1
00:00:01,527 --> 00:00:04,315
2000年5月2日未明のことです

2
00:00:04,315 --> 00:00:07,900
社会に大きな変化を
もたらすことが起きました

3
00:00:07,900 --> 00:00:10,206
社会に大きな変化を
もたらすことが起きました

4
00:00:10,206 --> 00:00:13,484
皮肉にも その変化に
誰も気付きませんでした

5
00:00:13,484 --> 00:00:16,144
変化は静かで 知覚出来ず

6
00:00:16,144 --> 00:00:18,989
事実を正確に知らなければ
気づきようもなかったのです

7
00:00:18,989 --> 00:00:21,340
その日の朝 
ビル・クリントン米大統領が

8
00:00:21,340 --> 00:00:23,612
特別なスイッチを入れるように命じたのです

9
00:00:23,612 --> 00:00:27,045
GPSを司る
周回軌道衛星のスイッチでした

10
00:00:27,045 --> 00:00:30,909
すぐさま地球上に存在する
民間のGPS受信機の誤差が全て

11
00:00:30,909 --> 00:00:35,471
フットボール場のサイズから

12
00:00:35,471 --> 00:00:39,406
小部屋のサイズにまで縮んだのです

13
00:00:42,314 --> 00:00:46,105
精度に起こった この変化が
私たちにもたらした影響は

14
00:00:46,105 --> 00:00:48,657
とてつもないものでした

15
00:00:48,657 --> 00:00:50,904
このスイッチが入る前は

16
00:00:50,904 --> 00:00:53,163
道案内をするカーナビなんて
ありませんでした

17
00:00:53,163 --> 00:00:55,755
なぜなら当時のGPSは 今いる道どころか

18
00:00:55,755 --> 00:00:58,449
区画さえも判らなかったんですから

19
00:00:58,449 --> 00:01:01,697
地理的な位置情報は精度が大事で

20
00:01:01,697 --> 00:01:04,955
ここ10年 ますます正確になってきました

21
00:01:04,955 --> 00:01:07,074
基地局や地上局が増え

22
00:01:07,074 --> 00:01:10,043
感度やアルゴリズムが向上するにつれ

23
00:01:10,043 --> 00:01:13,106
GPSは今いる道だけでなく 道のどこかさえも

24
00:01:13,106 --> 00:01:17,608
伝えられるようになったのです

25
00:01:17,608 --> 00:01:19,854
位置精度レベルの向上が

26
00:01:19,854 --> 00:01:22,780
イノベーション爆発を引き起こしました

27
00:01:22,780 --> 00:01:25,451
今日ここに来るのに携帯カーナビや

28
00:01:25,451 --> 00:01:29,044
スマートフォンの力を借りた人は多いはずです

29
00:01:29,044 --> 00:01:32,269
紙の地図は時代遅れになってしまいました

30
00:01:32,269 --> 00:01:36,408
ですが 私たちは位置精度における更なる革命を

31
00:01:36,408 --> 00:01:38,403
目前に控えているのです

32
00:01:38,403 --> 00:01:41,136
現在の携帯カーナビやスマートフォンが与えてくれる

33
00:01:41,136 --> 00:01:44,567
２メートルの精度よりも ずっと正確な位置が

34
00:01:44,567 --> 00:01:48,464
得られるようになると言ったら どう思います？

35
00:01:48,464 --> 00:01:51,297
実は周知の事実なのですが

36
00:01:51,297 --> 00:01:53,832
GPS信号の搬送波の位相に着目し

37
00:01:53,832 --> 00:01:56,313
さらにインターネット接続がある場合

38
00:01:56,313 --> 00:01:59,129
メートル単位だった精度を

39
00:01:59,129 --> 00:02:02,096
センチのレベル
ミリのレベルにもできるのです

40
00:02:02,096 --> 00:02:05,376
なのに この機能が携帯電話に
入っていないのはなぜでしょう？

41
00:02:05,376 --> 00:02:09,746
私は単なる想像力の欠如だと思いますがね

42
00:02:09,746 --> 00:02:12,913
どのメーカーも この位相技術を

43
00:02:12,913 --> 00:02:15,019
安いGPSチップには実装していません

44
