WEBVTT 00:00:00.800 --> 00:00:05.556 時に ヨーロッパ人である自分が 非常に情けなくなることがあります 00:00:06.200 --> 00:00:08.055 この1年で 00:00:08.080 --> 00:00:12.656 100万人以上が助けを求めて ヨーロッパにたどり着きました 00:00:12.680 --> 00:00:15.960 我々の反応は 正直言って お粗末なものでした NOTE Paragraph 00:00:17.000 --> 00:00:19.320 もう本当に 矛盾だらけなのです 00:00:20.360 --> 00:00:25.056 2歳のアラン・クルディ君の 悲惨な死を皆が悼みましたが 00:00:26.000 --> 00:00:29.856 しかし それ以降も 200人以上の子供たちが 00:00:29.880 --> 00:00:32.240 次々に 地中海で 溺れ死んでいます 00:00:33.960 --> 00:00:35.416 国際協定にて 00:00:35.440 --> 00:00:38.656 難民の受け入れに関する 責任分担を認めていながらも 00:00:38.680 --> 00:00:41.736 小国レバノンの難民受け入れ数が 00:00:41.760 --> 00:00:45.400 ヨーロッパ全体での総数を 上回るという事実を黙認しています 00:00:46.320 --> 00:00:49.720 我々は密入船の存在を 嘆かわしく思いながらも 00:00:50.360 --> 00:00:56.026 それをヨーロッパへの 唯一の亡命経路にしてしまっています 00:00:56.840 --> 00:00:58.696 労働力が不足しているのに 00:00:58.720 --> 00:01:04.176 人材ニーズに 経済的にも人口層的にも合致する人々を 00:01:04.200 --> 00:01:06.040 受け入れから除外しています 00:01:07.000 --> 00:01:12.936 イスラム原理主義に反対して 自由主義を謳いながらも 00:01:12.960 --> 00:01:14.160 それでいて— 00:01:15.560 --> 00:01:18.216 抑圧的な政策で 00:01:18.240 --> 00:01:20.560 幼い亡命者を拘留し 00:01:21.160 --> 00:01:23.960 子供を家族から引き離し 00:01:24.800 --> 00:01:27.720 難民の所有物を押収しています NOTE Paragraph 00:01:28.960 --> 00:01:30.310 おかしいと思いませんか? 00:01:30.640 --> 00:01:33.056 なぜ こんなにも 00:01:33.080 --> 00:01:37.880 人道危機に対して 非人道的な対応を 採るようになってしまったのでしょうか? NOTE Paragraph 00:01:39.280 --> 00:01:41.696 私は 人々が無関心だからだとは 思いません 00:01:41.720 --> 00:01:44.896 少なくとも それが理由であるとは 信じたくはありません 00:01:44.920 --> 00:01:48.736 政治家たちに ビジョンが 欠けているせいだと思っています 00:01:48.760 --> 00:01:54.046 50年以上前に作られた 国際的難民政策を 00:01:54.560 --> 00:01:57.360 変わりゆくグローバル化時代に 適応させるビジョンです 00:01:57.800 --> 00:02:00.336 そこで 基本に立ち返り 00:02:00.360 --> 00:02:03.776 非常に根本的な問いを2つ 投げかけたいと思います 00:02:03.800 --> 00:02:06.256 我々 皆が考えるべき問いです 00:02:06.280 --> 00:02:09.576 まず 現行の制度が なぜ機能していないのか? 