1
00:00:00,000 --> 00:00:01,902
日本語版字幕担当：
ミシガン大学所属 − 瀬川恵、矢嶋彩香
ボランティア − 東梅ひろみ, M.D.

2
00:00:01,902 --> 00:00:03,444
肩の筋骨格系検査法（完全版）
ミシガン大学 
家庭医療学科
タラ・マスターハンター, M.D.
マイケル・マクカートニー, M.D.

3
00:00:03,444 --> 00:00:09,134
完全な評価を確実に行うために、 
肩の筋骨格系検査は系統立った方法で行うのが最善です。

4
00:00:09,134 --> 00:00:16,237
次のビデオは肩の損傷を評価する際に用いられる一般的な
検査法を多数取り入れている推奨された診察手順です。

5
00:00:17,022 --> 00:00:19,492
肩の診察はまず視診から始めます。

6
00:00:19,492 --> 00:00:26,797
前方から観察し、左右の肩の非対称性、鎖骨の変形、
筋肉の萎縮、皮膚の変化などを評価します。

7
00:00:26,797 --> 00:00:30,668
後方からも同じような点について観察し評価します。

8
00:00:30,668 --> 00:00:33,052
次に能動的可動域を調べます。

9
00:00:33,052 --> 00:00:36,634
痛みや可動域に制限がある場合は
他動的に同じ動きを繰り返してください。

10
00:00:36,634 --> 00:00:41,078
肩関連痛の原因となる頸部の異常を除外するため、
首の可動域を評価してください。

11
00:00:41,078 --> 00:00:45,801
屈曲、伸展、側屈、回転の可動域を調べてください。

12
00:00:45,801 --> 00:00:48,969
次に両肩の能動的可動域を評価します。

13
00:00:48,969 --> 00:00:52,301
屈曲、

14
00:00:52,301 --> 00:00:54,635
伸展、

15
00:00:54,635 --> 00:00:56,763
外転、

16
00:00:56,763 --> 00:00:59,097
内転、

17
00:00:59,097 --> 00:01:01,332
外旋，

18
00:01:01,332 --> 00:01:03,551
内旋。

19
00:01:03,551 --> 00:01:08,797
患者を後ろ側から観察しながら
外旋時アプレースクラッチテストを行うと、

20
00:01:08,797 --> 00:01:11,902
内転と外旋を組み合わせた可動域を評価する事ができます。

21
00:01:11,902 --> 00:01:15,039
患者に頭の上まで腕を伸ばしてから
手を背骨に沿って下げる様に指示します。

22
00:01:15,039 --> 00:01:25,069
大抵の患者は第７頸椎より下まで手が届きます。

23
00:01:25,069 --> 00:01:29,569
内旋時アプレースクラッチテストで
内転と内旋を組み合わせた可動域を調べます。

24
00:01:29,569 --> 00:01:32,320
患者に手を背中に回して背骨に沿って
上に向かって手を動かすよう指示します。

25
00:01:32,320 --> 00:01:36,125
大抵の患者は第７胸椎か
または肩甲骨の下端に手が届きます。

26
00:01:36,125 --> 00:01:39,094
次に回旋筋腱板の強度を評価します。

27
00:01:39,094 --> 00:01:42,431
ドロップアームテストで棘上筋断裂の有無を調べます。

28
00:01:42,431 --> 00:01:47,568
他動的に肩を９０度に内転させてから３０度屈曲させ、
親指が下を向く様にします。

29
00:01:47,568 --> 00:01:52,819
検査者が手をはなした後、患者が腕をあげた状態を
保てない場合、この検査の結果は陽性となります。

30
00:01:52,819 --> 00:01:57,046
棘上筋の強度の検査は空き缶テストでも行う事ができます。

31
00:01:57,046 --> 00:02:00,680
先の検査と同じ体勢で患者が腕を上に上げるときに
負荷を加えます。

32
00:02:00,680 --> 00:02:03,852
痛みを生じる場合は腱障害や断裂の可能性があります。

33
00:02:03,852 --> 00:02:08,491
棘下筋や小円筋の強度は外旋時に負荷をかけて評価します。

34
00:02:08,491 --> 00:02:11,902
痛みや筋力低下がみられれば、
腱障害や腱の断裂の可能性があります。

35
00:02:11,902 --> 00:02:18,397
肩甲下筋の強度は 内旋時に負荷をかけて評価します。

36
00:02:18,397 --> 00:02:22,236
肩甲下筋の強度はプッシュオフテストでも調べられます。

37
00:02:22,236 --> 00:02:25,946
患者に腕を内転させて体の後ろに回し、
後ろで腕を内旋させるよう指示します。

38
00:02:25,946 --> 00:02:29,778
患者が腕を体から離そうとするときに負荷を加えます。

39
00:02:29,778 --> 00:02:33,115
痛みや筋力低下がみられれば、
腱障害や断裂の可能性があります。

40
00:02:33,115 --> 00:02:36,236
次に解剖学的ランドマークを触診し
圧痛がないか調べてください。

41
00:02:36,236 --> 00:02:38,235
頸切痕、

42
00:02:38,235 --> 00:02:40,388
胸鎖関節、

43
00:02:40,388 --> 00:02:44,525
鎖骨沿い、

44
00:02:44,525 --> 00:02:46,027
肩鎖関節、

45
00:02:46,027 --> 00:02:47,627
肩峰、

46
00:02:47,627 --> 00:02:53,436
上腕骨大結節、

47
00:02:53,436 --> 00:02:56,986
上腕骨小結節を触診します。

48
00:02:56,986 --> 00:03:04,068
腕を内旋させたり外旋させたりすると大結節と小結節
の間にある上腕二頭筋長頭を触診する事ができます。

