0:00:00.646,0:00:03.964 僕の名前はハリー・ベーカー[br]ハリー・ベーカーが僕の名前 0:00:03.964,0:00:08.867 君の名前がハリー・ベーカーなら[br]僕らの名前は 同じ 0:00:08.867,0:00:10.307 (笑) 0:00:10.307,0:00:12.494 ちょっとした導入部でね 0:00:12.954,0:00:14.486 やあ 僕はハリー 0:00:14.486,0:00:17.063 数学を研究し 詩を書く 0:00:17.063,0:00:21.266 だから 素数をテーマとした[br]愛の詩から始めよう 0:00:21.266,0:00:22.915 (笑) 0:00:24.055,0:00:26.281 題は『59』 0:00:26.281,0:00:29.171 『素敵な素数』とでも[br]しようかと思ったけど 0:00:29.171,0:00:31.071 そうやって[br]皆 ひいちゃうからね 0:00:31.071,0:00:32.560 (笑) 0:00:32.560,0:00:34.836 では『59』を 0:00:36.736,0:00:39.359 59が目覚めたのは[br]縁起悪くも ベッドの反対側 0:00:39.359,0:00:41.910 なぜか髪の毛は[br]片側にペッタリ 0:00:41.910,0:00:45.797 ちょっと考えて[br]寝相のせいだと気付く 0:00:45.797,0:00:47.713 適当な服を探して[br]身に付ける 0:00:47.713,0:00:50.539 鏡をのぞいて[br]ちょっと悦に入る 0:00:50.539,0:00:53.372 荒削りながら[br]カジュアルさも兼ね備える自分 0:00:53.372,0:00:56.993 窓の外に目を見やると[br]目を奪われるのは 0:00:56.993,0:00:58.495 向かいの「60」 0:00:58.495,0:01:00.288 60の美しいこと 0:01:00.288,0:01:03.316 爪の先まで完ぺきで[br]ピッタリの装い 0:01:03.316,0:01:04.753 ぶしつけさ など微塵もない 0:01:04.753,0:01:08.036 これ以上ないほど いつも[br]ピッタリの時間に現れ 0:01:08.036,0:01:10.183 それも 超クールに[br]やってのける 0:01:10.183,0:01:13.490 59は伝えたかった[br]彼女の好きな花を知っていると 0:01:13.490,0:01:16.162 毎分 毎秒 毎時間[br]彼女のことを思い続けるも 0:01:16.162,0:01:18.801 思いが届かないことは分かっていた[br]決して結ばれない運命 0:01:18.801,0:01:20.911 通りのすぐ向かいにいる[br]彼女とは 0:01:20.911,0:01:22.451 住む世界が違うのだ 0:01:22.451,0:01:24.881 59は 丸まったキレの良い60を[br]こよなく愛すも 0:01:24.881,0:01:29.597 60は 59を“奇”数としか[br]思えないから(笑) 0:01:31.957,0:01:35.752 59が好きな映画は[br]『101(ワン・オー・ワン)』 0:01:35.752,0:01:38.754 60が好きなのは[br]続編の『102(ワン・オー・ツー)』 0:01:38.754,0:01:41.870 ロマンティックな59は[br]二人を薄幸な恋人だと疑わず 0:01:41.870,0:01:45.043 二人の力を合わせ[br]“奇”“偶(遇)”で軌跡を起こせると信じた 0:01:45.043,0:01:48.243 一方 60は母からの[br]厳しい言いつけどおり 0:01:48.243,0:01:50.040 二人の溝は埋められない[br]そう固持した 0:01:50.040,0:01:52.208 そのとき 59は[br]ママに支配された娘を 0:01:52.208,0:01:54.850 愛そうとすることに[br]無力さを感じていたが 0:01:54.850,0:01:57.239 少し計算を働かせれば[br]癒されたはずだった 0:01:57.239,0:01:59.669 60から59を引けば[br]残りは1で唯一無二の存在だから 0:01:59.669,0:02:02.197 