00:02:09.600 --> 00:02:13.000 そして どうすればこれを直せるのか? NOTE Paragraph 00:02:14.760 --> 00:02:16.816 現代の難民制度は 00:02:16.840 --> 00:02:20.990 第二次世界大戦直後に この人たちが作ったものです 00:02:22.000 --> 00:02:25.136 そもそもの目的は 00:02:25.160 --> 00:02:29.376 国家が崩壊したり 最悪の場合 国民に刃を向けたとき 00:02:29.400 --> 00:02:30.996 人々に行き先を与え 00:02:31.010 --> 00:02:34.656 帰還まで 安全に尊厳を持って 生活できる場所を与えることです 00:02:34.680 --> 00:02:39.960 まさに今日シリアに見られるような 状況に備え 作られたものでした 00:02:40.680 --> 00:02:45.536 147ヶ国の政府間で調印された 国際協定である— 00:02:45.560 --> 00:02:48.576 1951年の『難民の地位に関する条約』や 00:02:48.600 --> 00:02:51.776 国際機関である 国連難民高等弁務官事務所を通じて 00:02:51.800 --> 00:02:56.576 自国領への難民の相互受け入れを 公約しました 00:02:56.600 --> 00:02:59.120 紛争や迫害から逃れる人々の 受け入れです NOTE Paragraph 00:02:59.680 --> 00:03:02.280 しかし今日 この制度は 機能していません 00:03:02.920 --> 00:03:06.360 理論上は 難民には 亡命を求める権利がありますが 00:03:06.880 --> 00:03:10.840 現実では 我々の移民政策が 安全への道を塞いでいます 00:03:11.280 --> 00:03:15.616 理論上は 難民には 避難先への同化を求める権利があり 00:03:15.640 --> 00:03:17.680 故郷に戻れるものですが 00:03:18.360 --> 00:03:21.600 現実では ほぼ永遠に 行き詰まった状態になってしまいます 00:03:22.240 --> 00:03:25.320 理論上は 難民は 世界各国で責任分担するものですが 00:03:26.040 --> 00:03:30.376 現実では 地理的な問題で 紛争地域に隣接する国々が 00:03:30.400 --> 00:03:34.000 世界中の難民のうち 圧倒的多数を引き受けています 00:03:34.720 --> 00:03:37.456 制度が機能していないのは ルールがおかしいからではなく 00:03:37.480 --> 00:03:41.400 変わりゆく世界に合わせて ルールをきちんと適用していないからで 00:03:41.840 --> 00:03:43.900 そこを考え直すべきなのです NOTE Paragraph 00:03:44.440 --> 00:03:48.936 ここで 現行の難民制度が 実際どういう仕組みなのか 00:03:48.960 --> 00:03:51.120 少しご説明しましょう 00:03:51.560 --> 00:03:54.336 しかし 制度側から見た トップダウンの視点ではなく 00:03:54.360 --> 00:03:57.680 難民の視点から説明します 00:03:58.240 --> 00:04:00.696 まず シリア人の女性を想像してください 00:04:00.720 --> 00:04:02.320 アミラと呼びましょう 00:04:02.880 --> 00:04:06.760 その地域のたくさんの人々を 象徴するような女性です 00:04:07.560 --> 00:04:10.896 アミラは 世界の難民の 25%がそうであるように 00:04:10.920 --> 00:04:12.200 女性で 子連れです 00:04:12.840 --> 00:04:16.096 家に戻れない理由は 住んでいた街がこんな状態だからです 00:04:16.120 --> 00:04:17.196 ご覧の通り 00:04:17.220 --> 00:04:20.896 アミラの街 ホムスはかつて 美しく歴史ある街でしたが 00:04:20.920 --> 00:04:22.416 今は瓦礫に埋もれ 00:04:22.440 --> 00:04:24.230 帰れる状況ではありません 00:04:25.120 --> 00:04:29.336 しかし アミラには 第三国に再定住するという道もありません 00:04:29.360 --> 00:04:30.856 宝くじのようなもので 00:04:30.880 --> 00:04:34.320 世界中の難民のうち 1%にしか 叶わないことだからです NOTE Paragraph 00:04:34.880 --> 00:04:37.136 だから アミラとその家族は 00:04:37.160 --> 00:04:39.336 ほとんど無理な選択を 迫られます 00:04:39.360 --> 00:04:41.760 基本的な選択肢は3つしかありません 00:04:42.560 --> 00:04:47.520 1つ目は 家族を連れて 難民キャンプに入ること 