00:02:15,019 --> 00:02:17,173
手のひらのしわを特定できるほどの位置精度を

45
00:02:17,173 --> 00:02:20,749
人々がどのように利用することができるか

46
00:02:20,749 --> 00:02:24,587
思いつかなかいからです

47
00:02:24,587 --> 00:02:26,974
ですが 皆さんや 私や 他の発明者は

48
00:02:26,974 --> 00:02:31,014
精度の次の飛躍に潜む可能性が見えています

49
00:02:31,014 --> 00:02:33,726
想像してください
たとえば AR（拡張現実）のアプリ

50
00:02:33,726 --> 00:02:37,263
そこではミリレベルの正確さで仮想世界が

51
00:02:37,263 --> 00:02:39,271
現実世界に重なります

52
00:02:39,271 --> 00:02:42,158
ミリの精度で配置した 3Dの構造物が

53
00:02:42,158 --> 00:02:44,526
見えているのは あなたや友人だけ

54
00:02:44,526 --> 00:02:47,419
ということも可能なのです

55
00:02:47,419 --> 00:02:51,934
このレベルの位置精度は ずっと求めていたものであり

56
00:02:51,934 --> 00:02:55,858
２～３年以内には必ず 
こういった非常に高精度な

57
00:02:55,858 --> 00:03:00,841
搬送波の位相による測位技術が

58
00:03:00,841 --> 00:03:04,065
安く簡単に手に入るようになるでしょう

59
00:03:04,065 --> 00:03:06,610
それは 素晴らしい結果をもたらします

60
00:03:06,610 --> 00:03:11,266
そこで欲しくなるのがGPSドット
ミニチュアのGPS発信機です

61
00:03:11,266 --> 00:03:13,946
『ダ・ヴィンチ・コード』の映画を 
覚えてますか？

62
00:03:13,946 --> 00:03:17,394
GPSドットを手に取ったラングドン教授に

63
00:03:17,394 --> 00:03:20,771
仲間が追跡装置だと教えてくれましたね

64
00:03:20,771 --> 00:03:23,832
地球上のどこにいても 60cm の精度で測位できるのだと

65
00:03:23,832 --> 00:03:26,738
しかし 現実の世界ではGPS発信機が

66
00:03:26,738 --> 00:03:29,602
不可能ですよね

67
00:03:29,602 --> 00:03:32,226
例えば GPSは屋内では機能しません

68
00:03:32,226 --> 00:03:35,410
また GPSを そんな小さくはできません

69
00:03:35,410 --> 00:03:37,738
特に 測定結果を送るのにネットワークを

70
00:03:37,738 --> 00:03:40,713
中継しなければならないなら なおのことです

71
00:03:40,713 --> 00:03:43,051
こうした反論は確かに正しいのですが

72
00:03:43,051 --> 00:03:46,065
ここ数年で事情が変わったのです

73
00:03:46,065 --> 00:03:48,921
小型化と高感度化が
どんどん進む傾向にあり

74
00:03:48,921 --> 00:03:52,640
その結果として
数年前はこのような

75
00:03:52,640 --> 00:03:55,344
GPS受信機は
カギの横にある

76
00:03:55,344 --> 00:03:57,520
ごつい箱の様なものでしたが

77
00:03:57,520 --> 00:04:00,171
数か月前に発表されたものと比べてください

78
00:04:00,171 --> 00:04:03,963
今やキーホルダーのサイズになっています

79
00:04:03,963 --> 00:04:06,516
最先端のGPS受信機は

80
00:04:06,516 --> 00:04:09,262
１辺がたったの１センチしかないのに

81
00:04:09,262 --> 00:04:11,349
さらに優れた感度を持っています

82
00:04:11,349 --> 00:04:14,858
GPSドットがノンフィクションの世界に登場するのも

83
00:04:14,858 --> 00:04:19,257
間もなくだと思えます

84
00:04:19,257 --> 00:04:23,499
GPSドットであふれる世界を想像してみてください

85
00:04:23,499 --> 00:04:26,405
もはや財布も鍵も失くすことはありません

86
00:04:26,405 --> 00:04:30,976
