[Script Info] Title: [Events] Format: Layer, Start, End, Style, Name, MarginL, MarginR, MarginV, Effect, Text Dialogue: 0,0:00:06.95,0:00:10.100,Default,,0000,0000,0000,,雷鳴が轟き\N稲妻がうねる波を照らす中 Dialogue: 0,0:00:10.100,0:00:14.30,Default,,0000,0000,0000,,船は波にもまれながら進みます Dialogue: 0,0:00:14.30,0:00:19.34,Default,,0000,0000,0000,,ただの嵐ではありません\N激しく 執念深い大嵐であり Dialogue: 0,0:00:19.34,0:00:24.05,Default,,0000,0000,0000,,シェイクスピアの書いた中でも\N最も謎めいた作品の格好の舞台となっています Dialogue: 0,0:00:24.05,0:00:27.10,Default,,0000,0000,0000,,嵐が過ぎ 空が晴れるにつれ\N私たちが誘われるのは Dialogue: 0,0:00:27.11,0:00:31.64,Default,,0000,0000,0000,,日常からかけ離れた世界に見えながら\N自由 権力 支配などといった Dialogue: 0,0:00:31.64,0:00:35.58,Default,,0000,0000,0000,,なじみのある心配事で\N満ち溢れた世界です Dialogue: 0,0:00:35.58,0:00:39.39,Default,,0000,0000,0000,,『テンペスト』は国を追われた\N元ミラノ大公 プロスペローが Dialogue: 0,0:00:39.39,0:00:44.72,Default,,0000,0000,0000,,魔法と権力によって統治する\N絶海の孤島を舞台にしています Dialogue: 0,0:00:44.72,0:00:49.42,Default,,0000,0000,0000,,12年前 プロスペローは\N弟 アントーニオに裏切られ Dialogue: 0,0:00:49.42,0:00:54.31,Default,,0000,0000,0000,,娘 ミランダと愛する書物と一緒に\N島に置き去りにされました Dialogue: 0,0:00:54.31,0:00:57.63,Default,,0000,0000,0000,,この12年間に島の魔法を\N会得したプロスペローは Dialogue: 0,0:00:57.63,0:01:00.89,Default,,0000,0000,0000,,その魔法で 島の精霊たちを\N従わせています Dialogue: 0,0:01:00.89,0:01:04.62,Default,,0000,0000,0000,,彼は 島で唯一の人間でありながら Dialogue: 0,0:01:04.62,0:01:08.17,Default,,0000,0000,0000,,打ち捨てられて悪魔と化した\Nキャリバンも 支配しています Dialogue: 0,0:01:08.17,0:01:13.47,Default,,0000,0000,0000,,何年も復讐の陰謀を巡らせて ようやく\Nプロスペローは仇敵の姿を捉えました Dialogue: 0,0:01:13.47,0:01:16.28,Default,,0000,0000,0000,,軽やかに空を飛ぶ精霊\Nエアリエルの助けを借りて Dialogue: 0,0:01:16.28,0:01:21.99,Default,,0000,0000,0000,,プロスペローは弟の船を破壊し\N乗組員を島に漂着させます Dialogue: 0,0:01:21.99,0:01:25.68,Default,,0000,0000,0000,,プロスペローの企みは\N娘の恋愛事情にまで及びます Dialogue: 0,0:01:25.68,0:01:29.71,Default,,0000,0000,0000,,座礁したフェルディナンド王子と\N娘を恋仲にしてしまうのです Dialogue: 0,0:01:29.71,0:01:32.87,Default,,0000,0000,0000,,プロスペローとエアリエルが\Nアントーニオに迫る間 Dialogue: 0,0:01:32.87,0:01:35.80,Default,,0000,0000,0000,,キャリバンは\N飲んだくれの船乗りたちと協力して Dialogue: 0,0:01:35.80,0:01:39.32,Default,,0000,0000,0000,,島を乗っ取る\Nおかしな計画を企てます Dialogue: 