 80 00:04:10,146 --> 00:04:11,995 法律を可決します 81 00:04:11,995 --> 00:04:17,616 どれも 個人の衝動的な行動から 集団を守るためのものです 82 00:04:17,616 --> 00:04:22,186 簡単ではありませんし もちろん 大抵の場合 決着がつきませんが 83 00:04:22,186 --> 00:04:26,995 ハーディンの教えを忘れなければ 人類が最善を尽くすことで 84 00:04:26,995 --> 00:04:31,337 どの問題も解決できるし これからも解決していけます 85 00:04:31,337 --> 00:04:33,866 「コモンズの悲劇」があてはまるときは 86 00:04:33,866 --> 00:04:37,436 私たち全体にとって良いことが 私たち個人にとっても良いことなのです