WEBVTT 00:00:01.119 --> 00:00:03.027 いつも思っていました 00:00:03.027 --> 00:00:05.867 社会につながる活動を 実地に研究し 00:00:05.867 --> 00:00:09.943 人々に寄り添い その感情や思考― 00:00:09.943 --> 00:00:14.169 意思 欲求に共感したいと 00:00:14.999 --> 00:00:20.330 科学者としては ずっと その共感を測定したいと願っていました 00:00:20.879 --> 00:00:23.377 「他者と共にいる」という― 00:00:23.377 --> 00:00:25.682 瞬時に生まれる感覚 00:00:25.682 --> 00:00:28.032 人の気持ちは直感でわかります 00:00:28.032 --> 00:00:29.389 人の行為の意味は 00:00:29.389 --> 00:00:31.731 それが起こる前に 分かってしまいます 00:00:31.959 --> 00:00:33.366 我々は常に 00:00:33.857 --> 00:00:36.828 他者の主観の対象という立場に置かれています 00:00:36.828 --> 00:00:39.780 途切れることなく 避けることもできません 00:00:40.025 --> 00:00:41.060 大変重要なことで 00:00:41.228 --> 00:00:43.299 自分や周りの世界を― 00:00:43.299 --> 00:00:47.784 理解する手段はまさにその立場から形づくられます 00:00:48.226 --> 00:00:51.460 人は 骨の髄まで 社会的です NOTE Paragraph 00:00:51.460 --> 00:00:54.234 自閉症の探求の出発点は 00:00:54.234 --> 00:00:57.811 成人の自閉症者用の施設でした 00:00:57.921 --> 00:01:01.129 昔の事ですが そこの人達は 00:01:01.129 --> 00:01:04.671 人生の大半を 病院で過ごしてきた人ばかり 00:01:05.021 --> 00:01:08.863 彼らにとって 自閉症は 人生を荒廃させるものでした 00:01:09.116 --> 00:01:12.558 深刻な知的障害を持ち 00:01:12.558 --> 00:01:15.860 口も利けない でも最悪なのは― 00:01:15.860 --> 00:01:19.160 極めて孤立していたこと 00:01:19.690 --> 00:01:22.931 自分たちを取り巻く 世界や環境や 00:01:22.931 --> 00:01:25.462 人から孤立しているのです 00:01:25.582 --> 00:01:28.244 当時の自閉症者の学校は 00:01:28.244 --> 00:01:32.267 騒がしく 落ち着きがなくて 00:01:32.267 --> 00:01:37.730 何かしている人がいても その人達は決まって 00:01:37.730 --> 00:01:40.776 独りぼっちでした 00:01:41.455 --> 00:01:45.527 天井の照明を見つめたり 00:01:45.527 --> 00:01:48.936 部屋の隅に引きこもったり 00:01:48.936 --> 00:01:52.495 何の意味もない 自己刺激運動の 00:01:52.495 --> 00:01:56.658 繰り返しに とりつかれたり 00:01:56.696 --> 00:01:59.874 非常に根の深い孤立です NOTE Paragraph 00:02:00.095 --> 00:02:03.688 自閉症とは このように 00:02:03.688 --> 00:02:07.426 他者への共感が 断絶した状態だと 00:02:07.426 --> 00:02:09.770 今は分かっています 00:02:09.770 --> 00:02:11.728 共感は 数十万年にわたって 00:02:11.728 --> 00:02:13.879 進化の歴史の中で 00:02:13.879 --> 00:02:16.433 人類が受け継いできた 00:02:16.433 --> 00:02:18.719 生存の為の能力です NOTE Paragraph 00:02:18.719 --> 00:02:24.033 赤ん坊は無力なので 生き延びるには 誰かに― 00:02:24.033 --> 00:02:26.064 世話をしてもらいます 00:02:26.064 --> 00:02:28.447 彼らに生存の仕組みが 00:02:28.447 --> 00:02:31.680 備わっているのは自然な事なのです 00:02:31.680 --> 00:02:34.255 赤ん坊は世話をする人の方を向きます 00:02:34.255 --> 00:02:37.697 生まれた日や最初の数週間から 00:02:37.697 --> 00:02:41.183 ただの物音より 人の立てる音を 00:02:41.183 --> 00:02:43.128 好むのです 00:02:43.128 --> 00:02:45.138 彼らは物よりも 00:02:45.138 --> 00:02:47.183 人を見るのを好み 