ディズニーランドでお子さんが迷子になることもありません

87
00:04:30,976 --> 00:04:34,757
GPSドットをまとめて買い 
２～３千円以上の持ち物に

88
00:04:34,757 --> 00:04:38,724
片っぱしから貼りつけていくのです

89
00:04:38,724 --> 00:04:41,196
靴が見つからなかったら

90
00:04:41,196 --> 00:04:44,564
いつもなら妻に場所を尋ねていました

91
00:04:44,564 --> 00:04:48,356
しかし妻をつまらぬことで悩ませる必要はもうありません

92
00:04:48,356 --> 00:04:50,967
自分の家に聞けばいいんです
靴はどこ？

93
00:04:50,967 --> 00:04:53,106
（笑）

94
00:04:53,106 --> 00:04:56,614
Gmail に乗り換えたことのある方は
思い出してください

95
00:04:56,614 --> 00:04:59,492
メールを体系だてて整理していた作業が

96
00:04:59,492 --> 00:05:03,636
単純な検索で済むようになりましたね

97
00:05:03,636 --> 00:05:08,138
GPSドットなら 持ち物に対して
同じことができるのです

98
00:05:08,138 --> 00:05:12,824
もちろんGPSドットにも良くない面があります

99
00:05:12,824 --> 00:05:15,213
何ヶ月か前 職場に ある電話が

100
00:05:15,213 --> 00:05:17,756
かかってきました

101
00:05:17,756 --> 00:05:21,377
電話の向こうの女性 キャロルというのですが

102
00:05:21,377 --> 00:05:23,456
うろたえていました

103
00:05:23,456 --> 00:05:26,249
どうやら カリフォルニアにいるはずの元彼が

104
00:05:26,249 --> 00:05:29,564
テキサスにいる彼女を見つけ出し
つきまとっていると言うのです

105
00:05:29,564 --> 00:05:33,401
なぜ彼女が私なんかに相談するのかと
思うかもしれませんね

106
00:05:33,401 --> 00:05:34,800
私もそう思いました

107
00:05:34,800 --> 00:05:38,791
実は キャロルの事件には専門技術が絡んでいたんです

108
00:05:38,791 --> 00:05:41,525
元彼が現れるのはいつも

109
00:05:41,525 --> 00:05:45,875
絶対にあり得ないような時間や場所でした

110
00:05:45,875 --> 00:05:48,571
元彼はノートPCを持ち歩いており

111
00:05:48,571 --> 00:05:51,414
やがてキャロルは 元彼が車にGPS追跡機を

112
00:05:51,414 --> 00:05:53,962
仕掛けていたと気づいたのです

113
00:05:53,962 --> 00:05:56,871
それで私に装置を止めてくれと頼んできたのです

114
00:05:56,871 --> 00:05:58,859
「腕のいい修理屋に車を見せては？」
と提案しましたが

115
00:05:58,859 --> 00:06:02,143
「腕のいい修理屋に車を見せては？」
と提案しましたが

116
00:06:02,143 --> 00:06:04,847
「もうした」 とのことでした

117
00:06:04,847 --> 00:06:06,991
「おかしなものは見当たらないし

118
00:06:06,991 --> 00:06:10,528
これ以上は車を分解しないと判らない」 と言われたそうです

119
00:06:10,528 --> 00:06:13,849
「警察に行ったらどうかな」 と勧めました

120
00:06:13,849 --> 00:06:16,953
「それもした」 との答えでした

121
00:06:16,953 --> 00:06:19,399
「犯罪の確かな証拠が無いし

122
00:06:19,399 --> 00:06:23,152
警察には装置を見つける技術が無い」 と言うのです

123
00:06:23,152 --> 00:06:24,658
「なるほど じゃ FBI は？」

124
00:06:24,658 --> 00:06:28,821
「それもしたけど 答えは同じだった」

125
00:06:28,821 --> 00:06:30,491
私は彼女に 研究所へと来てもらい

126
00:06:30,491 --> 00:06:33,039
車から出る電波を丹念に検査しました

127
00:06:33,039 --> 00:06:35,538
しかし どの周波数に合わせても

128
00:06:35,538 --> 00:06:37,589
何の反応もありません

