WEBVTT 00:00:00.840 --> 00:00:07.530 マーク・ブラウンのGame Maker's Toolkitへようこそ ゲームデザインについてのシリーズだ 00:00:07.530 --> 00:00:12.390 アンチャーテッド3にはネイサン・ドレイクが 船から船に飛び移るシーンがある 00:00:12.390 --> 00:00:14.000 そこでのセリフがこうだ 00:00:14.000 --> 00:00:17.680 「よし、あそこにハシゴがある チャンスは一度だけだぞ」 00:00:17.680 --> 00:00:23.300 こう言われると、チャンスはまあ 一度しかないと思うかもしれない 00:00:23.310 --> 00:00:27.410 でも失敗して転落死すると そこはビデオゲームなので 00:00:27.410 --> 00:00:31.590 すぐに復活して 10秒もするとまたドレイクの 00:00:31.590 --> 00:00:32.990 このセリフだ 00:00:32.990 --> 00:00:34.990 「チャンスは一度だけだぞ」 00:00:35.780 --> 00:00:40.140 ゲームは重い決断をさせるのが あまりうまくない 00:00:40.140 --> 00:00:45.860 良質の強盗ゲームが少ないのはそのせいかもしれない 特に1人用のゲームでは稀だ 00:00:45.860 --> 00:00:49.980 警備員に見つかって殺されても 最後のチェックポイントに戻されるだけなら 00:00:49.980 --> 00:00:54.480 命がけの強盗をやってのける ゲームなんて作れないだろう 00:00:55.360 --> 00:00:58.320 そこでThe Swindleだ 00:01:00.460 --> 00:01:05.260 これは本物のプレッシャーを感じられるゲームだ 失敗すれば大きな後退を強いられる 00:01:05.260 --> 00:01:08.179 だから結果には重みがある 00:01:08.179 --> 00:01:13.409 だが緊張感が強盗の全てではない 盗賊にはなるべく欲張って 00:01:13.409 --> 00:01:18.179 大金を稼ぐため危険に 身をさらしてもらわなければならない 00:01:18.179 --> 00:01:22.029 そこから面白い物語が生まれるからだ The Swindleはそれも達成している 00:01:22.029 --> 00:01:27.089 ではこのゲームが強盗をマスターするよう 仕向ける方法を見ていこう 00:01:29.630 --> 00:01:33.810 The Swindleは横スクロールのジャンプアクションだ ごく簡単なステルスシステムがある 00:01:33.810 --> 00:01:39.749 敵の後頭部を殴る、地雷を解除する 監視カメラをすり抜ける 00:01:39.759 --> 00:01:41.789 端末をハックする、といった具合だ 00:01:41.789 --> 00:01:46.979 ランダム生成される各ステージで プレイヤーは可能な限り金を稼いで 00:01:46.979 --> 00:01:48.659 出口から脱出する 00:01:49.980 --> 00:01:52.900 成功すれば、稼いだ金で 特殊能力を購入できる 00:01:52.909 --> 00:01:58.419 三段ジャンプ、爆弾、移動時の音軽減、視界拡張など 00:01:58.419 --> 00:02:03.539 それに後半ステージへの入場権も買う必要がある これには最後の犯罪「スウィンドル」も含まれる 00:02:03.539 --> 00:02:07.289 しかし、はした金は無視して 大金を狙うようプレイヤーを仕向ける 00:02:07.289 --> 00:02:10.060 二つのシステムがある 00:02:10.060 --> 00:02:17.260 まず、100日のタイムリミットだ 強盗1回は成功・失敗に関わらず1日とカウントされる 00:02:17.260 --> 00:02:21.820 100日以内に最終ミッションを終えなければ ゲームオーバーだ 00:02:21.820 --> 00:02:26.140 それからボーナスがある 発覚せずに建物内の現金をすべて拾えば 00:02:26.140 --> 00:02:30.450 ゴーストボーナスがもらえる 金の大部分を盗むことができれば 00:02:30.450 --> 00:02:36.420 盗賊の経験値が上昇する 長期間生存させれば 強盗のたびに大量のボーナスが得られる 00:02:36.460 --> 00:02:41.520 この二つのシステムはプレッシャーを生む 盗賊は一撃死なので、強盗は簡単に失敗する 00:02:41.520 --> 00:02:45.300 そして失敗すれば獲得金額はゼロだ さらに盗賊も失ってしまう 00:02:45.300 --> 00:02:49.280 また最初から経験値をためなければ いけないということだ 00:02:49.280 --> 00:02:55.600 これにより、もっと金を稼ぐために