WEBVTT 00:00:01.123 --> 00:00:05.872 地球の年齢は46億歳です 00:00:05.896 --> 00:00:10.597 でも人間の寿命は 100年にも満たないことが多いです 00:00:11.191 --> 00:00:14.508 では 遠い昔の話など 日常生活には関係なさそうなのに 00:00:14.532 --> 00:00:20.389 地球の歴史を知りたいと 思うのはなぜでしょうか? 00:00:20.849 --> 00:00:22.967 ご存じの通り 私たちの知る限り 00:00:22.991 --> 00:00:26.226 地球は太陽系で唯一 00:00:26.250 --> 00:00:28.759 生命が誕生した惑星です 00:00:28.783 --> 00:00:34.182 唯一 人類の生命維持を可能にする 仕組みを有しています NOTE Paragraph 00:00:34.763 --> 00:00:36.016 では なぜ地球だったのか? 00:00:36.731 --> 00:00:40.109 珍しいことに 地球には 地殻変動が見られ 00:00:40.133 --> 00:00:41.686 表面に液体水をたたえ 00:00:41.710 --> 00:00:43.987 酸素が豊富な大気があるのは ご存じの通りです 00:00:44.457 --> 00:00:46.775 しかし 常にそうであったわけではなく 00:00:46.799 --> 00:00:51.640 このことは 地球の惑星としての 進化の重要な瞬間を記録している 00:00:51.664 --> 00:00:54.474 古代の岩石から分かっています 00:00:55.653 --> 00:00:58.636 こうした古代の岩石を観察するのに 最適な場所のひとつが 00:00:58.660 --> 00:01:02.133 オーストラリア西部のピルバラです 00:01:03.494 --> 00:01:07.994 ここで見られる岩石は 35億年前のもので 00:01:08.018 --> 00:01:12.624 地球でも最古の生物を 示すものが含まれています NOTE Paragraph 00:01:13.298 --> 00:01:15.713 古生物といって思い浮かべるのは 00:01:15.737 --> 00:01:18.955 ステゴサウルスだとか 00:01:18.979 --> 00:01:22.408 陸地に上がろうとする魚 かもしれませんが 00:01:23.012 --> 00:01:25.240 私の言う古生物というのは 00:01:25.264 --> 00:01:29.189 バクテリアのような微生物のことです 00:01:29.745 --> 00:01:33.730 微生物の化石は層状構造の岩石に 保存されていることが多く 00:01:33.754 --> 00:01:35.888 ストロマトライトと呼ばれます 00:01:36.515 --> 00:01:41.482 最初の30億年間の地球上の生命について 目にする記録といえば 00:01:41.506 --> 00:01:45.637 こうした単純な生命形態の化石が ほとんどです 00:01:46.256 --> 00:01:49.711 化石として残っている人類の記録は さかのぼっても 00:01:49.735 --> 00:01:52.243 せいぜい数万年です 00:01:52.267 --> 00:01:54.232 化石の記録から 00:01:54.256 --> 00:01:58.306 バクテリアのような生命体が 繁栄の足がかりを得たのは 00:01:58.330 --> 00:02:01.706 35億年から40億年前だと 分かっています 00:02:02.316 --> 00:02:05.955 これより古い岩石は 破壊されてしまったか 00:02:05.979 --> 00:02:09.110 地殻変動によって 大きく変形してしまったかです 00:02:09.550 --> 00:02:11.987 ですから 残された謎は 00:02:12.011 --> 00:02:16.975 いつどのようにして 地球上に生命が誕生したかなのです 00:02:19.086 --> 00:02:22.662 こちらは 火山によって作られた ピルバラに古くからある地形です 00:02:23.075 --> 00:02:27.902 この場所での私たちの研究が 生命の起源の謎に迫る手がかりを 00:02:27.926 --> 00:02:30.291 探り当てるとは 知る由もありませんでした NOTE Paragraph 00:02:30.871 --> 00:02:32.981 ここでの初めての フィールドワークで 00:02:33.005 --> 00:02:37.150 1週間にわたるマッピングプロジェクトが 終わりに近づいた頃 00:02:37.174 --> 00:02:40.161 なにやら特別なものに 行き当たりました 00:02:41.026 --> 00:02:44.633 ただのしわしわで古い岩に 見えるものは 00:02:44.657 --> 00:02:46.670 実は ストロマトライトです 00:02:46.694 --> 00:02:50.821 この隆起部分の中央には 子供の手のひらくらいの大きさの 00:02:50.845 --> 00:02:53.523 珍しい小さな岩がありました 00:02:54.144 --> 00:02:59.042 この岩を顕微鏡で調べるまでに 半年ほどかかり 00:02:59.066 --> 00:03:01.682 当時 指導を受けていた内の1人の マルコム・ウォルターから 00:03:01.706 --> 00:03:05.566 