0:00:02.000,0:00:04.000
ヒトに関する２つの事柄を

0:00:04.000,0:00:06.000
まずお話したいと思います

0:00:06.000,0:00:09.000
一つめの事柄は当たり前のように聞こえるかもしれませんが

0:00:09.000,0:00:11.000
我々ホモサピエンスは

0:00:11.000,0:00:13.000
実に頭の良い種です

0:00:13.000,0:00:15.000
その頭の良さは

0:00:15.000,0:00:17.000
馬鹿げているほどで

0:00:17.000,0:00:20.000
他の種がしていないことを

0:00:20.000,0:00:22.000
こなしています

0:00:22.000,0:00:24.000
これは周知の事実ですが

0:00:24.000,0:00:27.000
虚栄心の強い種でもあるため

0:00:27.000,0:00:30.000
自分たちの賢さを示すのが好きなのです

0:00:30.000,0:00:32.000
シェークスピアから

0:00:32.000,0:00:34.000
スティーブン・コルベアまで

0:00:34.000,0:00:36.000
賢者を見れば

0:00:36.000,0:00:38.000
人間とは理性と才能に恵まれ

0:00:38.000,0:00:40.000
どんな生き物よりも

0:00:40.000,0:00:43.000
知的であることがわかります

0:00:43.000,0:00:45.000
でも私が強調したいのは

0:00:45.000,0:00:47.000
二つめの事柄です

0:00:47.000,0:00:49.000
人間ほど賢い生き物はいないのに

0:00:49.000,0:00:52.000
決断力に関しては

0:00:52.000,0:00:55.000
驚くほど愚かな決断を

0:00:55.000,0:00:58.000
してしまうことがある点です

0:00:58.000,0:01:00.000
ニヤニヤしている方

0:01:00.000,0:01:02.000
具体的な名前は出しませんので

0:01:02.000,0:01:04.000
ご心配なく

0:01:04.000,0:01:06.000
でも過去２年間に

0:01:06.000,0:01:09.000
先例のない愚かな出来事がありました

0:01:09.000,0:01:12.000
資源採取のために人間がつくった道具が

0:01:12.000,0:01:14.000
悲惨な結果を招いたのも

0:01:14.000,0:01:16.000
見てきました

0:01:16.000,0:01:18.000
我々がつくった金融市場は

0:01:18.000,0:01:21.000
確実であったはずなのに

0:01:21.000,0:01:23.000
崩壊してしまいました

0:01:23.000,0:01:25.000
でも この二つの例は

0:01:25.000,0:01:28.000
もっとも情けない間違いを

0:01:28.000,0:01:30.000
浮き彫りにはしていません

0:01:30.000,0:01:33.000
間違いを犯す原因は 少しばかりの困った問題があったり

0:01:33.000,0:01:35.000
もの笑いのタネになる決断を

0:01:35.000,0:01:38.000
してしまうからだと解釈したいところですが

0:01:38.000,0:01:41.000
社会科学者の研究でわかったのは

0:01:41.000,0:01:44.000
ほとんどの人は ある状況に置かれると

0:01:44.000,0:01:47.000
ある種の決まった間違いをするのです

0:01:47.000,0:01:49.000
間違いに意外性はなく

0:01:49.000,0:01:51.000
人は間違いを繰り返します

0:01:51.000,0:01:53.000
警告があっても動じません

0:01:53.000,0:01:55.000
否定的な意見を言われると

0:01:55.000,0:01:58.000
次に同じ状況に直面するときに

0:01:58.000,0:02:00.000
同じ間違いをする傾向があります

0:02:00.000,0:02:02.000
人間の本質を研究している私には

0:02:02.000,0:02:04.000
この点が謎なのです

0:02:04.000,0:02:06.000
一番興味があるのは

0:02:06.000,0:02:09.000
これだけ賢い種である人間が

0:02:09.000,0:02:11.000
このような間違いを

0:02:11.000,0:02:13.000
常にし続けるのか ということです

0:02:13.000,0:02:16.000
賢いはずの人間が なぜ解決策を見つけられないのでしょう？

0:02:16.000,0:02:19.000
何が引き金になるのだろうと思いを巡らしていたら

0:02:19.000,0:02:22.000
原因になり得る事柄が いくつか浮かびました

0:02:22.000,0:02:25.000
一つめは 我々の責任ではないという見解です

0:02:25.000,0:02:27.000
人間は賢いので

0:02:27.000,0:02:29.000
非常に複雑な環境を

0:02:29.000,0:02:31.000
