0:00:08.145,0:00:15.132 夜遅く 暗闇に1台の自動運転車が[br]狭い田舎道をクネクネと進む 0:00:15.132,0:00:18.724 突然 3つの危険物が[br]同時に現れる 0:00:18.724,0:00:20.846 次に何が起こるのか? 0:00:20.846,0:00:24.043 障害物の猛攻撃を通り抜ける前に 0:00:24.043,0:00:26.083 車がそれらを検知しなければならない 0:00:26.083,0:00:29.846 大きさ、形、位置といった[br]情報を十分に収集することで 0:00:29.846,0:00:34.208 制御アルゴリズムが[br]一番安全なコースを決めるのだ 0:00:34.208,0:00:35.762 運転席に人間がいない車は 0:00:35.762,0:00:38.250 スマートアイを必要とする 0:00:38.250,0:00:43.898 これは どんな環境、天気、暗さにおいても[br]これらの詳細を 0:00:43.898,0:00:45.920 一瞬の内に解析する[br]センサーのことだ 0:00:45.920,0:00:50.119 無理な要求のようだが[br]次の2つを組合せることで解決する 0:00:50.119,0:00:53.849 ライダーとよばれる[br]レーザーを用いた特殊な検知器と 0:00:53.849,0:00:56.578 インターネット通信に[br]用いられている 0:00:56.578,0:01:00.936 集積フォトニクスという通信技術の[br]ミニチュア版だ 0:01:00.936,0:01:06.006 ライダーを理解するには[br]関連技術であるレーダーから始めると良い 0:01:06.006,0:01:07.165 航空技術では 0:01:07.165,0:01:11.866 レーダーアンテナが飛行機に向けて[br]電波かマイクロ波のパルスをだす 0:01:11.866,0:01:15.983 ビームが跳ね返り戻ってくるまでの時間で[br]場所を特定するのだ 0:01:16.620,0:01:18.593 視角が限られているが 0:01:18.593,0:01:22.679 太いビームでは対象物の[br]細部の見分けがつかないためだ 0:01:22.679,0:01:26.127 一方 自動運転車の[br]ライダーシステムは ― 0:01:26.127,0:01:28.634 ライダーとは「光による検知と測距」の[br]意味だが 0:01:28.634,0:01:32.190 細く絞り込んだ[br]目には見えない赤外線をつかっている 0:01:32.190,0:01:36.660 歩行者のシャツのボタンほどの[br]小さなものを 0:01:36.660,0:01:38.123 通りの向い側から検知できる 0:01:38.123,0:01:42.483 しかし 対象物の形や奥行きを[br]どのように検知するのか 0:01:42.483,0:01:48.267 ライダーは奥行き解析のために[br]超短パルスレーザーを次々と発する 0:01:48.267,0:01:50.746 仮にヘラジカが田舎道にいたとして 0:01:50.746,0:01:55.853 車が走り過ぎる時 ライダーのパルス波が[br]角の生え際で散乱し 0:01:55.853,0:02:00.721 元の位置に戻ってくるより先に[br]次のパルスが角の先端に到達する 0:02:00.721,0:02:04.278 2つ目のパルスが戻ってくるのに[br]余分にかかる時間を計測することで 0:02:04.278,0:02:06.882 角の形に関するデータが得られる 0:02:06.882,0:02:13.192 短いパルスを多く発することで[br]ライダーは形の詳細を迅速に伝えるのだ 0:02:13.192,0:02:18.557 光のパルスを発する最もわかりやすい方法は[br]レーザーをオンオフすることである 0:02:18.557,0:02:23.428 しかし これではレーザーが安定せず[br]パルスを正確なタイミングで発信するのに影響し 0:02:23.428,0:02:25.669 奥行きの分解能が[br]制限されてしまうので 0:02:25.669,0:02:27.044 オン状態のままにし 0:02:27.044,0:02:33.031 光の周期的な遮蔽を 信頼性が高く[br]高速に行える方法を用いるのが良い 0:02:33.031,0:02:35.987 ここで 集積フォトニクスが登場する 0:02:35.987,0:02:37.829 インターネットのデジタルデータは 