129
00:06:37,589 --> 00:06:39,823
装置は安全圏の中にいるか 移動中にしか

130
00:06:39,823 --> 00:06:43,127
電波を発信しなかったのです

131
00:06:43,127 --> 00:06:44,621
つまり何も発見できませんでした

132
00:06:44,621 --> 00:06:47,590
キャロル以外にも

133
00:06:47,590 --> 00:06:52,525
GPS追跡装置が原因で
このように恐怖を抱き

134
00:06:52,525 --> 00:06:58,410
心配する状況に陥る人は
多くいるはずです

135
00:06:58,410 --> 00:07:00,213
事実 彼女の事件を調べているうちに

136
00:07:00,213 --> 00:07:03,675
驚愕の事実を知りました

137
00:07:03,675 --> 00:07:08,108
誰かの車に追跡機を仕込むことが
犯罪だとは限らないのです

138
00:07:08,108 --> 00:07:11,988
最高裁は先月 
警察が長期に渡り追跡装置を使うなら

139
00:07:11,988 --> 00:07:16,320
許可が必要だと判決を出したものの

140
00:07:16,320 --> 00:07:19,836
一般人が行う場合については明確になっていないのです

141
00:07:19,836 --> 00:07:22,466
だから 強大なる「政府」の監視に怯えるだけでなく

142
00:07:22,466 --> 00:07:25,737
強大なる「隣人」にも怯えなくては（笑）

143
00:07:25,737 --> 00:07:30,385
キャロルは ある強力な代替手段をとることもできました

144
00:07:30,385 --> 00:07:36,088
「ウェーブ・バブル」です

145
00:07:36,088 --> 00:07:39,023
MITの大学院生リモア・フリードが開発した

146
00:07:39,023 --> 00:07:41,578
オープンソースのGPS妨害装置で

147
00:07:41,578 --> 00:07:45,371
リモアはこれをこう呼んでいます

148
00:07:45,371 --> 00:07:49,256
「自分の空間を取り戻す装置」

149
00:07:49,256 --> 00:07:51,521
スイッチを入れると
あたり一帯にバブルが作られて

150
00:07:51,521 --> 00:07:53,768
もはやGPS信号は存在できません

151
00:07:53,768 --> 00:07:56,124
バブルによって かき消されてしまうのです

152
00:07:56,124 --> 00:07:59,771
リモアはこれを設計したのは
キャロルと同様に

153
00:07:59,771 --> 00:08:02,417
GPS追跡による脅威を感じていたからです

154
00:08:02,417 --> 00:08:04,993
そして彼女は設計をウェブに投稿し

155
00:08:04,993 --> 00:08:08,735
自作する時間の無い人には
買えるようにもしたのです

156
00:08:08,735 --> 00:08:09,509
自作する時間の無い人には
買えるようにもしたのです

157
00:08:09,509 --> 00:08:11,567
いまや中国のメーカーがほとんど同じものを

158
00:08:11,567 --> 00:08:15,340
インターネットで大量に売っています

159
00:08:15,340 --> 00:08:19,492
「ウェーブ・バブル」 が素晴らしく思えたかもしれませんね

160
00:08:19,492 --> 00:08:23,145
家に１つあったら良いですね
車に追跡機をつけられたりしたら便利です

161
00:08:23,145 --> 00:08:26,927
しかし この装置の使用はアメリカでは
完全に違法だと

162
00:08:26,927 --> 00:08:28,726
知っておいてください

163
00:08:28,726 --> 00:08:29,473
なぜかって？

164
00:08:29,473 --> 00:08:32,566
なぜなら これがただの「バブル」ではないからです

165
00:08:32,566 --> 00:08:34,965
妨害信号は 個人空間や車内だけに

166
00:08:34,965 --> 00:08:37,437
留めることはできないのです

167
00:08:37,437 --> 00:08:43,673
害のないGPSも無効化してしまうんです
周囲何キロにも渡ってね（笑）

168
00:08:43,673 --> 00:08:46,424
あなたがキャロルやリモアや

169
00:08:46,424 --> 00:08:49,049
GPS追跡機に怯える人なら

170
00:08:49,049 --> 00:08:52,824
