WEBVTT

00:00:06.970 --> 00:00:11.995
生まれた時に呪われた赤子
善と悪の壮絶な戦い

00:00:11.995 --> 00:00:14.685
キスで目覚める真実の愛

00:00:14.685 --> 00:00:18.209
『眠れる森の美女』は世界中で
愛されている民話の一つです

00:00:18.209 --> 00:00:23.169
しかし とても有名な演出形式の中に
無言で物語を伝えているものがあります

00:00:23.169 --> 00:00:25.359
1890年の初演以来

00:00:25.359 --> 00:00:26.885
『眠れる森の美女』は

00:00:26.885 --> 00:00:30.525
歴史上 最も頻繁に上演されている
バレエ演目の一つです

00:00:30.525 --> 00:00:32.945
では この作品が
これほど愛される理由は何でしょうか？

00:00:32.945 --> 00:00:38.159
バレエはこの物語や他の物語に
何をもたらしているのでしょうか？

NOTE Paragraph

00:00:38.159 --> 00:00:40.899
バレエの本質は 計り知れないほど
多くの時間の練習を経て

00:00:40.899 --> 00:00:45.326
ダンサーが丹精込めて完成させた
多くの身振りです

00:00:45.326 --> 00:00:48.666
このユニークな一連の身振りは 
何世紀にもわたり披露されてきたもので

00:00:48.666 --> 00:00:51.076
各動作には多くの意味と歴史が
含まれています

00:00:51.076 --> 00:00:53.966
しかし歌に感動するために
音楽を学ぶ必要がないように

00:00:53.966 --> 00:00:57.266
バレエを理解するために
それを学ぶ必要はありません

00:00:57.266 --> 00:01:01.792
そして 作曲家が音符や楽節を組み合わせて
作曲するように

00:01:01.792 --> 00:01:05.792
振付師はこれらの身振りに
新しい動きを加えて

00:01:05.792 --> 00:01:08.232
表現力豊かな組み合わせを創ります

00:01:08.232 --> 00:01:10.932
バレリーナたちは 
オーケストラの生演奏の楽譜と共に

00:01:10.932 --> 00:01:16.752
物語 感情 個性を表現するために 
これらの組み合わせを正確に演じます

NOTE Paragraph

00:01:16.752 --> 00:01:18.852
『眠れる森の美女』の
オープニングシーンでは

00:01:18.852 --> 00:01:21.622
ほとばしる様な技巧により

00:01:21.622 --> 00:01:25.082
赤ちゃんのオーロラ姫にプレゼントを贈る
妖精の宮廷の様子を表現しています

00:01:25.082 --> 00:01:28.182
「パンくずの精」は「ポアント」という
つま先で立った状態で

00:01:28.182 --> 00:01:29.872
繊細な歩き方をし

00:01:29.872 --> 00:01:32.822
バイオリンの軽やかな弾き音に
ステップを合わせます

00:01:32.822 --> 00:01:35.832
バレリーナは音楽と完璧に調和した動作で

00:01:35.832 --> 00:01:40.027
バイオリンの「トリル」を
優美な「ブーレ」で真似します

00:01:40.027 --> 00:01:44.560
オーロラに強い意志の贈り物をする
「激しさの精」は

00:01:44.560 --> 00:01:49.259
まるで指から稲妻を発しているような
振付を与えられています

00:01:49.259 --> 00:01:51.002
彼女は飛び跳ねながら
ステージを横切り

00:01:51.002 --> 00:01:55.322
素早く「シェネ（回転）」したのち
ちゅうちょなく「ジュテ」をします

00:01:55.322 --> 00:01:58.642
さらに文字通りの意味をもった
振付もあります

00:01:58.642 --> 00:02:03.378
邪悪な妖精 カラボスは
死をもたらすポーズ「X」で姫を呪い

00:02:03.378 --> 00:02:07.378
慈悲深いリラの精は
その呪いを解きます

NOTE Paragraph

00:02:07.378 --> 00:02:10.349
もちろん音楽と動作の関係は

00:02:10.349 --> 00:02:12.119
必ずしも単純なものでもありません

00:02:12.119 --> 00:02:16.119
クラシックバレエの身振りは
音楽的な要素に合わせることが多いものの

00:02:16.119 --> 00:02:19.039
ダンサーとオーケストラの
歩調の合わせ具合も

00:02:19.039 --> 00:02:21.179
振付を決める一つの手段となります

