WEBVTT 00:00:00.840 --> 00:00:03.416 今ここで 私が話している言語は 00:00:03.440 --> 00:00:07.776 世界共通語への道を歩みつつあります 00:00:07.800 --> 00:00:10.136 いいか悪いかは別としてね 00:00:10.160 --> 00:00:11.376 考えてもみてください 00:00:11.400 --> 00:00:13.256 それは インターネットの言語であり 00:00:13.280 --> 00:00:15.256 金融の言語 00:00:15.280 --> 00:00:17.616 航空交通管制の言語 00:00:17.640 --> 00:00:19.016 大衆音楽や 00:00:19.040 --> 00:00:20.256 外交の言語でもあります 00:00:20.280 --> 00:00:21.750 英語は どこにでもあります NOTE Paragraph 00:00:22.320 --> 00:00:26.416 実は 英語よりも 中国標準語を話す人の方が多いのですが 00:00:26.440 --> 00:00:28.936 中国語を学ぶ英語話者よりも 00:00:28.960 --> 00:00:31.656 英語を学ぶ中国語話者の方が多いのです 00:00:31.680 --> 00:00:33.416 この前 聞いたところでは 00:00:33.440 --> 00:00:36.896 中国では 24の大学が全授業を 00:00:36.920 --> 00:00:39.656 英語で行っているそうです 00:00:39.680 --> 00:00:41.260 英語が世界を席巻しつつあります NOTE Paragraph 00:00:41.680 --> 00:00:43.376 さらに 00:00:43.400 --> 00:00:46.016 こんな予測もあります 今世紀末には 00:00:46.040 --> 00:00:50.296 現存する約6千の言語の ほぼ全てが 00:00:50.320 --> 00:00:52.216 話されなくなってしまい 00:00:52.240 --> 00:00:54.840 たった数百しか残らない というのです 00:00:55.360 --> 00:00:56.976 さらには 00:00:57.000 --> 00:01:01.576 今や 会話をその場で 翻訳できるだけでなく 00:01:01.600 --> 00:01:04.920 その品質も年々向上しています NOTE Paragraph 00:01:05.360 --> 00:01:08.096 なぜ こんなことを お話ししているかと言いますと 00:01:08.120 --> 00:01:11.256 ある問いに向き合うべき時期が来ている― 00:01:11.280 --> 00:01:13.110 そう思うからです 00:01:13.130 --> 00:01:17.056 それは「なぜ外国語を学ぶべきか」です 00:01:17.080 --> 00:01:21.056 ここでは 英語が 外国語に当たる場合は除きます 00:01:21.080 --> 00:01:24.096 世界中の誰もが ひとつの言語で意思疎通できる時代に 00:01:24.120 --> 00:01:29.600 なりつつあるのに なぜ わざわざ別の言語を学ぶのでしょう NOTE Paragraph 00:01:30.560 --> 00:01:32.516 理由はたくさんありますが 00:01:32.526 --> 00:01:34.736 まず取り上げたいのは 00:01:34.760 --> 00:01:37.736 皆さんが最もよく耳にされている理由です 00:01:37.760 --> 00:01:41.976 この理由は 皆さんが思うより ずっと危険なんです 00:01:42.050 --> 00:01:43.736 どんなものかと言うと 00:01:43.744 --> 00:01:46.680 思考は言語を介して伝わるものなので 00:01:46.700 --> 00:01:50.936 異なる言語の語彙や文法を学ぶことで 00:01:50.960 --> 00:01:54.776 誰もが ある種のトリップ状態になれる 00:01:54.800 --> 00:01:56.016 そう考えるのです 00:01:56.040 --> 00:02:00.256 とてつもなく魅力的に聞こえますが 00:02:00.280 --> 00:02:01.656 実は 問題ありなんです NOTE Paragraph 00:02:01.670 --> 00:02:05.106 まったくもって間違い というわけではありません 00:02:05.126 --> 00:02:08.895 例えば フランス語とスペイン語では 00:02:08.919 --> 00:02:13.216 「テーブル」を意味する単語は なぜか女性名詞であるとされています 00:02:13.230 --> 00:02:17.196 女性定冠詞を付けて「la table」 「la mesa」と言わないといけません 00:02:17.210 --> 00:02:18.656 従って 00:02:18.680 --> 00:02:21.076 フランス語かスペイン語を話す人に 00:02:21.100 --> 00:02:23.776 テーブルが「話す」ところを 00:02:23.800 --> 00:02:27.856 想像してもらったとしたら 00:02:27.880 --> 00:02:31.836 単なる偶然ではなく かなりの確率で 00:02:31.850 --> 00:02:33.526 テーブルは 00:02:33.546 --> 00:02:38.436 女性のような高い声で話すと 答えると言うのです 00:02:38.470 --> 