ウジウジして[br]2ヶ月が過ぎ 0:02:02.197,0:02:04.649 61日後に[br]59は「61」と出会った 0:02:04.649,0:02:06.871 彼は鍵を失くし[br]両親も外出中だった 0:02:06.871,0:02:08.993 ある放課後のこと[br]彼がその家をふと見ると 0:02:08.993,0:02:11.506 ドアの番号は[br]少しくずしたスタイルだと気が付いた 0:02:11.506,0:02:13.991 なぜ これまで[br]話しかけなかったのだろう 0:02:13.991,0:02:16.119 彼女に招き入れられた59は[br]口をあんぐり 0:02:16.119,0:02:19.308 61は60に似ていて[br]ちょっと大きいだけ(笑) 0:02:19.308,0:02:22.710 彼女の方が目が可愛らしく[br]親しみある笑顔だった 0:02:22.710,0:02:25.136 そして彼と同様[br]荒削りでカジュアル 0:02:25.136,0:02:27.512 そして彼と同様[br]すべてが無秩序 0:02:27.512,0:02:30.345 そして彼と同様[br]母親は友だちが来ても気にしない 0:02:30.345,0:02:32.440 彼女は彼に似ていて[br]彼は彼女が好きだった 0:02:32.440,0:02:35.198 二人が似ていることを知れば[br]彼女も好きになると 彼は踏んだ 0:02:35.198,0:02:38.076 今回はいつもと違った[br]この子は素敵だった 0:02:38.076,0:02:40.636 彼は勇気をふり絞って[br]“数字”を尋ねた 0:02:40.636,0:02:45.350 「私は61よ」という彼女に[br]彼はにっこり「僕は59」と答えた 0:02:45.350,0:02:46.983 「今日 僕はすごく楽しかった 0:02:46.983,0:02:49.556 明日 良かったら[br]僕の家に来ないかい?」 0:02:49.556,0:02:50.419 「もちろん」と彼女 0:02:50.419,0:02:52.603 奇抜な人と話すのが[br]大好きな彼女は 0:02:52.603,0:02:54.551 非公式のファースト・デートの[br]誘いに乗った 0:02:54.551,0:02:56.711 彼の準備が整ったのは[br]約束の1分前 0:02:56.711,0:02:59.435 でも彼女は1分遅く到着したので[br]何の問題もなかった 0:02:59.435,0:03:01.879 その瞬間から[br]ノンストップでおしゃべりが続いた 0:03:01.879,0:03:04.354 二人は『Xファクター』を好み[br]二つのファクター(因数)を持つ 0:03:04.354,0:03:08.454 これは欠点どころか[br]二人の存在意義を高めていた 0:03:08.454,0:03:11.239 夜が明けるころには[br]互いが運命の人だと感じていた 0:03:11.239,0:03:14.213 ある日 彼女は[br]うぬぼれ屋の60について話していて 0:03:14.213,0:03:16.140 少し不愉快そうにする[br]59に気付いた 0:03:16.140,0:03:17.837 彼は顔を赤らめ[br]かつての恋心を打ち明けた 0:03:17.837,0:03:20.604 「ああなって良かったんだ[br]僕たちが出会えたからね」 0:03:20.604,0:03:23.446 61は賢明だった[br]嫉妬にとらわれることもなく 0:03:23.446,0:03:26.148 彼の目を見て[br]とても優しく諭した 0:03:26.148,0:03:31.140 「君は59で私は61[br]二人合わせると60の2倍になるの」 0:03:31.140,0:03:34.483 (笑) 0:03:34.483,0:03:36.770 このとき 59は[br]目に涙をため 0:03:36.770,0:03:39.388 こんな唯一無二の娘に[br]出会えたことを喜んだ 0:03:39.388,0:03:41.588 彼は“素数”たることの[br]意味を話した 0:03:41.588,0:03:44.345 彼の心を分かつのは[br]“一(いち)”と彼自身だけ 0:03:44.345,0:03:46.769 