00:02:21.179 --> 00:02:25.179
登場人物の動きと場面を同調させて
リズミカルな明快さを演出するものもあれば

00:02:25.179 --> 00:02:28.639
オーケストラの演奏から
意図的に離れていくものもあります

00:02:28.639 --> 00:02:31.439
ダンサーと音楽家は
この微妙なバランスを

00:02:31.439 --> 00:02:33.149
演技全体を通して保ちます

00:02:33.149 --> 00:02:36.919
そこには スピードとリズムの
生き生きした駆け引きがあるのです

NOTE Paragraph

00:02:36.919 --> 00:02:40.589
しかし バレエでは
演技にもまして最も大切なことは

00:02:40.589 --> 00:02:43.689
振付師と音楽の関係です

00:02:43.689 --> 00:02:48.368
振付師 マリウス・プティパと
作曲家 ピョートル・I・チャイコフスキーは

00:02:48.368 --> 00:02:52.478
『眠れる森の美女』を
細部に至るまで 共に制作しました

00:02:52.478 --> 00:02:58.618
それは16歳の誕生日を迎えたオーロラ姫の
高揚感あふれる入場に顕著に表れます

00:02:58.618 --> 00:03:03.398
チャイコフスキーの熱のこもった音楽は
しばしば突然と 前のめりになります

00:03:03.398 --> 00:03:07.573
楽節を短くしてまでも
彼女のじれったさを捉えようとしています

00:03:07.573 --> 00:03:12.132
プティバはパーティーの開始を待つオーロラを
前後に跳ぶ振付で表現しました

00:03:12.132 --> 00:03:15.992
これは「パ・ドゥ・シャ」という振付けで
フランス語で「猫のステップ」を意味します

NOTE Paragraph

00:03:15.992 --> 00:03:19.562
祝賀会が始まれば
この身振りで優雅に舞い

00:03:19.562 --> 00:03:23.242
肉体美を披露するのは
ダンサーの役目です

00:03:23.242 --> 00:03:27.752
オーロラを演じる一番の難所は
有名なローズアダージオです

00:03:27.752 --> 00:03:30.432
４人の求婚者が彼女の手を奪い合う中

00:03:30.432 --> 00:03:35.173
姫は目を見張るバランスを保ちながら
全て「ポアント」で舞います

00:03:35.173 --> 00:03:39.544
彼女は求婚者たちの手を一つ一つ
少しだけ取りますが

00:03:39.544 --> 00:03:43.104
息を呑むような体力と技術をもって 
支えがない状態でバランスを取ります

NOTE Paragraph

00:03:43.104 --> 00:03:46.134
しかし意味を伝えることは
技術だけでなく

00:03:46.134 --> 00:03:48.384
動作の仕方や個性によってもなされます

00:03:48.384 --> 00:03:50.294
俳優がセリフを伝えるように

00:03:50.294 --> 00:03:54.638
バレリーナは振りによって
様々な感情を伝えることができます

00:03:54.638 --> 00:03:57.038
オーロラは 求婚者を退けるかのように
手を突き放し

00:03:57.038 --> 00:03:59.918
エレガントかつ落ち着いた姿を
見せることもあれば

00:03:59.918 --> 00:04:04.169
「ポワント」で優雅に振る舞いつつ
自信のほどを窺わせるといった

00:04:04.169 --> 00:04:06.129
狡猾さや媚びる様子を
見せることもあります

NOTE Paragraph

00:04:06.129 --> 00:04:09.995
『眠れる森の美女』はバレエの可能性を
最大限に披露しています

00:04:09.995 --> 00:04:12.987
優雅なショー
ドラマチックな身体的表現

00:04:12.987 --> 00:04:16.117
魅惑的な音楽と振付の調和は

00:04:16.117 --> 00:04:20.117
幻想的なロマンスのテーマを
完璧なまでに表しています

00:04:20.117 --> 00:04:22.679
しかし壮大なおとぎ話が
バレエの全てではありません

00:04:22.679 --> 00:04:25.539
バレエは物語性のない
感情的な旅であったり

00:04:25.539 --> 00:04:27.999
形式の実験的な破壊であったり

00:04:27.999 --> 00:04:30.339
単純に技術の披露であったりもします

00:04:30.339 --> 00:04:34.681
この芸術形式は何世紀と続く古いルールのもと
常に実験し続けているため

00:04:34.681 --> 00:04:38.681
新旧いずれの物語を伝える上でも
最適な媒体となっているのです