「ウェーブ・バブル」を使いたいかもしれませんが

171
00:08:52,824 --> 00:08:56,804
実際には 大変なことになってしまうのです

172
00:08:56,804 --> 00:08:59,524
想像してください
たとえば あなたはクルーズ船の船長で

173
00:08:59,524 --> 00:09:02,043
深い霧を抜けようとしている時

174
00:09:02,043 --> 00:09:05,883
後ろで乗客が「ウェーブ・バブル」を
オンにしたとします

175
00:09:05,883 --> 00:09:08,598
突然 GPSは無反応になり

176
00:09:08,598 --> 00:09:11,884
あなたは 霧に包まれ 使えるのは

177
00:09:11,884 --> 00:09:14,484
レーダーシステムからのデータだけ

178
00:09:14,484 --> 00:09:17,608
使い方を覚えていればの話しですが

179
00:09:17,608 --> 00:09:23,544
それらは 実際 灯台の位置を更新も維持もしておらず

180
00:09:23,544 --> 00:09:28,197
GPSの予備だったLORAN(長距離航行装置)も去年

181
00:09:28,197 --> 00:09:30,617
廃止されていました

182
00:09:30,617 --> 00:09:35,530
我々の現代社会はGPSと特別な関係にあるのです

183
00:09:35,530 --> 00:09:37,800
盲目的に依存していると言ってもいい

184
00:09:37,800 --> 00:09:41,451
我々のシステムとインフラに深く入り込んでいます

185
00:09:41,451 --> 00:09:45,079
「見えざる公共サービス」 と
呼ばれることもあります

186
00:09:45,079 --> 00:09:48,801
「ウェーブ・バブル」をオンにすると
ただの迷惑では済まないかもしれません

187
00:09:48,801 --> 00:09:53,171
命にかかわるかもしれないのです

188
00:09:53,171 --> 00:09:57,379
実は個人のプライバシーを守るために

189
00:09:57,379 --> 00:10:00,868
公共のGPSの信頼性を犠牲にする

190
00:10:00,868 --> 00:10:03,028
ウェーブ・バブルよりも

191
00:10:03,028 --> 00:10:06,820
強力で破壊的なものも存在します

192
00:10:06,820 --> 00:10:10,209
それが 「GPSスプーファー」 です

193
00:10:10,209 --> 00:10:13,034
GPSスプーファーのコンセプトは単純です

194
00:10:13,034 --> 00:10:17,011
GPSの信号を妨害するのではなく
信号のフリをするのです

195
00:10:17,011 --> 00:10:20,129
GPS信号を模倣し うまくすれば

196
00:10:20,129 --> 00:10:23,296
攻撃された装置は偽者だと気づくことさえありません

197
00:10:23,296 --> 00:10:24,928
仕組みを ご覧にいれましょう

198
00:10:24,928 --> 00:10:27,653
どんなGPS受信機も その内部に

199
00:10:27,653 --> 00:10:30,288
本物の信号に対応するピークを持っています

200
00:10:30,288 --> 00:10:33,103
３つの赤い点は 追跡ポイントです

201
00:10:33,103 --> 00:10:35,982
ピークが中心に来るように
常に調整しています

202
00:10:35,982 --> 00:10:39,047
ところが 偽のGPS信号を送ると

203
00:10:39,047 --> 00:10:43,513
この2つのピークを
ピッタリと合わせられたら

204
00:10:43,513 --> 00:10:48,231
追跡ポイントは見分けられなくなり

205
00:10:48,231 --> 00:10:51,542
より強力な偽の信号に乗っ取られてしまうのです

206
00:10:51,542 --> 00:10:55,502
本物のピークはもう役に立ちません

207
00:10:55,502 --> 00:10:57,669
この時点でゲームオーバーです

208
00:10:57,669 --> 00:11:01,406
いまや偽の信号がこのGPS受信機を
完全に制御しています

209
00:11:01,406 --> 00:11:02,901
こんなことが本当に可能かって？

210
00:11:02,901 --> 00:11:04,624
スプーファーでこんな風に

211
00:11:04,624 --> 00:11:06,606
GPS受信機のタイミングや位置決めを