00:02:47.183 --> 00:02:49.384 特に人の目を見つめます 00:02:49.747 --> 00:02:54.096 目は 相手の経験に通じる 窓だからです 00:02:54.096 --> 00:02:56.214 だから 彼らは 00:02:56.214 --> 00:02:59.826 自分を見ている人の事を 見るのです 00:03:00.525 --> 00:03:03.131 世話をする人をです 00:03:03.131 --> 00:03:05.247 世話をする人の対象は赤ん坊です 00:03:05.458 --> 00:03:09.085 互いに強めあう このダンスこそ 00:03:09.085 --> 00:03:12.904 社会的な精神 頭脳が依存する 心の誕生に 00:03:12.904 --> 00:03:17.587 極めて重要な事なのです NOTE Paragraph 00:03:17.587 --> 00:03:20.268 自閉症は 00:03:20.268 --> 00:03:25.347 もっと大きくなってから発症するものと 考えられてきましたが 00:03:25.347 --> 00:03:29.907 それは間違いです 生まれた時から始まります 00:03:30.745 --> 00:03:35.049 世話をする人と交流し 赤ん坊は気付きます 00:03:35.049 --> 00:03:39.256 「両耳の間(脳)には何かがあるな」 00:03:39.256 --> 00:03:40.666 重要なもの 00:03:40.666 --> 00:03:44.623 目には見えないが とても大事なもの 00:03:44.849 --> 00:03:46.308 「注目」です 00:03:46.308 --> 00:03:49.138 赤ん坊はたちどころに学びます 00:03:49.138 --> 00:03:51.818 言葉を話す前から 00:03:51.818 --> 00:03:57.555 欲しいものを得るには この「注目」をとらえて動かせばいいのです 00:03:57.555 --> 00:04:00.679 人の視線を追う事も学びます 00:04:00.679 --> 00:04:02.949 人が見る物 それは 00:04:02.949 --> 00:04:05.776 頭に思い浮かべている物ですから 00:04:06.704 --> 00:04:09.346 そしてすぐ 物の意味を 00:04:09.346 --> 00:04:12.771 学び始めます 何故なら 人は― 00:04:12.771 --> 00:04:14.823 何かを見たり指差す時 00:04:14.823 --> 00:04:17.752 ただ方向を示すだけでなく 00:04:17.752 --> 00:04:20.310 その物が持つ意味を 00:04:20.310 --> 00:04:23.389 他人に対して示しているからです 00:04:23.389 --> 00:04:27.488 赤ん坊はすぐ この意味の体系を築き始めます 00:04:27.728 --> 00:04:31.733 でも 社会的交流の範囲で得られた 「意味」に限られます 00:04:32.202 --> 00:04:34.043 体験を共有して 00:04:34.043 --> 00:04:37.847 初めて 物の「意味」を 学ぶ事ができるのです NOTE Paragraph 00:04:38.030 --> 00:04:44.862 この小さな女の子は 1歳3カ月で 00:04:44.862 --> 00:04:47.992 自閉症です 00:04:48.594 --> 00:04:52.016 顔から5センチまで 近づいても 00:04:52.016 --> 00:04:56.265 全然私に気付いていません 00:04:56.265 --> 00:04:57.623 もし5センチまで 00:04:57.623 --> 00:04:59.549 顔を近づけられたらどうします? 00:04:59.549 --> 00:05:01.655 たぶん 二つに一つ 00:05:01.655 --> 00:05:05.483 後ずさりするか 警察を呼ぶか (笑) 00:05:05.767 --> 00:05:07.526 何かはするでしょう 00:05:07.778 --> 00:05:10.052 領域を侵されると 人は 00:05:10.300 --> 00:05:12.247 必ず反応するのです 00:05:12.247 --> 00:05:15.931 本能的に 自然に そうするのです 00:05:15.931 --> 00:05:17.348 これは体の持つ知恵 00:05:17.348 --> 00:05:21.898 言葉を媒介せずに 体はそう動くものです 00:05:21.898 --> 00:05:24.661 ずっと昔からそうなのです NOTE Paragraph 00:05:24.661 --> 00:05:27.600 人間だけではありません 00:05:27.600 --> 00:05:30.804 人間に近い動物たちもです 00:05:30.824 --> 00:05:32.818 あなたが猿で 00:05:32.818 --> 00:05:34.914 他の猿を見ていて 00:05:34.914 --> 00:05:38.656 その猿があなたより 地位が高ければ 