00:04:48.520 --> 00:04:50.940 そこでは 援助は受けられても 00:04:51.160 --> 00:04:54.856 アミラと家族の将来は ほぼ ないも同然です 00:04:54.880 --> 00:04:58.136 難民キャンプは 荒涼とした不毛の地— 00:04:58.160 --> 00:04:59.780 多くは砂漠の中です 00:05:00.040 --> 00:05:02.736 ヨルダンのザータリ難民キャンプでは 00:05:02.760 --> 00:05:07.300 夜間 シリアとの国境で 銃弾の音が聞こえます 00:05:08.600 --> 00:05:11.176 経済活動には制約があり 00:05:11.200 --> 00:05:13.360 教育の質も良くありません 00:05:13.960 --> 00:05:15.296 そして 世界中で 00:05:15.320 --> 00:05:18.416 キャンプに収容中の難民のうち 約80%は 00:05:18.440 --> 00:05:20.976 こんな状態が最低5年は続きます 00:05:21.000 --> 00:05:22.896 そこでの暮らしは惨めなものです 00:05:22.920 --> 00:05:24.250 多分 それが理由で 00:05:24.270 --> 00:05:27.920 実際にこの道を選ぶシリア人は たったの9%なのです NOTE Paragraph 00:05:29.000 --> 00:05:32.976 次に 都会を目指すという 選択肢もあります 00:05:33.000 --> 00:05:36.040 近隣の国にある アンマンやベイルートなどです 00:05:37.000 --> 00:05:41.040 75%のシリア難民が選んだ 選択肢がこれです 00:05:42.200 --> 00:05:44.920 しかし そこでもまた 大きな困難に直面します 00:05:45.720 --> 00:05:50.016 難民は通常 こういった都市部での 労働の権利を持たず 00:05:50.040 --> 00:05:53.000 援助もたいして受けられません 00:05:53.440 --> 00:05:57.136 この場合 アミラと家族には それまでの貯蓄を使い果たしたあと 00:05:57.160 --> 00:06:00.840 ほとんど何も残らず 都会での貧困生活が待っています NOTE Paragraph 00:06:02.280 --> 00:06:04.120 3つ目の選択肢— 00:06:04.920 --> 00:06:08.640 これを選ぶシリア人は増えています 00:06:09.840 --> 00:06:14.016 家族のために 一握りの希望を求め 00:06:14.040 --> 00:06:17.776 命を賭けて 大変危険な旅路につき 00:06:17.800 --> 00:06:19.296 他国を目指すという 00:06:19.320 --> 00:06:22.840 今日 ヨーロッパで 見られている現象です NOTE Paragraph 00:06:23.440 --> 00:06:28.696 このような まず無理な選択を 世界中が難民に突きつけ 00:06:28.720 --> 00:06:30.536 選択肢を3つに限っています 00:06:30.560 --> 00:06:34.920 キャンプ収容、都会での貧困生活 そして危険な旅です 00:06:35.520 --> 00:06:39.990 難民にとっては これこそが 国際的な難民体制そのものなのです 00:06:40.600 --> 00:06:42.370 でも これしかないと思うのは錯覚で 00:06:42.760 --> 00:06:45.000 再考の余地があると思います 00:06:45.440 --> 00:06:49.260 これらの選択肢に限られている理由は 00:06:50.040 --> 00:06:52.520 我々の頭の中で 00:06:53.080 --> 00:06:57.456 難民が選べる道は これだけしかないと思っているからですが 00:06:57.480 --> 00:06:58.680 それは間違いです 00:06:59.120 --> 00:07:02.616 政治家たちは 難民問題を 「ゼロサム」な問題— 00:07:02.640 --> 00:07:06.576 つまり 難民のために何かすれば 市民に負担がかかると考えています 00:07:06.600 --> 00:07:08.656 我々は共通の前提として 00:07:08.680 --> 00:07:12.336 難民は負担がかかるものとか 社会の重荷であると考えがちですが 