間欠石に似ているのではと 示唆されました 00:03:06.034 --> 00:03:09.542 間欠石というのは 00:03:09.566 --> 00:03:13.694 温泉周辺でしか生成されない岩石です NOTE Paragraph 00:03:14.165 --> 00:03:17.647 間欠石の重要性を お伝えするためには 00:03:17.671 --> 00:03:21.822 数百年さかのぼって お話ししなければなりません 00:03:23.464 --> 00:03:27.516 1871年に 友人の ジョセフ・フッカーに宛てた手紙で 00:03:27.540 --> 00:03:29.346 チャールズ・ダーウィンは こう書きました 00:03:30.183 --> 00:03:33.904 「生命が温かい泉で 誕生したとしたらどうだろう 00:03:33.928 --> 00:03:36.047 様々な化学物質が 00:03:36.071 --> 00:03:40.343 そこから さらに複雑な変化を 遂げたのだとしたら?」 NOTE Paragraph 00:03:40.883 --> 00:03:43.966 「温かい泉」というのは 温泉のことですね 00:03:43.990 --> 00:03:46.320 このような環境下では 温泉に 00:03:46.344 --> 00:03:49.359 地中の岩石に含まれる鉱物が 溶け込んでいます 00:03:50.295 --> 00:03:55.354 この水溶液が 有機化合物と混ざり合うと 00:03:55.378 --> 00:03:58.009 いわば化学工場のような 場所になるのです 00:03:58.033 --> 00:04:04.023 ここでは単純な細胞構造が 生まれうることが研究で示されており 00:04:04.047 --> 00:04:07.339 これが生命の最初の一歩に なりうるのです NOTE Paragraph 00:04:07.363 --> 00:04:09.621 ダーウィンの手紙から 100年後に 00:04:09.645 --> 00:04:13.820 深海熱水噴出孔が 海中で発見されました 00:04:13.844 --> 00:04:16.153 これらも化学工場のようなものです 00:04:16.177 --> 00:04:19.727 こちらの深海熱水噴出孔は トンガの火山弧にあるもので 00:04:19.751 --> 00:04:24.252 太平洋の水深1,100メートルに 位置しています 00:04:25.560 --> 00:04:29.258 煙突のような部分から もくもくと湧き出る黒い煙のようなものも 00:04:29.282 --> 00:04:31.099 鉱物を豊富に含んだ液体で 00:04:31.123 --> 00:04:34.015 バクテリアの養分となるものです 00:04:34.967 --> 00:04:37.235 深海熱水噴出孔の発見以来 00:04:37.259 --> 00:04:41.516 生命が誕生したのは 海中であると考えられてきました 00:04:42.091 --> 00:04:43.674 これには妥当な根拠があります 00:04:45.118 --> 00:04:48.427 深海熱水噴出孔は 古代岩石によく見られるもので 00:04:48.451 --> 00:04:51.516 初期の地球は 全体が海で覆われており 00:04:51.540 --> 00:04:54.292 ほとんど地表がなかったと 考えられているのです 00:04:54.316 --> 00:04:59.021 初期の地球に深海熱水噴出孔が 多く見られた可能性は 00:04:59.045 --> 00:05:01.524 生命が誕生したのは 海であるという説に 00:05:01.548 --> 00:05:02.828 よく当てはまります NOTE Paragraph 00:05:04.233 --> 00:05:05.383 とはいうものの― 00:05:06.503 --> 00:05:10.657 ピルバラでの私たちの研究によって 新たな視点が生まれ 00:05:10.681 --> 00:05:12.943 また実証されています 00:05:13.590 --> 00:05:19.489 3年かかりましたが 私たちは ついにこの岩が 00:05:19.513 --> 00:05:22.891 間欠石であると 明らかにできたのです 00:05:22.915 --> 00:05:26.984 この結論によって示されたのは 35億年前に 00:05:27.008 --> 00:05:31.064 ピルバラの火山に 温泉があったということだけでなく 00:05:31.088 --> 00:05:37.446 陸上の温泉に 生命が存在したという証拠が 00:05:37.470 --> 00:05:39.709 地球の地質記録上 00:05:39.733 --> 00:05:43.641 30億年もさかのぼれると いうことでした 00:05:44.818 --> 00:05:48.242 ですから 地質学的な観点から言うと 00:05:48.266 --> 00:05:55.116 ダーウィンの唱えた「温かい泉」が 妥当な生命の起源説になりえるのです NOTE Paragraph 00:05:57.174 --> 00:06:00.741 もちろん 地球上でいかに 生命が誕生したかは議論の余地があり 00:06:00.765 --> 00:06:03.223 それは これからも 変わらないでしょう 00:06:03.247 --> 00:06:05.803 ですが 生命が繁栄したことは確かです 00:06:05.827 --> 00:06:07.187 様々に進化を遂げて 00:06:07.211 --> 