49
00:03:04,068 --> 00:03:07,570
烏口骨も触診します。

50
00:03:07,570 --> 00:03:11,119
後ろからこれらを観察します：肩峰、

51
00:03:11,119 --> 00:03:14,122
肩甲棘、

52
00:03:14,122 --> 00:03:18,457
棘の上部にある上棘筋、

53
00:03:18,457 --> 00:03:21,819
棘の下にある下棘筋、

54
00:03:21,819 --> 00:03:24,654
小円筋、

55
00:03:24,654 --> 00:03:28,703
僧帽筋、

56
00:03:28,703 --> 00:03:31,320
菱形筋。

57
00:03:31,320 --> 00:03:34,000
肩甲骨と胸郭の間の関節を探してください。

58
00:03:34,000 --> 00:03:37,586
特に翼状肩甲骨がないか調べてください。特に翼状肩甲骨がないか調べてください。

59
00:03:37,586 --> 00:03:43,991
肩の損傷の評価用の検査には次のようなものがありますが、
検査の種類はこれだけに限りません。

60
00:03:43,991 --> 00:03:47,359
ホーキンステストは回旋腱板損傷を評価する検査です。

61
00:03:47,359 --> 00:03:54,901
肩甲骨を固定した状態で、他動的に肩を
９０度に外転させた後、３０度に曲げます。

62
00:03:54,901 --> 00:03:58,672
さらに肘を９０度に屈曲させた状態で
肩を内向きに回します。

63
00:03:58,672 --> 00:04:01,505
痛みがあれば検査は陽性です。

64
00:04:01,505 --> 00:04:05,034
ニアーテストも回旋腱板損傷を評価する検査です。

65
00:04:05,034 --> 00:04:09,414
肩甲骨を固定し、親指が下を向いた状態で
他動的に腕を曲げてください。

66
00:04:09,414 --> 00:04:11,516
痛みがあれば検査は陽性です。

67
00:04:11,516 --> 00:04:16,950
クロスアームフレクションテストは
肩鎖関節炎や亜脱臼を評価する検査です。

68
00:04:16,950 --> 00:04:20,616
肩を９０度に屈曲させて体と交差させる様に
内転させてください。

69
00:04:20,616 --> 00:04:25,032
肩鎖関節に痛みがあれば検査は陽性です。

70
00:04:25,032 --> 00:04:29,168
肩の不安定性を評価する検査は複数あります。

71
00:04:29,168 --> 00:04:34,807
下関節窩上腕の安定性を検査する際は、
腕を患者の体に沿わせた状態にし、上腕骨を牽引します。

72
00:04:34,807 --> 00:04:40,146
万一上腕骨頭と肩峰の表面下の間に
１センチ以上の溝が生じた場合は、

73
00:04:40,146 --> 00:04:45,450
サルカスサインテストは陽性で、
肩関節下方が不安定であると評価します。

74
00:04:45,450 --> 00:04:50,116
ロードアンドシフトテストは関節窩上腕関節の
前後方向の安定性を調べる検査です。

75
00:04:50,116 --> 00:04:57,543
関節窩上腕関節を押さえながら上腕骨に