00:07:12.360 --> 00:07:14.690 逆に難民が社会貢献する 方法もあるのです NOTE Paragraph 00:07:14.880 --> 00:07:16.296 私が言いたいのは 00:07:16.320 --> 00:07:19.296 難民の選択の幅を広げながらも 00:07:19.320 --> 00:07:21.336 皆が利益を得る方法は あるということです 00:07:21.360 --> 00:07:23.216 受け入れ国やコミュニティ 00:07:23.240 --> 00:07:26.560 我々の社会 そして難民自身もです 00:07:27.080 --> 00:07:29.056 今からお話しする4つの方法で 00:07:29.080 --> 00:07:32.920 難民についての考え方自体を 根本から変えられると思います 00:07:33.520 --> 00:07:35.960 4つ全てに共通する点が1つ 00:07:36.440 --> 00:07:40.216 グローバリゼーションや 流動性や市場が生み出す機会を 00:07:40.240 --> 00:07:42.296 利用した方法であり 00:07:42.320 --> 00:07:45.560 我々の難民問題への見方を 変えるという点です NOTE Paragraph 00:07:46.280 --> 00:07:47.976 1つ目のアイデアは 00:07:48.000 --> 00:07:50.000 難民のための環境整備です 00:07:50.720 --> 00:07:53.576 ごく基本的な認識から始まります 00:07:53.600 --> 00:07:55.996 難民は皆と同じ人間であり 00:07:56.320 --> 00:07:58.840 ただ異常な状況に置かれているだけだ と言うことです 00:07:59.280 --> 00:08:01.256 私はオックスフォード大学の同僚と 00:08:01.280 --> 00:08:03.936 ウガンダで調査を始め 00:08:03.960 --> 00:08:07.000 難民の経済活動を調べました 00:08:07.840 --> 00:08:11.896 ウガンダを選んだのは 世界を代表する 受け入れ国だからではありません 00:08:11.920 --> 00:08:13.700 大変優れた方針を採っているからです 00:08:13.960 --> 00:08:16.336 世界中の 他の受け入れ国とは異なり 00:08:16.360 --> 00:08:17.816 ウガンダは 00:08:17.840 --> 00:08:20.216 難民に経済機会を与えました 00:08:20.240 --> 00:08:23.600 難民に 労働の権利や 移動の自由を与えたのです 00:08:24.200 --> 00:08:27.096 これで驚異的な成果が出ています 00:08:27.120 --> 00:08:29.720 難民と難民居住地域の両方にです 00:08:30.480 --> 00:08:32.456 首都カンパラでは 00:08:32.480 --> 00:08:37.895 難民の21%が事業を持ち 労働者を雇っており 00:08:37.919 --> 00:08:40.376 雇われる側の40%が 00:08:40.400 --> 00:08:42.376 受け入れ国の国民だったのです 00:08:42.400 --> 00:08:44.576 つまり 難民が雇用を作り出し 00:08:44.600 --> 00:08:47.240 受け入れ国の国民を雇っていたのです 00:08:47.920 --> 00:08:49.440 難民キャンプの中でさえ 00:08:49.460 --> 00:08:54.840 活発な個人事業の 素晴らしい実例が見られました NOTE Paragraph 00:08:55.800 --> 00:08:59.136 例えば ナキヴァレという 難民居住区では 00:08:59.160 --> 00:09:02.136 コンゴ人の難民が 00:09:02.160 --> 00:09:04.696 デジタル音楽を売買する事業に携わり 00:09:04.720 --> 00:09:08.496 あるルワンダ人難民が 立ち上げた事業は 00:09:08.520 --> 00:09:11.256 青少年向けに コンピューターゲームを 00:09:11.280 --> 00:09:15.040 再利用したゲーム機やテレビを使って 提供するというものでした 00:09:16.440 --> 00:09:19.046 厳しい環境にもかかわらず 00:09:19.060 --> 00:09:20.810 