00:05:38.932 --> 00:05:42.485 合図 または威嚇とみなされ 00:05:42.485 --> 00:05:45.395 あなたの命はそこまでです 00:05:45.395 --> 00:05:49.422 他の動物にとっては不可欠の- 00:05:49.786 --> 00:05:53.166 生き残る為の知恵ですが 00:05:53.207 --> 00:05:55.907 人間にとっては単に 00:05:55.907 --> 00:06:00.070 社会的活動に必要な事 というだけです NOTE Paragraph 00:06:00.070 --> 00:06:02.973 こんな近くにいれば 00:06:02.973 --> 00:06:04.971 私が見えたり 00:06:04.971 --> 00:06:06.591 声が聞こえたりすると思います 00:06:06.591 --> 00:06:08.931 数分後 この子は 00:06:08.931 --> 00:06:13.931 部屋の隅に行き ちっちゃなキャンディを見つけます 00:06:14.530 --> 00:06:19.400 彼女の「注意」は私には向かなくても 00:06:19.400 --> 00:06:21.829 何か物には向くのです 00:06:21.829 --> 00:06:24.471 ほとんどの人にとって 00:06:24.471 --> 00:06:28.440 「物の世界」と「人の世界」があります 00:06:28.806 --> 00:06:33.397 この子にとって その境界は 定かでなく 00:06:33.397 --> 00:06:36.527 人の世界に対する興味は 期待されるほど 00:06:36.527 --> 00:06:38.010 強くありません 00:06:38.010 --> 00:06:40.044 「体験の共有」を通じて 00:06:40.044 --> 00:06:42.445 人は多くを学ぶことを思い出してください 00:06:42.445 --> 00:06:45.616 彼女が今のように 自分の中に 00:06:45.616 --> 00:06:50.095 閉じこもれば閉じこもるほど 00:06:50.095 --> 00:06:53.913 学びの道からどんどん 外れていくのです 00:06:53.913 --> 00:06:56.879 脳は決定論的な役割を持っていて 00:06:56.879 --> 00:06:59.401 脳がどんな人になるか 予め決定すると思いがちです 00:06:59.401 --> 00:07:02.241 しかし 実は 脳も成長するのです 00:07:02.241 --> 00:07:06.254 この子の行動が 社会的交流から 00:07:06.254 --> 00:07:09.137 切り離される時 精神や脳にも 00:07:09.137 --> 00:07:13.570 そういう事が起こっているのです NOTE Paragraph 00:07:14.529 --> 00:07:20.367 自閉症は あらゆる発達障害の中で 一番強く 00:07:20.367 --> 00:07:23.820 遺伝的条件に支配されるものであり 00:07:23.820 --> 00:07:26.695 脳の障害なのです 00:07:26.695 --> 00:07:29.304 子供が生まれるより 00:07:29.304 --> 00:07:32.170 ずっと前から始まっています 00:07:32.170 --> 00:07:35.884 自閉症スペクトラムは 非常に幅広く 00:07:35.884 --> 00:07:38.396 重い知的障害の人も 00:07:38.396 --> 00:07:41.394 才能のある人もいます 00:07:41.394 --> 00:07:43.522 全く口を利かない人 00:07:43.522 --> 00:07:45.794 しゃべりすぎる人も 00:07:45.794 --> 00:07:48.295 やらせておけば 00:07:48.295 --> 00:07:51.304 学校のフェンス沿いに一日中 00:07:51.304 --> 00:07:53.384 走っている人もいます 00:07:53.603 --> 00:07:55.961 人のところに来て 00:07:55.961 --> 00:07:57.966 繰り返し 執拗に 00:07:57.966 --> 00:08:01.897 気を惹こうとするけれど 00:08:01.897 --> 00:08:05.547 即座には共感を得られない人もいます NOTE Paragraph 00:08:05.672 --> 00:08:09.604 かつて思われていたよりも 症状を持つ人はずっとたくさんいます 00:08:09.604 --> 00:08:11.088 この分野で働き始めたとき自閉症は稀で- 00:08:11.088 --> 00:08:13.941 1万人中4人程度だと 00:08:13.941 --> 00:08:15.972 考えられていました 00:08:15.972 --> 00:08:20.005 現在の研究では 割合は100人中1人 00:08:20.005 --> 00:08:25.028 数百万の自閉症者がいる 計算になります NOTE Paragraph 00:08:25.028 --> 00:08:28.394 