つくり出すことができます

0:02:31.000,0:02:34.000
時に複雑すぎて自ら作ったものを

0:02:34.000,0:02:36.000
理解できないことすらあります

0:02:36.000,0:02:38.000
入り組んだ金融市場をつくり

0:02:38.000,0:02:41.000
返済しきれない住宅ローンを組んだりします

0:02:41.000,0:02:44.000
もちろん 対応できない状況に置かれれば

0:02:44.000,0:02:46.000
ある意味 我々が

0:02:46.000,0:02:48.000
物事を悪化させるのもわかります

0:02:48.000,0:02:50.000
もしそうならば

0:02:50.000,0:02:52.000
解決策は至って簡単

0:02:52.000,0:02:54.000
扱いきれない技術や

0:02:54.000,0:02:56.000
悪影響を及ぼす環境を

0:02:56.000,0:02:58.000
見つけたら取り払い

0:02:58.000,0:03:00.000
より良いものをデザインすれば

0:03:00.000,0:03:02.000
人間は期待通りに

0:03:02.000,0:03:04.000
立派な種になるはずです

0:03:04.000,0:03:07.000
でも混乱状態にあるのは環境ではなく

0:03:07.000,0:03:10.000
いい加減につくられた人間なのでは？

0:03:10.000,0:03:13.000
社会科学者が人間の間違いを

0:03:13.000,0:03:15.000
見つけ出す方法を見ていて

0:03:15.000,0:03:18.000
私はそう思いました

0:03:18.000,0:03:21.000
人間は同じ間違いを

0:03:21.000,0:03:24.000
何度も繰り返す傾向があるため

0:03:24.000,0:03:26.000
人間のつくりを

0:03:26.000,0:03:28.000
疑ってしまうほどです

0:03:28.000,0:03:31.000
もし問題が人間自体にあるのなら

0:03:31.000,0:03:33.000
どう対処すればいいのか

0:03:33.000,0:03:35.000
わからないことが問題です

0:03:35.000,0:03:38.000
間違いをしがちだという事実を受け入れて

0:03:38.000,0:03:40.000
問題を避けられるデザインが必要かもしれません

0:03:40.000,0:03:43.000
私が学生と共に究明したかったのは

0:03:43.000,0:03:46.000
可能性１と可能性２の違いを見出すことです

0:03:46.000,0:03:48.000
必要としていたのは

0:03:48.000,0:03:50.000
賢くて 決断力があるけれど

0:03:50.000,0:03:52.000
人間を狂わせる材料に

0:03:52.000,0:03:54.000
手の届かない生き物

0:03:54.000,0:03:56.000
テクノロジーや文化や言葉を

0:03:56.000,0:03:58.000
有しない生き物です

0:03:58.000,0:04:00.000
こうして決定した

0:04:00.000,0:04:03.000
研究の協力者はオマキザルです

0:04:03.000,0:04:05.000
新世界ザルとも呼ばれるのは

0:04:05.000,0:04:07.000
約3500万年前に

0:04:07.000,0:04:09.000
ヒトから分岐したからです

0:04:09.000,0:04:11.000
「ひい」を500万回つけた

0:04:11.000,0:04:13.000
我々のひいおばあちゃんと

0:04:13.000,0:04:15.000
彼らのひいおばあちゃんが

0:04:15.000,0:04:17.000
同一人物であったと

0:04:17.000,0:04:19.000
言えるわけです

0:04:19.000,0:04:22.000
この猿と人間は非常に離れていながらも

0:04:22.000,0:04:24.000
親戚にあたります

0:04:24.000,0:04:26.000
ホリーは人間のような

0:04:26.000,0:04:29.000
技術を持ち合わせていません

0:04:29.000,0:04:32.000
賢くて可愛い霊長類ですが

0:04:32.000,0:04:34.000
人間を狂わせる要素を持ち合わせていないので

0:04:34.000,0:04:36.000
この実験には完璧です

0:04:36.000,0:04:39.000
ホリーを人間と同じ境遇に置いたら

0:04:39.000,0:04:41.000
人間と同じ間違いをしたり

0:04:41.000,0:04:43.000
間違いから学ぶのか―

0:04:43.000,0:04:45.000
実験してみることにしました

0:04:45.000,0:04:47.000
数年前 このアイデアを思いつき

0:04:47.000,0:04:49.000
ホリーは この問題を

0:04:49.000,0:04:51.000
どう対処するか見てみようということになりました

0:04:51.000,0:04:54.000
人間の間違いだけでも

0:04:54.000,0:04:56.000
