1 00:00:06,549 --> 00:00:07,989 1992年 2 00:00:07,989 --> 00:00:12,211 おもちゃを積んだコンテナ船が 嵐にあいました 3 00:00:12,211 --> 00:00:14,647 積んでいたコンテナは海に落ち 4 00:00:14,647 --> 00:00:20,837 ゴム製のアヒル2万8千個などの おもちゃは北太平洋の波にさらわれました 5 00:00:20,837 --> 00:00:22,697 アヒルたちは一団で流されるのではなく 6 00:00:22,697 --> 00:00:23,977 それどころか 7 00:00:23,977 --> 00:00:27,307 世界各地の海岸に打ち上げられました 8 00:00:27,307 --> 00:00:29,557 研究者はその道すじをたどり 9 00:00:29,557 --> 00:00:33,727 海流を知る手がかりとしました 10 00:00:33,727 --> 00:00:36,493 海流が生じる原因はさまざまで 11 00:00:36,493 --> 00:00:40,043 風や潮 海水密度の違い 12 00:00:40,043 --> 00:00:43,073 地球の自転などが関係しています 13 00:00:43,073 --> 00:00:47,733 海底や海岸の地形も 14 00:00:47,733 --> 00:00:52,200 流れの速さや向きに関係します 15 00:00:52,200 --> 00:00:55,030 海流には大きくわけて 16 00:00:55,030 --> 00:00:58,290 表層流と深層流があります 17 00:00:58,290 --> 00:01:02,660 表層流は海面から およそ10パーセントまでの深さで起き 18 00:01:02,660 --> 00:01:06,230 深層流は 残り90パーセントの深さで起きます 19 00:01:06,230 --> 00:01:10,960 表層流と深層流は 起きる原因は違いますが おたがいに影響して 20 00:01:10,960 --> 00:01:15,160 海洋全体に複雑な流れを生みだします 21 00:01:15,160 --> 00:01:16,185 海岸近くでは 22 00:01:16,185 --> 00:01:19,635 表層流は 風と潮の力によって 23 00:01:19,635 --> 00:01:24,505 海面の上下とともに 海水が前後することで生じます 24 00:01:24,505 --> 00:01:29,773 沖では風がおもな原因です 25 00:01:29,773 --> 00:01:34,507 風は海面近くの水を引っぱり 26 00:01:34,507 --> 00:01:37,477 この水の動きがその下の層の水を引っぱり 27 00:01:37,477 --> 00:01:39,697 この層の動きが さらに下の層の水を動かします 28 00:01:39,697 --> 00:01:43,197 なんと 海面から400メートルの深さでさえ 29 00:01:43,197 --> 00:01:47,027 海上を吹く風の影響を受けるのです 30 00:01:47,027 --> 00:01:51,337 ズームアウトして 海流を地球規模で見わたしてみましょう 31 00:01:51,337 --> 00:01:54,820 海流が大きな円をえがき 「環流」を作っているのがわかります 32 00:01:54,820 --> 00:01:57,580 環流は北半球では時計まわりの円をえがき 33 00:01:57,580 --> 00:02:00,430 南半球では反時計まわりの円をえがきます 34 00:02:00,430 --> 00:02:02,620 地球の自転が風向きに影響を与え 35 00:02:02,620 --> 00:02:06,630 これが海流を発生させるために起こります 36 00:02:06,630 --> 00:02:08,280 もし地球が自転しなければ 空気も水も 37 00:02:08,280 --> 00:02:10,740 気圧の低い赤道と 38 00:02:10,740 --> 00:02:14,610 気圧の高い南極・北極のあいだを 行き来するだけです 39 00:02:14,610 --> 00:02:16,350 けれども地球の自転により 40 00:02:16,350 --> 00:02:20,860 赤道から北極にむかう空気は東にそれ 41 00:02:20,860 --> 00:02:24,509 もどりの空気は西にそれます 42 00:02:24,509 --> 00:02:27,299 南半球ではこれと反対になります 43 00:02:27,299 --> 00:02:29,229 そのため 主な風の流れは 44 00:02:29,229 --> 00:02:32,789 大洋上で 大きなループをえがきます 45 00:02:32,789 --> 00:02:35,679 これを「コリオリ効果」といいます 46 00:02:35,679 --> 00:02:40,129 この風によって環流も 円をえがいて流れるのです 47 00:02:40,129 --> 00:02:43,793 水は空気よりも熱をのがしにくく 48 00:02:43,793 --> 00:02:48,303 環流は各地の気温をならすはたらきをします 49 00:02:48,303 --> 00:02:49,864 深層流は表層流と異なり 50 00:02:49,864 --> 00:02:55,014 主に海水密度の違いによって 生み出されます 51 00:02:55,014 --> 00:02:58,496 水は北極に向かううちに冷え 52 00:02:58,496 --> 00:03:01,036 水中の塩分も濃くなります 53 00:03:01,036 --> 00:03:05,956 水だけが氷となり 塩分は海水中に残るからです 54 00:03:05,956 --> 00:03:09,946 冷たく塩分を多く含む水は 密度が高いため下にしずみ 55 00:03:09,946 --> 00:03:12,616 上には温かい水が流れこみます 56 00:03:12,616 --> 00:03:17,076 この上下の流れは 「熱塩循環」と呼ばれます 57 00:03:17,076 --> 00:03:21,563 熱塩循環は 風が起こす表層流といっしょになって 58 00:03:21,563 --> 00:03:26,319 地球をかけめぐる 「海洋大循環」をつくります 59 00:03:26,319 --> 00:03:29,486 海水は深海から海面へとのぼっていくとき 60 00:03:29,486 --> 00:03:35,726 食物連鎖の底辺にある微生物にとって 必要な栄養分を運んでいきます 61 00:03:35,726 --> 00:03:39,306 海洋大循環は もっとも長い海流で 62 00:03:39,306 --> 00:03:41,306 世界中の海をかけめぐりますが 63 00:03:41,306 --> 00:03:44,906 毎秒2~3センチメートルしか 動きません 64 00:03:44,906 --> 00:03:49,456 1滴の水がひとめぐりするのに 1千年かかることもあります 65 00:03:49,456 --> 00:03:52,996 けれども海洋温度の上昇により 66 00:03:52,996 --> 00:03:54,956 流れはさらに遅くなっているようです 67 00:03:54,956 --> 00:03:57,746 モデルによると このことが気候システムに影響し 68 00:03:57,746 --> 00:03:59,616 大西洋の両岸に 被害をもたらしているようです 69 00:03:59,616 --> 00:04:02,856 減速がすすみ流れが止まったらどうなるかは 70 00:04:02,856 --> 00:04:05,146 誰にもわかりません 71 00:04:05,146 --> 00:04:09,136 正しく予測し対策をたてるには 海流の研究と 72 00:04:09,136 --> 00:04:13,826 海流を起こす力の研究を続けるしか 方法はないのです