そして彼女こそ[br]心を預けたい唯“一”の存在だと 0:03:46.769,0:03:50.098 彼女は 同じ気持ちだと答えた[br]映画は半分本当だとやっと分かった 0:03:50.098,0:03:52.919 あれは真の愛ではなく[br]ただの見本にすぎない 0:03:52.919,0:03:56.193 真の愛においては[br]二人こそが“素”晴らしい例なのだ 0:03:56.193,0:03:57.888 ありがとう 0:03:57.888,0:04:02.648 (拍手) 0:04:08.522,0:04:10.334 これが僕が初めて書いた詩で 0:04:10.334,0:04:14.753 素数がテーマの詩の夜会のため―(笑) 0:04:14.753,0:04:17.973 いや 素数がテーマの[br]詩のコンテストのため書いたものです 0:04:17.973,0:04:21.200 僕は 素数がテーマの詩の[br]コンテストで優勝したから 0:04:21.200,0:04:24.709 まさに “素”晴らしいわけだ(笑) 0:04:24.709,0:04:27.657 こうして僕は[br]「ポエトリー・スラム」なるものを知った 0:04:27.657,0:04:29.791 念のために言うと[br]「ポエトリー・スラム」は 0:04:29.791,0:04:32.485 アメリカで30年前に[br]作られたもので 0:04:32.485,0:04:35.457 人をだまして[br]詩のイベントに参加させる方法です 0:04:35.457,0:04:38.312 それも 最後に「スラム」とか[br]格好良い言葉を付けるだけ 0:04:38.312,0:04:39.706 (笑) 0:04:39.706,0:04:42.608 参加者が与えられた3分間で[br]詩を披露すると 0:04:42.608,0:04:45.403 ランダムに選ばれた聴衆が[br]スコアカードを掲げ 0:04:45.403,0:04:47.530 最後に集計されて[br]点数が出される 0:04:47.530,0:04:48.738 つまりは― 0:04:48.738,0:04:51.943 パフォーマーと聴衆の[br]垣根をなくし 0:04:51.943,0:04:54.653 聴く者とのつながりを[br]強めるもので 0:04:54.653,0:04:56.681 さらには[br]あなたも勝てるということ 0:04:56.681,0:05:01.021 ポエトリー・スラムで優勝すれば[br]スラム・チャンピオンを名乗って 0:05:01.021,0:05:03.412 レスラーのふりもできる 0:05:03.412,0:05:07.476 負けたらこう言えばいい[br]「何?詩は主観的な芸術形式だ 0:05:07.476,0:05:09.774 数で評価するとは何事か」 0:05:09.774,0:05:11.467 (笑) 0:05:11.467,0:05:13.814 でも僕は気に入って[br]何度もスラムに参加し 0:05:13.814,0:05:16.113 イギリスの[br]スラム・チャンピオンになり 0:05:16.113,0:05:19.178 パリのポエトリー・ワールド・カップに[br]招待されました 0:05:19.178,0:05:20.617 信じられないことでした 0:05:20.617,0:05:24.133 世界中から人々が集まり[br]自国の言語で話し 0:05:24.133,0:05:26.585 英語のできないフランス人5名が[br]評価をするんです 0:05:26.585,0:05:28.744 (笑) 0:05:28.744,0:05:32.715 ともかく 僕は勝った[br]最高だったよ 0:05:32.715,0:05:35.849 以来 僕は[br]世界中を旅できたんだから 0:05:35.849,0:05:37.892 ということで[br]これから紹介する詩が 0:05:37.892,0:05:41.375 まさに世界で[br]最高の詩なんです 0:05:41.375,0:05:45.369 (笑) 0:05:45.369,0:05:46.785 ですから― 0:05:46.785,0:05:51.638 (拍手) 0:05:51.638,0:05:54.633 英語のできない[br]フランス人5名によればね 0:05:54.633,0:05:58.557 『ペーパー・ピープル』です 0:05:58.557,0:06:00.636 僕は人が好き 0:06:00.636,0:06:02.992 僕は紙の人も好き 0:06:02.992,0:06:06.173 紫色の紙の人[br]飛び出す紫色の紙人も 0:06:06.173,0:06:08.913 ちゃんとした 飛び出す紫色の紙人 0:06:08.913,0:06:11.839 「飛び出す紫色の紙人なんか[br]立たせられないだろう?」 