この疾患に関連した 社会の損失は莫大で 00:08:28.394 --> 00:08:31.557 米国だけで350~800億ドル 00:08:31.557 --> 00:08:34.864 この費用の大半は 00:08:34.864 --> 00:08:37.044 深刻な障害を持ち 00:08:37.044 --> 00:08:39.205 総合的で徹底的な 00:08:39.205 --> 00:08:41.344 ケアを必要とする 00:08:41.344 --> 00:08:44.070 若者や大人のための 00:08:44.070 --> 00:08:48.339 一年で6~8万ドルかかる ケアです 00:08:48.339 --> 00:08:51.901 早期治療の恩恵に あずからなかった人たちです 00:08:51.901 --> 00:08:56.360 お話しした通り 自閉症は 学習の道筋から 00:08:56.360 --> 00:08:59.064 逸れていくことで 明白化すると 00:08:59.064 --> 00:09:01.200 判明しています 00:09:01.200 --> 00:09:03.613 もし 早い段階で 00:09:03.613 --> 00:09:07.350 症状に気付き 介入して 治療を受けさせるとどうなるか 00:09:07.680 --> 00:09:09.654 ここ10年の 私の人生に 00:09:09.654 --> 00:09:13.034 影響を与えた事なのですが 00:09:13.034 --> 00:09:16.765 早期介入によって 我々は障害を― 00:09:16.765 --> 00:09:18.705 軽減できるのです 00:09:18.922 --> 00:09:21.301 チャンスはあります 00:09:21.301 --> 00:09:24.437 脳が柔軟な時期は 限られていて 00:09:24.437 --> 00:09:25.789 産まれてから3歳までが 00:09:25.789 --> 00:09:27.492 その時期です 00:09:27.492 --> 00:09:30.890 その後も改善の可能性は 閉ざされる訳ではありませんが 00:09:30.890 --> 00:09:34.459 効果は大幅に減ります 00:09:34.459 --> 00:09:37.563 米国で自閉症と診断される― 00:09:37.563 --> 00:09:39.714 平均年齢は5歳です 00:09:39.714 --> 00:09:41.980 田舎に住む人や 00:09:41.980 --> 00:09:45.229 人種的マイノリティーは 医療サービスを受けにくく 00:09:45.229 --> 00:09:48.338 診断される年齢は更に上がります 00:09:48.338 --> 00:09:50.957 こんなことを言うとまるで 00:09:50.957 --> 00:09:53.302 そういうコミュニティーにおける 00:09:53.302 --> 00:09:55.719 自閉症の人というのは 00:09:55.719 --> 00:10:00.195 症状がこれから 悪化しがちだと告げているかのようですが 00:10:00.195 --> 00:10:03.168 生命倫理上 責任を感じます 00:10:03.168 --> 00:10:06.025 科学の存在は 00:10:06.025 --> 00:10:09.083 社会の役に立たなければ意味がない 00:10:09.083 --> 00:10:12.741 だから私達は 治療のチャンスを 00:10:12.741 --> 00:10:14.705 逃すわけにはいきません 00:10:14.705 --> 00:10:17.861 自閉症の子供は 自閉症を持った大人になります 00:10:17.861 --> 00:10:22.139 この子達や その家族の為 もっと早くに― 00:10:22.139 --> 00:10:24.462 何かできたなら 00:10:24.462 --> 00:10:26.856 子どもや家族 地域の 00:10:26.856 --> 00:10:30.952 生涯にわたる変化が起こるでしょう 00:10:30.952 --> 00:10:33.672 これが我々の見解です NOTE Paragraph 00:10:33.672 --> 00:10:36.538 自閉症に関連する遺伝子は 00:10:36.538 --> 00:10:38.664 現在100程発見されていますが 00:10:38.664 --> 00:10:43.168 遺伝子だけに限らず 遺伝的異常の数は 300~600にもなると 00:10:43.168 --> 00:10:46.839 信じられています 00:10:47.693 --> 00:10:51.430 ここで疑問が一つ 出てきます 00:10:51.430 --> 00:10:54.915 自閉症の原因が そんなに多いなら 00:10:54.915 --> 00:10:57.930 それらの障害からどのようにして 00:10:57.930 --> 00:11:00.310 実際の症候群になるのでしょうか 00:11:00.444 --> 00:11:03.615 私のような専門家は遊び場に行けば 00:11:03.615 --> 00:11:06.740 自閉症の子が見分けられます 