0,0:01:39.32,0:01:42.96,Default,,0000,0000,0000,,この作品は社会を丸裸にし\N最も根本的な欲望をあらわにします Dialogue: 0,0:01:42.96,0:01:48.29,Default,,0000,0000,0000,,各々が 土地や他人\N自身の運命を手中に入れようと Dialogue: 0,0:01:48.29,0:01:50.31,Default,,0000,0000,0000,,脇目も振らずに追い求めます Dialogue: 0,0:01:50.31,0:01:54.33,Default,,0000,0000,0000,,しかし シェイクスピアは\N権力が流動的であることを知っています Dialogue: 0,0:01:54.33,0:01:57.05,Default,,0000,0000,0000,,そして 登場人物の暗い過去が\Nつまびらかにされるうちに Dialogue: 0,0:01:57.05,0:02:01.64,Default,,0000,0000,0000,,私たちは この悪意の連鎖が果たして\N終わりを迎えるのかと訝り始めるのです Dialogue: 0,0:02:01.64,0:02:04.45,Default,,0000,0000,0000,,プロスペローは アントーニオに\N不当な扱いを受けましたが Dialogue: 0,0:02:04.45,0:02:07.79,Default,,0000,0000,0000,,彼自身もまた 長い間\N島を苦しめ続けてきました Dialogue: 0,0:02:07.79,0:02:11.91,Default,,0000,0000,0000,,魔法の道具や天然資源を\N独り占めして 蓄えてきたのです Dialogue: 0,0:02:11.91,0:02:15.12,Default,,0000,0000,0000,,この乗っ取りを特に恨んでいたのは\Nキャリバンでした Dialogue: 0,0:02:15.12,0:02:17.05,Default,,0000,0000,0000,,かつての島の支配者― Dialogue: 0,0:02:17.05,0:02:19.61,Default,,0000,0000,0000,,魔女 シコラクスの息子である\Nキャリバンは Dialogue: 0,0:02:19.61,0:02:22.56,Default,,0000,0000,0000,,当初 追放された親子の\N島での生活を手助けしていました Dialogue: 0,0:02:22.56,0:02:26.81,Default,,0000,0000,0000,,しかし その後 彼は奴隷となり\N猛烈な後悔を滲ませてわめきます Dialogue: 0,0:02:26.82,0:02:29.54,Default,,0000,0000,0000,,「俺はお前が好きになって\Nお前に教えてやった Dialogue: 0,0:02:29.54,0:02:33.55,Default,,0000,0000,0000,,島のことは全部\N真水の泉 塩水の溜まり Dialogue: 0,0:02:33.55,0:02:35.86,Default,,0000,0000,0000,,荒れた土地や肥えた土地 Dialogue: 0,0:02:35.86,0:02:38.27,Default,,0000,0000,0000,,なんていまいましいことだ!」\N Dialogue: 0,0:02:38.27,0:02:41.12,Default,,0000,0000,0000,,轟くような言葉と\N煮え繰り返るような怒りによって Dialogue: 0,0:02:41.12,0:02:45.35,Default,,0000,0000,0000,,キャリバンはいつも プロスペローに\N彼が来る前のことを思い出させます Dialogue: 0,0:02:45.35,0:02:50.35,Default,,0000,0000,0000,,「この島は俺のもの 母シコラクスに\N譲られたのに お前が横取りしやがった」 Dialogue: 0,0:02:50.35,0:02:52.100,Default,,0000,0000,0000,,しかし シコラクスもまた\N島を苦しめ Dialogue: 0,0:02:52.100,0:02:56.25,Default,,0000,0000,0000,,エアリエルは プロスペローに\N解放されるまで 囚われていました Dialogue: 0,0:02:56.25,0:03:00.90,Default,,0000,0000,0000,,今や エアリエルが 借りを返し\N自由になろうとする一方 Dialogue: 0,0:03:00.90,0:03:04.82,Default,,0000,0000,0000,,キャリバンは 少なくとも\Nプロスペローがいる間は Dialogue: 