0:02:37.829,0:02:41.051 100ピコ秒ほどの間隔しかない 0:02:41.051,0:02:44.473 高精度に時間制御された[br]光パルスにより伝送されている 0:02:44.473,0:02:49.108 このようなパルスを作りだす1つの方法は[br]マッハ・ツェンダー変調器を使うことだ 0:02:49.108,0:02:52.865 この装置は干渉という[br]波の特性を利用している 0:02:52.865,0:02:54.658 この装置は干渉という[br]波の特性を利用している 0:02:54.658,0:02:57.613 池に小石を落とした時の様子を[br]想像してみたまえ 0:02:57.613,0:03:01.531 波が広がり 互いに重なり合うと[br]模様が作り出される 0:03:01.531,0:03:05.464 ある箇所では波の山が重なり[br]とても大きくなるし 0:03:05.464,0:03:08.450 完全に打ち消しあう箇所もある 0:03:08.450,0:03:11.517 マッハ・ツェンダー変調器は[br]似たような働きをする 0:03:11.517,0:03:17.292 平行する2本のアームに沿って[br]光の波を分岐させ 最後に再び合流させる 0:03:17.292,0:03:20.784 もし光が一本のアームで[br]速度を落とし 遅延させれば 0:03:20.784,0:03:25.683 2つの波は同調を失った状態で合流し[br]打ち消し合うことで 光をブロックする 0:03:25.703,0:03:28.335 1本のアームで[br]この遅延を切換えることで 0:03:28.335,0:03:33.606 変調器が光のパルスを発するための[br]オンとオフのスイッチのように作動する 0:03:33.606,0:03:36.380 100ピコ秒続く光のパルスは 0:03:36.380,0:03:39.790 奥行きについて[br]数センチの解像度をもたらす 0:03:39.790,0:03:43.306 しかし近い将来に登場する車には[br]それ以上の解像度が必要だ 0:03:43.306,0:03:47.595 変調器に超高感度で高速に作動する[br]光検出器を組合わせることで 0:03:47.595,0:03:50.878 ミリ単位まで解像度が向上する 0:03:50.878,0:03:52.759 これは 通りの向う側のものを見る時に 0:03:52.781,0:03:57.337 正常な人間の視力よりも[br]100倍以上良いということだ 0:03:57.337,0:04:02.925 初期の車載ライダーは[br]屋根かボンネットに取り付けてスキャンする 0:04:02.925,0:04:05.777 複雑に組み合わさった回転部品に[br]依存していた 0:04:05.777,0:04:07.494 集積フォトニクスにより 0:04:07.494,0:04:12.508 変調器と検知器が[br]0.1ミリ以下まで小さくなりつつあり 0:04:12.508,0:04:17.837 車のライトに入るほどの[br]小さなチップに搭載されるようになるだろう 0:04:17.837,0:04:21.806 さらにこのチップは[br]巧妙に改良された変調器を搭載しており 0:04:21.806,0:04:27.275 動く部品を無くして[br]高速スキャンを可能にしている 0:04:27.275,0:04:31.096 変調器のアームの中の[br]光の速度をほんの少し減速させることで 0:04:31.097,0:04:36.208 この追加装置はオンオフスイッチというよりは[br]制光装置として機能するだろう 0:04:36.208,0:04:40.708 制御のきいたわずかな遅延を[br]発生させる一連のアームを 0:04:40.708,0:04:44.777 並列に配置することで[br]画期的なものができる 0:04:44.777,0:04:47.479 操作可能なレーザービームだ 0:04:47.492,0:04:48.848 この新たな特長により 0:04:48.848,0:04:52.248 スマートアイは[br]自然の生き物が捉えられるよりも 0:04:52.248,0:04:54.681 徹底的に探査して[br]見ることができ 0:04:54.681,0:04:57.544 どんな数の障害物も[br]通り抜けられるようになるだろう 0:04:57.544,0:05:00.090 難なく ― 0:05:00.090,0:05:05.130 ただし 方向性を失ったヘラジカは[br]難しいかもしれないが