エジプトで発掘調査をしている河江です
考古学者なんですが
インディージョーンズみたいな
帽子を被ってなくてすいません
現代の私たちにとって
古代エジプトが
一体どんな関係があるのか
突き詰めて言えば
考古学というのが
一体 役に立つのか
という風に思っている
方がいるかもしれません
そちらの方 大きくうなずいてくれて
ありがとうございます
この話 実は私 よく聞かれます
その時に私がいつも思い出すのが
映画『シンドラーのリスト』の
ある場面です
ご覧になった方いますか?
『シンドラーのリスト』
結構おられますね
その場面というのは
どういった場面かと言うと
ナチスの兵士がですね
ユダヤ人を職業別で分けていきます
役に立つと見なされた職業というのは
ブルーカード
役に立たないと見なされた
職業というのは
即 ゲットー行きです
歴史の先生が列に並びます
彼は勿論ゲットー行きです
その時に歴史の先生が
こうつぶやきながら連れて行かれます
「一体 いつ歴史というものが
エッセンシャルじゃなくなったんだ」と
今日 私が話をする
皆さんにお伝えする話というのは
Useful 役に立つ話ではないです
ただ 人間というものを理解するうえで
エッセンシャルなものだと思っています
その話の内容というのは
ギザのピラミッドです
ここでもう一つ皆さんに
お伝えしておきます
ピラミッドの謎というのは
まだ解けていないです
私たちがこの巨大な
4500年前に作られた建造物について
知っていることというのは
まだ ごく僅かなものなんですね
なぜ分からないのか
これはイギリスの児童文学家で
ラドヤード・キップリングという人の
言葉を引用しましょう
キップリングというのは
「象の鼻はなぜ長い?」というですね
非常に示唆に富んだ童話を書いてます
その中に出てくるのが
「6人の召使い」という
詩が最後にでてきます
ご存じの方がいるかもしれません
この召使いというのは
キップリングのために
世界中のあらゆるところに行き
色んな情報をくれるという6人です
それは
What, Why, When, How, Where
例えばピラミッドに関して言えば
ピラミッドがなんなのか
ピラミッドがなぜ建てられたのか
ピラミッドがいつ、どのようにして
そしてどこに建てられたのか
という研究というのは
これまでよくされてきました
しかし 一人足りないですね
この5W6H と呼ばれる中の
最後の一人というのが
最後 and Who
一体誰がピラミッドを建てたのか
ピラミッドを建てた人というのは
どこに住んでいてですね
どんな生活を行っていたのか
という研究がなされなかった訳です
この中でエジプトに
行かれたことがある方いますか?
多分 そんなにいないですね
恐らく行かれていない方は
皆さんのイメージとして
ピラミッドと言えば 砂漠の真ん中に
孤立無縁の形で立っている
非常にロマンチックな姿を
想像していると思うんですが
実際の姿というのは
こういった形です
もう人だらけです
年間1300万人程
日に直すと3万人くらいの人々が
ギザ台地を訪れます
ただここにいる観光客を
頭の中で全て
労働者に変えてみてください
私たちエジプト学者の推定では
おそらく2万から3万人の人々が
ピラミッドを造築するのに
関わったと考えています
その為に ここの人をですね
全て労働者に変えたその時のイメージが
4500年前のイメージである訳です
こういった人々のことを考慮に入れずに
ピラミッドのことを語ろうと思えば
例えば 非常に複雑な説になったり
はたはですね 宇宙人であるとか
超古代文明とかがでてくるんですが
人々を入れてもう一度考えてみると
どのようにしてピラミッドを建てたのか
特にこの問題に対して
適切な答えというのが出てくるはずだと
このことについて考え 今から28年前
弊協会の隊長である
アメリカ人考古学者の
マーク・レイナーが
ギザ台地を踏査しました
当初言われていたのは
ナイル川があればですね
ナイルの東側は生きている人の町だと
そしてナイルの西側には
これは墓しかないと言われていたんです
ところがレイナー自身が考えたのは
人間というのは
そんなに不自由なもんじゃない と
ピラミッドが国家プロジェクトであれば
ピラミッドを建てるすぐ側に
町というのもあるだろう と
そして考えたのが
スフィンクスの南500m
カラスの壁と呼ばれる壁があるんですが
そこを発掘しました
結果出てきたのが
これまで見たことがないような
都市遺構が出てきました
これがピラミッドタウンと
私たちが呼んでいる所です
以後30年に渡る
ここの発掘調査が行われています
今 現在私が担当しているというのは
この中で西の町と呼ばれる
おそらく 貴族であるとか
上流階級が住んでいたと思われる
町の発掘をしています
特にハウスユニットワンという
ピラミッドタウン最大の
巨大な、大きな家というのを
発掘しています
家をですね詳しく見ていくと
もう現代と変わらないような形です
例えば キッチンがあります
当然ながら
古代エジプトの主食というのは
パンです
このパンなんですが
