1 00:00:04,000 --> 00:00:09,000 1970年代までは、「秘密鍵」をもとに 暗号化が行われていた。 2 00:00:09,000 --> 00:00:12,000 秘密鍵では、送信者が固有の鍵を用いて メッセージを暗号化し、 3 00:00:12,000 --> 00:00:15,000 受信者は同一の鍵を用いて復号する。 4 00:00:18,000 --> 00:00:22,000 暗号化とは、固有の鍵を用いた 平文と 暗号文のー 5 00:00:22,000 --> 00:00:25,000 対応付けである事を思い出そう。 6 00:00:27,000 --> 00:00:31,000 暗号文を復号するには、同じ鍵を用いて 逆の対応付けをすれば良い。 7 00:00:32,000 --> 00:00:35,000 よって、アリスとボブが秘密の通信をするには、 8 00:00:35,000 --> 00:00:38,000 最初に同一の鍵を共有する必要がある。 9 00:00:38,000 --> 00:00:41,000 しかし 鍵の共有は不可能な場合が多い。 10 00:00:41,000 --> 00:00:44,000 アリスとボブが直接 会えない場合や、 11 00:00:44,000 --> 00:00:48,000 ディフィー・ヘルマン鍵共有のために 追加の通信が必要な場合、 12 00:00:48,000 --> 00:00:53,000 さらに アリスが複数の人と通信する場合、 例えば銀行員だとー 13 00:00:54,000 --> 00:00:59,000 1人毎に異なる鍵を交換する必要があるだろう。 14 00:01:03,000 --> 00:01:05,000 すると 彼女は これらの鍵を全て管理し、 15 00:01:05,000 --> 00:01:10,000 通信を維持するための やり取りを重ねなければならない。 16 00:01:12,000 --> 00:01:14,000 もっとシンプルな方法はないのだろうか? 17 00:01:15,000 --> 00:01:18,000 1970年、イギリスの技術者 兼 数学者である ジェームス・エリスは 18 00:01:18,000 --> 00:01:21,000 「公開鍵暗号」を生み出そうと思案していた。 19 00:01:22,000 --> 00:01:25,000 シンプルながら 賢い発想に基づいたものだ。 20 00:01:25,000 --> 00:01:29,000 施錠と解錠は逆の操作だ。 21 00:01:29,000 --> 00:01:31,000 アリスは南京錠を買い、 22 00:01:31,000 --> 00:01:35,000 開いた状態で本体のみを送る。 23 00:01:35,000 --> 00:01:39,000 次にボブはメッセージをロックし、 アリスに送り返す。 24 00:01:39,000 --> 00:01:42,000 鍵のやり取りは不要だ。 25 00:01:42,000 --> 00:01:45,000 これにより 彼女は南京錠の本体を公開でき、 26 00:01:45,000 --> 00:01:48,000 世界中の誰でも それを使ってアリスにメッセージを 送ることができる。 27 00:01:53,000 --> 00:01:57,000 アリスが保持する鍵は 1つで済むようになる。 28 00:02:01,000 --> 00:02:03,000 エリスは その感覚的な方法について述べたが、 29 00:02:03,000 --> 00:02:06,000 数学的な解決は導けなかった。 30 00:02:07,000 --> 00:02:11,000 そのアイデアの要は 鍵を次のように2つに分けることだ。 31 00:02:11,000 --> 00:02:13,000 暗号鍵と復号鍵。 32 00:02:13,000 --> 00:02:18,000 暗号鍵で出来た暗号文を 逆操作、つまり元に戻すために、 33 00:02:18,000 --> 00:02:21,000 復号鍵を用いる。 34 00:02:21,000 --> 00:02:26,000 逆操作の鍵の働き方を見るために、 色で簡略化された例を示そう。 35 00:02:28,000 --> 00:02:31,000 通信を傍受しているイヴに分からないように、 36 00:02:31,000 --> 00:02:35,000 ボブがアリスへ特定の色を送るにはどうするか? 37 00:02:35,000 --> 00:02:39,000 ある色の反対の色を「補色」と言い、 38 00:02:39,000 --> 00:02:47,000 それらを足すと白になり、 元の色味は失われる。 39 00:02:48,000 --> 00:02:52,000 この例では 色の混合を一方向性関数とする。 40 00:02:52,000 --> 00:02:58,000 何故なら 色を混ぜるのは簡単だが、 元に戻すには時間が掛かるからだ。 41 00:03:01,000 --> 00:03:07,000 アリスは まず秘密鍵としてランダムな色を作る。 赤色としよう。 42 00:03:07,000 --> 00:03:11,000 次にアリスは 秘密の色の機械 を用いて 43 00:03:11,000 --> 00:03:14,000 選んだ赤色の正確な補色を作る。 44 00:03:14,000 --> 00:03:16,000 機械には誰もアクセスできないとする。 45 00:03:16,000 --> 00:03:22,000 結果のシアン色を、 共有鍵としてボブに送信する。 46 00:03:22,000 --> 00:03:26,000 ボブは秘密裏に黄色をアリスに送りたいとする。 47 00:03:26,000 --> 00:03:32,000 ボブは アリスの共有色と黄色と混ぜ、 できた色をアリスに送り返す。 48 00:03:32,000 --> 00:03:37,000 そして、アリスは秘密色とボブが作った色を足す。 49 00:03:37,000 --> 00:03:40,000 これで共有色の色味は打ち消され、 50 00:03:40,000 --> 00:03:42,000 ボブの秘密色だけが残る。 51 00:03:42,000 --> 00:03:45,000 イヴは アリスの秘密色(赤) を知らないので、 52 00:03:45,000 --> 00:03:48,000 送られた色が簡単には分からない。 53 00:03:48,000 --> 00:03:50,000 これが共有鍵の仕組みだ。 54 00:03:50,000 --> 00:03:54,000 しかし、これを実用にするには 数学的な解決が必要だった。