あまりにも題材が多くて

0:04:56.000,0:04:58.000
どこから着手したらいいのか

0:04:58.000,0:05:00.000
迷いました

0:05:00.000,0:05:03.000
この研究を始めたとき 金融崩壊が起き

0:05:03.000,0:05:05.000
差し押さえが相次いだので

0:05:05.000,0:05:07.000
私たちは金融の領域が

0:05:07.000,0:05:09.000
研究題材にいいのではと思ったのです

0:05:09.000,0:05:12.000
猿の経済的決断の仕方を観察して

0:05:12.000,0:05:15.000
人間同様 愚かな間違いをするか見てみるのです

0:05:15.000,0:05:17.000
このとき二つめの問題にぶちあたりました

0:05:17.000,0:05:19.000
少々 方法論的な

0:05:19.000,0:05:21.000
問題なのですが

0:05:21.000,0:05:24.000
猿はお金を使いません

0:05:24.000,0:05:26.000
スーパーや銀行で

0:05:26.000,0:05:29.000
列に並ぶ猿などいないので

0:05:29.000,0:05:32.000
お金に対する質問を

0:05:32.000,0:05:34.000
どうやって猿にしたらいいのか

0:05:34.000,0:05:36.000
問題になりましたが

0:05:36.000,0:05:38.000
ともかく 猿に

0:05:38.000,0:05:40.000
お金の使い方を

0:05:40.000,0:05:42.000
教えてみることにしました

0:05:42.000,0:05:45.000
これはお金の代わりに使った

0:05:45.000,0:05:47.000
造り物の通貨です

0:05:47.000,0:05:49.000
研究を始めた当初は

0:05:49.000,0:05:51.000
単にトークンと呼んでいたもので

0:05:51.000,0:05:54.000
エール大学で この通貨を使って

0:05:54.000,0:05:56.000
人間から食べ物を得るために

0:05:56.000,0:05:59.000
猿を調教しました

0:05:59.000,0:06:01.000
トークンは大したことない

0:06:01.000,0:06:03.000
ただの金属片です

0:06:03.000,0:06:06.000
海外旅行から持ち帰り

0:06:06.000,0:06:08.000
無用になったお金と一緒で

0:06:08.000,0:06:10.000
最初 猿はその利用価値が

0:06:10.000,0:06:12.000
わからなかったので

0:06:12.000,0:06:14.000
柵に入れられたトークンを

0:06:14.000,0:06:16.000
拾って眺めたものの

0:06:16.000,0:06:18.000
特に意味はなしませんでした

0:06:18.000,0:06:20.000
でも 猿はすぐに

0:06:20.000,0:06:22.000
トークンを渡せば

0:06:22.000,0:06:25.000
食べ物がもらえることに気づきました

0:06:25.000,0:06:27.000
猿のメーデーが実践しています

0:06:27.000,0:06:30.000
左の二つの写真は 好奇心を

0:06:30.000,0:06:32.000
示しているところです

0:06:32.000,0:06:34.000
手を差し出す実験者がいて

0:06:34.000,0:06:37.000
メーデーはこの人が欲しがっていることを察します

0:06:37.000,0:06:39.000
渡すと食べ物がもらえます

0:06:39.000,0:06:41.000
どの猿も 人間にトークンを差し出し

0:06:41.000,0:06:43.000
食べ物が得られます

0:06:43.000,0:06:45.000
ビデオを用意しました

0:06:45.000,0:06:48.000
メーデーがトークンを差し出し

0:06:48.000,0:06:51.000
嬉しそうに待ち 食べ物をもらいます

0:06:51.000,0:06:53.000
ボス的存在のフィリックスも

0:06:53.000,0:06:56.000
辛抱強く待って食べ物をもらいます

0:06:56.000,0:06:58.000
あまり訓練をしなくても

0:06:58.000,0:07:01.000
どの猿も やり方を

0:07:01.000,0:07:03.000
覚えてしまいました

0:07:03.000,0:07:05.000
これは人間が扱うお金と同じなのか

0:07:05.000,0:07:07.000
それとも 猿が

0:07:07.000,0:07:09.000
賢く見えるだけで

0:07:09.000,0:07:11.000
実はそうではないのか

0:07:11.000,0:07:13.000
疑問に思いました

0:07:13.000,0:07:16.000
猿がお金に匹敵するものを本当に使っていたら

0:07:16.000,0:07:19.000
猿は自発的に何をするのか 気になりました

0:07:19.000,0:07:21.000
人間が金銭の授受をするように