212
00:11:06,606 --> 00:11:09,485
操れる人が本当にいるのでしょうか？

213
00:11:09,485 --> 00:11:11,500
いるんですよ

214
00:11:11,500 --> 00:11:14,304
民間のGPS信号は

215
00:11:14,304 --> 00:11:15,406
完全にオープンになっています

216
00:11:15,406 --> 00:11:19,397
暗号化も 認証もありません

217
00:11:19,397 --> 00:11:22,892
広く開かれているため
スプーファーのような攻撃に弱いのです

218
00:11:22,892 --> 00:11:25,467
だとしても つい最近までは

219
00:11:25,467 --> 00:11:27,859
誰もGPSスプーファーの心配は
していませんでした

220
00:11:27,859 --> 00:11:29,837
複雑すぎ あるいは高価すぎて

221
00:11:29,837 --> 00:11:32,652
ハッカーには作れないと
考えられていたのです

222
00:11:32,652 --> 00:11:36,604
しかし 私も 学生時代からの友人も

223
00:11:36,604 --> 00:11:38,756
そうは思っていませんでした

224
00:11:38,756 --> 00:11:41,229
それほど難しいとは思えませんでしたし

225
00:11:41,229 --> 00:11:43,157
最初に作った者になろうと思ったのです

226
00:11:43,157 --> 00:11:45,237
これができれば 問題に立ち向かうことができ

227
00:11:45,237 --> 00:11:49,343
GPSスプーファーの予防にもなります

228
00:11:49,343 --> 00:11:52,688
皆で一緒にやったあの１週間を鮮明に覚えています

229
00:11:52,688 --> 00:11:56,137
それを造るために私の家に集まりました
つまり

230
00:11:56,137 --> 00:12:00,526
３歳の私の息子 ラモンが手を貸してくれました

231
00:12:00,526 --> 00:12:02,944
これがラモン（笑）

232
00:12:02,944 --> 00:12:06,629
この１週間 パパの注意を引こうと頑張っています

233
00:12:06,629 --> 00:12:08,899
当初 スプーファーはケーブルとコンピュータの

234
00:12:08,899 --> 00:12:11,781
寄せ集めでしたが 最後には小さな箱に

235
00:12:11,781 --> 00:12:13,453
集約されました

236
00:12:13,453 --> 00:12:16,262
フランケンシュタイン博士の気分でした

237
00:12:16,262 --> 00:12:18,989
スプーファーはついに命を宿し

238
00:12:18,989 --> 00:12:21,590
恐るべき可能性を垣間見せたのです

239
00:12:21,590 --> 00:12:24,326
それは その夜遅く 私が iPhone に対して

240
00:12:24,326 --> 00:12:26,412
試したときでした

241
00:12:26,412 --> 00:12:28,029
一番最初の実験のときに撮影した

242
00:12:28,029 --> 00:12:29,965
本物の実験記録をお見せしましょう

243
00:12:29,965 --> 00:12:33,559
私はこの小さな青い点と 
そのまわりに輝く光に

244
00:12:33,559 --> 00:12:35,194
全幅の信頼を寄せていました

245
00:12:35,194 --> 00:12:36,269
話しかけられてる気がしました

246
00:12:36,269 --> 00:12:40,929
「ここにいるよ ここにいるよ」 って（笑）

247
00:12:40,929 --> 00:12:43,799
「信じてね」 って

248
00:12:43,799 --> 00:12:48,917
そして とても不快なことが起きました

249
00:12:48,917 --> 00:12:51,500
裏切りと言ってもいいでしょう

250
00:12:51,500 --> 00:12:55,691
私の家にいた小さな青い点が

251
00:12:55,691 --> 00:12:57,303
北へ向かって走り出したのです

252
00:12:57,303 --> 00:13:01,198
私を置き去りにして
私は動いていませんでした

253
00:13:01,198 --> 00:13:05,431
移動する青い点が見せてくれたものは

254
00:13:05,431 --> 00:13:08,149
大混乱の可能性でした

255
