WEBVTT 00:00:01.286 --> 00:00:05.317 ご両親から皆さんへの 一番大切な贈り物は 00:00:05.341 --> 00:00:08.061 2組の30億文字からなるDNAで 00:00:08.085 --> 00:00:10.049 それが皆さんのゲノムを 作り上げています 00:00:10.049 --> 00:00:12.491 30億もの要素からなる ものの常として 00:00:12.495 --> 00:00:14.765 それには壊れやすい面があり 00:00:14.765 --> 00:00:18.355 日光 喫煙 不健康な食生活 00:00:18.379 --> 00:00:21.371 細胞の中で自然に 起きる誤りなどにより 00:00:21.395 --> 00:00:23.838 ゲノムに変化が 引き起こされます 00:00:24.942 --> 00:00:28.220 DNAの変化で 最も一般的なのは 00:00:28.244 --> 00:00:32.473 1つの文字 すなわち塩基が 入れ替わるというもので 00:00:32.497 --> 00:00:36.688 たとえば C が 他の T, G, A のいずれかに変わります 00:00:36.744 --> 00:00:40.117 そういう1文字の変化は 体の中の細胞のどこかで 00:00:40.141 --> 00:00:45.197 日に何十億回となく起きていて 「点突然変異」と呼ばれています NOTE Paragraph 00:00:46.147 --> 00:00:48.678 点突然変異は ほとんどの場合無害ですが 00:00:48.702 --> 00:00:50.010 時折 そういう変異が 00:00:50.010 --> 00:00:53.741 細胞の重要な機能を 阻害したり 00:00:53.741 --> 00:00:57.656 細胞に有害な振る舞いを させることがあります 00:00:58.099 --> 00:01:00.962 突然変異が 親から受け継がれたり 00:01:00.962 --> 00:01:03.716 発達の早い段階で 生じた場合 00:01:03.716 --> 00:01:06.706 多くの ないしは すべての細胞が 00:01:06.706 --> 00:01:09.138 その有害な突然変異を 持つ結果になり 00:01:09.153 --> 00:01:10.917 遺伝病を患う 00:01:10.917 --> 00:01:14.058 数億人の1人になります 00:01:14.082 --> 00:01:17.085 たとえば鎌状赤血球症 プロジェリア症候群 00:01:17.109 --> 00:01:20.490 筋ジストロフィー テイ=サックス病など NOTE Paragraph 00:01:22.225 --> 00:01:25.407 点突然変異によって起こる 酷い遺伝病には 00:01:25.431 --> 00:01:27.424 とくに苛立たしい ものがあります 00:01:27.448 --> 00:01:30.532 病気を引き起す変異した文字が どれかは判明していて 00:01:30.532 --> 00:01:35.096 理屈の上では治療できることが 分かっていることも少なくないからです 00:01:35.268 --> 00:01:38.117 鎌状赤血球症を患う人は 何百万人もいますが 00:01:38.141 --> 00:01:41.212 これはヘモグロビン遺伝子の両方に 00:01:41.236 --> 00:01:44.137 AからTへの点突然変異が あることで起きます 00:01:45.529 --> 00:01:48.515 プロジェリア症候群の子供には 生まれつき 00:01:48.515 --> 00:01:50.687 Cであるべきところが Tになっている 00:01:50.687 --> 00:01:52.756 点突然変異があり 00:01:53.125 --> 00:01:56.564 その破滅的な結果として 素晴らしい聡明な子供達が 00:01:56.588 --> 00:02:00.764 急速に老化し 14歳くらいで命を落とします 00:02:02.358 --> 00:02:03.905 医学の歴史を通して 00:02:03.905 --> 00:02:05.509 この病気の原因となる 00:02:05.509 --> 00:02:08.801 TをCに戻すという 突然変異の修正を 00:02:08.801 --> 00:02:12.182 生体内で効率的に行う手段は 00:02:13.422 --> 00:02:15.600 最近までありませんでした 00:02:15.600 --> 00:02:18.228 私達の研究室で それを可能にする 00:02:18.228 --> 00:02:21.748 「塩基編集」という手法の 開発に成功したのです NOTE Paragraph 00:02:23.157 --> 00:02:25.501 塩基編集技術開発の 物語の始まりは 00:02:25.501 --> 00:02:28.329 30億年前に遡ります 00:02:28.875 --> 00:02:31.845 私達はバクテリアを 人が感染するものとして見ていますが 00:02:31.845 --> 