残念ながら
顔はお見せできません
もし顔を出せば
悪い奴らに捕えられてしまうからです
僕の旅は 14年前に始まりました
まだ大学を出たばかりで
記者になりたての頃
僕は スクープを取ったんです
そのスクープは 本当に単純な話でした
警察官が 賄賂を取っていたのです
通りで商売している行商人からの賄賂です
若い記者の僕は 思いました
普通に記事にするのではなく
これで 世の中を揺るがしてやるんだ
皆 賄賂があるのは知っているのに
それをなくすのに 何もしていないから
僕は決心して 現場に行き
行商人のふりをしました
取引をする過程で
完ぺきな証拠を書面に残すことができました
その反響はすごかったんです
あっぱれでした
こうした潜入取材は
「イマージョン・ジャーナリズム」や
「アンダーカバー・ジャーナリズム」と言われました
僕は 潜入ジャーナリストで
僕のジャーナリズムは
3つの基本原則で 支えられています
名前をさらし 汚し 刑務所に送り込むこと
ジャーナリズムは 結果が全て
そして 地域や社会に影響を与え
変えていくことが使命―
しかも 最も斬新な形でです
僕は 14年以上
これに取り組んできました
結果はとてもよいと 断言できます
僕の潜入取材の中で
まず 思い浮かぶのは
「悪魔の子―スピリット・チャイルド」
これは奇形を持って生まれてきた
子どものことです
ある村では
生まれた子どもに奇形があると
両親は こう考えます
この子は 社会で生きていく資格がない
だから そうした子どもには
毒薬が盛られ
子どもは 死んでしまうのです
僕は 本物そっくりの赤ん坊を作り
その村に乗り込みました
子どもに奇形があるふりをして
この人たちは 奇形児殺しをしに来ました
手はずは整いました
いよいよ殺す日
警察に待機しておいてもらいました
運命の朝 彼らは
その子を殺しにやってきました
どれだけ真剣に毒薬を作っていたか
薬を火にかけ グラグラと煮立てて
子どもに飲ませる準備ができていきます
この準備が進む傍ら
僕が協力を要請した―
警察は待機していました
そして 毒薬ができあがり
子どもに飲ます直前
僕は警察に電話をし
幸運にも 警察が突入
彼らを逮捕しました
今現在も 彼らは裁判にかけられています
重要な原則を忘れてはいけない
名前をさらし 汚し 刑務所に送り込むこと
裁判手続きが進んでいるので
僕は確信しています
最後には―
彼らをさらけ出し
行くべきところに行かせることを
もう一つ 心に残る重要な取材は
「悪魔の子」現象に関係するもので
「先天性色素欠乏症の呪い」です
ほとんどの方が聞かれたことがあるでしょう
タンザニアでは―
先天性色素欠乏症の子どもは
時に 社会で生きるのに
不適合とみなされます
彼らの体は 大なたで切り刻まれ
調合薬などにされ
お金儲けに使われます
これには 本当にたくさんの物語があります
だから また潜入取材をしました
僕は このビジネスに関心があるふりをして
潜入しました
また 本物そっくりの腕を作りました
初めて 隠しカメラで
この取引をする人たちを撮影しました
彼らは腕を買って
それを薬に使おうとしていました
それを薬に使おうとしていました
幸いなことに すでに
タンザニア政府は行動を起こしています
ただ 問題なのは
タンザニア政府は
証拠があったから動いただけなのです
僕のジャーナリズムは
動かしがたい証拠が命
僕が 「あなたが盗みを働いた」と言うときは
盗んだ証拠を見せます
どうやって盗んだのか
いつ 何を使って
何のために盗んだのかも 見せます
社会に貢献できなければ
ジャーナリズムなんて意味がない
僕流のジャーナリズムは
僕がいる社会から生まれたものです
確かに 時々
こうした潜入ジャーナリズムには
批判もあります
(ビデオ) 役人:
彼がポケットからお金を出して
テーブルに置いたんだ
私たちが怖がらないようにね
彼は ココアを輸入して
コートジボワールに送りたがっていた
私は本心は隠したまま 黙っていた
一言もしゃべってない
でも 同僚たちは知らなかったんだ
だから お金を回収して
彼が出て行ったあと
彼が商品を持って戻ってくるのを待った
彼が出た後すぐ 私は同僚に言った
私がグループのリーダーだから
言ったのは 彼らが戻ってきたら
逮捕をするぞということ
2人目の役人:
僕は その何とか言う場所なんか知らないよ
足を踏み入れたことさえない
だから 驚いたよ
ビデオでは 僕の目の前で
お金を数える手が映ってるだろ
次の瞬間には
なぜか お金は僕の手の中
僕が数えてる
でも 僕は誰とも接触していない
誰とも 取引なんてしたことはないんだ
記者: メトロ・ニュースは
潜入記者である―
アナス氏にコメントを求めました
彼は微笑んで
このビデオの抜粋をくれました
最近 上映されたドキュメンタリーでは
使わなかったものです
それには さきほど関与を否定していた役人が
計算機をたたいて
ココアの密輸入者から取る―
お金の計算をしているのが映っています
アナス: これは汚職との戦いの一つです
ここで 彼は否定していますね
でもご覧の通り 動かしがたい証拠があれば
社会は変えられるんです
これは 記事の見出しの一部です
(音楽)
「アナスを呪い殺してやる」
「アナスは嘘つき」
「アナスの汚職ビデオに警戒警報」
「税関職員への陰謀が暴露」
「アナスは 見えざる力で動いているのか?」
「アナスのビデオで 政府に激震」
「ハンターを捕えよ」
「アナスの『賄賂』役人 裁判へ」
「アナスのビデオで 15名の首が飛ぶ」
「財務大臣 アナスを擁護」
「アナスのビデオをめぐり
11名の税関職員へ質問状」
「ガーナ・ジャーナリスト協会は アナスを支持」
「アナスのビデオで ミルズ大統領が
渦中のテマ・ハーバーを突撃訪問」
「故ジョン・エヴァンズ・アタ・ミルズ教授:
元ガーナ大統領」
ジョン・エヴァンズ・アタ・ミルズ:
アナスの主張は 我々も良く知っている
ジョン・エヴァンズ・アタ・ミルズ:
アナスの主張は 我々も良く知っている
しかし スパイ行為を働き
税関職員を罠にはめる者たちに言いたい
よく聞け
ガーナは こんなことで
お前たちを英雄にしたりはしない
アナス: 我々の大統領だった人です
ここに来るからには
何か特別なものをと思っていました
ある未公開作品を持ってきました
ここで 初めて
皆さんにお見せできることを 嬉しく思います
僕は 刑務所で潜入取材をしていました
しかも かなり長い間
正直言って悲惨な状況でした
ここでも
社会や政府を動かせるのは
動かしがたい証拠を
持ち出したときだけなんです
刑務所側は 何度も否定してきました
薬物乱用や同性間性行為の問題など
一度もないと主張し
実際には多くの問題があるのに
彼らは完全否定する
どうやったら 動かしがたい証拠を得られるか?