0:06:11.839,0:06:14.253 君の叫びが聞こえるよ[br]それはね... 0:06:14.253,0:06:17.011 僕は 飛び出す紫色の紙人の[br]ペーパークリップで 0:06:17.011,0:06:20.662 飛び出す紫色の紙人を[br]立たせるわけさ 0:06:20.662,0:06:23.399 でも 念のために[br]接着剤も用意しておくかな 0:06:23.399,0:06:26.171 粘着剤「ブル・タック」を一箱[br]紙がすべったときのためにね 0:06:26.171,0:06:28.254 飛び出す都市を[br]つくることができるけど 0:06:28.254,0:06:31.135 紙人の政治問題に[br]巻き込まれたくなくてね 0:06:31.135,0:06:33.496 紙政治家の政策なんて[br]紙のように薄っぺら 0:06:33.496,0:06:35.720 公約を破ろうが[br]ちゃんと謝罪もしない 0:06:35.720,0:06:39.575 小さな紙の僕と[br]小さな紙の君がいて 0:06:39.575,0:06:42.799 僕たちは紙のペーパーテレビを見る[br]ペイ・パー・ビューでね 0:06:42.799,0:06:44.273 (笑) 0:06:44.273,0:06:47.539 ケシの紙ラッパーは[br]紙パックをラップし 0:06:47.539,0:06:52.509 紙人の乗り物が[br]A4地点で紙詰まりを起こすのを眺める 0:06:52.509,0:06:55.248 (笑) ペーパー 0:06:55.248,0:07:00.402 紙のプリンセス・ケイト[br]でも 皆が目を離せないのは 紙のピッパ 0:07:00.402,0:07:03.385 誰もが紙裂きジャックに[br]怯えて生きる 0:07:03.385,0:07:06.439 紙のプロパガンダは[br]偏見を広め 0:07:06.439,0:07:09.095 写真写りのよいテロリストたちの[br]写真を紙に印刷する 0:07:09.095,0:07:11.615 小さな紙の僕[br]小さな紙の君 0:07:11.615,0:07:14.288 飛び出す人々の間では[br]問題も飛び出す 0:07:14.288,0:07:17.295 仰々しい紙の議会は[br]聖域となり 0:07:17.295,0:07:20.282 紙削減に対する[br]プロテストを無視 0:07:20.282,0:07:23.524 平和的な紙のプロテストは[br]粉々に破れ去る 0:07:23.524,0:07:26.064 先制攻撃の警察による[br]紙吹雪弾で 0:07:26.064,0:07:29.639 もちろん紙のお金もあり[br]紙(私)欲もある 0:07:29.639,0:07:32.358 意地汚い紙の銀行員は[br]必要以上を懐におさめ 0:07:32.358,0:07:35.106 ポプリを買って[br]紙(資)産を粉飾 0:07:35.106,0:07:37.776 他の者は貧困に生き[br]軽くあしらわれる 0:07:37.776,0:07:40.248 “正しき”貧しい経済は[br]多くが“正しく”貧しいが 0:07:40.248,0:07:43.153 彼らの要望は無視され[br]お金は大戦へとつぎ込まれる 0:07:43.153,0:07:45.245 折り紙軍隊は[br]紙飛行機計画を広げて見せるものの 0:07:45.245,0:07:47.605 一方 我々は自らの紙鎖に[br]囚われたまま 0:07:47.605,0:07:51.264 もっと恥ずべきことに[br]事態はまるで変わらない 0:07:51.264,0:07:54.172 ただ 権力者が変わり[br]責任転嫁先が変わっただけ 0:07:54.172,0:07:57.611 権力者は名をあげて非難するが[br]それが人の名であったことを忘れてしまう 