ベジャと呼ばれる30cm から60cm の
非常に大きな素焼きの壺に入れて
焼くんですが
めちゃくちゃ美味しいんです
で なんでお前知ってるんだ
って感じなんですけれど
実は 今年の二月にですね
あるテレビ番組で
再現して作ってみました
これ エンマー小麦という
小麦を使って作ったんですが
非常にどっしりは してるんですが
慈愛に満ちたですね 味がします
その他ビールも飲みます
ただ 冷えてはいないです
ただアルコール分も低いんですが
栄養価に満ちた
非常に このビール
エジプトでは よく出てきます
このハウスユニットワンでも
大量のビール壺というのがあります
あと家の中には当然
寝るところもあるんですが
その寝るところが真ん中にあります
寝ているのはですね
私の発掘チームの一人の
アリおじさんなんですけれど
実験考古学と称して
よく こういうのを確かめたりするんですよ
私もこう寝てみたらですね
非常に寝心地はいいです
こういった人々がピラミッドを
作っていたというのを考え
もう一度 ではどのようにして
ピラミッドが建てられたのか
というのを考えてみよう と
ただ ここでもう一つ問題があります
どんな問題があるのかと言うと
実は データというのはないんですね
まあ ないと言ったら
ちょっと語弊がありますが
一つ見せましょう
これが今まで私たちが
持っているデータになります
ピラミッドと言えば例えば四角錐で
こういう様な線画で
通常描かれていますね
ただこういった線画というものは
建設当初は恐らくこうだっただろうという
ある種 復元図であり
現状そのものの石一つ一つを
表したりしてません
皆さんの 恐らくこれもイメージの中で
考古学というのは発掘であると
ものを掘り出すのが仕事だと
考えられているかもしれませんが
実は考古学の一番重要な
仕事というのは記録です
適切な記録があってこそ
過去というのを理解できる訳です
こういったものからは
なかなかピラミッドの
建造方法というのが分からないため
私たちは新しい
最新の計測技術を使い
このまず第四のピラミッドと
呼ばれるものをですね
計測してみました
こちらの線画と
今から私が見せるものと
見比べをしてみてください
これが私たちが作ったものになります
これが三次元計測になります
見ていただくとですね
点で成ってるのが分かりますか
これコンピュータグラフィックイメージ
のものではなく
点で成っており
点群データと呼ばれております
それぞれの点にはX, Y, Z,
RGB の情報があり
これはあるがままを
現状を記録しているものです
こういったものを利用して
私たちはピラミッドの作り方を
理解しようとしているんですが
ただ データの欠損箇所があるため
そういったものはコンピュータサイエンティストが
モルフォルジ処理を使って
欠損箇所を埋めたり
あと石の切り出し方なんかは
なかなか分かりにくいので
今度は「PEAKIT」というですね
特殊なエッジディテクティング
アルゴリズムを使い
これも分かりやすくしたり
あと ピラミッドのこういった
巨石建造物の周りというのは
砂が埋まっていて
その底がどうなっているのか分からない と
そういったものというのは
衛星画像の解析を使い
地下というのを確かめよう
という風にしています
この様にしてピラミッドの
謎に挑んでいるわけです
もう一度 先程の
Six serving-men
六人の召使いについて
ちょっと話をしていきましょう
キップリングがですね
召使いの時に
最後にこういう風に書いてます
ある子供たちにとっては
実は謎というのは
6つだけではないんだよ と
彼らにとって謎というのは
実は 1千万ある と
もう子供ってずっと
問いかけますよね
どうして、どうして、どうして、どうして と
実はピラミッドというのも
謎はまだまだあります
四角錐で皆さん
思っていると思うんですが
実は東西南北が少しずつ凹んでいます
なぜか まだ分からないです
クフ王の大ピラミッドの北東の角には
巨大な壁が石灰岩の
台地の中に埋まっています
これもよく分かってないです
そのためにピラミッドの謎というのは
日本で言う八百万ではないんですが
本当にまだまだ無限にあるわけです
こういった謎というのは
当然ながら私一人では解けません
ピラミッドクエストに関して言えば
やはりパーティ、グループを組んで
やっている訳なんですが
そのグループが
ここにいる面々たちになります
今回は私は一代表として
この話をさせていただいています
今回 このTEDxKyoto
色んな方が来ているということで
私が一つ望んでいるのは
恐らく新しいパーティのメンバーが
見つかるんではないかな
という風に思っています
もしくは協力者が
見つかるのではないかな
という風に思っていますので
また興味がある方は声を掛けてください
最後にこのプロジェクトのですね
隊長であるマーク・レイナー
亀井先生、佐藤先生
そして何より
今色々と もめてはいるんですが
エジプトの仲間たちですね
彼らにスペシャルサンクスを
贈りたいと思います
ご静聴ありがとうございました
(拍手)