僕の答えは 刑務所に入ること
[ ヌサワン刑務所 ]
今 ご覧になっているのは
死体の山です
僕は刑務所仲間の一人を
追うことになりました
友人にもなった彼が
病床にあるときから亡くなるまでです
決して いい光景ではありません
そこで出される食事はひどいものです
僕が食べたもので
人間の食べるものではない
というものもありました
トイレは 本当にひどい
「まとも」なトイレを使うには
並ばないといけない
「まとも」というのは
一つのマンホールを4人で使うトイレのことです
こんなことを 誰かに話したとしても
誰も信じないはずです
信じてもらうための唯一の方法が
動かしがたい証拠を見せることなんです
もちろん ドラッグは横行
ここで 大麻、ヘロイン、コカインを
手に入れるのは
塀の外よりも簡単で
しかも早いくらい
社会の悪は 異常な病気です
異常な病気には
荒療治が必要です
僕のようなジャーナリズムは
他の大陸―
他の国では 通用しないかもしれない
でも 確かなのは
僕がいるアフリカ大陸では
うまく行くということ
汚職について語るとき
言われるのは
「どこに証拠がある?」
「証拠を見せろ」
だから 僕は「これが証拠だ」と見せる
そして これによって
僕は たくさんの人を刑務所に送りこめた
アフリカでは こうした報道が
影響力を持つのです
そこにいる僕たち皆が
様々な問題に直面しているから
そこにいる僕たち皆が
様々な問題に直面しているから
だから 「アフリカ潜入調査」シリーズで
アフリカ諸国を調査することに
なったときは
胸が高鳴った
この「アフリカ潜入調査」シリーズは成功し
今は 「世界潜入調査」に
取り組もうとしています
それが終わる頃には
我々の大陸ではもっとたくさんのー
悪人たちが刑務所に
入れられていることでしょう
この闘いに終わりはありません
僕は このようなジャーナリズムを続けます
悪しき人が 社会を壊すなら
善き人は 作り
固めなければならないから
ありがとうございました
(拍手)
クリス・アンダーソン(CA): 本当にありがとう
いくつか質問があります
クリス・アンダーソン(CA): 本当にありがとう
いくつか質問があります
どうやって刑務所に?
数週間前のことですよね
アナス: その通りです
潜入調査は―
正しい優先順位付けが全て
だから 目的を達するため
僕を裁判所に突き出してもらった
訴訟手続きをきちんと踏んで
最終的には 刑務所側が
僕が実際に拘留されていたか調べます
そうやって 潜入したわけです
CA: 誰かが裁判であなたを訴えて
捕えられて その過程で再拘留された
で それを故意にやったというわけですね
アナス: はい そうです
CA: 恐怖心― そして それとどう戦うか
ぜひ教えてください
いつも命を危険にさらしているでしょう
どうやっているのですか?
アナス: 潜入調査は 最終手段なんです
潜入をする前には 決まった手順を踏みます
落ち着いて 恐怖から解放されるのは
全ての手順がしっかり踏まれていると
確信したとき
それに 僕は一人では動かない
必ず バックアップのチームがいて
安全などを確保する全システムが
しっかり機能するよう助けてくれます
こういう状況では
本当に賢明な決断が必要なんです
そうしなければ 命を失ってしまいます
バックアップのシステムが
ちゃんと敷かれていれば
僕は大丈夫で やれる
確かに危険です
でも 仕事には必ずリスクが伴うものです
つまり 誰もがリスクは抱えている
自分の仕事を決めた瞬間
そのリスクは取らないといけない
いつであっても
CA: あなたは素晴らしい人で
素晴らしい事をした
あなたが教えてくれたことは
誰もこれまで聞いたことがないものです
本当に感謝しています
どうもありがとうございました
アナス: ありがとうございます
CA: ありがとうございます
これからも気を付けてください(拍手)