20年間 私が行ってきたゾウの研究を
凝縮して
ひと言で表すなら
何と言えばいいでしょう?
どう伝えたらいいかしら?
「ゾウは私たちとそっくりだ」
と言いましょうか!
どういうことかと言うと
平原に出て行って
このとてもゆっくりとした
知性ある動物のパターンを理解するには
このとてもゆっくりとした
知性ある動物のパターンを理解するには
かなりの忍耐が必要です
ですが 時が経つにつれ
ゾウが人間と似ているとわかるのです
「何でそんなことが言えるの?
ゾウには大きな耳があるし
すごく長い鼻だってある
どこが人間と似ているの?」
と思うかもしれません
実は ゾウの家族が
人間の家族とよく似ているのです
ゾウにとって 家族はとても大切です
ゾウは結びつきの強い
家族の中で育ち
親戚も大勢います
私たちの親戚の集まりで
おばさんたちが寄り集まって
持ち寄る予定の
食べ物の話をしている一方
男の子たちは 皆
「一緒にテレビゲームをやるのかな?
喧嘩になるのかな?」
と考えています
本当にそっくりで
喜怒哀楽を示したり
本当に興味深いのです
でも 家族が集まるやいなや―
結婚式なんかのように―
突然 家族同士の力関係があらわになります
この場面において格下のゾウたちは
矢印のうしろの方にいるのですが
彼らは各々 自分の立場を
わきまえていて
一番濁っている部分の水を
飲もうとしています
なぜなら 親戚が全員ここにいて
きれいな水は
最も格上の家族のものなので
彼らが飲むわけにはいかないからです
もうひとつ とても似ているのは
皆が尊敬する年長者が
いるということです
これはメスの長ですが
他のメスたちは
鼻を差し伸べて
鼻を相手の口の中に入れる
動作を行っています
これは敬意のしるしで
握手のようなものですが
敬礼でもあるのです
この敬礼の動作は幼い時に学びます
さて 家族の中での
しきたりや結びつきは
協調した行動を容易にします
この幼いメスは 足がくぼみに
はまってしまい
どうしたいいかわからず
パニックに陥っています
年上のメス つまりメスの長は
「大丈夫よ」と言って
この赤ちゃんを引き上げます
これは家族によっては
当てはまらないかもしれません
うまく協力できない家族もいます
でも 幼いメスがどうしたらいいか
わからなければ
年上のゾウたちは身をかがめ
一緒にひざまづいて
幼いゾウを助けるのです
もうひとつ そっくりなのは
10代の男の子が
大人になっていく様子です
オスのゾウは12歳か15歳で
成人します
この写真の1番大きなゾウは
家族のもとを離れようとしています
大きくなりすぎ
ちょっと生意気になったので
大人のメスたちの
手に負えなくなったのです
でも 彼は自立していて
外に出て行って
他のオスたちと遊びたいのです
何が起こるかと言うと
オスだけの社会ができるのです
確固たるしきたりのある男性社会です
グレッグは最も有力なオスです
真ん中が彼です
大きな集団を従え
他の者は彼を尊敬しています
優秀なリーダーや優秀な有力者が
アメとムチを使い分ける方法は
とても興味深いです
このゾウは その達人で
ここには 他にも自分の集団を
持ちたがっているガキ大将がいます
でも 乱暴すぎるので それができないのです
そこで 彼がいないときに
ガキ大将たちは 自分の傘下に
つくように甘い言葉をささやきます
普段より優しくなるのです
このようにオスやメスの社会における
力関係は
大変興味深いのです
さて メスの集団に話を戻しましょう
核となる家族には 母親と
時には祖母
その娘たちと その子供たち
つまりオスとメスの赤ちゃんがいます
ここで面白いのは
性格がどう関わってくるかです
どのメスの長も とても個性的です
これら2頭の性格は面白く
気まぐれなのですが
これら2頭は大変攻撃的です
「まず指示をするから 質問はあとで」
