WEBVTT 00:00:06.991 --> 00:00:10.051 子どもに将来の夢を聞いたら スーパーパワーが欲しいとか 00:00:10.051 --> 00:00:14.361 ただ大きくなりたいと 答えられたことはありますか? 00:00:14.361 --> 00:00:18.831 もし 小さい頃の私が16歳になったら どんな人生を送りたいか聞かれたら 00:00:18.831 --> 00:00:21.841 多分 父より背が高く 00:00:21.841 --> 00:00:24.061 友達が沢山いて 独りで街を歩き 00:00:24.061 --> 00:00:28.721 独立していて 長い髪だと答えるでしょう NOTE Paragraph 00:00:28.721 --> 00:00:32.762 私は いつも想像力豊かで 読書が好きでした 00:00:32.762 --> 00:00:35.382 いつも静かな場所にたたずみながらも 00:00:35.382 --> 00:00:37.752 文章から画像と音を出現させるのは 00:00:37.752 --> 00:00:43.542 人であれ マグルであれ 子供にとって特別な存在になる手段なのです NOTE Paragraph 00:00:43.542 --> 00:00:45.467 物語のおかげで 私は本気で 00:00:45.467 --> 00:00:50.277 物質的に正常な生活だけじゃない 魔法は実在すると信じました 00:00:50.277 --> 00:00:54.477 完全に視力を失う前 00:00:54.477 --> 00:00:57.227 私の視覚は周辺部から暗くなり始めました 00:00:57.227 --> 00:01:00.667 失明するまでは 軽いめまいが よくしていました 00:01:00.667 --> 00:01:02.287 しかし 私の想像力は豊かでした 00:01:02.287 --> 00:01:05.287 私は何かの魔法に 偶然かかっているとか 00:01:05.287 --> 00:01:09.387 宇宙からの機密情報を受けていると 思っていました NOTE Paragraph 00:01:09.387 --> 00:01:11.107 いつも特別でいたかったのです 00:01:11.107 --> 00:01:14.317 でも 成長するにつれ 日々 魔法の世界が 00:01:14.317 --> 00:01:17.447 遠ざかっていく事実に 立ち向かわなければいけませんでした 00:01:17.447 --> 00:01:19.397 私は よく家のクローゼットに入り 00:01:19.397 --> 00:01:22.557 もし その背板を本気で忘れれば 00:01:22.557 --> 00:01:25.867 それが崩れてナルニア国に 入れると思っていました 00:01:25.867 --> 00:01:29.767 しかし 8歳になっても 魔法の洋服タンスは見つからず 00:01:29.767 --> 00:01:32.677 11歳になってもホグワーツからの 手紙は届きませんでした 00:01:32.677 --> 00:01:35.757 12歳になってもサテュロスから 半神だと言われませんでした 00:01:35.757 --> 00:01:42.717 だから 15歳までにガンダルフが冒険に 連れて行ってくれるのが最後の望みでした 00:01:42.717 --> 00:01:48.217 でも その途中の13歳で 00:01:48.217 --> 00:01:50.697 まったく望まないかたちで 00:01:50.697 --> 00:01:54.637 私は いきなり特別になりました NOTE Paragraph 00:01:54.637 --> 00:01:57.902 実際には 宇宙からの機密情報は 来ませんでしたが 00:01:57.902 --> 00:02:01.182 私はブラックホールに 引きずり込まれつつありました 00:02:01.182 --> 00:02:06.532 2015年9月23日朝7:35の前 00:02:06.532 --> 00:02:09.481 私は 良くあることですが 学校に遅刻しました 00:02:09.481 --> 00:02:14.261 市のバスが家の前に来るのが 遅れたからです 00:02:14.261 --> 00:02:16.851 私は教室に足を踏み入れた時 00:02:16.851 --> 00:02:20.091 教室の真ん中で みんなの前で 転びました 00:02:20.091 --> 00:02:23.101 床に置いてあったリュックサックが 目に入らなかったのです 00:02:23.101 --> 00:02:27.861 席についてから 黒板の文字が見えないことに気づきました 00:02:27.861 --> 00:02:30.136 読めなかったのです NOTE Paragraph 00:02:30.136 --> 00:02:34.426 だから母に電話して その日のうちに 00:02:34.426 --> 00:02:38.095 カッコいい眼鏡をかけたいと 考えながら病院に行きました 00:02:38.095 --> 00:02:44.895 でも 眼鏡を手にすることなく その日の内に入院することになりました NOTE Paragraph 00:02:44.895 --> 00:02:47.868 水頭症と診断されました 00:02:47.868 --> 00:02:51.818 その言葉のとおり 脳内の液体が多すぎたのです 00:02:51.818 --> 00:02:53.478 原因を明かしますが 00:02:53.478 --> 00:02:57.130 頭の奥深くにある 側脳室と第三脳室の間に 00:02:57.130 --> 00:02:59.470 グリオーマ(神経膠腫)が 00:02:59.470 --> 00:03:01.260 出来ていたからです 00:03:01.260 --> 00:03:03.610 このせいで脳の中の液体が流れず 00:03:03.610 --> 00:03:06.170 出入りができないので 00:03:06.170 --> 00:03:08.280 頭蓋内の圧力がとても高くなり 00:03:08.280 --> 00:03:11.360 視神経が傷害を受けました 00:03:11.360 --> 00:03:14.080 しかし 医者たちはそれに気づかず 00:03:14.080 --> 00:03:19.330 私は何度も何度も 手術を受けました 00:03:19.330 --> 00:03:23.584 その度に私と両親は ふりだしに戻りました 00:03:23.584 --> 00:03:26.064 私たち家族は何度も何度も 00:03:26.064 --> 00:03:27.634 