0:07:21.000,0:07:23.000
猿も賢いことをすると

0:07:23.000,0:07:26.000
想像する人がいるかもしれません

0:07:26.000,0:07:29.000
トークンがあれば どれだけのものを

0:07:29.000,0:07:31.000
買えるのかと

0:07:31.000,0:07:34.000
猿が関心をもつのかどうか

0:07:34.000,0:07:36.000
突き止めるため

0:07:36.000,0:07:39.000
猿の市場をつくり出しました

0:07:39.000,0:07:41.000
対象となった猿は

0:07:41.000,0:07:44.000
動物園のような社会的囲いの中で通常暮らしています

0:07:44.000,0:07:46.000
おやつを欲しがるときに

0:07:46.000,0:07:48.000
市場へつながる小さな囲いに

0:07:48.000,0:07:50.000
誘い込みます

0:07:50.000,0:07:52.000
そこは人間の市場より

0:07:52.000,0:07:54.000
楽しさがある場所にしました

0:07:54.000,0:07:57.000
猿がドアをくぐると トークンがたくさん入った

0:07:57.000,0:07:59.000
財布が渡されます

0:07:59.000,0:08:01.000
トークンを使って

0:08:01.000,0:08:03.000
物を得られる仕組みです

0:08:03.000,0:08:05.000
２人のセールスマンが

0:08:05.000,0:08:07.000
商品を用意しています

0:08:07.000,0:08:09.000
学生にセールスマンになってもらい

0:08:09.000,0:08:11.000
それぞれ違う格好をしました

0:08:11.000,0:08:14.000
何度も同じことを繰り返し

0:08:14.000,0:08:16.000
猿に仕組みを教えました

0:08:16.000,0:08:19.000
商品や値段や誰が信頼できるかなどです

0:08:19.000,0:08:21.000
実験者が持っている

0:08:21.000,0:08:24.000
黄色い小皿に乗っている量が

0:08:24.000,0:08:26.000
トークン１枚で買えるものです

0:08:26.000,0:08:28.000
どれもトークン１枚分ですが

0:08:28.000,0:08:30.000
時々ぶどうが多く得られるように

0:08:30.000,0:08:32.000
設定しました

0:08:32.000,0:08:35.000
実際のビデオをご覧ください

0:08:35.000,0:08:38.000
猿の視点から撮影したものです

0:08:38.000,0:08:40.000
これは猿のハニー

0:08:40.000,0:08:42.000
市場の開店を待っています

0:08:42.000,0:08:45.000
一人は１粒 もう一人は２粒差し出しています

0:08:45.000,0:08:47.000
見極め上手なハニーは

0:08:47.000,0:08:50.000
ぶどう２粒をくれる人を選びました

0:08:50.000,0:08:52.000
ハニーから学べることはありそうです

0:08:52.000,0:08:54.000
ハニーに限らず

0:08:54.000,0:08:57.000
大半の猿は より多くてより美味しいものを

0:08:57.000,0:08:59.000
持っている人を選びました

0:08:59.000,0:09:02.000
猿は商品に注目をして

0:09:02.000,0:09:05.000
トークンに関心をよせました

0:09:05.000,0:09:08.000
驚いたのは 経済学者と共に

0:09:08.000,0:09:11.000
経済的指針で猿のデータを見てみると

0:09:11.000,0:09:14.000
人間がしていることと同じことが

0:09:14.000,0:09:16.000
質的にも量的にも

0:09:16.000,0:09:18.000
一致したことです

0:09:18.000,0:09:20.000
数値を見ただけでは

0:09:20.000,0:09:23.000
猿なのか人間なのか区別がつかないほどです

0:09:23.000,0:09:25.000
少なくとも

0:09:25.000,0:09:27.000
猿と私たちには

0:09:27.000,0:09:29.000
本物のお金のように使えるものを

0:09:29.000,0:09:31.000
導入できたと感じました

0:09:31.000,0:09:34.000
問題は 猿も人間同様に間違いをするのかということです

0:09:34.000,0:09:37.000
その可能性はいくつかありました

0:09:37.000,0:09:39.000
猿の経済界で見かけなかったのは

0:09:39.000,0:09:41.000
人間のように

0:09:41.000,0:09:43.000
貯金をしないことです

0:09:43.000,0:09:45.000
コインを使い果たし

0:09:45.000,0:09:47.000
帰って行きました

0:09:47.000,0:09:49.000
また同時に見かけたのは

0:09:49.000,0:09:51.000
