世界最古の接着剤は8000年以上前に 死海の近くにある洞窟で誕生しました 古代人が使っていた接着剤は 動物の骨と植物を混ぜて作られていて 容器の防水加工や道具作りに 使われていました その後数千年間 植物や動物から作られた接着剤は 人類の文明を融合させました 現在 様々なテープや接着剤が存在し ほとんど何でも作ったり直したりできます では 接着剤やテープは なぜくっつくのでしょう? そして どちらのほうが強力なのでしょう? 接着剤の材料には合成分子のほか 天然のタンパク質や炭水化物などがあります たとえば ― 野菜由来のデンプン デキストリン 牛乳のタンパク質であるカゼイン 樹脂に含まれるテルペンなどがあります 接着剤やテープが働くためには 接着力と凝集力が必要です 接着力は 接着剤の分子と 被着材表面にある分子との間に働く力です 凝集力は 接着剤やテープそのものに 含まれる分子同士が おたがいに結びつく力です 大抵の接着剤は接着ポリマーを 溶剤に溶かして 容器の中で固まらないようにしています 多くの接着剤が放つ強烈な匂いは 溶剤が空気に触れて揮発したものです 溶剤に水が使用されている場合もありますが 吸い込むと危険な化学薬品が 使われている場合もあります 2つ以上の成分からなる接着剤は 乾燥だけでなく化学反応によって より強い接着力を生みます 接着剤は接着力も凝集力も強力ですが 一度乾くと元の状態には戻りません 接着剤で固められた箇所が壊れたら また新しく接着剤を使わないと 直せないのはそのためです 逆に テープを使用した場合は 弱いながらも可逆的な力で接着するので 同じテープを剥がして もう一度 使うことができます この弱い結合力を ファンデルワールス力といい 2つの物質が 肉眼では見えないほど とても近づいた時に働きます テープの多くは ゴムや ゴムのような伸縮性のある成分で コーティングされた支持体と 粘着付与剤という物質できています それがテープの粘着性の正体です テープの粘着力は ゴムと粘着付与剤の混合比率 支持体に塗られた粘着剤の厚み そして支持体の素材で決まります テープを被着体に押し付けても 化学反応は起きません その代わり 柔らかい粘着剤が 接着面のヒビや溝に流れ込みます 流れ込んだ箇所に留まる性質のことを 粘弾性といいます 粘弾性のある粘着剤が とても微小なヒビに流れ込めば ファンデルワールス力が発生するのに 十分な距離まで近づけます では 世界で一番強い接着剤は何でしょう? 残念ながら その答えは 一つに定まりません 接着力の強度の面から考えると テープより接着剤のほうが強力です しかし どんな環境下でも有効な 接着剤はありません 瞬間接着剤としても知られている シアノアクリレートは 接着剤のなかでも 最強の接着力を発揮しますが 2液混合エポキシ接着剤のほうが 熱やせん断力への耐性が優れていて さらに より様々な材質を 接着することができます 空中で鉄床をぶら下げるのであれば 瞬間接着剤が最も適しているでしょう しかし もし活火山の上でと言うのであれば エポキシ接着剤のほうが適しています 要は うまく接着させるには 接着剤が働く十分な接触面積が 必要なのです ボウリングの玉でチェーンを作りたければ ダクトテープを使った方がよいでしょう ここまで馬鹿げていないにしても 技術者はいつもこんなことを考えています エンジン内の熱にも耐える接着剤を 正しく選ぶことは 生死に関わる問題です たとえダクトテープの粘着性が エポキシ接着剤よりも弱くても 緊急時に さっと接着させる力では ダクトテープの方が優れています ロケットを宇宙へ飛ばすには 接着剤が必要ですが 大気圏外での修復作業には ダクトテープの方が使われます 液体の接着剤は無重力空間では使えませんから