00:11:06.835 --> 00:11:08.978 数ある原因から― 00:11:08.978 --> 00:11:12.428 共通点のある症候群が 発生するのはなぜか 00:11:12.428 --> 00:11:15.005 原因と症候群を結ぶ物 00:11:15.005 --> 00:11:17.660 それは発達です 00:11:17.660 --> 00:11:20.776 障害は必ずしも自閉症へと 00:11:20.776 --> 00:11:23.128 発展するわけではないので 00:11:23.315 --> 00:11:26.269 2歳になるまでが重要なのです 00:11:26.269 --> 00:11:28.632 自閉症は自己発現します 00:11:28.765 --> 00:11:33.142 2歳になる前に治療的介入ができれば 00:11:33.614 --> 00:11:36.117 一部の人の症状を緩和したり 00:11:36.117 --> 00:11:39.432 未然に防ぐ事さえ可能かもしれません NOTE Paragraph 00:11:39.753 --> 00:11:41.837 でもどうすればよいのでしょうか 00:11:41.837 --> 00:11:44.753 どうすれば 彼らに共感を経験させ 00:11:44.753 --> 00:11:48.778 他者の存在に気付かせることが できるでしょう 00:11:48.778 --> 00:11:52.276 先程の15か月の女の子とふれあった時も 00:11:52.276 --> 00:11:54.438 彼女の世界に入るには 00:11:54.438 --> 00:11:56.953 どうすればよいか でした 00:11:56.953 --> 00:12:01.211 「彼女は私や他人の事を 考えるのか?」と 00:12:02.100 --> 00:12:06.370 だから方法を編み出しました 00:12:06.370 --> 00:12:09.056 要するに彼女の中に入りこんで 00:12:09.056 --> 00:12:12.549 彼女の目で世界を見る必要があります 00:12:12.985 --> 00:12:16.024 そこで 視線を追いかける新技術を 00:12:16.024 --> 00:12:19.657 長い年月をかけて開発しました 00:12:19.657 --> 00:12:22.175 子供が何に注目しているのか 00:12:22.175 --> 00:12:25.016 刻々と見る事ができます 00:12:25.456 --> 00:12:28.175 同僚のウォレンと私は 00:12:28.175 --> 00:12:32.319 開発に12年かけました 00:12:34.130 --> 00:12:37.973 この生後5か月の赤ん坊は 00:12:37.973 --> 00:12:41.283 母親や周りの人々等 00:12:41.283 --> 00:12:46.923 彼の世界にあるものを 見ています 00:12:46.923 --> 00:12:48.569 でも彼はそれだけではなく 00:12:48.569 --> 00:12:50.198 託児所で経験する事も 00:12:50.198 --> 00:12:51.520 目にするのです 00:12:51.520 --> 00:12:54.152 我々はその世界を捉えて 00:12:54.152 --> 00:12:56.111 研究室に持っていきたい 00:12:56.111 --> 00:12:58.087 その為には 00:12:58.087 --> 00:13:01.853 非常に精緻な技術が必要でした NOTE Paragraph 00:13:01.853 --> 00:13:05.280 大人や幼児 新生児達が 00:13:05.280 --> 00:13:08.263 世界にどう注目するのか 00:13:08.263 --> 00:13:09.890 刻々とらえます 00:13:09.890 --> 00:13:13.163 何が重要で 何が重要でないか 00:13:13.163 --> 00:13:16.104 それを示す指標を作りました 00:13:16.104 --> 00:13:19.503 「注目のじょうご」と呼びます 00:13:19.503 --> 00:13:21.836 普通に成長している2歳児に 00:13:21.836 --> 00:13:24.494 フレームが約1秒区切りの― 00:13:24.494 --> 00:13:28.752 ビデオを見せた時の目の動きです 00:13:28.752 --> 00:13:30.064 フレームを 00:13:30.064 --> 00:13:32.549 停止すると そういう子達は 00:13:32.549 --> 00:13:35.020 目をこう動かします 00:13:35.020 --> 00:13:39.461 緑色の部分は 自閉症の子です 00:13:39.461 --> 00:13:43.084 つまり 普通の子が 00:13:43.084 --> 00:13:46.039 フレームの中に見るのは 00:13:46.039 --> 00:13:48.588 女の子とけんか中の― 00:13:48.588 --> 00:13:51.498 男の子の感情表現ですが 00:13:51.498 --> 00:13:53.558 