00:02:33.517 バクテリア自身もまた 00:02:33.517 --> 00:02:36.984 ウイルスに感染します 00:02:37.871 --> 00:02:40.022 そのため 30億年ほど前 00:02:40.046 --> 00:02:44.356 バクテリアはウイルス感染に対する 防衛機構を進化させました 00:02:45.649 --> 00:02:49.014 その防衛機構が CRISPRとして 知られているものです 00:02:49.014 --> 00:02:51.833 CRISPRの武器となるのが この紫色の 00:02:51.857 --> 00:02:55.519 DNAを切断する 分子のハサミとして働くタンパク質で 00:02:55.519 --> 00:02:58.277 二重螺旋を真っ二つにします 00:02:59.183 --> 00:03:03.479 もしCRISPR がバクテリア自身のDNAと ウイルスのDNAを区別できなければ 00:03:03.479 --> 00:03:06.282 防衛システムとして あまり役に立たないでしょうが NOTE Paragraph 00:03:06.285 --> 00:03:09.100 CRISPRのすごいところは 00:03:09.124 --> 00:03:14.161 DNA塩基配列の 特定の部分だけを探して 00:03:14.185 --> 00:03:16.608 取り付き 切断するよう 00:03:16.632 --> 00:03:19.580 プログラムできることです 00:03:20.911 --> 00:03:24.232 バクテリアが あるウイルスに 初めて出会ったとき 00:03:24.232 --> 00:03:27.705 そのウイルスのDNAの 小さな断片を保存しておき 00:03:27.729 --> 00:03:31.373 将来感染したときに そのDNAを切断するよう 00:03:31.397 --> 00:03:34.933 CRISPRをプログラムする ことができます 00:03:35.778 --> 00:03:40.625 切断によってウイルスの遺伝子は メチャクチャになり 00:03:40.625 --> 00:03:43.777 ウイルスのライフサイクルが 破壊されることになります NOTE Paragraph 00:03:46.059 --> 00:03:50.860 傑出した研究者のエマニュエル・シャルパンティエ ジョージ・チャーチ 00:03:50.884 --> 00:03:53.757 ジェニファー・ダウドナ フェン・チャンといった人々によって 00:03:53.757 --> 00:03:55.434 CRISPRのハサミは 00:03:55.434 --> 00:03:59.441 バクテリアの選んだ ウイルスのDNAの代わりに 00:03:59.451 --> 00:04:03.140 人間の遺伝子の塩基配列から 任意に選んだ部分を切断するよう 00:04:03.140 --> 00:04:06.430 プログラムできることが 6年前に示されました 00:04:06.430 --> 00:04:09.444 しかし結果は 似たものになります 00:04:09.606 --> 00:04:12.074 DNAの塩基配列を 切断することは 00:04:12.098 --> 00:04:16.654 通常切られた遺伝子の機能を 阻害することになります 00:04:16.997 --> 00:04:18.548 切断部分には 00:04:18.548 --> 00:04:22.641 ぐちゃぐちゃに文字が 挿入や削除されるためです NOTE Paragraph 00:04:24.625 --> 00:04:29.356 ある種の応用には 遺伝子の機能を 阻害することが有用であり得ます 00:04:30.005 --> 00:04:34.100 しかし点突然変異で起きる 遺伝病については 00:04:34.100 --> 00:04:38.481 変異している遺伝子を 単に切断しても患者に益はなく 00:04:38.481 --> 00:04:42.093 変異した遺伝子は さらに壊すのではなく 00:04:42.093 --> 00:04:44.888 修復する必要があるからです 00:04:45.259 --> 00:04:47.155 鎌状赤血球症を引き起こす 00:04:47.155 --> 00:04:50.688 変異したヘモグロビン遺伝子を 切断したところで 00:04:50.712 --> 00:04:54.508 健全な赤血球を作る能力は 回復しません 00:04:55.631 --> 00:04:59.972 切断部分の周囲の 塩基配列を置き換えるよう 00:04:59.996 --> 00:05:03.417 新たな塩基配列を 導入することもできますが 00:05:03.441 --> 00:05:07.689 あいにくこれは多くの種類の 細胞でうまくいかず 00:05:07.689 --> 00:05:10.750 壊した遺伝子の影響の方が 大きくなります NOTE Paragraph 00:05:12.217 --> 00:05:14.293 多くの科学者達と 同じように 00:05:14.293 --> 00:05:17.367 私も遺伝病が治療可能で 完治さえする未来を 00:05:17.367 --> 