革新的な取り組みが行われてます 00:09:21.320 --> 00:09:24.749 この写真は デムーケイというコンゴ人で 00:09:25.200 --> 00:09:28.856 居住区に到着したときは ほぼ文無しでしたが 00:09:28.880 --> 00:09:31.176 映像制作者を志していました 00:09:31.200 --> 00:09:35.136 彼は 友人や同僚と コミュニティラジオ局を開設し 00:09:35.160 --> 00:09:36.896 ビデオカメラを借りて 00:09:36.920 --> 00:09:38.416 今や映像制作をしています 00:09:38.440 --> 00:09:40.416 ドキュメンタリー映像を2本 00:09:40.440 --> 00:09:42.416 私のチームの依頼で共同制作し 00:09:42.440 --> 00:09:45.760 わずかな元手で 事業を成功させています 00:09:46.640 --> 00:09:48.616 こういった事例を参考にして 00:09:48.640 --> 00:09:51.376 難民に対する我々の対応を 決めるべきです 00:09:51.400 --> 00:09:52.736 難民のことを 00:09:52.760 --> 00:09:56.016 必然的に人道支援に 依存するものと見るのではなく 00:09:56.040 --> 00:09:59.440 人間として繁栄する機会を 提供する必要があります NOTE Paragraph 00:10:00.200 --> 00:10:04.426 もちろん 衣類、布団 寝る場所、食料などは 00:10:04.438 --> 00:10:07.216 緊急事態においては 全て重要なものですが 00:10:07.240 --> 00:10:09.840 その先を見据える必要があります 00:10:10.200 --> 00:10:14.536 通信、電力、教育、労働の権利や 00:10:14.560 --> 00:10:16.840 資本や銀行へのアクセスといった機会を 00:10:17.400 --> 00:10:19.120 提供しなければなりません 00:10:19.560 --> 00:10:21.696 世界経済の恩恵を受けることは 00:10:21.720 --> 00:10:23.856 我々にとっては当たり前のことです 00:10:23.880 --> 00:10:26.440 難民にも可能なことだし そうであるべきです NOTE Paragraph 00:10:27.280 --> 00:10:30.760 2つ目は 経済区域に関するアイデアです 00:10:31.320 --> 00:10:33.840 残念ながら 世界の 難民受け入れ国の全てが 00:10:33.860 --> 00:10:36.290 ウガンダのような方針を 採るわけではありません 00:10:36.480 --> 00:10:39.326 ほとんどの国は難民を ウガンダのような方法で 00:10:39.340 --> 00:10:41.190 経済の一部に迎え入れたりはしません 00:10:41.360 --> 00:10:45.960 しかし 採用可能な実用案は 存在するのです NOTE Paragraph 00:10:47.160 --> 00:10:49.246 去年の4月 ヨルダンに行きました 00:10:49.260 --> 00:10:51.680 同僚の開発経済学者 ポール・コリアーと一緒でした 00:10:52.400 --> 00:10:55.256 滞在中 ブレインストーミングをして 00:10:55.280 --> 00:10:57.736 国際社会やヨルダン政府と話し合って 00:10:57.760 --> 00:11:00.096 ヨルダンの国内開発戦略に沿った方法で 00:11:00.120 --> 00:11:03.736 シリア人に仕事を与える方法を 考え出しました 00:11:03.760 --> 00:11:06.560 経済区域に関するアイデアで 00:11:07.080 --> 00:11:10.616 難民の雇用を 受け入れ国の 00:11:10.640 --> 00:11:14.120 ヨルダン国民の雇用と共に 行う可能性を探ったものです 00:11:14.840 --> 00:11:18.256 83,000人の難民が住む ザータリ難民キャンプから 00:11:18.280 --> 00:11:20.416 たった15分の距離に 00:11:20.440 --> 00:11:22.456 経済区域が存在します 00:11:22.480 --> 00:11:25.200 キング・フセイン・ビン・タラール 開発区域です 00:11:25.920 --> 00:11:28.696 ヨルダン政府は 100万ドル以上を投入し 00:11:28.720 --> 00:11:32.536 この区域を 電力供給網と 道路網に繋ぎましたが 00:11:32.560 --> 00:11:34.176 欠けているものが2つ 00:11:34.200 --> 00:11:36.936 労働力と対内投資です 00:11:36.960 --> 00:11:39.856 ここで 難民が働けるとしたら? 