自閉症の子はと言うと 00:13:53.558 --> 00:13:57.003 回転ドアが開閉する様子に 00:13:57.003 --> 00:13:59.094 見入っています 00:13:59.094 --> 00:14:01.546 今 お見せした 00:14:01.546 --> 00:14:02.415 違いは 00:14:02.415 --> 00:14:05.605 この実験中だけでなく 00:14:05.605 --> 00:14:09.006 生活の中で常に発生しています 00:14:09.006 --> 00:14:11.726 そして彼らの精神と脳は 00:14:11.726 --> 00:14:14.806 普通の子の精神や脳とは 00:14:14.806 --> 00:14:18.585 異なって形成され 特殊化されるのです 00:14:18.585 --> 00:14:21.772 小児科の友人から 00:14:21.772 --> 00:14:24.966 「発育曲線」の概念を 00:14:24.966 --> 00:14:26.893 拝借しました 00:14:26.893 --> 00:14:28.862 子供を小児科に連れて行くと 00:14:28.862 --> 00:14:33.066 身長・体重を測定します 00:14:33.066 --> 00:14:35.895 我々は社会との関わりを 00:14:35.895 --> 00:14:38.354 曲線にするのです 00:14:38.354 --> 00:14:41.155 誕生時から観察を始めます 00:14:41.155 --> 00:14:46.984 横軸は月齢です 2か月、3か月、4か月、5か月、 00:14:46.984 --> 00:14:50.824 6か月、と 大体24か月まで続けます 00:14:50.824 --> 00:14:53.555 縦軸は子供が人の目を 00:14:53.555 --> 00:14:55.251 見つめた時間の割合です 00:14:55.251 --> 00:14:57.611 これがその発育曲線 00:14:57.611 --> 00:15:00.641 始まりはここ 人の目が好きで 00:15:00.641 --> 00:15:03.095 それはほぼ変わりません 00:15:03.095 --> 00:15:07.021 最初の数か月は わずかに上昇するようです 00:15:07.021 --> 00:15:09.315 自閉症になった 00:15:09.315 --> 00:15:11.823 子供達の場合は 00:15:11.823 --> 00:15:14.028 全く違う曲線になります 00:15:14.028 --> 00:15:17.818 始まりはこんなに高いのですが 急激に下降します 00:15:17.818 --> 00:15:21.237 生まれつきの反射で 人を見ますが 00:15:21.237 --> 00:15:25.168 そこには 惹きつけられません 00:15:25.168 --> 00:15:28.238 あなたがいたからといって 00:15:28.238 --> 00:15:31.139 彼らが日常生活を送る中での 00:15:31.139 --> 00:15:35.030 出来事には影響しないのです NOTE Paragraph 00:15:35.030 --> 00:15:41.052 こんなにはっきりした データが得られるなら 00:15:41.052 --> 00:15:44.060 生後6か月経過するまでに 00:15:44.060 --> 00:15:46.896 何が起きるのか見てみたいと考えました 00:15:46.896 --> 00:15:48.790 2~3か月の子は 00:15:48.790 --> 00:15:53.342 驚くほど社交的なものですから 00:15:53.342 --> 00:15:55.949 生後6か月未満の子どもでも 00:15:55.949 --> 00:16:01.742 自閉症とそうでないグループは とても簡単に区別できます NOTE Paragraph 00:16:02.087 --> 00:16:04.961 この種の評価法を使い 00:16:04.961 --> 00:16:08.977 我々の科学的手法で実際に 自閉症を 00:16:08.977 --> 00:16:11.526 早期に特定できるとわかりました 00:16:11.618 --> 00:16:14.522 自閉症の行動が現れる― 00:16:14.522 --> 00:16:17.499 1歳以後まで待つ必要もありません 00:16:17.670 --> 00:16:20.932 進化によって高度に保持され 発達の面では 00:16:20.932 --> 00:16:25.054 生後数週間という 極めて早い段階から 00:16:25.054 --> 00:16:27.755 現れてくる徴候を計測すれば 00:16:27.755 --> 00:16:29.617 自閉症の発見を 00:16:29.617 --> 00:16:32.081 生後数か月まで 早める事ができるでしょう 00:16:32.081 --> 00:16:35.475 今取り組んでいることです NOTE Paragraph 00:16:36.222 --> 00:16:39.290 子供達の自閉症診断の為の 00:16:39.290 --> 