0:07:57.611,0:08:00.697 結局 名前というより[br]人の問題だからだ 0:08:00.697,0:08:02.144 僕は人が好き 0:08:02.144,0:08:03.965 切迫したときでも 0:08:03.965,0:08:06.224 人だけが[br]元気づけてくれる 0:08:06.224,0:08:09.459 紙の上では[br]僕たちの動きは見えにくい 0:08:09.459,0:08:12.120 でも パンドラの箱の底にだって[br]まだ希望が残っている 0:08:12.120,0:08:14.953 だから 僕は希望を持っている[br]人を信じているから 0:08:14.953,0:08:17.275 人に好かれている[br]僕の祖父母 0:08:17.275,0:08:19.090 僕が生まれてから[br]一日もかかさず 0:08:19.090,0:08:22.305 僕のために[br]毎朝祈りを捧げてくれた 0:08:22.305,0:08:25.719 7892日続けて[br]僕のことを心配してくれて 0:08:25.719,0:08:27.713 本当にありがたい 0:08:27.713,0:08:30.417 おばのように[br]囚人と劇を演じる人たちもいる 0:08:30.417,0:08:32.601 真の許しをできる人たち 0:08:32.601,0:08:34.520 迫害を受けた[br]パレスチナ人のような人たち 0:08:34.520,0:08:37.174 私利私欲のために[br]道を外れた人たちは 0:08:37.174,0:08:38.868 何も得ることはできない 0:08:38.868,0:08:41.043 人は強くなれるんだ 0:08:41.043,0:08:44.198 権力を牛耳る人が[br]被害者ぶるからといって 0:08:44.198,0:08:46.250 そんな制度に[br]屈することなんてない 0:08:46.250,0:08:48.595 紙人の世界だって同じ 0:08:48.595,0:08:52.313 小さな紙の僕と[br]小さな紙の君がいて 0:08:52.313,0:08:54.941 飛び出す人たちの間では[br]人の問題が飛び出す 0:08:54.941,0:08:58.324 でも たとえ世界が崩れ落ちようと[br]僕たちは大丈夫 0:08:58.324,0:09:00.785 だって 僕たちは人だもの 0:09:00.785,0:09:03.247 ありがとう 0:09:03.247,0:09:07.496 (笑) 0:09:18.688,0:09:21.543 ありがとうございます[br]もう1つ行けそうです 0:09:21.543,0:09:25.038 僕にとって 詩は自由に[br]アイデアを表現する至極の手段 0:09:25.038,0:09:26.040 詩を始めたとき 0:09:26.040,0:09:29.145 僕が刺激を受けたのは[br]素晴らしいストーリーのある人たち 0:09:29.145,0:09:33.281 順風満帆の18歳の僕は[br]フツウすぎると思った 0:09:33.281,0:09:37.007 でも 僕の経験や夢[br]信じることを話せる― 0:09:37.007,0:09:38.331 そんな世界をつくれた 0:09:38.331,0:09:41.326 だから 今日こうして[br]皆さんの前に立てて光栄です 0:09:41.326,0:09:42.742 ここにいる皆さんに感謝します 0:09:42.742,0:09:44.019 皆さんが[br]ここにいなければ 0:09:44.019,0:09:46.759 昨日のリハーサルと[br]同じ状況ですから 0:09:46.759,0:09:48.826 (笑) 0:09:48.826,0:09:51.403 こちらは[br]もっと面白いです 0:09:51.403,0:09:53.563 『サイシャイン・キッド(太陽の光の子)』 0:09:53.563,0:09:56.697 それではお楽しみください― 0:09:56.697,0:10:00.087 年老いた日の光は[br]息子のような太陽が自慢だった 0:10:00.087,0:10:02.553 小さな彼が走る姿に[br]一日が一層輝いた 0:10:02.553,0:10:05.219 