恥ずかしいことに

0:09:51.000,0:09:53.000
盗みを働くのです

0:09:53.000,0:09:56.000
機会さえあれば人間からトークンを

0:09:56.000,0:09:58.000
だまし取ろうとしました

0:09:58.000,0:10:00.000
教えたつもりはないのに

0:10:00.000,0:10:02.000
盗みを身につけていました

0:10:02.000,0:10:04.000
そこで 人間同様に

0:10:04.000,0:10:06.000
猿も愚かなことをするのか

0:10:06.000,0:10:09.000
確かめることにしたのです

0:10:09.000,0:10:11.000
猿の経済界を放っておけば

0:10:11.000,0:10:13.000
数年後には人間に

0:10:13.000,0:10:15.000
経済援助を求めてくるかもしれませんが

0:10:15.000,0:10:17.000
そんなに待っていられないので

0:10:17.000,0:10:19.000
時間を短縮するために

0:10:19.000,0:10:21.000
経済的な難局に

0:10:21.000,0:10:23.000
直面したとき

0:10:23.000,0:10:25.000
人間が間違いやすい問題を

0:10:25.000,0:10:27.000
猿にも

0:10:27.000,0:10:29.000
与えてみることにしました

0:10:29.000,0:10:32.000
人がいかに間違いを犯すのかを確かめるには

0:10:32.000,0:10:34.000
自分でやってみるのが一番ですから

0:10:34.000,0:10:36.000
直感を見るために

0:10:36.000,0:10:38.000
実験をしてみましょう

0:10:38.000,0:10:40.000
皆さんに

0:10:40.000,0:10:42.000
1000ドルずつ

0:10:42.000,0:10:45.000
渡したとします

0:10:45.000,0:10:47.000
そのお金は

0:10:47.000,0:10:49.000
もう皆さんのものですから

0:10:49.000,0:10:51.000
募金でも何でも

0:10:51.000,0:10:53.000
好きなように使えます

0:10:53.000,0:10:56.000
もうちょっと儲かる選択肢があったとします

0:10:56.000,0:10:59.000
一つめの選択肢はリスクを伴います

0:10:59.000,0:11:01.000
私がコインを投げて表が出たら

0:11:01.000,0:11:03.000
もう1000ドルプラス

0:11:03.000,0:11:05.000
裏が出たら何もなし

0:11:05.000,0:11:08.000
増える確率はありますが 高リスクです

0:11:08.000,0:11:11.000
もう一つの選択肢は 安全志向

0:11:11.000,0:11:13.000
金額は500ドルですが

0:11:13.000,0:11:16.000
確実にもらえるとしたら

0:11:16.000,0:11:18.000
どちらを選びますか

0:11:18.000,0:11:21.000
大半の人は安全な方を選びます

0:11:21.000,0:11:24.000
1500ドルが確実に手に入るなら 賭ける必要はないと言うのです

0:11:24.000,0:11:26.000
慎重な選択と言えますね

0:11:26.000,0:11:28.000
人はリスクを負うのが嫌なため

0:11:28.000,0:11:30.000
合理的だと思うかもしれませんが

0:11:30.000,0:11:32.000
同じ問題の

0:11:32.000,0:11:34.000
状況を変えた場合

0:11:34.000,0:11:36.000
どうなるか見てみましょう

0:11:36.000,0:11:38.000
皆さんに2000ドルを

0:11:38.000,0:11:41.000
渡したと想像してください

0:11:41.000,0:11:43.000
先ほどの２倍も

0:11:43.000,0:11:45.000
好きなものが買えます

0:11:45.000,0:11:47.000
ここで選択です

0:11:47.000,0:11:49.000
先ほどとは違って

0:11:49.000,0:11:52.000
どのようにお金を失うかを考えてもらいます

0:11:52.000,0:11:54.000
選択肢は同じ

0:11:54.000,0:11:56.000
リスクを伴う選択肢は

0:11:56.000,0:11:59.000
表が出たら1000ドル失いますが

0:11:59.000,0:12:02.000
裏が出たら何も失わずに済みます

0:12:02.000,0:12:05.000
リスクをかけたくなければ

0:12:05.000,0:12:08.000
私に500ドルを渡すだけ

0:12:08.000,0:12:11.000
眉にしわを寄せる人が見えますね

0:12:11.000,0:12:13.000
きっと皆さんも

0:12:13.000,0:12:15.000
この実験の対象者と同様に

0:12:15.000,0:12:17.000
この選択肢を与えられると