といった感じ
メスの長の中には
「気にしないで! まず逃げて
安全な茂みに着いてから
考えるわ」という者もいます
最も賢いメスの長―
これまでの研究の中で
最も成功したメスの長は
危険の度合いを推し量り
逃げる価値があるかどうかを
判断する者です
社交的であることは
ゾウにとって とても大切です
生まれてすぐの頃から
幼児期の成長のように
社交はとても重要なのです
一緒に水浴びをしたり
食事をしたり 遊んだり
大騒ぎをしたり これらはどれも
社会的な発育には
とても重要です
誰でも 水たまりまで競争して
兄妹を負かそうとした
そんな経験があるでしょう
幼い頃からの このような関係は
本当に一生続く親友関係となるでしょう
これらのメスは一生
生活を共にします
オスでもメスでも一生
一緒にいるかもしれませんが
早いうちに絆を深めることが
とても大切なのです
こうした結びつきがのちに
自分の命を救うことになるのです
さて 学校の校庭で見られるような
そんな場面をお見せしましょう
ここで起きていることに注目すると
いじめっ子がいて
赤ちゃんゾウの鼻を引っ張っていると
わかるでしょう
そして それを諌める者がいて
鼻を差し伸べて こう言っています
「だめだよ! やめなよ!」
それから 傍観者もいます
どうしたら この三者三様のゾウが
ひとつの家族の中に生まれるのでしょう?
ゾウが私たちとそっくりだというのは
非常に面白いことです
私はこのことに好奇心を抱き
「どうだろう―
有力なメスの赤ちゃんの性格と
格下のメスの赤ちゃんの性格を比べ
さらに―
成長の経過を調べたらどうだろう?」
と思いました
そして 調べ始めました
この耳を広げている子ゾウは
こちらに突進していることがわかるでしょう
このゾウの性格と
後ずさりして 母親に触れようとしている
ゾウの性格の違いは
これだけではよくわかりません
しかし もう1頭は自信ありげに
突進しています
私たちは 子ゾウが母親から
どれくらい離れるか
どれくらい頻繁に触れ合うか
どれくらい頻繁に
遊びを率先して始めるか
それから 母親の格を調べました
そしてわかったのは
格上の家族の子ゾウは
格下の子ゾウよりも
かなり社交的なのです
さらに 推測できるのは
格下の子ゾウが
遊びたくないのではなくて
彼らは格上の子ゾウと
関わってはいけないのです
格上のメスにぴしゃりと
追い払われてしまうのです
これは悪い意味で
我々とゾウがそっくりである点です
ゾウは私たちと似ていますが
それは良いこととも
悪いこととも言えます
なぜなら このようなことが人間にも
起こっていて
そこから学ぶべきことが
あるのかもしれないからです
私たちが発見した最後の点は
オスの方が危険を顧みず
自立して
母親から離れて
過ごしがちだということです
これも人間社会や
他の社会的な動物にも
当てはまります
私たちがゾウと
とても似ている生き方をしていること―
何年も調べてわかったように
ゾウは個性的で持続的な性格を備えていることを
わかってもらえたでしょうか
往々にして いじめっ子は
社交上の大転機があって
優しくなろうと決心をしない限り
他者の好意を得ることはできず
いじめっ子のままでありがちです
そして 優しく大きなゾウは
いつでも優しく穏やかです
若いオスは年長者からの
指導を必要としていて
優しい大きなゾウは諌めるのが
とても上手です
オスにとって家族の元を去るのは
とても辛いことですが
彼らはそれを乗り越えて
行動を共にする者を見つけます
話を終える前に お伝えしたいのは
ゾウは私たちにとても似ていて
このような性格があるので
テレビで見かけたり
幸運にも野生で目にすることができたなら
ゾウたちについて
個々の性格を観察する価値があり
保護すべき対象なのだと考えてみてください
ありがとう