彼が何かしたわけでも[br]問題が解決したわけでもない 0:10:05.219,0:10:08.134 ただ彼が日当たりの良い場所に[br]ずっといただけ 0:10:08.134,0:10:10.730 いつも こんな風にはいかない 0:10:10.730,0:10:13.461 明るさを隠そうと[br]するときもある 0:10:13.461,0:10:15.597 どんな星だって[br]困難の周期にぶち当たる 0:10:15.597,0:10:18.801 暗闇の彼らを呼び覚ますには[br]より明るい光が必要だった 0:10:18.801,0:10:21.155 彼が星雲に[br]生まれたとき 0:10:21.155,0:10:23.474 誰も彼が普通だなんて[br]思わなかった 0:10:23.474,0:10:25.210 彼は フレアを放っていたから 0:10:25.210,0:10:26.765 ミダス王が触れると[br]黄金になるが 0:10:26.765,0:10:29.203 彼が近づくと[br]全てが少しブロンズ色になった 0:10:29.203,0:10:31.847 そう この子は[br]他の人よりも愛された 0:10:31.847,0:10:34.579 ヨセフと彼のドリームコート[br]兄弟のように 0:10:34.579,0:10:37.516 目立つのも[br]善し悪し 0:10:37.516,0:10:40.106 彼が輝きすぎれば[br]妬みが敵を生んだ 0:10:40.106,0:10:41.417 シャドー・ピープルみたいに 0:10:41.417,0:10:43.818 シャドー・ピープルは[br]サンシャイン・キッドを嫌った 0:10:43.818,0:10:46.585 シャドー・ピープルの闇の行いに[br]光を当てたから 0:10:46.585,0:10:49.735 シャドー・ピープルが隠した場所を[br]照らしたとき 0:10:49.735,0:10:52.353 シャドー・ピープルは[br]キッドを始末しようと企んだ 0:10:52.353,0:10:54.707 まずは 彼の黒点を[br]からかった 0:10:54.707,0:10:57.525 空から彼の夢を打ち砕いた[br]銃弾のごとく 0:10:57.525,0:11:00.103 彼はクールではないと[br]思い知らせるために 0:11:00.103,0:11:02.587 お蔭で彼は[br]学校の人気者に溶け込めなかった 0:11:02.587,0:11:06.152 宙ぶらりんな彼の頭を[br]地に着けてやると言った 0:11:06.152,0:11:09.143 彼は何者でもなかったが[br]それこそ 彼の存在価値 0:11:09.143,0:11:11.277 彼は大学にも[br]行くことはなかった 0:11:11.277,0:11:14.046 彼が唯一取った“一番”は[br]“第一”度熱傷 0:11:14.046,0:11:15.754 近寄りすぎた者たちは 0:11:15.754,0:11:17.342 彼は明るすぎると言った 0:11:17.342,0:11:19.519 だから 誰も[br]彼の目を見ようとはしない 0:11:19.519,0:11:20.991 彼の判断は曇った 0:11:20.991,0:11:22.915 太陽が泣き始めると 0:11:22.915,0:11:24.158 蒸発した涙で[br]空は曇った 0:11:24.158,0:11:29.405 サンシャイン・キッドは明るく[br]温かい性格で 0:11:29.405,0:11:31.332 心は燦々と燃えていた 0:11:31.332,0:11:33.701 影の人たちの汚い言葉で[br]傷ついていた 0:11:33.701,0:11:36.278 彼の心には穴が開き[br]ぽっかりと傷跡が残った 0:11:36.278,0:11:40.016 彼が頑なになるにつれ[br]輝きを失っていった 0:11:40.016,0:11:42.600 名前が呼ばれるたび[br]彼の炎は勢いを失った 0:11:42.600,0:11:45.277 彼は 少し光を落とせば[br]彼らに好かれるかと考えた 0:11:45.277,0:11:48.468 でも 彼らは忙しなく[br]光はひどいと話して回った 0:11:48.468,0:11:51.254 彼はもはや[br]ついていけなかった 0:11:51.254,0:11:54.096 