0:12:17.000,0:12:19.000
安全な方は選ばないのかもしれません

0:12:19.000,0:12:21.000
人はリスクをかける傾向にあるのです

0:12:21.000,0:12:24.000
これが合理的でないのは どちらの状況も

0:12:24.000,0:12:26.000
選択肢が同じだったからです

0:12:26.000,0:12:29.000
1000ドルか2000ドルのどちらかになる選択肢と

0:12:29.000,0:12:31.000
1500ドルと決まった選択肢

0:12:31.000,0:12:34.000
でも 伴うリスクに関わる直感は

0:12:34.000,0:12:36.000
立たされた状況によって異なります

0:12:36.000,0:12:38.000
どういうことでしょうか

0:12:38.000,0:12:40.000
これは心理的な面から生まれる

0:12:40.000,0:12:43.000
少なくとも二つの先入観が関係しています

0:12:43.000,0:12:46.000
まず 絶対数で考える難しさです

0:12:46.000,0:12:48.000
1000ドルか2000ドルの選択肢と

0:12:48.000,0:12:50.000
1500ドルの選択肢を

0:12:50.000,0:12:52.000
天秤にかけなくてはいけません

0:12:52.000,0:12:55.000
でも選択肢が変わり

0:12:55.000,0:12:58.000
相対的に考えるのは簡単です

0:12:58.000,0:13:01.000
もっともらえる とか 失う額は少ない という具合です

0:13:01.000,0:13:03.000
これはいいのですが

0:13:03.000,0:13:05.000
捉え方を変えることで

0:13:05.000,0:13:07.000
選択肢の妥当性の

0:13:07.000,0:13:09.000
見極めに影響します

0:13:09.000,0:13:11.000
これは二つめの傾向につながり

0:13:11.000,0:13:13.000
経済学者は損失回避と呼んでいます

0:13:13.000,0:13:16.000
赤字になることを嫌うという意味です

0:13:16.000,0:13:18.000
人は損失を嫌うため

0:13:18.000,0:13:20.000
損失を避けようと

0:13:20.000,0:13:22.000
することがあります

0:13:22.000,0:13:24.000
最後のシナリオで見たのは

0:13:24.000,0:13:26.000
対象者はリスクをかけます

0:13:26.000,0:13:29.000
何も失いたくないからです

0:13:29.000,0:13:31.000
これは我々が

0:13:31.000,0:13:33.000
損失の覚悟があるとき

0:13:33.000,0:13:35.000
非常に厄介になり得るのですが

0:13:35.000,0:13:37.000
リスクを負うことが多くなります

0:13:37.000,0:13:40.000
始末の悪い様々な状況を作り出すものです

0:13:40.000,0:13:43.000
株投資家が株を売らないがために損失を出すのは

0:13:43.000,0:13:45.000
相対的に考えているからです

0:13:45.000,0:13:47.000
住宅市場の人たちが不動産を売り渋ったのは

0:13:47.000,0:13:49.000
損を承知で売りたくなかったからです

0:13:49.000,0:13:51.000
猿も同じ傾向を示すのか

0:13:51.000,0:13:53.000
私たちは興味がありました

0:13:53.000,0:13:56.000
猿の市場でも同じ状況をつくりだしたら

0:13:56.000,0:13:58.000
人間と同じことをするでしょうか

0:13:58.000,0:14:00.000
そこで私たちは猿に選択肢を与え

0:14:00.000,0:14:03.000
常に同じことをする安全な人と

0:14:03.000,0:14:05.000
50％の確率で違う事をする

0:14:05.000,0:14:07.000
リスク型の人を用意しました

0:14:07.000,0:14:09.000
そして初めのシナリオのように

0:14:09.000,0:14:11.000
ボーナスがもらえるようにしました

0:14:11.000,0:14:13.000
儲かるチャンスでもあり

0:14:13.000,0:14:16.000
失う可能性も出てきます

0:14:16.000,0:14:18.000
実際よりも儲けたと思うのです

0:14:18.000,0:14:20.000
このような感じです

0:14:20.000,0:14:22.000
新しい販売員を紹介します

0:14:22.000,0:14:24.000
どちらも持っているのは ぶどう１粒

0:14:24.000,0:14:26.000
見た目はいいですが

0:14:26.000,0:14:28.000
ボーナスが出てきます

0:14:28.000,0:14:30.000
左の人はおまけをくれるので

0:14:30.000,0:14:33.000
合計２粒のぶどうがもらえます

0:14:33.000,0:14:35.000
右の人はリスク型で