00:11:39.880 --> 00:11:41.696 キャンプに閉じ込められず 00:11:41.720 --> 00:11:45.736 家族を養い 職業訓練を通じて 技術を習得してから 00:11:45.760 --> 00:11:47.360 シリアに戻れるとしたら? 00:11:47.840 --> 00:11:50.136 これはヨルダンに有益だと考えました 00:11:50.160 --> 00:11:52.936 中所得国としての ヨルダンの開発戦略には 00:11:52.960 --> 00:11:55.776 国内製造業の発展が 必要だからです 00:11:55.800 --> 00:11:58.880 難民にとっても有益ですが それだけでなく 00:11:58.900 --> 00:12:01.896 紛争後のシリア再建にも 貢献します 00:12:01.920 --> 00:12:04.696 いずれはシリアを建て直す 最良の人的資源となる— 00:12:04.720 --> 00:12:08.280 難民の保護・養成が必要だという 認識に基づいています NOTE Paragraph 00:12:08.760 --> 00:12:11.816 政治誌『フォーリン・アフェアーズ』に この案を掲載したところ 00:12:11.840 --> 00:12:14.056 アブドラ国王の目に止まり 00:12:14.080 --> 00:12:17.056 2週間前にロンドンで行われた シリア支援会議で 00:12:17.080 --> 00:12:19.680 今年の夏 試験的に実施されるという 発表がありました NOTE Paragraph 00:12:20.120 --> 00:12:23.720 (拍手) NOTE Paragraph 00:12:25.120 --> 00:12:27.816 皆さんに提案したい 3つ目のアイデアは 00:12:27.840 --> 00:12:31.456 国と難民との間で行う マッチングシステムです 00:12:31.480 --> 00:12:34.100 この写真のような嬉しい結果に 繋がるものです 00:12:34.130 --> 00:12:37.520 シリア難民がアンゲラ・メルケル首相と 自撮りしていますね 00:12:38.440 --> 00:12:42.440 難民に希望や行きたい先を訊くことって 滅多にありませんよね 00:12:42.960 --> 00:12:44.816 でも 難民の声を聞きながらも 00:12:44.840 --> 00:12:47.100 皆が得することは可能です 00:12:47.640 --> 00:12:51.776 経済学者 アルビン・ロスが発展させた マッチング理論という概念は 00:12:51.800 --> 00:12:57.040 当事者の選好順位によって 最終的な組み合わせを決めることです 00:12:57.720 --> 00:13:00.776 同僚のウィル・ジョーンズと アレックス・タイテルボイムが 00:13:00.800 --> 00:13:04.936 この概念を難民に当てはめる方法を 探りました 00:13:04.960 --> 00:13:08.496 難民に 行きたい受け入れ先を 希望順に挙げてもらい 00:13:08.520 --> 00:13:12.296 同時に 受け入れ国にも 希望する難民のタイプに 00:13:12.320 --> 00:13:15.136 職務スキルや言語などの条件で 優先順位をつけてもらって 00:13:15.160 --> 00:13:16.856 両者を引き合わせるという方法です 00:13:16.880 --> 00:13:18.976 さて もちろん 受け入れ枠の条件には 00:13:19.000 --> 00:13:22.256 多様性や脆弱性などの要素も 考慮するべきですが 00:13:22.280 --> 00:13:25.816 それも マッチング率を高める 方法として考えていいでしょう 00:13:25.840 --> 00:13:28.336 マッチングの概念が うまく使われているのが 00:13:28.360 --> 00:13:33.496 例えば 学生に対する 