00:06:09.737 いまだかつてなく 複雑になっています 00:06:09.761 --> 00:06:13.083 最終的に 人類の時代に達し 00:06:13.107 --> 00:06:16.733 人類は自らの存在を 探求し始め 00:06:16.757 --> 00:06:19.619 地球外の生命を探し始めました 00:06:20.595 --> 00:06:23.732 人類を待ち受けている共同体が 宇宙のどこかにあるのか 00:06:23.756 --> 00:06:26.159 それとも 我々しかいないのか? NOTE Paragraph 00:06:26.876 --> 00:06:31.364 この謎への手がかりもまた 古代の岩石の記録にあります 00:06:32.316 --> 00:06:34.576 25億年ほど前 00:06:34.600 --> 00:06:39.447 バクテリアが酸素を 生成し始めたという記録があります 00:06:39.471 --> 00:06:41.740 現在の植物のようにです 00:06:41.764 --> 00:06:44.235 地質学者らは この後に続く時代を 00:06:44.259 --> 00:06:46.921 大酸化イベントと呼びます 00:06:47.436 --> 00:06:52.094 これは縞状鉄鉱床という 岩石により示されています 00:06:52.118 --> 00:06:57.258 その多くは何百メートルもの 岩石の層になって 00:06:57.282 --> 00:06:59.443 オーストラリア西部の 00:06:59.467 --> 00:07:02.837 カリジニ国立公園の中を 通っている渓谷に 00:07:02.861 --> 00:07:04.620 露出しています 00:07:05.160 --> 00:07:09.527 空気中に酸素が生まれたことで 地球で2つの大きな変化が起きました NOTE Paragraph 00:07:09.551 --> 00:07:13.041 まず 複雑な生物が 進化できるようになりました 00:07:13.065 --> 00:07:17.015 生物が大きく複雑になるには 酸素が必要なのです 00:07:17.730 --> 00:07:20.744 それから オゾン層もできました このおかげで現代の生物は 00:07:20.768 --> 00:07:24.337 B領域紫外線(UV-B)の 有害な影響から守られています 00:07:24.837 --> 00:07:29.798 皮肉なことに 微生物のおかげで 複雑な生物が生まれることとなり 00:07:29.822 --> 00:07:34.653 端的に言うと 30億年にわたる 地球の支配を譲り渡したのです 00:07:35.161 --> 00:07:38.755 現在では 人間は 複雑な生物の化石を採掘して 00:07:38.779 --> 00:07:40.241 燃料としています 00:07:41.154 --> 00:07:45.543 これにより膨大な量の二酸化炭素が 大気中に放たれて 00:07:45.567 --> 00:07:48.018 私たちの先祖の微生物のように 00:07:48.042 --> 00:07:51.484 私たちも地球に大きな変化を もたらしつつあります 00:07:52.889 --> 00:07:56.558 この影響により 地球温暖化がもたらされました NOTE Paragraph 00:07:58.793 --> 00:08:03.967 残念ながら ここでの皮肉な結末は 人類の絶滅にもなりかねません 00:08:04.420 --> 00:08:08.379 ですから 地球外の生命に 到達することができないのは 00:08:08.403 --> 00:08:10.436 知的生命体が どこかにいたとしても 00:08:10.460 --> 00:08:12.543 進化を遂げてしまうと 00:08:12.567 --> 00:08:15.314 自ら絶滅の道を たどるからなのかもしれません NOTE Paragraph 00:08:16.153 --> 00:08:18.054 岩石に話すことができたなら 00:08:18.078 --> 00:08:21.100 こう言うのではないかと思います 00:08:22.345 --> 00:08:25.189 「地球上の生命は貴重なのだ」と 00:08:26.697 --> 00:08:31.084 40億年もの時間をかけて 00:08:31.108 --> 00:08:35.812 生命と地球が 繊細で複雑な進化を 00:08:35.836 --> 00:08:38.349 共に遂げてきたことの 産物なのですから 00:08:38.373 --> 00:08:43.657 その中で人類は最後の ほんの少ししか担っていません 00:08:45.473 --> 00:08:49.741 皆さんは この事実を 指針や予測とすることもできますし 00:08:49.765 --> 00:08:54.964 宇宙の片隅で人類がこれほど孤独なことの 説明とすることもできるでしょう 00:08:56.629 --> 00:09:00.318 いずれにせよ なんらかの視点を 得るために使ってください 00:09:01.166 --> 00:09:05.918 皆さんが「故郷」と呼ぶこの地球で 00:09:05.942 --> 00:09:10.591 後に残したい遺産についての 視点を得るためにです NOTE Paragraph 00:09:12.083 --> 00:09:13.332 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:09:13.352 --> 00:09:16.202 (拍手)