00:05:19.152 夢見てきましたが 00:05:19.152 --> 00:05:22.800 人の遺伝病の 多くの原因となる 00:05:22.800 --> 00:05:25.878 点突然変異を修復する 手段がないことが 00:05:25.878 --> 00:05:28.586 大きな障害に なっていました NOTE Paragraph 00:05:29.434 --> 00:05:32.102 化学者として私は 学生と一緒に 00:05:32.126 --> 00:05:37.061 個々のDNA塩基に直接化学的に 働きかける方法を開発し始め 00:05:37.085 --> 00:05:43.114 遺伝病を引き起こす突然変異を 破壊でなく修復することを目指しました 00:05:44.522 --> 00:05:45.974 その結果生まれたのが 00:05:45.974 --> 00:05:48.832 「塩基エディタ」と呼ばれる 分子マシンです 00:05:49.618 --> 00:05:55.093 塩基エディタは CRISPRのハサミの プログラム可能な探索機構を利用しますが 00:05:55.117 --> 00:05:57.847 DNAを切断する代わりに 00:05:57.847 --> 00:06:01.018 1つの塩基を 別の塩基に変換し 00:06:01.042 --> 00:06:03.645 遺伝子の他の部分を 壊しません 00:06:04.674 --> 00:06:08.832 自然のCRISPRタンパク質が 分子のハサミとすれば 00:06:08.856 --> 00:06:11.642 塩基エディタは分子の鉛筆で 00:06:11.666 --> 00:06:15.592 DNAの1文字を別の文字に 直接書き換えることができます 00:06:16.098 --> 00:06:18.275 原子を並べ替えて 00:06:18.275 --> 00:06:22.579 DNA塩基を 別の塩基に変えるのです NOTE Paragraph 00:06:23.513 --> 00:06:26.079 塩基エディタは 自然界には存在しません 00:06:26.683 --> 00:06:29.913 実際私達はここに示した 最初の塩基エディタを 00:06:29.937 --> 00:06:32.124 由来の異なる 3つのタンパク質から 00:06:32.124 --> 00:06:33.818 作り出しました 00:06:34.151 --> 00:06:39.112 CRISPRのハサミを出発点とし DNAを切断する能力は抑え 00:06:39.112 --> 00:06:43.565 ターゲットとなるDNA塩基配列を 探し出し取り付くというのを 00:06:43.565 --> 00:06:46.299 プログラム可能な形で 行う能力は残しました 00:06:46.301 --> 00:06:49.188 力を抑えたCRISPRのハサミが 青で示されています 00:06:49.212 --> 00:06:51.720 それに赤で示した 第2のタンパク質を付け 00:06:51.744 --> 00:06:57.785 それがCのDNA塩基を Tのように振る舞う塩基へと置き換える 00:06:57.785 --> 00:07:00.142 化学反応を引き起こします 00:07:00.958 --> 00:07:02.164 3つ目として 00:07:02.164 --> 00:07:05.474 紫で示した タンパク質を付け 00:07:05.498 --> 00:07:09.548 それが編集された塩基が 細胞によって排除されるのを防ぎます 00:07:10.326 --> 00:07:13.558 結果として得られたのは 3つの部分からなるタンパク質で 00:07:13.558 --> 00:07:17.354 ゲノムの指定箇所の CをTに変換することが 00:07:17.354 --> 00:07:19.997 初めて可能になりました NOTE Paragraph 00:07:21.490 --> 00:07:24.522 しかし これはまだ やるべきことの半分でした 00:07:24.546 --> 00:07:27.172 細胞内で安定して 存在するためには 00:07:27.196 --> 00:07:31.455 二重螺旋の2つの鎖が 塩基対を構成する必要があります 00:07:32.125 --> 00:07:35.783 CはGとのみ対になり 00:07:35.807 --> 00:07:39.189 TはAとのみ対になるため 00:07:39.752 --> 00:07:44.598 単にDNAの1つの鎖で CをTに変えても 00:07:44.622 --> 00:07:47.471 2つのDNA鎖の間で 齟齬が起き 00:07:47.495 --> 00:07:52.133 細胞はどちらの鎖を交換するか 決めねばなりません 00:07:53.149 --> 00:07:57.830 この3つの部分からなる タンパク質にさらに手を加え 00:07:58.649 --> 00:08:02.489 編集されていない方の鎖に 傷を付けて 00:08:02.489 --> 00:08:05.166 そちらが捨てられるように できることに気付きました 00:08:05.166 --> 00:08:07.805 