大学の受け入れ枠や 00:13:33.520 --> 00:13:36.016 腎臓ドナーと患者などです 00:13:36.040 --> 00:13:40.176 出会い系サイトで使われている アルゴリズムにも入っています 00:13:40.200 --> 00:13:43.296 これを難民の選択肢拡大のために 取り入れてはどうでしょう NOTE Paragraph 00:13:43.320 --> 00:13:45.368 国内規模でも使えます 00:13:45.392 --> 00:13:47.376 我々が直面する大きな課題の1つは 00:13:47.400 --> 00:13:51.136 地元コミュニティに難民受け入れを 納得してもらうことですからね 00:13:51.160 --> 00:13:53.616 現在 例えば 私の国イギリスでは 00:13:53.640 --> 00:13:57.816 しばしば 技術者を田舎に 農家を都市に送るという 00:13:57.840 --> 00:13:59.696 馬鹿げたことをしています 00:13:59.720 --> 00:14:04.296 そこで 市場のマッチングを行えば 両者の希望を合致させ 00:14:04.320 --> 00:14:09.716 受け入れ先の住民からも 難民からも ニーズや要望を聞くことができます NOTE Paragraph 00:14:10.840 --> 00:14:14.560 そして4つ目のアイデアが 人道的ビザです 00:14:15.240 --> 00:14:17.936 ヨーロッパで起きている 悲劇や混乱のほとんどは 00:14:17.960 --> 00:14:19.960 完全に回避可能です 00:14:20.400 --> 00:14:24.496 ヨーロッパの難民規定の 根本的な矛盾が原因で起きています 00:14:24.520 --> 00:14:25.896 どういうことかというと 00:14:25.920 --> 00:14:28.416 ヨーロッパで亡命者となるためには 00:14:28.440 --> 00:14:34.646 例の危険な旅路につき 事前準備なしに到着しなければなりません 00:14:35.520 --> 00:14:38.116 でも なぜそんな旅が必要なのでしょうか 00:14:38.130 --> 00:14:42.696 格安航空会社や領事サービスが 充実している今の時代 00:14:42.720 --> 00:14:45.056 こういった旅は全く不要なはずですが 00:14:45.080 --> 00:14:48.856 昨年 これで3,000人以上が 亡くなりました 00:14:48.880 --> 00:14:52.360 ヨーロッパの国境や ヨーロッパ国内でです NOTE Paragraph 00:14:53.360 --> 00:14:54.536 単純な話 難民に 00:14:54.560 --> 00:14:57.776 ヨーロッパに普通に渡航して 亡命者となることが許されていれば 00:14:57.800 --> 00:14:59.096 避けられることです 00:14:59.120 --> 00:15:00.656 これを実現する方法が 00:15:00.680 --> 00:15:02.976 人道的ビザと呼ばれるもので 00:15:03.000 --> 00:15:08.486 近隣国の大使館や領事館で ビザが受け取れます 00:15:08.720 --> 00:15:10.616 そして単純に 自分で旅費を出して 00:15:10.640 --> 00:15:13.370 フェリーや飛行機で ヨーロッパへ渡航できるのです 00:15:14.000 --> 00:15:19.226 密輸業者を使って トルコから ギリシャの島々に渡るのに1,000ユーロ 00:15:19.440 --> 00:15:24.896 ボドルムからフランクフルト行きの 格安航空券は200ユーロです 00:15:24.920 --> 00:15:28.696 難民にこのような選択肢を解放することには 大きな利点があります 00:15:28.720 --> 00:15:30.570 たくさんの命が失われずに済み 00:15:30.760 --> 00:15:34.696 難民密輸業界自体 商売上がったりとなり 00:15:34.720 --> 00:15:40.066 ギリシャの島々のような ヨーロッパの 第一線から混乱が消えます 00:15:40.160 --> 00:15:44.400 こういう手段を妨げているのは 合理的な策などではなく 政策の方です NOTE Paragraph 00:15:44.880 --> 00:15:47.216 このアイデアは実際に 取り入れられています 