0:00:06.583,0:00:10.133 ビッグバンで[br]宇宙が誕生したのは 0:00:10.133,0:00:12.603 140億年くらい前のことです 0:00:12.603,0:00:15.083 宇宙は今も膨張していますが 0:00:15.083,0:00:18.533 何に向かってでしょうか? 0:00:18.566,0:00:21.186 とても難しい質問です 0:00:21.186,0:00:23.166 なぜなら 0:00:23.166,0:00:25.416 アインシュタインの[br]一般相対性理論の方程式では 0:00:25.416,0:00:29.416 時間と空間を 互いに絡み合う[br]宇宙を構成するものとして 0:00:29.416,0:00:31.176 記述しています 0:00:31.176,0:00:35.176 つまり 私たちが認識している[br]時間と空間は 0:00:35.176,0:00:38.616 宇宙の一部としてのみ存在し[br]その外側にはないのです 0:00:38.616,0:00:40.986 さて 日常の物体が膨張すると 0:00:40.986,0:00:43.986 より外側の空間へと広がっていきます 0:00:43.986,0:00:47.986 でも 膨張する空間が[br]無いということならば 0:00:47.986,0:00:50.536 膨張するというのは[br]一体どう意味なのでしょうか? 0:00:50.536,0:00:54.536 1929年 エドウィン・ハッブルによる[br]天体観測が 0:00:54.536,0:00:57.116 明解な答えを出しました 0:00:57.116,0:01:00.786 彼は夜空を観測して[br]全ての遠くの銀河が 0:01:00.786,0:01:03.686 地球から遠ざかる つまり[br]離れて行くことに気付きました 0:01:03.686,0:01:08.246 その上 遠い銀河ほど[br]より速いスピートで離れていきます 0:01:08.246,0:01:10.666 どう考えればいいのでしょうか? 0:01:10.666,0:01:14.726 オーブンで膨らむ[br]ぶどうパンで考えてみましょう 0:01:14.726,0:01:17.436 各レーズンの間の生地は 0:01:17.436,0:01:19.236 均等に膨らみます 0:01:19.236,0:01:22.736 レーズンが銀河で 0:01:22.736,0:01:25.066 生地が銀河間の空間とすると 0:01:25.066,0:01:28.036 銀河間の空間の伸張もしくは膨張で 0:01:28.036,0:01:32.036 銀河が互いに離れて行きます 0:01:32.622,0:01:35.972 どの銀河からみても[br]近くの銀河よりも 0:01:35.972,0:01:39.332 遠く離れた銀河の方が[br]同じ時間の中で 0:01:39.332,0:01:41.542 より遠くに離れていきます 0:01:41.542,0:01:45.337 はたして[br]一般相対性理論の方程式は 0:01:45.337,0:01:49.977 宇宙における重力と膨張の[br]綱引きを予測します 0:01:49.977,0:01:54.097 銀河間の真っ黒な空間でのみ[br]膨張が打ち勝ち 0:01:54.097,0:01:55.827 宇宙は広がるのです 0:01:55.827,0:01:58.117 これが答えです 0:01:58.117,0:02:01.007 宇宙は自分自身に向かって[br]膨張しています 0:02:01.007,0:02:06.157 だから 宇宙学者は[br]数学模型の限界を押し広げて 0:02:06.157,0:02:11.187 時空を超えて存在する[br]何かを推測します 0:02:11.192,0:02:13.782 当てずっぽうではなく 0:02:13.782,0:02:18.622 ビッグバンの科学的理論にある[br]欠陥を解決しようとする仮説です 0:02:18.622,0:02:23.802 ビッグバンは 物質が宇宙全体に[br]均等に希薄なガスとして広がると予測しています 0:02:23.802,0:02:28.322 でも そうだとしたら銀河や星は[br]どのように形成されたのでしょうか? 