長軸方向の力をかけ、手で上腕骨頭を前後に動かします。

76
00:04:57,543 --> 00:05:02,574
前後にずれが起こる場合、
不安定性は陽性であると判断します。

77
00:05:02,574 --> 00:05:07,624
アプリヘンションテストとリロケーションテストも
関節窩上腕関節前方の安定性の検査です。

78
00:05:07,624 --> 00:05:15,282
患者を背臥位にした状態で肩を９０度に外転させ腕を
外旋させた状態で、関節窩上腕関節に負荷をかけます。

79
00:05:15,282 --> 00:05:20,787
患者が腕を脱臼するのではないかという
不安定感を抱いた場合、結果は陽性です。

80
00:05:20,787 --> 00:05:27,527
リロケーションテストは検査者の手で患者の関節窩上腕関節に後ろ向きに力がかかる様にしながら行います。

81
00:05:27,527 --> 00:05:30,496
不安定感が軽減する場合は陽性の結果です。

82
00:05:30,496 --> 00:05:35,605
上腕二頭筋腱や関節窩上腕関節の関節唇の損傷を
評価する検査は複数あります。

83
00:05:35,605 --> 00:05:40,225
スピードテストを行う際は、腕を回外した状態で
肩を９０度に屈曲させてください。

84
00:05:40,225 --> 00:05:43,308
肩の屈曲に対し下向きに負荷をかけてください。

85
00:05:43,308 --> 00:05:50,140
痛みが生じる場合は上腕二頭筋腱か
または関節唇に断裂がある可能性があります。

86
00:05:50,140 --> 00:05:57,141
ヤーガソンテストを行う際は、肘を９０度に曲げて患者と
握手をし、腕の回外に対抗して負荷をかけてください。

87
00:05:57,141 --> 00:06:02,597
痛みがあれば上腕二頭筋腱か
または関節唇に断裂がある疑いがあります。

88
00:06:02,597 --> 00:06:07,225
オブライエンテストを行う際は、
親指を下に向けて肩を９０度に屈曲させてください。

89
00:06:07,225 --> 00:06:14,226
腕を正中線と交差するように内転させ、更なる肩の屈曲に
対抗して負荷を加え痛みがないか調べます。

90
00:06:14,226 --> 00:06:18,725
親指が上を向いた状態で検査を繰り返し、
痛みの評価を行います。

91
00:06:18,725 --> 00:06:23,962
親指が下向きの時に痛みが生じても、親指を上に
向けると痛みが緩和される場合は陽性の検査となり、

92
00:06:23,962 --> 00:06:27,186
関節唇の断裂を疑います。

93
00:06:27,186 --> 00:06:35,761
バイセプスロードテストを行う際は、腕を回外し、
肩を９０度に外転させ、肘を９０度に曲げます。

94
00:06:35,761 --> 00:06:43,936
患者が不安定感を示すまで腕を外旋させ、
肘の屈曲に逆らって負荷をかけます。

95
00:06:43,936 --> 00:06:50,267
痛みが生じる場合は上腕二頭筋腱障害や
関連する関節唇に断裂があると考えられます。

96
00:06:50,267 --> 00:06:58,716
バイセプステンションテストを行う場合は、腕を回外し、
肩を９０度に外転させ、肘を９０度に曲げて、