0:14:35.000,0:14:38.000
何もくれない時がありますが

0:14:38.000,0:14:41.000
時々２粒もらえるため

0:14:41.000,0:14:43.000
合計３粒のときがあります

0:14:43.000,0:14:45.000
これは皆さんが直面したものと同じ

0:14:45.000,0:14:48.000
猿はリスクを回避して

0:14:48.000,0:14:50.000
毎回おまけをくれる人を選ぶのか

0:14:50.000,0:14:52.000
それとも

0:14:52.000,0:14:54.000
何ももらえない時を覚悟して

0:14:54.000,0:14:56.000
大きなボーナスを得ようとするでしょうか

0:14:56.000,0:14:58.000
人間は安全な方を選びました

0:14:58.000,0:15:00.000
結果は猿も同じでした

0:15:00.000,0:15:02.000
質的にも量的にも

0:15:02.000,0:15:04.000
猿は人間と同じ―

0:15:04.000,0:15:06.000
判断を下しました

0:15:06.000,0:15:08.000
猿の損失との向き合い方を

0:15:08.000,0:15:10.000
明らかにするために

0:15:10.000,0:15:12.000
別の実験を行いました

0:15:12.000,0:15:14.000
ここでは 何もくれない

0:15:14.000,0:15:16.000
２人の人に会います

0:15:16.000,0:15:18.000
ぶどうの数が多いので

0:15:18.000,0:15:20.000
たくさんもらえる印象を与えます

0:15:20.000,0:15:22.000
３粒のぶどうに猿は大喜び

0:15:22.000,0:15:25.000
でも３粒はもらえないことがわかります

0:15:25.000,0:15:27.000
左の人は安全型で

0:15:27.000,0:15:30.000
毎度 ぶどう１粒を取り上げて

0:15:30.000,0:15:32.000
猿には２粒だけ渡します

0:15:32.000,0:15:34.000
右の人はリスク型で

0:15:34.000,0:15:37.000
３粒くれることもあるため 猿は喜びますが

0:15:37.000,0:15:39.000
時々大きな損をする羽目になり

0:15:39.000,0:15:41.000
１粒しかくれません

0:15:41.000,0:15:43.000
猿はどうしたでしょうか

0:15:43.000,0:15:45.000
安全型は

0:15:45.000,0:15:48.000
毎度２粒もらえます

0:15:48.000,0:15:51.000
リスク型は３粒の時と１粒の時が混在します

0:15:51.000,0:15:54.000
私たちが驚いたのは 猿にこの選択をさせたとき

0:15:54.000,0:15:56.000
人間と同様に非合理的な選択をすることです

0:15:56.000,0:15:58.000
実験を どう始めるかによって

0:15:58.000,0:16:01.000
猿はリスク型を選ぶのです

0:16:01.000,0:16:03.000
猿も物事を相対的に

0:16:03.000,0:16:05.000
見ていることを示唆しており

0:16:05.000,0:16:08.000
損失と儲けは同じ方法では扱っていません

0:16:08.000,0:16:10.000
これはどういうことでしょうか

0:16:10.000,0:16:12.000
第一に 猿に対して

0:16:12.000,0:16:14.000
金融価値のあるお金を与えると

0:16:14.000,0:16:16.000
人間と似たことをします

0:16:16.000,0:16:18.000
賢い行動もしますが

0:16:18.000,0:16:20.000
盗みなどの

0:16:20.000,0:16:22.000
好ましくないことをしたり

0:16:22.000,0:16:24.000
非合理的なこともするのです

0:16:24.000,0:16:26.000
猿は人間と同様に

0:16:26.000,0:16:28.000
体系的な失敗をします

0:16:28.000,0:16:30.000
これがまず第一に示したい点です

0:16:30.000,0:16:32.000
猿の金融アドバイザーを雇おうと

0:16:32.000,0:16:34.000
考えた方がいると思いますが

0:16:34.000,0:16:36.000
猿はかわいいけれど

0:16:36.000,0:16:38.000
人間の金融アドバイザー同様に

0:16:38.000,0:16:41.000
愚かですから お勧めしません

0:16:41.000,0:16:43.000
ごめんなさい

0:16:43.000,0:16:45.000
言い方が悪かったわ

0:16:45.000,0:16:48.000
皆さんが笑うのも 人間の弱点を知っているからですよね

0:16:48.000,0:16:51.000
初めの質問で答えたからわかりますね

0:16:51.000,0:16:53.000
このような間違いは どこから始まるのでしょうか

0:16:53.000,0:16:55.000
私たちの願いは

0:16:55.000,0:16:57.000
