1 00:00:14,000 --> 00:00:16,000 何世紀も前 エミリー・ディキンソンは こう書きました 2 00:00:16,000 --> 00:00:18,000 「本のように素早く 私たちを さらってくれる船はない」 3 00:00:18,000 --> 00:00:20,000 その通りですね 4 00:00:20,000 --> 00:00:24,000 私たちは本を手に取ったり テレビをつけたり 映画を観ると 5 00:00:24,000 --> 00:00:28,000 物語の波にさらわれて 想像の世界へと誘われます 6 00:00:28,000 --> 00:00:31,000 そして 新しいけれど 見覚えのある土地に上陸すると 7 00:00:31,000 --> 00:00:34,000 何か不思議なことが起こります 8 00:00:34,000 --> 00:00:36,000 足を踏み入れると 私たちは変わるのです 9 00:00:36,000 --> 00:00:40,000 これまでたどってきた作者や登場人物の 足跡をたどりはしません 10 00:00:40,000 --> 00:00:43,000 私たちは彼らになりきって 歩み始めるのです 11 00:00:43,000 --> 00:00:47,000 心理学や神経科学 幼児発達や生物学の研究者は 12 00:00:47,000 --> 00:00:50,000 作家や読者がずっと前から 知っていたことを証明する― 13 00:00:50,000 --> 00:00:53,000 計量可能な科学的証拠を得ようと 研究を始めつつあります 14 00:00:53,000 --> 00:00:57,000 物語には人の視点を変える 独特の力があるということです 15 00:00:57,000 --> 00:01:00,000 物語が文化を形作っていること― 16 00:01:00,000 --> 00:01:03,000 人生についての考えの多くは事実ではなく 17 00:01:03,000 --> 00:01:06,000 物語に由来すること― 18 00:01:06,000 --> 00:01:08,000 階級や結婚 ジェンダーという考えすら 19 00:01:08,000 --> 00:01:12,000 比較的新しいということ そして長く浸透していた概念が 20 00:01:12,000 --> 00:01:17,000 18世紀に見直され 初期の小説に 描かれたことがわかっています 21 00:01:17,000 --> 00:01:21,000 努力ではなく階級で 人の価値が決まる世界や 22 00:01:21,000 --> 00:01:24,000 女性が男性の不完全なコピーに過ぎない世界 23 00:01:24,000 --> 00:01:28,000 愛情による結婚が目新しい世界を 想像してみてください 24 00:01:28,000 --> 00:01:32,000 サミュエル・リチャードソンの『パメラ』が 書かれたのはそんな時代でした 25 00:01:32,000 --> 00:01:36,000 リチャードソンの恋愛物語に出てくる 貧しい使用人階級のヒロインは 26 00:01:36,000 --> 00:01:40,000 階級が上の恋人よりも 道徳的にも知的にもすぐれています 27 00:01:40,000 --> 00:01:42,000 この本は 伝統に真っ向から反対し 28 00:01:42,000 --> 00:01:44,000 大きな論争を引き起こしました 29 00:01:44,000 --> 00:01:47,000 国会よりも『パメラ』の方が 話題であったくらいです 30 00:01:47,000 --> 00:01:50,000 この本は激しい論争と 対抗するような作品を生みました 31 00:01:50,000 --> 00:01:52,000 『パメラ』を受け入れられない 人々がいた一方で 32 00:01:52,000 --> 00:01:55,000 新しい物語の世界を 歓迎する人々もいました 33 00:01:55,000 --> 00:01:58,000 このベストセラー作品と その系譜を継ぐ作品群の 34 00:01:58,000 --> 00:02:01,000 『高慢と偏見』 『ジェーン・エア』 『トワイライト』などでは 35 00:02:01,000 --> 00:02:05,000 同じ筋書きが繰り返し語られ 今ではすっかり当たり前のものとなった 36 00:02:05,000 --> 00:02:07,000 教訓を教えてくれます 37 00:02:07,000 --> 00:02:10,000 小説はまた 思想家たちの 38 00:02:10,000 --> 00:02:12,000 考えを形作ってもきました 39 00:02:12,000 --> 00:02:14,000 ダーウィンの『進化論』は 彼が愛読した 40 00:02:14,000 --> 00:02:17,000 物語に多くを負うているという 学者もいます 41 00:02:17,000 --> 00:02:19,000 ダーウィンの説は 知性や俊敏さ 