より大きなリスクを取るプレッシャーが生じる 00:02:55.600 --> 00:02:59.460 日々できるだけ大金を稼ぎたいし 経験値とゴーストボーナスもほしい 00:02:59.460 --> 00:03:04.360 これは見事な仕掛けだ このゲームは プレイヤーが危険な状況にある時に 00:03:04.360 --> 00:03:05.980 最も輝くからだ 00:03:05.980 --> 00:03:10.790 大きなリスクを取った際の結末は三つだ 00:03:10.790 --> 00:03:15.120 賭けに勝利して忍者のごとく金を手にする これは気分がいい 00:03:15.120 --> 00:03:19.320 ヘマをして警報が作動してしまうが ステージはクリアする 00:03:19.320 --> 00:03:22.680 背景ではサイレンが鳴っている これもまた達成感がある 00:03:22.680 --> 00:03:25.920 あるいは完全に失敗して、金を失う いい気分ではないが 00:03:25.920 --> 00:03:28.159 長期的には挽回可能かもしれない 00:03:28.159 --> 00:03:32.900 失敗するたびに、100日の期限に 間に合わない可能性が高くなる 00:03:32.900 --> 00:03:36.959 さらに緊張感が高まり、もっと欲張って リスクを取る必要が出る 00:03:36.960 --> 00:03:42.600 そうするとさらに失敗が増えるが 壮大な強盗物語も生まれるかもしれない 00:03:42.720 --> 00:03:47.290 失敗がそこまで痛くないことも重要だ 最終ミッションに備えるゲームは他にもある 00:03:47.290 --> 00:03:53.000 例えば宇宙サバイバルゲームのFTL サイバーパンクのスパイ物Invisible Inc.など 00:03:53.000 --> 00:03:58.620 だがこれらのゲームで失敗は ゲームオーバーか、でなくとも大幅な不利になる 00:03:58.640 --> 00:04:04.420 The Swindleは意図的に余裕を持たせているのだろう プレイヤーにリスクを取るよう誘導するためだ 00:04:04.420 --> 00:04:07.440 たとえ最後の犯罪に失敗しても再挑戦可能だ 00:04:07.440 --> 00:04:12.380 しかし再挑戦には4万ポンド支払う必要があるので 00:04:12.380 --> 00:04:15.860 やはり強盗で大きいリスクを取る動機になる 00:04:17.280 --> 00:04:23.420 The Swindleはデザインによってプレイヤーを 特定の行動へ誘導している範例だ 00:04:23.420 --> 00:04:27.680 100日のタイムリミットや他のシステムがなければ このゲームへの取り組み方は 00:04:27.680 --> 00:04:30.740 大きく変わっていただろう それは事実としてわかっている 00:04:30.740 --> 00:04:35.090 僕はThe Swindleのデザイナー ダン・マーシャルと話したが、彼が言うには 00:04:35.090 --> 00:04:39.389 ある時点まで100日の期限はなかった だが記者に早期ビルドを見せた時 00:04:39.389 --> 00:04:43.710 その記者はちょっとだけ盗んで脱出し それを何回も繰り返す方が 00:04:43.710 --> 00:04:47.000 大金を狙うよりも安全だと気づいた 00:04:47.000 --> 00:04:50.419 その記者を責めることはできない これは支配的戦略という、ゲームデザインでは 00:04:50.419 --> 00:04:54.810 よく知られた現象だ プレイヤーがシステムの穴を突いて 00:04:54.810 --> 00:04:59.310 楽に勝てる場合、ほとんどの プレイヤーはそれを利用する 00:04:59.310 --> 00:05:01.130 どれだけ退屈であってもだ 00:05:02.120 --> 00:05:06.400 一番楽しい遊び方はこの場合 危険を冒して大金を狙うことだが 00:05:06.400 --> 00:05:11.330 プレイヤーが勝手にそうすると期待してはいけない 適切な動機や報酬がなければ 00:05:11.330 --> 00:05:14.720 開発者が意図した仕方では 遊んでくれないかもしれない 00:05:14.720 --> 00:05:18.920 デザイナーの仕事は適切なプレッシャーを 与え、適切なシステムを作成して 00:05:18.920 --> 00:05:23.420 プレイヤーの行動を促すことだ The Swindleだとそれは 00:05:23.420 --> 00:05:28.420 お菓子の万引きと 世紀の大強盗との違いになる 00:05:41.220 --> 00:05:45.680 視聴をありがとう 楽しんでくれたなら 「いいね!」とチャンネル登録をよろしく 00:05:45.680 --> 00:05:49.820 それからPatreonの支援も 考えてみてほしい