人生に打ちのめされていました 00:03:27.634 --> 00:03:32.184 私の世界はひっくり返り 家族は全員 その状況に麻痺していました 00:03:32.184 --> 00:03:36.254 私の魔法だと考えていたものは 突然 生き死にの問題になりました 00:03:36.254 --> 00:03:39.524 生きる望みは ガンダルフへの望みと 同じくらいか細いものだったのです NOTE Paragraph 00:03:39.524 --> 00:03:43.534 医師は私の診断名を 確信していたのですが 00:03:43.534 --> 00:03:46.884 私の病気は 全く違うものだったので 00:03:46.884 --> 00:03:48.364 髄液を多く抜きすぎて 00:03:48.364 --> 00:03:51.624 頭蓋脳圧が高すぎたという問題が 逆に非常に低くなりすぎるという― 00:03:51.624 --> 00:03:53.554 問題になってしまいました 00:03:53.554 --> 00:03:58.104 8ヶ月間で 手術を4回受け 00:03:58.104 --> 00:04:02.704 その間違いを修正するための手術を さらに3回受けるはめになりました 00:04:02.704 --> 00:04:05.674 でも脳損傷は回復できないものと なってしまいました NOTE Paragraph 00:04:05.674 --> 00:04:08.494 私は最終的に復学できましたが 00:04:08.494 --> 00:04:10.484 もう元通りではありません 00:04:10.484 --> 00:04:15.344 健康な人たちの学校生活は進んでいて 私は多くの行事に出られず 00:04:15.344 --> 00:04:19.404 反抗期も逃しましたが これについては正直 残念には思っていません 00:04:21.545 --> 00:04:23.335 私は1年間 ほぼ寝たきりでした 00:04:23.335 --> 00:04:26.295 文字は もう読めません 00:04:26.295 --> 00:04:30.605 それが 空想の世界に 身を投じる唯一の方法だったのに 00:04:30.605 --> 00:04:34.278 でも 今 私はここにいます NOTE Paragraph 00:04:34.278 --> 00:04:39.048 「穴に入ったら 巨大になって出てきた」 という言葉があります 00:04:39.048 --> 00:04:40.545 まさにそんな気分でした 00:04:40.545 --> 00:04:44.875 なぜなら 辛いことがある度に 例え ほとんど感じなくても 00:04:44.875 --> 00:04:47.621 そこには 人々を 再び立ち上がらせる― 00:04:47.621 --> 00:04:49.821 力があるからです 00:04:49.821 --> 00:04:52.944 その時の人々は より賢くなるでしょう NOTE Paragraph 00:04:52.944 --> 00:04:56.694 私は今 1つのことに ずっと集中できるようになりました 00:04:56.694 --> 00:05:00.694 そして 食べることは 全く違う体験になりました 00:05:00.694 --> 00:05:02.864 ブラジルのドーナツ Bolinho de Chuvaを 00:05:02.864 --> 00:05:04.934 食べる度に 00:05:04.934 --> 00:05:08.954 私はすぐに 砂糖とシナモンでいっぱいの安全地帯に 00:05:08.954 --> 00:05:10.794 運ばれます 00:05:10.794 --> 00:05:13.504 また 音楽を聴いたり 演奏したりすることで 00:05:13.504 --> 00:05:17.504 これまでの辛いことから 逃れられます 00:05:17.504 --> 00:05:20.114 今では ボブ・ディランの歌詞を 全て覚えています 00:05:20.114 --> 00:05:22.944 ぶっ飛んだ歌詞ですよね NOTE Paragraph 00:05:22.944 --> 00:05:26.084 私の想像力は今までになく たくましくなりました 00:05:26.084 --> 00:05:29.514 今なら それを一番重要な感覚と 同様に使うからです 00:05:29.514 --> 00:05:32.651 この想像力によって 過去に目にしたものと 00:05:32.651 --> 00:05:36.290 視覚以外の感覚から得られるものを元に 全く新しい世界を築くことができています 00:05:36.290 --> 00:05:39.684 私は視覚に頼りすぎている この世界を生き抜くために 00:05:39.684 --> 00:05:44.894 想像力を創造的で理論的な 道具として使う必要があります 00:05:44.894 --> 00:05:50.074 私には それができます 「見える」と「見る」の間には 00:05:50.074 --> 00:05:53.244 「聞こえる」と「聞く」の間にあるような 違いがあるからです NOTE Paragraph 00:05:53.244 --> 00:05:58.694 見ることと聞くことは 感覚器の 正確な能力のことを指していません 00:05:58.694 --> 00:06:00.366 ものごとを理解し 00:06:00.366 --> 00:06:03.416 他人に共感するための感性なのです 00:06:03.416 --> 00:06:07.176 そう考えると 私は以前より良く見えています 00:06:07.176 --> 00:06:13.256 例えば みなさんが 注目していることはわかります 00:06:13.256 --> 00:06:19.276 ギリシャ神話で一番有名な 予言者テイレシアースは盲目でした 00:06:19.276 --> 00:06:25.626 なぜなら彼は 外見の罠にも 視覚世界にも惑わされなかったからです NOTE Paragraph 00:06:25.626 --> 00:06:28.946 私は自分がなりたかった 16歳の人間と全然 違うし 00:06:28.946 --> 00:06:31.126 想像していた人生とも違います 00:06:31.126 --> 00:06:33.806 しかし 時間をさかのぼって 身に降りかかった出来事を 00:06:33.806 --> 00:06:35.986 すべて避けたいかと聞かれたら 00:06:35.986 --> 00:06:39.616 現在の私の学びが無になってしまうので 答えはノーです 00:06:39.616 --> 00:06:41.196 ありがとうございました