97
00:06:58,716 --> 00:07:04,524
患者が不安定感を抱くまで腕を外旋させ、
前腕を回内させます。

98
00:07:04,524 --> 00:07:10,465
痛みが生じる場合は上腕二頭筋腱障害や
関連する関節唇に断裂がある可能性があります。

99
00:07:10,465 --> 00:07:15,174
クランクテストを行う場合は、肩を完全に外転させて
上腕骨に長軸方向に力をかけます。

100
00:07:15,174 --> 00:07:17,734
腕を内外旋させます。

101
00:07:17,734 --> 00:07:27,672
痛み、引っかかり、痛みを伴うクリック音があれば
検査は陽性で、関節唇に断裂がある可能性があります。

102
00:07:27,672 --> 00:07:34,256
患者の肩の痛みの原因が、
胸郭出口症候群かを評価する検査がいくつかあります。

103
00:07:34,256 --> 00:07:39,424
肋骨鎖骨マニューバーテストを行う場合は、
患者の肩を下後方に牽引します。

104
00:07:39,424 --> 00:07:45,174
患者が腕の痛みやしびれを訴えた場合は
胸郭出口症候群の可能性があります。

105
00:07:45,174 --> 00:07:50,254
三分間挙上負荷テスト（ルーステスト）を行う場合は、
肩を90度に外転させ、肘を９０度に曲げた状態で、

106
00:07:50,254 --> 00:07:53,590
最長約３分間、手を素早く閉じたり開いたりします。

107
00:07:53,590 --> 00:07:59,379
患者が腕の痛みやしびれを訴えた場合は
胸郭出口症候群の可能性を疑います。

108
00:07:59,379 --> 00:08:02,504
アドソンテストを行う場合は、
橈骨動脈拍動を確認してください。

109
00:08:02,504 --> 00:08:07,709
患者に大きく息を吸わせて、首を伸ばした状態で
痛みがある方の肩に向けて頭をまわす様に指示します。

110
00:08:07,709 --> 00:08:17,570
痛みがある側の橈骨動脈拍動が弱くなった場合
検査は陽性で、胸郭出口症候群を懸念します。

111
00:08:17,570 --> 00:08:20,954
スパーリングテストは頸部神経根障害を評価する検査です。

112
00:08:20,954 --> 00:08:26,600
首を伸ばして痛みがある方の肩に頭を向けた状態で
額を押さえて頸椎に長軸方向に力をかけます。

113
00:08:26,600 --> 00:08:31,051
痛みや知覚異常が生じたら検査は陽性です。

114
00:08:35,605 --> 00:08:39,730
肩の検査を終える前に神経血管系の検査について
記録しておく事が重要です。

115
00:08:39,730 --> 00:08:41,576
手短に検査方法をお見せします。

116
00:08:41,576 --> 00:08:47,011
手首の伸展に抵抗を加えて、橈骨神経を評価します。

117
00:08:47,011 --> 00:08:52,316
親指の対立に抵抗を加えて、正中神経を評価します。

118
00:08:52,316 --> 00:08:58,163
手指の外転に対する抵抗を加えて尺骨神経を評価します。

119
00:08:58,163 --> 00:09:03,039
橈骨動脈拍動および毛細血管再充満テストをおこないます。

120
00:09:03,039 --> 00:09:05,853
患者の既往歴に応じて更に神経血管系の検査が
必要になる場合もあります。

121
00:09:05,853 --> 00:09:06,813
謝辞：本ビデオの翻訳は、静岡県の支援の下、
地域医療再生基金を用いた「静岡－ミシガン大学家庭医療後期研修、
教育及び研究」（SMARTER FM）プロジェクトの一部として行われました。