金融制度や技術に

0:16:57.000,0:17:00.000
ひねりを入れて向上させることでした

0:17:00.000,0:17:03.000
でもわかったのは このような傾向はもっと深い部分から発生していることです

0:17:03.000,0:17:05.000
人間が進化してきた中に

0:17:05.000,0:17:07.000
理由が見つけられる可能性もあります

0:17:07.000,0:17:09.000
愚かな面が見られるのは

0:17:09.000,0:17:11.000
人間だけなのではなく

0:17:11.000,0:17:13.000
大昔から猿にも見られたのかもしれません

0:17:13.000,0:17:16.000
猿の実験結果を信用するとしたら

0:17:16.000,0:17:18.000
この愚かな策略は

0:17:18.000,0:17:20.000
3500万年も続いているのかもしれません

0:17:20.000,0:17:22.000
この古くからある策略は

0:17:22.000,0:17:25.000
ずっと変わらないままなのです

0:17:25.000,0:17:27.000
他にはどのようなものがあるでしょうか

0:17:27.000,0:17:30.000
愚かな策略を克服するのは大変なのです

0:17:30.000,0:17:32.000
人間は進化するうちに

0:17:32.000,0:17:35.000
甘いものや脂肪分の多いものを好むようになりました

0:17:35.000,0:17:37.000
美味しさを知っているので

0:17:37.000,0:17:40.000
デザートを見たときに まずそうとは思わず

0:17:40.000,0:17:42.000
体にはプラスだと

0:17:42.000,0:17:44.000
思うようになっています

0:17:44.000,0:17:46.000
経済的な決断に関しても

0:17:46.000,0:17:48.000
同じことが起こるというのが

0:17:48.000,0:17:50.000
私の推測です

0:17:50.000,0:17:52.000
株が下落したり

0:17:52.000,0:17:54.000
不動産価値が下がるとき

0:17:54.000,0:17:56.000
進化的な意味で

0:17:56.000,0:17:58.000
解釈してしまいます

0:17:58.000,0:18:00.000
投資家を失敗に招いたり

0:18:00.000,0:18:02.000
差し押さえをつくり出す先入観を

0:18:02.000,0:18:04.000
乗り越えるのは

0:18:04.000,0:18:06.000
非常に難しいことを指しています

0:18:06.000,0:18:08.000
これが悲しい現実ですが

0:18:08.000,0:18:10.000
喜ばしいことも必要ですね

0:18:10.000,0:18:12.000
肯定的側面は

0:18:12.000,0:18:14.000
冒頭で触れたように

0:18:14.000,0:18:16.000
人間は賢いだけではなく

0:18:16.000,0:18:18.000
生物界の中でも

0:18:18.000,0:18:21.000
感動するほどに

0:18:21.000,0:18:24.000
賢いことです

0:18:24.000,0:18:26.000
羽をバタバタさせなくても

0:18:26.000,0:18:28.000
ここまで飛行機で来れましたし

0:18:28.000,0:18:31.000
今しているように コンタクトを使用すれば

0:18:31.000,0:18:34.000
近視でも皆さんがちゃんと見えます

0:18:34.000,0:18:36.000
このように人間は

0:18:36.000,0:18:39.000
生まれもった力の限界を

0:18:39.000,0:18:42.000
技術などを使って容易に乗り越えています

0:18:42.000,0:18:45.000
でも限界があることを認識しなければいけません

0:18:45.000,0:18:47.000
厄介なことです

0:18:47.000,0:18:49.000
作家のカミュは言いました

0:18:49.000,0:18:52.000
“人間は 本来の姿でいることを拒む唯一の種だ”

0:18:52.000,0:18:54.000
限界を知らない限り

0:18:54.000,0:18:56.000
限界を乗り越えることは

0:18:56.000,0:18:58.000
無理かもしれないのが皮肉ですが

0:18:58.000,0:19:01.000
克服できない限界として考えるのではなく

0:19:01.000,0:19:04.000
限界を認識して 受け入れて

0:19:04.000,0:19:06.000
デザイン界に答えを

0:19:06.000,0:19:09.000
見つけ出せる希望を抱けます

0:19:09.000,0:19:12.000
これこそ人間の可能性を最大限にして

0:19:12.000,0:19:14.000
立派な種と名乗るための

0:19:14.000,0:19:17.000
唯一の方法かもしれません

0:19:17.000,0:19:19.000
ありがとう

0:19:19.000,0:19:24.000
（拍手）