42 00:02:19,000 --> 00:02:23,000 変化への順応性を重要視しており どれも主人公に欠かせない性質です 43 00:02:23,000 --> 00:02:26,000 あなたが読んでいるのが 『ハリー・ポッター』でも『大いなる遺産』でも 44 00:02:26,000 --> 00:02:29,000 それはダーウィンが触発された たぐいの物語なのです 45 00:02:29,000 --> 00:02:32,000 しかし 最近の研究によると ダーウィンの説は完全ではなく― 46 00:02:32,000 --> 00:02:36,000 主人公である男性や女性 あるいは生き物が 47 00:02:36,000 --> 00:02:40,000 単独で世界に立ち向かうという 認識が間違っているかもしれません 48 00:02:40,000 --> 00:02:42,000 競争に組み込まれていたり 49 00:02:42,000 --> 00:02:45,000 自分の物語のたった1人の 主人公なのではなく 50 00:02:45,000 --> 00:02:48,000 私たちは共に冒険をする 仲間なのかもしれません 51 00:02:48,000 --> 00:02:51,000 ハリーというよりも ホビットのようだということです 52 00:02:51,000 --> 00:02:54,000 もちろん 時には 歩いている靴が すり減ってしまうこともあります 53 00:02:54,000 --> 00:02:58,000 結局 ジェーン・オースティンや マーク・トウェインの靴でちょっとどころか 54 00:02:58,000 --> 00:03:01,000 とんでもなく長い旅路を歩くのですから 55 00:03:01,000 --> 00:03:04,000 これは 名作を読んで 楽しめない というのではありません 56 00:03:04,000 --> 00:03:06,000 ディケンズと旅をし 57 00:03:06,000 --> 00:03:08,000 自分にどんな期待をかければいいか ピップから教えてもらいましょう 58 00:03:08,000 --> 00:03:12,000 オースティンとエリザベスと一緒に プライドや偏見について語り合うのです 59 00:03:12,000 --> 00:03:14,000 トウェインとミシシッピ川を下り 60 00:03:14,000 --> 00:03:17,000 ジムに善い人間であることが どういうことか教えてもらいましょう 61 00:03:17,000 --> 00:03:20,000 でも 旅路で覚えておかねばならないのは 62 00:03:20,000 --> 00:03:22,000 地形は変わったのだということです 63 00:03:22,000 --> 00:03:25,000 新たな時代を歩むための 新しいブーツを探さねばなりません 64 00:03:25,000 --> 00:03:29,000 たとえば カットニス・エヴァディーンの キャピトルとの戦いのように 65 00:03:29,000 --> 00:03:32,000 『ハンガー・ゲーム』は資本主義についての 新しい見方につながるでしょうか? 66 00:03:32,000 --> 00:03:37,000 集団よりも個人を優先させてはならない 理由について教えてくれるでしょうか? 67 00:03:37,000 --> 00:03:40,000 『アグリーズ』は完璧な体を 追い求める危険性と 68 00:03:40,000 --> 00:03:42,000 メディアに美を定義させる危うさを 反映しているでしょうか? 69 00:03:42,000 --> 00:03:45,000 『シーカーズ』は地球温暖化への道を 越えて行けるでしょうか? 70 00:03:45,000 --> 00:03:48,000 トクロやカリク ルサや他の熊たちが直面する 71 00:03:48,000 --> 00:03:51,000 生死にかかわる困難は 動物たちや動物の世界における 72 00:03:51,000 --> 00:03:53,000 人間の立場を描いているのでしょうか? 73 00:03:53,000 --> 00:03:56,000 どの物語が私たちの想像力に働きかけ 74 00:03:56,000 --> 00:04:00,000 どの物語が私たちの将来に 影響するかはわかりません 75 00:04:00,000 --> 00:04:02,000 でも いい知らせは 76 00:04:02,000 --> 00:04:05,000 日々の生活でも 新しい物語に 飛び込むことができるということです 77 00:04:05,000 --> 00:04:09,000 影響や創造力 変化を与えてくれる 新しい物語― 78 00:04:09,000 --> 00:04:12,000 あなただって物語を書くことができるのです 79 00:04:12,000 --> 00:04:15,000 最後はこの問いで締めくくりましょう 80 00:04:15,000 --> 00:04:19,000 次はどんな物語を試してみる?