00:16:42.895 最も適した技術と方法の 完成です 00:16:43.669 --> 00:16:46.038 でも 彼らの社会生活に 00:16:46.038 --> 00:16:49.680 変化がなければ無意味になります 00:16:49.680 --> 00:16:51.986 勿論 この診断法を 00:16:51.986 --> 00:16:54.839 最前線にいる人々 つまり― 00:16:54.839 --> 00:16:57.362 あらゆる子供に会う― 00:16:57.362 --> 00:16:59.914 かかりつけ医に 実践してほしいと願います 00:17:00.067 --> 00:17:02.210 この技術を活かし 00:17:02.210 --> 00:17:05.315 多くの子供に会う彼らの 00:17:05.315 --> 00:17:07.580 診療に寄与しなければなりません 00:17:07.580 --> 00:17:09.594 見逃がしのないよう 00:17:09.594 --> 00:17:11.639 広く普及してほしいのです 00:17:11.727 --> 00:17:14.180 ただし 介入し治療するための― 00:17:14.180 --> 00:17:20.001 環境が整っていなければ この診断はモラルに反します 00:17:20.328 --> 00:17:22.864 必要なのは 自閉症児の― 00:17:22.864 --> 00:17:26.279 家族を助け 最初の数年を乗り切る事 00:17:26.279 --> 00:17:30.191 「誰でも診断を受けられる」 から 00:17:30.191 --> 00:17:34.182 「誰でも治療を受けられる」 まで進めるべきです 00:17:34.348 --> 00:17:37.451 これらの治療は自閉症児だけでなく 00:17:37.451 --> 00:17:41.030 家族の人生も 変えるのですから NOTE Paragraph 00:17:41.030 --> 00:17:45.287 最初の数年にできる治療のことを 00:17:45.287 --> 00:17:48.510 考えてみると 00:17:48.510 --> 00:17:50.910 こう思います 00:17:50.910 --> 00:17:53.737 長年この分野で働いて 00:17:53.737 --> 00:17:56.801 本当に若返りを感じます 00:17:56.832 --> 00:18:00.664 取り組んできた科学を基に 00:18:00.664 --> 00:18:04.371 状況を変えられるようになったという 手ごたえもあります 00:18:04.371 --> 00:18:07.266 自閉症に関わり始めた頃のように 00:18:07.266 --> 00:18:09.928 どうする事もできない状態だなどと 00:18:09.928 --> 00:18:12.670 感じることは なくなりました 00:18:13.000 --> 00:18:18.346 状況は変化し 多くの事が可能になりました 00:18:18.346 --> 00:18:21.083 「自閉症を治す」という 00:18:21.083 --> 00:18:23.351 考え方ではありません 00:18:23.683 --> 00:18:25.889 ときに見られる 壊滅的な事態が 00:18:25.889 --> 00:18:28.465 自閉症の患者に生じることを 00:18:28.465 --> 00:18:32.371 なくすようにしたいのです 00:18:32.695 --> 00:18:35.569 重度の知的障害や 言語障害 00:18:35.569 --> 00:18:39.238 深刻な孤立などです 00:18:39.238 --> 00:18:41.505 実際 自閉症者は 00:18:41.505 --> 00:18:44.300 特別な物の見方を有しているようです 00:18:44.300 --> 00:18:47.723 多様性は必要ですし ある種の能力においては 00:18:47.723 --> 00:18:50.090 非常に優秀です 00:18:50.090 --> 00:18:53.493 予測可能な状況や 定義可能な状況です 00:18:53.493 --> 00:18:56.502 世界に「おいて」 どう機能するかでなく 00:18:56.502 --> 00:19:01.203 世界に「ついて」 彼らは学ぶのですから 00:19:01.203 --> 00:19:04.001 これは例えばテクノロジー向きの 00:19:04.001 --> 00:19:06.081 能力ですが 00:19:06.081 --> 00:19:08.354 驚くべき芸術的才能を 00:19:08.354 --> 00:19:09.779 持つ人もいます 00:19:09.779 --> 00:19:11.699 つらい目にあわないだけでなく 00:19:11.699 --> 00:19:15.084 次世代の自閉症を持つ人は 00:19:15.084 --> 00:19:18.239 自分の強みを発揮して 00:19:18.239 --> 00:19:20.461 才能を開花させてほしいと願います 00:19:20.461 --> 00:19:24.030 ご清聴ありがとうございます (拍手)