この小さな傷によって 細胞を騙し 00:08:07.829 --> 00:08:11.250 編集されていない鎖を 00:08:11.250 --> 00:08:15.125 GをAで置き換えた鎖に 作り直させることで 00:08:15.149 --> 00:08:17.404 塩基対C-Gから 00:08:17.404 --> 00:08:21.920 安定した塩基対T-Aへの 変換が完了します NOTE Paragraph 00:08:24.435 --> 00:08:28.116 私達の研究室の博士研究員だった アレクシス・コモアを中心とした 00:08:28.116 --> 00:08:30.141 数年間の熱心な努力の末 00:08:30.165 --> 00:08:33.347 指定した箇所の CをTに 00:08:33.371 --> 00:08:36.081 GをAに変換する 00:08:36.081 --> 00:08:39.780 第1の塩基エディタの 開発に成功しました 00:08:40.633 --> 00:08:45.863 病気との関連が知られている 3万5千種ほどの点突然変異のうち 00:08:45.887 --> 00:08:49.672 この第1の塩基エディタによって 修復可能なのは2つのタイプで 00:08:49.696 --> 00:08:56.119 約14% 5千種の突然変異が これに該当します 00:08:56.593 --> 00:09:01.363 病気を起こす点突然変異の 一番大きなグループに対処するには 00:09:01.387 --> 00:09:05.022 AをGに あるいは TをCに変換する 00:09:05.046 --> 00:09:09.482 第2の塩基エディタが 必要になります 00:09:10.846 --> 00:09:14.573 私達の研究室の博士研究員だった ニコール・ガデリを中心に 00:09:14.597 --> 00:09:17.719 この第2の塩基エディタの 開発に乗り出しました 00:09:17.743 --> 00:09:23.870 これは理論的には 病気を起こす 点突然変異の半分近くに対応でき 00:09:23.894 --> 00:09:28.165 早老症のプロジェリア症候群も これに含まれます NOTE Paragraph 00:09:30.107 --> 00:09:31.878 新しい塩基エディタも 00:09:31.878 --> 00:09:35.580 ゲノムの適切な位置に 持って行くのに 00:09:35.580 --> 00:09:42.551 CRISPRの機構が 利用できると分かりました 00:09:43.543 --> 00:09:46.955 しかしすぐに 大きな問題にぶつかりました 00:09:47.896 --> 00:09:51.884 DNAのAをGに あるいは TをCに変えるような 00:09:51.884 --> 00:09:54.294 既知のタンパク質が 00:09:54.294 --> 00:09:56.195 存在しなかったのです 00:09:56.760 --> 00:09:58.926 そのような重大な障害に 直面した場合 00:09:58.950 --> 00:10:01.482 たいていの学生は 別のテーマを探します 00:10:01.506 --> 00:10:03.246 指導教官が違っていれば— 00:10:03.270 --> 00:10:04.434 (笑) 00:10:04.458 --> 00:10:06.820 ニコールはこの非常に 野心的と思えた計画を 00:10:06.820 --> 00:10:09.471 続行することを 承知しました 00:10:09.966 --> 00:10:12.305 必要な化学反応を起こす 00:10:12.329 --> 00:10:14.490 天然のタンパク質がないため 00:10:14.514 --> 00:10:17.950 AをGのように振る舞う塩基に 変えるタンパク質を 00:10:17.974 --> 00:10:21.809 実験室内で進化させることにし 00:10:21.833 --> 00:10:27.120 RNAで関連する反応を起こす タンパク質を出発点にしました 00:10:27.230 --> 00:10:31.164 ダーウィン的な適者生存の システムを用意し 00:10:31.188 --> 00:10:35.180 タンパク質の数千万の 変種を探索し 00:10:35.204 --> 00:10:38.012 必要な化学反応を 起こす変種だけが 00:10:38.012 --> 00:10:40.717 生き残るようにしました 00:10:41.883 --> 00:10:44.271 そしてここに示す タンパク質を得ました 00:10:44.295 --> 00:10:47.152 DNAのAを Gに相当する塩基に変換する 00:10:47.176 --> 00:10:49.232 初のタンパク質です 00:10:49.232 --> 00:10:51.185 そのタンパク質を 青で示した 00:10:51.185 --> 00:10:53.424 機能を抑えた CRISPRのハサミに付け 00:10:53.424 --> 00:10:55.782 第2の塩基エディタができました 00:10:55.782 --> 