00:02:42.536 フランス人やスペイン人にとっては テーブルは女の子みたいなもので 00:02:42.560 --> 00:02:45.736 英語を話す人とは 違う感覚を持っているのです NOTE Paragraph 00:02:45.760 --> 00:02:47.636 こうしたデータは誰もが好きで 00:02:47.656 --> 00:02:49.736 よく言われるのが これこそ 00:02:49.760 --> 00:02:54.576 特定の言語を話すことで持てる 世界観があることを示すものだということです 00:02:54.600 --> 00:02:55.936 でも 気を付けてください 00:02:55.960 --> 00:03:00.416 もし私たちのような 英語を母語として話す人を 00:03:00.464 --> 00:03:02.950 冷静に分析してみたとしたら? 00:03:02.960 --> 00:03:06.736 英語から生まれる世界観って何ですか? NOTE Paragraph 00:03:06.760 --> 00:03:09.496 ある英語話者を例にとって 考えてみましょう 00:03:09.520 --> 00:03:12.846 スクリーンに出ているのは ボノです 00:03:12.860 --> 00:03:14.456 ボノは英語を話しますね 00:03:14.480 --> 00:03:17.466 確かに 彼は ある世界観を持っていると思います 00:03:17.480 --> 00:03:21.096 では こちらのドナルド・トランプ 00:03:21.120 --> 00:03:22.336 彼だって いちおう 00:03:22.360 --> 00:03:23.816 英語を話しますよね NOTE Paragraph 00:03:23.840 --> 00:03:25.320 (笑) NOTE Paragraph 00:03:27.520 --> 00:03:30.856 こちらは キム・カーダシアン 00:03:30.880 --> 00:03:32.856 彼女も英語を話します 00:03:32.980 --> 00:03:35.656 さて 英語話者が3人そろいました 00:03:35.700 --> 00:03:39.256 彼らが共通して持っている 世界観って何でしょう? 00:03:39.280 --> 00:03:44.376 3人をつなぐ英語という言語を通じて 形づくられる世界観とは何かって? 00:03:44.400 --> 00:03:46.276 これは非常に問題のある考え方なんです 00:03:46.286 --> 00:03:51.136 言語が思考を形づくるという考えが 徐々に一般的になりつつありますが 00:03:51.200 --> 00:03:57.646 何となくそう考えているだけで 確固たるものが ないことも多く 00:03:57.680 --> 00:04:02.390 世界に関する違った見方を 与えてくれるという趣旨ではありません NOTE Paragraph 00:04:02.730 --> 00:04:05.016 さて それならば 00:04:05.040 --> 00:04:07.046 なぜ 外国語を学ぶんでしょう? 00:04:07.060 --> 00:04:09.536 私たちの考え方を 変えてくれるものではないなら 00:04:09.560 --> 00:04:11.550 他にどんな理由があって学ぶんでしょう 00:04:11.720 --> 00:04:12.970 いくつかあります 00:04:13.600 --> 00:04:18.976 1つ目の理由は ある文化を受け入れ 00:04:19.000 --> 00:04:22.136 しっかりと味わい その一部になりたいというとき 00:04:22.160 --> 00:04:26.056 言語が文化を伝えるものかは さておき— 00:04:26.080 --> 00:04:28.016 それ自体も怪しいですが― 00:04:28.040 --> 00:04:29.856 その文化を受け入れるには 00:04:29.880 --> 00:04:32.336 その文化が営まれる言語を 00:04:32.360 --> 00:04:35.696 ある程度 マスターする必要がある ということです 00:04:35.720 --> 00:04:37.486 そうするしか ないのです NOTE Paragraph 00:04:37.496 --> 00:04:39.936 このことがよく分かる 面白い例があります 00:04:40.010 --> 00:04:43.656 少し ぼかさないといけませんが きっとご理解いただけるでしょう 00:04:43.680 --> 00:04:48.016 カナダのドゥニ・アルカン監督の ある映画のお話です 00:04:48.180 --> 00:04:51.976 ちなみに 監督の名前は 英語では 「デニス・アルカンド」になります 00:04:51.990 --> 00:04:55.176 彼の映画『モントリオールのジーザス』では 00:04:55.200 --> 00:04:57.416 登場人物の多くが 00:04:57.440 --> 00:05:02.506 活発 陽気で情熱的な 面白いフランス系カナダ人で 00:05:02.520 --> 00:05:03.836 フランス語を話す女性です 00:05:03.850 --> 00:05:06.326 映画の終盤にあるシーンで 00:05:06.336 --> 00:05:09.736 そんな女性たちが ある友人を 英語対応の病院に連れて行きます 00:05:09.760 --> 00:05:11.856 その病院では 英語で話さないといけません 00:05:11.880 --> 00:05:14.736 英語は話せる人たちなのですが 母語ではないので 