彼は そんな言葉を呑み込み[br]影に隠れた 0:11:54.096,0:11:56.235 テキサス州のように[br]ひとつ星の州になった 0:11:56.235,0:11:58.661 まるで みぞおちを[br]殴られたようだった 0:11:58.661,0:12:02.718 そこに現れたのが[br]リトル・ミス・サンシャイン 0:12:02.718,0:12:05.650 大好きな歌を歌っていた[br]―私たちは強くなれる 0:12:05.650,0:12:09.156 人に合わせなくていい[br]そのままでいい 0:12:09.156,0:12:11.362 だって 私たちの心は[br]お星さまだから― 0:12:11.362,0:12:15.193 リトル・ミス・サンシャインは[br]超イケてた 0:12:15.193,0:12:17.458 一目見ただけで 0:12:17.458,0:12:19.174 すべてを忘れてしまう 0:12:19.174,0:12:21.164 彼はとにかく[br]彼女が忘れられなかった 0:12:21.164,0:12:23.645 一目見たときから[br]彼女の姿が網膜に焼き付いた 0:12:23.645,0:12:25.957 とびきり素晴らしい彼女は[br]彼を受け入れた 0:12:25.957,0:12:29.220 この子が好きだったのは[br]いつも彼のそばにいると分かっていたから 0:12:29.220,0:12:32.121 事態は思ったほど暗くない[br]彼は夢を見た 0:12:32.121,0:12:35.055 影なんてどこにもない[br]彼女がいると 彼は輝いた 0:12:35.055,0:12:37.528 彼の目はランランとし[br]もはや隠せなかった 0:12:37.528,0:12:40.667 彼女の笑顔は眩しく[br]憎悪の言葉も消え去った 0:12:40.667,0:12:43.865 二人は互いにニックネームを付けた[br]「クール・スター」「陽気・サン」 0:12:43.865,0:12:46.615 次第に 彼に影を落としていたことも[br]消え去って行った 0:12:46.615,0:12:50.552 10の24乗ある宇宙の星に1つという[br]特別な存在の彼女は 輝かしく 0:12:50.552,0:12:53.371 冷血の爬虫類でさえ[br]朱に染めた 0:12:53.371,0:12:56.038 チリ人からブラジル人まで[br]何十億人に愛され 0:12:56.038,0:12:58.730 サンシャイン・キッドに[br]“しなやかな心”を教えてくれた 0:12:58.730,0:13:01.562 彼女は言った[br]「世界中の暗闇を集めても 0:13:01.562,0:13:04.836 たった一本のろうそくに灯る明かりを[br]消すことなんてできない 0:13:04.836,0:13:06.946 なのに なんで君の光が[br]消されてしまうの? 0:13:06.946,0:13:09.875 君自身が消しているんだよ[br]空は果てしない 0:13:09.875,0:13:11.692 光を灯し続け[br]批評家を黙らせるのよ」 0:13:11.692,0:13:14.861 心の窓である目にかかったカーテンを[br]彼女は再び開け 0:13:14.861,0:13:16.841 卑しき者たちにも[br]太陽の光を当てた 0:13:16.841,0:13:19.429 逆境の宇宙では[br]星々は共に身を寄せ合う 0:13:19.429,0:13:22.335 昼が夜になっても[br]記憶は永遠に消えない 0:13:22.335,0:13:25.031 天気予報がどうであれ[br]晴れ晴れとした顔で 0:13:25.031,0:13:27.668 雲に隠れても[br]この子はずっと輝く 0:13:27.668,0:13:30.531 そう サンシャイン・キッドは明るく[br]温かい性格で 0:13:30.531,0:13:32.188 心は燦々と燃えていた 0:13:32.188,0:13:35.532 火に勢いを借りて[br]銀河の先にいる彼に 0:13:35.532,0:13:38.318 信じることを教えてくれた[br]彼女に支えられて 0:13:38.318,0:13:41.058 ありがとうございました 0:13:41.058,0:13:47.722 (拍手)