00:10:58.355 これはAをGに変え 00:10:58.355 --> 00:11:01.430 最初の塩基エディタで 使ったのと同じ 00:11:01.430 --> 00:11:04.394 鎖に傷を付ける方法で 00:11:04.394 --> 00:11:06.273 細胞を騙し 00:11:06.273 --> 00:11:11.638 無編集のTの鎖を Cの鎖に作り直させ 00:11:11.662 --> 00:11:16.693 塩基対A-Tから 塩基対G-Cへの 変換を完成させました NOTE Paragraph 00:11:16.845 --> 00:11:18.892 (拍手) NOTE Paragraph 00:11:18.916 --> 00:11:20.086 ありがとうございます NOTE Paragraph 00:11:20.110 --> 00:11:23.467 (拍手) NOTE Paragraph 00:11:23.491 --> 00:11:25.790 アメリカで働く 科学者にとって 00:11:25.790 --> 00:11:28.647 拍手で中断されるというのは 珍しい体験です NOTE Paragraph 00:11:28.647 --> 00:11:31.172 (笑) NOTE Paragraph 00:11:31.196 --> 00:11:35.505 この2つの塩基エディタを 開発したのは 00:11:35.505 --> 00:11:39.139 それぞれ ほんの3年前と 1年半前のことですが 00:11:39.139 --> 00:11:41.115 そのような短い期間 にもかかわらず 00:11:41.115 --> 00:11:45.261 塩基編集技術は 生物医学研究コミュニティで 広く使われるようになっています 00:11:45.776 --> 00:11:50.065 塩基エディタは 世界中の 千人以上の研究者の要請で 00:11:50.065 --> 00:11:54.036 6千回以上提供されています 00:11:55.475 --> 00:11:58.991 塩基エディタを使った科学論文は 既に百本発表されており 00:11:59.015 --> 00:12:03.473 対象はバクテリアから 植物 マウス 00:12:03.473 --> 00:12:05.661 霊長類にまで及びます NOTE Paragraph 00:12:07.950 --> 00:12:09.777 塩基エディタは 新しいもので 00:12:09.777 --> 00:12:12.466 まだ臨床試験には 至っていませんが 00:12:12.490 --> 00:12:17.586 その目標に向けた重要な マイルストーンに到達しています 00:12:17.586 --> 00:12:20.485 人間に遺伝病を起こすのと 同じ点突然変異を 00:12:20.509 --> 00:12:24.588 動物において 塩基エディタで修復したのです 00:12:25.815 --> 00:12:26.850 たとえば 00:12:26.850 --> 00:12:29.507 ルーク・コブランと ジョン・レヴィが率いる 00:12:29.507 --> 00:12:33.124 うちの学生も2人 入っているチームが 00:12:33.124 --> 00:12:37.177 最近 第2の塩基エディタを使い 00:12:37.177 --> 00:12:39.757 プロジェリア症候群のマウスで 00:12:39.757 --> 00:12:43.458 病気の原因となる TをCに戻すことにより 00:12:43.482 --> 00:12:48.088 DNA RNA タンパク質のレベルで 病変を修復しました NOTE Paragraph 00:12:48.880 --> 00:12:50.680 塩基エディタが 動物における 00:12:50.680 --> 00:12:53.562 病気治療に使われた ケースとしては他に 00:12:53.562 --> 00:12:59.044 チロシン血症、βサラセミア 筋ジストロフィー 00:12:59.044 --> 00:13:02.728 フェニルケトン尿症 先天性難聴 00:13:02.728 --> 00:13:05.177 ある種の心血管疾患があり 00:13:05.177 --> 00:13:09.823 それぞれ病気の原因となる 点突然変異が 00:13:09.847 --> 00:13:12.400 修復されています 00:13:13.688 --> 00:13:15.744 植物については 塩基エディタは 00:13:15.768 --> 00:13:18.700 収穫が改善されるよう 00:13:18.700 --> 00:13:22.128 DNAを変更するのに 使われています NOTE Paragraph 00:13:22.253 --> 00:13:25.946 生物学者は がんのような 病気に関連する遺伝子の 00:13:25.946 --> 00:13:30.203 個々の文字の役割を探るために 塩基エディタを使っています 00:13:31.046 --> 00:13:35.613 私が共同で創業した2つの会社 Beam Therapeuticsと Pairwise Plantsでは 00:13:35.637 --> 00:13:39.462 