00:15:47.240 --> 00:15:49.896 ブラジルが先駆けて このアプローチを採り 00:15:49.920 --> 00:15:55.366 2,000人以上のシリア人が 人道的ビザを取得してブラジルに入国 00:15:55.386 --> 00:15:58.616 そして到着と同時に 難民の地位を得たのです 00:15:58.640 --> 00:16:01.536 この制度を利用したシリア人全員が 00:16:01.560 --> 00:16:05.520 難民の地位を獲得し 正式な難民認定を受けています NOTE Paragraph 00:16:06.160 --> 00:16:08.400 歴史上の前例もあります 00:16:08.920 --> 00:16:12.256 1922年と1942年の間に 00:16:12.280 --> 00:16:16.056 ナンセン旅券を 国際的な身分証明書として使って 00:16:16.080 --> 00:16:21.616 45万人のアッシリア人や トルコ人、チェチェン人が 00:16:21.640 --> 00:16:23.136 ヨーロッパ内を移動し 00:16:23.160 --> 00:16:25.920 ヨーロッパ国内の他の国で 難民申請を行いました 00:16:26.520 --> 00:16:29.256 ナンセン国際難民事務所は 00:16:29.280 --> 00:16:31.136 ノーベル平和賞を受賞しました 00:16:31.160 --> 00:16:34.120 この現実的な戦略が 世に認められたのです NOTE Paragraph 00:16:35.000 --> 00:16:38.216 今お話した4つのアイデア全てが 00:16:38.240 --> 00:16:41.560 冒頭に出てきた仮の難民 アミラの選択肢を増やす方法です 00:16:41.920 --> 00:16:45.176 難民の選択肢の幅を広げる方法です 00:16:45.200 --> 00:16:50.246 これなら 最初にお話した3つの 無理な選択肢に限る必要はなく 00:16:50.286 --> 00:16:52.360 それでいて他の人達も得をするのです NOTE Paragraph 00:16:52.960 --> 00:16:56.336 結論を言うと 我々には 新しいビジョンが切に必要です 00:16:56.360 --> 00:16:59.136 難民の選択肢を広げながらも 00:16:59.160 --> 00:17:01.696 重荷である必要がないことを 理解したビジョンです 00:17:01.720 --> 00:17:05.175 難民が必然的に負担になるという 考え方は間違っています 00:17:05.200 --> 00:17:08.454 人道的な義務ではありますが 00:17:08.480 --> 00:17:12.096 難民は 技術や才能 そして 意欲のある人間です 00:17:12.117 --> 00:17:14.800 機会さえ提供すれば 社会貢献する力を持っています NOTE Paragraph 00:17:16.520 --> 00:17:17.880 これからの時代 世界で 00:17:18.319 --> 00:17:20.576 移住する人は後を絶たないでしょう 00:17:20.598 --> 00:17:23.576 ヨーロッパで起こっていることは この先 何年も続きます 00:17:23.598 --> 00:17:25.415 難民は変わらず移動を続け 00:17:25.440 --> 00:17:27.296 居場所を求めてさまよい続けます 00:17:27.319 --> 00:17:30.816 この状況に対処する 合理的で現実的な方法— 00:17:30.840 --> 00:17:33.856 人道支援という古い理論や 00:17:33.880 --> 00:17:35.976 慈善という考え方に 基づいた方法ではなく 00:17:36.000 --> 00:17:37.616 グローバリゼーションや市場 00:17:37.640 --> 00:17:41.016 流動性などが生み出す機会を 利用する方法を探るべきです 00:17:41.040 --> 00:17:44.456 皆さん全員 そして 政治家の皆さんに訴えたい 00:17:44.480 --> 00:17:46.336 目を覚まし この課題を直視してください NOTE Paragraph 00:17:46.360 --> 00:17:47.616 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:17:47.640 --> 00:17:56.524 (拍手)