00:05:14.760 --> 00:05:16.456 できれば英語は避けたいわけです 00:05:16.480 --> 00:05:18.416 彼女たちの英語は ゆっくりで 00:05:18.440 --> 00:05:20.446 訛っていて 表現も自然ではありません 00:05:20.470 --> 00:05:23.136 すると 愛すべき登場人物が一転して 00:05:23.160 --> 00:05:26.810 張りぼてのように見え 存在感にも陰りが出てしまうわけです NOTE Paragraph 00:05:27.340 --> 00:05:29.026 ある文化の中に入って行っても 00:05:29.036 --> 00:05:33.016 そうしたレースのカーテン越しに 人々を捉えていては 00:05:33.054 --> 00:05:35.950 決して文化を真に理解することには なりません 00:05:35.960 --> 00:05:38.736 数百の言語が生き残るとして 00:05:38.760 --> 00:05:40.126 それらを学ぶ理由のひとつは 00:05:40.144 --> 00:05:43.720 言語能力はすなわち その言語を話す人たちの文化に 00:05:43.760 --> 00:05:46.016 参加するためのチケットだからです 00:05:46.040 --> 00:05:49.276 ただ それが彼らのルールだから というだけです 00:05:49.290 --> 00:05:50.790 これが1つ目の理由です NOTE Paragraph 00:05:51.440 --> 00:05:52.736 2つ目の理由は 00:05:52.760 --> 00:05:54.176 よく言われるように 00:05:54.200 --> 00:05:59.186 2ヶ国語が話せれば 認知症になりにくく 00:05:59.200 --> 00:06:02.526 並行作業がうまくなる ということです 00:06:02.540 --> 00:06:05.986 これらは若いうちに 定着するものなので 00:06:06.000 --> 00:06:07.896 いつから 子どもに 新しい言語を 00:06:07.920 --> 00:06:12.456 学ばせるべきか ヒントを与えてくれるでしょう 00:06:12.480 --> 00:06:14.896 2ヶ国語を使うことは 健全なんです NOTE Paragraph 00:06:14.920 --> 00:06:16.816 そして3つ目 00:06:16.840 --> 00:06:20.540 言語は ただただ楽しいんです 00:06:20.800 --> 00:06:22.536 言われているより ずっと面白いです 00:06:22.560 --> 00:06:25.926 アラビア語で「katab」は 「彼は書いた」ということで 00:06:25.940 --> 00:06:29.156 「yaktubu」は 「彼は書く」「彼女は書く」 00:06:29.166 --> 00:06:32.136 「Uktub」は「書け」を意味します 00:06:32.160 --> 00:06:34.056 これらの単語の共通点は? 00:06:34.080 --> 00:06:36.216 実はこれらに共通するのは 00:06:36.230 --> 00:06:39.736 柱のごとく 真ん中にある子音なんです 00:06:39.760 --> 00:06:41.216 微動だにしない子音 00:06:41.240 --> 00:06:44.376 そのまわりで 母音が踊っています 00:06:44.400 --> 00:06:47.576 誰だって 口を動かして 発音してみたいでしょう 00:06:47.600 --> 00:06:49.016 ヘブライ語にもありますし 00:06:49.040 --> 00:06:52.696 エチオピアで広く話される アムハラ語もそうです 00:06:52.720 --> 00:06:54.136 楽しいんです NOTE Paragraph 00:06:54.160 --> 00:06:57.576 さらには 言語によって語順も違います 00:06:57.600 --> 00:06:59.816 いつもと違う語順で 話すことを学ぶのは 00:06:59.840 --> 00:07:04.956 外国に行って道路の反対側を 運転したり 00:07:04.966 --> 00:07:09.336 土地の薬草を目のまわりにつけたとき ヒリヒリするような感覚と 00:07:09.360 --> 00:07:10.766 似ています 00:07:10.780 --> 00:07:13.296 言語で それができるのです NOTE Paragraph 00:07:13.410 --> 00:07:14.380 ですから例えば 00:07:14.410 --> 00:07:16.576 『戻ってきた帽子ネコ (The Cat in the Hat Comes Back)』 00:07:16.600 --> 00:07:19.166 皆さん大好きな本ですよね 00:07:19.210 --> 00:07:20.376 『白鯨』みたいにね 00:07:20.460 --> 00:07:25.496 その本に こんなセリフが出てきます 「どこで 猫を見つけたと思う? 