00:13:08,149 --> 00:13:12,291
飛行機や船がコースから逸れて

256
00:13:12,291 --> 00:13:16,565
機長や船長が異常に気づいても もう手遅れです

257
00:13:16,565 --> 00:13:19,065
ニューヨーク証券取引所の

258
00:13:19,065 --> 00:13:20,796
時刻を合わせているGPSが

259
00:13:20,796 --> 00:13:22,746
ハッカーの餌食になるかもしれません

260
00:13:22,746 --> 00:13:25,714
GPSスプーファーを知ると

261
00:13:25,714 --> 00:13:28,364
それが起こしかねない大災害の規模など

262
00:13:28,364 --> 00:13:31,717
想像もできません

263
00:13:31,717 --> 00:13:36,861
とはいえ GPSスプーファーには良い面も

264
00:13:36,861 --> 00:13:39,317
あるのです

265
00:13:39,317 --> 00:13:43,918
それはGPS発信機に対する
切り札となるのです

266
00:13:43,918 --> 00:13:47,005
たとえば あなたが追跡されているとします

267
00:13:47,005 --> 00:13:49,529
本当は休暇中なのに仕事中のふりをして

268
00:13:49,529 --> 00:13:52,490
追跡者をバカにすることもできます

269
00:13:52,490 --> 00:13:55,205
あなたがキャロルの立場なら

270
00:13:55,205 --> 00:13:56,522
警官の待つ駐車場に

271
00:13:56,522 --> 00:13:58,823
元彼を誘い出せるのです

272
00:13:58,823 --> 00:14:04,026
差し迫るこの対立には目が離せません

273
00:14:04,026 --> 00:14:06,691
プライバシーと

274
00:14:06,691 --> 00:14:10,890
妨害の無い電波の必要性との戦いには
興味をそそられます

275
00:14:10,890 --> 00:14:13,935
GPSの妨害やスプーファーを
許せないのは当然ですが

276
00:14:13,935 --> 00:14:17,671
とはいえ GPS発信機からプライバシーを守るのに

277
00:14:17,671 --> 00:14:21,770
有効で合法な手段がまだありません

278
00:14:21,770 --> 00:14:23,642
純粋にそのスイッチを入れたがるのは

279
00:14:23,642 --> 00:14:26,058
本当にいけないことでしょうか？

280
00:14:26,058 --> 00:14:29,111
私は期待しているのです

281
00:14:29,111 --> 00:14:32,297
まだ発明されていないテクノロジーが

282
00:14:32,297 --> 00:14:37,727
この対立を解消してくれると

283
00:14:37,727 --> 00:14:40,853
でも それまでは目が離せません

284
00:14:40,853 --> 00:14:42,980
これからもっと面白くなるんです

285
00:14:42,980 --> 00:14:44,320
数年以内に

286
00:14:44,320 --> 00:14:48,574
皆さんもGPSドットを手にして
喜んでいることでしょう

287
00:14:48,574 --> 00:14:50,922
袋一杯ものGPSドットを
有するかもしれません

288
00:14:50,922 --> 00:14:54,374
自分のものを失くすことは もはやありません

289
00:14:54,374 --> 00:14:58,403
GPSドットは皆さんの人生を
根本から変えてしまうでしょう

290
00:14:58,403 --> 00:15:01,085
しかし 友人を追跡したいという誘惑に

291
00:15:01,085 --> 00:15:04,077
耐えられますか？

292
00:15:04,077 --> 00:15:05,909
プライバシーを守るために GPSスプーファーや

293
00:15:05,909 --> 00:15:09,204
ウェーブ・バブルのスイッチを入れるという誘惑に

294
00:15:09,204 --> 00:15:11,972
耐えられますか？

295
00:15:11,972 --> 00:15:15,604
そして 例により 地平線の彼方に目をやると

296
00:15:15,604 --> 00:15:18,944
希望と危険で溢れています

297
00:15:18,944 --> 00:15:22,132
これらがどうなっていくのか もう目が離せませんね

298
00:15:22,132 --> 00:15:24,766
ありがとう（拍手）