人の遺伝病の治療や 農業の改善のため 00:13:39.486 --> 00:13:41.882 塩基エディタを使っています 00:13:41.953 --> 00:13:44.509 これらの塩基エディタの 応用はすべて 00:13:44.509 --> 00:13:47.037 過去3年以内に 行われており 00:13:47.061 --> 00:13:49.425 科学史という 時間の尺度では 00:13:49.449 --> 00:13:51.001 一瞬の間です NOTE Paragraph 00:13:52.397 --> 00:13:55.460 塩基編集による 遺伝病患者の生活の改善が 00:13:55.460 --> 00:13:57.316 本当に実現するまでには 00:13:57.316 --> 00:14:00.664 まだまだ為すべきことがあります 00:14:01.244 --> 00:14:04.024 これらの病気の多くは 背後にある突然変異を 00:14:04.048 --> 00:14:07.227 臓器中の細胞の一定割合について 修復するだけでも 00:14:07.227 --> 00:14:09.627 治療可能だと 考えられていますが 00:14:09.627 --> 00:14:12.221 塩基エディタのような 分子マシンを 00:14:12.221 --> 00:14:14.228 人間の細胞に送り込むのは 00:14:14.252 --> 00:14:16.321 容易でない 可能性があります 00:14:16.962 --> 00:14:18.969 天然のウイルスを使って 00:14:18.969 --> 00:14:21.371 風邪を起こす 分子の代わりに 00:14:21.371 --> 00:14:24.112 塩基エディタを 運ばせるというのは 00:14:24.112 --> 00:14:27.421 成功例のある 有望な配送戦略の1つです 00:14:28.268 --> 00:14:30.633 新しいタイプの 分子マシンを開発し 00:14:30.657 --> 00:14:33.235 1つの塩基対から 別の塩基対への置き換えの 00:14:33.235 --> 00:14:35.441 すべてのパターンを 網羅することや 00:14:35.465 --> 00:14:39.845 細胞内の的外れな箇所で 望まない 編集が行われる可能性を最小化することは 00:14:39.869 --> 00:14:41.709 とても重要です 00:14:41.782 --> 00:14:46.488 他分野の科学者や 医師 倫理学者 政府と協力し 00:14:46.512 --> 00:14:50.107 塩基編集が思慮深く 安全で 00:14:50.107 --> 00:14:53.708 倫理的なやり方で 適用されるようにすることは 00:14:53.732 --> 00:14:55.982 重要な責務です NOTE Paragraph 00:14:57.525 --> 00:14:59.136 そういった課題こそあれ 00:14:59.160 --> 00:15:02.679 もし誰かが ほんの5年前に 00:15:02.679 --> 00:15:04.490 「世界の研究者達が 00:15:04.514 --> 00:15:07.947 実験室で進化させた 分子マシンを使い 00:15:07.947 --> 00:15:10.648 人間のゲノムの 指定した塩基対の 00:15:10.648 --> 00:15:12.530 別な塩基対への変換を 00:15:12.530 --> 00:15:16.293 効率的かつ他の影響は 最小限に行っている」 00:15:16.293 --> 00:15:18.616 などと言ったなら 私はきっと 00:15:18.616 --> 00:15:21.494 「いったい何のSFを読んでるんだ?」と 00:15:21.494 --> 00:15:23.082 聞いたことでしょう 00:15:23.706 --> 00:15:27.706 自分でデザイン可能なものは 作り出せるくらいクリエイティブで 00:15:27.706 --> 00:15:31.650 デザインできないものは 進化させるくらい挑戦的な 00:15:31.674 --> 00:15:34.599 倦むことを知らぬ ひたむきな学生達のおかけで 00:15:34.623 --> 00:15:37.217 塩基編集は SFのような夢から 00:15:37.217 --> 00:15:41.744 ワクワクする新たな現実に 変わりつつあり 00:15:42.250 --> 00:15:45.481 子供達への 一番大切な贈り物として 00:15:45.505 --> 00:15:48.530 30億文字のDNAだけでなく 00:15:48.554 --> 00:15:52.294 それを守り修復するための道具を 渡せるようになるでしょう NOTE Paragraph 00:15:52.339 --> 00:15:53.860 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:15:53.860 --> 00:15:58.016 (拍手) NOTE Paragraph 00:15:58.040 --> 00:15:59.190 ありがとうございます