00:07:25.520 --> 00:07:27.920 どこにいたと思う? お風呂でケーキ食べていたんだよ 00:07:27.930 --> 00:07:28.750 本当だよ」 00:07:28.760 --> 00:07:31.826 さて これを中国語で 習得するとなったら 00:07:31.840 --> 00:07:33.106 こんな文の練習が必要です 00:07:33.120 --> 00:07:35.336 「わかる どこで見つけた 猫を? 00:07:35.360 --> 00:07:37.176 猫はお風呂 かぶりつくケーキの中 00:07:37.200 --> 00:07:38.986 間違いない かぶりつき かんでいる」 00:07:39.000 --> 00:07:40.426 これ 言えたら気分良いですね 00:07:40.440 --> 00:07:44.576 何年も何年も ぶっ続けで こんな風に楽しめるなんて良いでしょう NOTE Paragraph 00:07:44.600 --> 00:07:48.936 カンボジア語を学んだことはありますか? 00:07:48.960 --> 00:07:52.006 私もないのですが もし話せたら 00:07:52.030 --> 00:07:56.616 口の中で たかだか14種類程度の 英語の母音どころではなく 00:07:56.640 --> 00:07:57.896 それより多い— 00:07:57.920 --> 00:08:01.056 30は優に超える母音を 00:08:01.090 --> 00:08:04.856 カンボジア人のように 滑らかに にじみ出せるのです 00:08:04.880 --> 00:08:07.256 巣箱のミツバチのようにです 00:08:07.270 --> 00:08:09.930 これこそ 言語の力です NOTE Paragraph 00:08:10.440 --> 00:08:11.696 もっと言うなら 00:08:11.720 --> 00:08:15.656 今ほど 外国語の独学が しやすい時代はありません 00:08:15.680 --> 00:08:17.936 昔は 教室に通わないといけませんでした 00:08:17.960 --> 00:08:20.016 そこには勤勉な先生や 00:08:20.040 --> 00:08:21.656 天才的な先生がいるものですが 00:08:21.680 --> 00:08:24.016 決まったときにしかいないので 00:08:24.040 --> 00:08:25.296 教室に行くといっても 00:08:25.320 --> 00:08:27.136 時間は限られるわけです 00:08:27.160 --> 00:08:28.900 とにかく語学といえば教室でした 00:08:29.034 --> 00:08:31.806 それができなければ 「レコード」なるものを使いました 00:08:31.816 --> 00:08:33.456 昔の私はそれで練習をしました 00:08:33.480 --> 00:08:36.176 レコード1枚に入るデータには 限りがありました 00:08:36.200 --> 00:08:37.456 それはカセットでも 00:08:37.480 --> 00:08:39.866 今や骨董品と化した 「CD」なるものでも同じです 00:08:39.880 --> 00:08:42.456 ほかに「本」もありましたが 役に立たず 00:08:42.480 --> 00:08:43.856 まあ そんなものでした NOTE Paragraph 00:08:43.880 --> 00:08:46.836 今では 寝転がって 00:08:46.850 --> 00:08:49.256 リビングルームで ゴロゴロしつつ 00:08:49.280 --> 00:08:50.546 ウイスキーをすすりながら 00:08:50.560 --> 00:08:53.336 お望みの言語を独学で学べます 00:08:53.360 --> 00:08:56.116 「ロゼッタストーン」など 素晴らしい教材がありますからね 00:08:56.146 --> 00:08:59.056 認知度は低いですが 「Glossika」も かなりお勧めです 00:08:59.080 --> 00:09:00.426 いつでもできるので 00:09:00.446 --> 00:09:03.130 学習の量も質も高まります 00:09:03.480 --> 00:09:07.296 朝の習慣を様々な言語で 楽しむこともできます 00:09:07.320 --> 00:09:11.056 私は毎朝欠かさず いろんな言語で 『ディルバート』を楽しみます 00:09:11.080 --> 00:09:12.736 言語能力も上がりますよ 00:09:12.760 --> 00:09:14.816 20年前には できなかったことです 00:09:14.826 --> 00:09:18.176 自分が好きな言語 どれでも 00:09:18.200 --> 00:09:19.916 ポケットに入れて持ち歩き 00:09:19.936 --> 00:09:21.466 電話から情報を得るなんて 00:09:21.476 --> 00:09:25.110 当時なら どんな聡明な人でも サイエンス・フィクションだと言ったでしょう NOTE Paragraph 00:09:25.800 --> 00:09:28.336 皆さんに ぜひお勧めします 00:09:28.360 --> 00:09:32.336 ここで私が話している言語以外の言語を 学んでみてください 00:09:32.360 --> 00:09:35.536 今ほど学ぶのに適した時代は ありません 00:09:35.560 --> 00:09:37.056 ものすごく 楽しいですよ 00:09:37.080 --> 00:09:38.986 心を「変える」ことはできませんが 00:09:39.000 --> 00:09:42.096 心底「ぶっ飛ぶ」ような発見が 待っていること請け合いです NOTE Paragraph 00:09:42.120 --> 00:09:43.336 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:09:43.360 --> 00:09:46.651 (拍手)