0:02:28.322,0:02:31.608 インフレーション模型は 0:02:31.608,0:02:34.388 短期間の極めて急激な[br]膨張を記述します 0:02:34.388,0:02:38.028 これは宇宙初期の[br]エネルギーの量子的ゆらぎを 0:02:38.028,0:02:42.538 最終的に銀河となる 集積したガスの形成と[br]関係づけています 0:02:42.538,0:02:47.318 このパラダイムが正しいなら[br]我たちの宇宙は無限、永遠に膨張する― 0:02:47.318,0:02:53.578 より大きな意味での宇宙の実体における[br]1領域であることを意味します 0:02:53.578,0:02:57.088 我々はこの推測的な膨張する実体について[br]何も分かっていませんが 0:02:57.088,0:03:01.088 例外は 数学的な予測によれば[br]無限の膨張は 0:03:01.088,0:03:04.858 不安定な量子エネルギー状態により[br]引き起こされるだろうということです 0:03:04.858,0:03:09.358 しかし局所的な領域の多くでは[br]ランダムな結果として 0:03:09.358,0:03:15.348 エネルギー状態が安定状態に落ち着き[br]膨張を止め 泡宇宙を形成するのかもしれません 0:03:15.348,0:03:18.158 それぞれの泡宇宙は[br]―我たちの宇宙もその1つですが― 0:03:18.158,0:03:21.718 固有のビッグバンや[br]物理法則で記述されるのでしょう 0:03:21.718,0:03:25.098 私たちの宇宙がより大きな[br]多元宇宙の一部であり 0:03:25.098,0:03:29.338 驚異的な速さで[br]無限の膨張が起こるので 0:03:29.338,0:03:31.818 隣の宇宙と遭遇することは[br]不可能なのかもしれません 0:03:31.818,0:03:35.948 ビッグバン理論は[br]初期の高温宇宙では 0:03:35.948,0:03:40.758 基本的な力が1つのスーパーフォースに[br]統一される可能性も予測しています 0:03:40.758,0:03:44.758 数学的なひも理論は[br]亜原子粒子であるクォークや電子の 0:03:44.758,0:03:49.248 基本構造に加え このような統一について[br]説明しています 0:03:49.248,0:03:54.908 提案された模型では 振動する弦が[br]宇宙の構成要素なのです 0:03:54.908,0:03:59.788 弦の競合する模型が現在では[br]統一的記述によってまとめられ 0:03:59.788,0:04:06.138 これらの構造が大規模で高次元の「膜」[br]という面と相互作用するだろうと提案しています 0:04:06.141,0:04:11.271 私たちの宇宙はそんな膜の1つに含まれており[br]戯れに名付けられた「バルク」― 0:04:11.271,0:04:16.521 つまり超空間という未知の高次元に[br]浮かんでいるのかもしれません 0:04:16.521,0:04:22.491 その他の型の宇宙をを含む[br]他の膜は超空間で共存し 0:04:22.491,0:04:27.371 隣同士の膜は重力のような基本的な力を[br]共有さえするかもしれません 0:04:27.371,0:04:31.431 無限の膨張も膜も[br]多元宇宙を説明していますが 0:04:31.431,0:04:37.511 無限に膨張する宇宙が孤立している一方[br]膜宇宙は互いに衝突することもあり得ます 0:04:37.511,0:04:42.001 衝突の反響がビッグバン初期の名残である[br]宇宙マイクロ波背景放射― 0:04:42.001,0:04:46.971 私たちの宇宙全体にこだまする輻射に[br]現れているのかもしれません 0:04:46.971,0:04:50.771 今までのところ そのような[br]宇宙の反響は見つかっていません 0:04:50.771,0:04:57.231 これらの異なる多元宇宙論も最終的には[br]共通の記述にまとめられるか 0:04:57.231,0:04:59.871 他の何かに置き換えられることになると[br]考える者もいます 0:04:59.871,0:05:04.551 今のところ これらの理論は[br]数学的模型による推論的な探索です 0:05:04.551,0:05:09.261 これらの模型が多くの科学実験に[br]ヒントを得 方向性を得る一方で 0:05:09.261,0:05:13.601 それらを直接試す客観的な実験は[br]今のところほとんどありません 0:05:13.601,0:05:15.971 次のエドウィン・ハッブルが現れるまで 0:05:15.971,0:05:20.881 科学者たちは ただ競合する模型の[br]簡潔さについて議論するに留まることでしょう 0:05:20.881,0:05:27.341 そして私たちの宇宙の向こうに[br]何かがあるとして それを夢想し続けるのです