0,0:03:04.82,0:03:07.46,Default,,0000,0000,0000,,奴隷の身であり続けます Dialogue: 0,0:03:07.46,0:03:09.56,Default,,0000,0000,0000,,他にも様々な理由はありますが Dialogue: 0,0:03:09.56,0:03:13.54,Default,,0000,0000,0000,,『テンペスト』が植民地主義や\N「素晴らしい新世界」との接触からくる Dialogue: 0,0:03:13.54,0:03:18.16,Default,,0000,0000,0000,,道徳上のジレンマの探究であると\N頻繁に解釈されるのは こういう訳なのです Dialogue: 0,0:03:18.16,0:03:21.66,Default,,0000,0000,0000,,力や正義に関する問題が\N劇を通して問われています Dialogue: 0,0:03:21.66,0:03:24.20,Default,,0000,0000,0000,,キャリバンは\N島の正当な支配者なのか? Dialogue: 0,0:03:24.20,0:03:26.18,Default,,0000,0000,0000,,エアリエルは\N自由になるのか? Dialogue: 0,0:03:26.18,0:03:28.90,Default,,0000,0000,0000,,そして 真の支配者は 本当に\Nプロスペローなのか Dialogue: 0,0:03:28.90,0:03:34.58,Default,,0000,0000,0000,,それとも どの人物も関与し得ない\N計り知れない魔法があるのか? Dialogue: 0,0:03:34.58,0:03:35.71,Default,,0000,0000,0000,,劇を通じて Dialogue: 0,0:03:35.71,0:03:39.52,Default,,0000,0000,0000,,エアリエルは 自由を取り戻す権利があると\Nプロスペローに言い続けます Dialogue: 0,0:03:39.52,0:03:42.50,Default,,0000,0000,0000,,しかし この侵略者が\Nエアリエルのことを Dialogue: 0,0:03:42.50,0:03:44.63,Default,,0000,0000,0000,,手放せるかどうか\N疑問は残ります Dialogue: 0,0:03:44.63,0:03:48.00,Default,,0000,0000,0000,,ある者が支配を終えるか否かという問いが\N特に印象に残るのは Dialogue: 0,0:03:48.00,0:03:52.43,Default,,0000,0000,0000,,『テンペスト』がシェイクスピアの\N最後の作品だと考えられているからです Dialogue: 0,0:03:52.43,0:03:57.01,Default,,0000,0000,0000,,様々な意味で プロスペローの振る舞いは\Nシェイクスピアの行動を反映しています Dialogue: 0,0:03:57.01,0:04:00.90,Default,,0000,0000,0000,,シェイクスピアもまた 手の込んだ\N筋立てを作り 周りの人を操って Dialogue: 0,0:04:00.90,0:04:05.50,Default,,0000,0000,0000,,登場人物にも観客にも\N魔法をかけていました Dialogue: 0,0:04:05.50,0:04:09.26,Default,,0000,0000,0000,,しかし 彼が大いに力と支配を振るう\N壮大な立ち回りが終わりに近づくと Dialogue: 0,0:04:09.26,0:04:12.94,Default,,0000,0000,0000,,プロスペローの最後の台詞に\N観客 そして Dialogue: 0,0:04:12.94,0:04:16.71,Default,,0000,0000,0000,,観客の 彼の作品に及ぼす力に対する\N謙虚さが伺えます Dialogue: 0,0:04:16.71,0:04:20.60,Default,,0000,0000,0000,,「皆様のお手によって\Nそして皆様の喝采によって Dialogue: 0,0:04:20.60,0:04:26.29,Default,,0000,0000,0000,,私の帆を膨らませてください さもなくば\N皆様を楽しませようとした私の計画は水の泡」 Dialogue: 0,0:04:26.29,0:04:30.04,Default,,0000,0000,0000,,この台詞から呼び起こされるのは\N最終的には 観客の拍手に身を委ねる― Dialogue: 0,0:04:30.04,0:04:34.98,Default,,0000,0000,0000,,偉大なエンターテイナーという\Nシェイクスピア自身の役どころなのです