やあ、僕はマーク 磁石のビデオゲームを作ってる さて、計画はこうだった 前回の動画で作った全ステージをまとめて デモ版を作り デモ版を Steam Deck に入れて サンフランシスコに飛んで GDC の出席者にデモ版を渡す だが出発のちょうど1週間前に ある重要なテスターにデモ版を渡したところ 彼はそれを楽しめなかった 彼にとってはイライラするし退屈だし デモ版が終わる前に諦めてしまった その瞬間、自分がとてもよくある 大きな間違いを犯していたことに気づいた それはゲームの難易度についての 考え方のことだ 何を間違えたのか? あと肝心なのは—— カリフォルニアに飛び立つ前に それを修正できたのか? 知りたいならチャンネルはそのままで Developing - Episode 10 話を少し戻そう 前回の動画で 僕はパズル行列を使って 約 26 個の異なるステージの アイデアを生み出した それから、動画が公開された後 それらをまとめて1時間のずっしりしたデモ版を作った 3つのワールド、2種類の磁石 多種多様な仕掛けが入っている 例えば、色が変わるパネルや レーザービーム、動く足場 車輪付きのボックス 回転式スイッチなどなど いつものように、このデモ版を最初に受け取ったのは Discord にいる GMTK 支援者たちだった 彼らは感想や助言を たくさん送ってくれたし バグ、裏技、イライラや矛盾する部分を 発見してくれた いつものことだが 彼らの協力には深く感謝している すると、何の前触れもなく Patrick Traynor からメールが届いた 『Patrick's Parabox』の Patrick だ 前回の動画で紹介した 素晴らしいパズルゲームのことだ 彼は動画でゲームを紹介したことにお礼を言い 僕の磁石ゲームに幸運を祈ってくれた 僕は尋ねた「デモ版やりたい?」 彼は快く引き受けてくれた それから数日後 届いたメールには一言だけ 「プレイした」 そして YouTube のリンクが貼ってあった このゲームの2時間の通しプレイ映像だ なぜ僕が躊躇しているかというと 彼はこのゲームが好きかどうか 何も言わなかったので 僕は彼が実時間で評価する様子を 見るしかない だからもしゲームが嫌われたら 僕は座ったまま ある人が僕にどんどん失望していく様子を 見ないといけない 両親が僕に失望してるのと同じだ でもとうとう勇気を出して 動画の再生ボタンを押したら 彼は全体的に気に入ってくれた 彼はニコニコ笑って いくつかのパズルを褒めてくれたし 核となる仕組みに秘められた可能性を 高く評価してくれた 「この仕組みを見て思うよ なぜ今まで誰も こういう磁石プラットフォーマーを作らなかったんだ?」 そして彼の批判には どれも親切な助言と忠告があった 例えば、個々のパズルにおいて—— プレイヤーができないことを もっと明確にしたほうがいい つまりプレイヤーが飛べない大きさの谷間は 本当に大きくするべきだし プレイヤーを通さないように早く閉まるドアは 即座にピシャっと閉じたほうがいい、とかだ 彼はもう1つ大きな忠告をくれた それはゲームを簡単にしてでも ステージを単純化するということだった その忠告を僕は丸ごと無視した 詳細はあとで ともかく GDC まで2週間ほどあったので 支援者や Patrick の意見を全部使って デモ版を見直すことにした 上手くいってないステージを 大量に削除した これは反射神経に頼りすぎていて 良いパズルになってない これには大きな抜け穴があって 簡単に直せなかった あとパズルではなく純粋なアクション面を 1個こっそり入れて プレイヤーが その変化にどう反応するか試したが 反応は賛否両論だったので 今のところボツにしている その空白を補うために 新しいパズルも作った 一部の仕掛けの読みやすさを 改善する作業もやった 例えば、ボタンとオブジェクトの 繋がりを示すアイコンだ あとこの奇妙な磁石センサーを 滑車パネルに置き換えた これはロープが一番下に当たると ボタンが作動する それと単純な緑色ボタンをより納得感のある フランケンシュタイン式スイッチに変えた 特定のパズルのために 鍵と錠前を作った 鍵を取ったときのアニメは かなり満足感がある 一時停止メニューに磨きをかけて タイトル画面も改善した あと…そうだ 会話システムも全く新しく作った このデモ版には試作の会話が1つしかないが 上手くいけば完成版のゲームで 物語がどんな感じになるか 想像してもらえるはずだ これでデモ版は無事完成した サンフランシスコまであと1週間しかないので 重要なテスターにゲームを渡した そして冒頭で言った通り 彼は気に入らなかった 彼は失敗して腹を立てた ステージがあまりに複雑で プレイが退屈だと感じた そして多くの場合 あっさりとコントローラーを僕に渡してこう言う 「これをちょっとやってくれんか?」 そのプレイテスターとは 僕の父親だ 親と失望の話を覚えてるか? しかし…しかし…しかし このプレイテストはつらかったが この開発工程全体で 最も重要なプレイテストだったと思う あの瞬間『マトリックス』を 透視してる感覚だった 自分が大失敗した理由と経緯が 正確に分かった そしてもし Patrick に直接会ったら 彼の忠告を無視したことで 1杯おごる必要があると思った つまりこうだ 僕はステージ設計をするとき いつもかなり単純な構成の パズルを作っていた 1つの小さな操作で プレイヤーを試すというものだ だがその場合、プレイヤーはそのパズルを すぐに解くと思われる 彼らはパズルをすぐに突破して 僕のゲームは簡単すぎてつまらないと判断し 従って僕のことを 本質的に価値のない人間だと判断するだろう それで少し生意気だが そのステージに余計な複雑さを追加する パズルを解くためにプレイヤーがやらないといけない 手順をたくさん追加するわけだ そして悪質な罠を追加する プレイヤーが1つでも間違えると 行き詰まってパズルを ゼロにリセットするしかない そしてパズルの解法を囮や他の要素で 分かりづらくする この悪賢いマキャベリ的な策略をやっていたら 最終的にパズルが厄介で 難解で、イライラして 退屈なものになってしまった ステージを難しくすることに集中しすぎて 楽しくすることを忘れていた おっと つまりこうだ 僕はその仮説を一度も検証したことがなかった プレイヤーは即座に瞬時に 解法を見つけるだろうという仮説だ それは本当に正しかったのか? そこで Patrick の忠告の通り デモ版の大量のステージを作り直した 重点を置いたのは 明快さ、簡潔さ、単純さだ 例えばこのステージだ 元のステージでは、2つの磁石を使って 2つのスイッチを同時に作動させて 2本のドリルを引っ込めて 球体にレーザーを当てて、ドアを開ける 説明するだけでも退屈だ このステージの問題構造は かなり良いと思うが 不必要なものが多すぎて 目立たなくなっている で、こんな感じに作り直した 必要な磁石はたった1つで 3つか4つの仕掛けで構成されていて とても小さくて、とても単純だ プレイヤーはこのパズルのトリックを すぐに解決するだろうか? いや、文字通り 確かめる時間がなかった ビルドをコンパイルして Steam Deck に放り込んで 空港まで運転して、飛行機に乗って 同じ椅子に 10 時間ずっと座りっぱなしだった 長時間労働中の AAA 開発者みたいに この冗談はマズイか? Twitter で炎上するだろうか? さて、サンフランシスコに到着して それから数日観光した アルカトラズとか ゴールデンゲートブリッジとか ピア 39 のアシカとか In-N-Out バーガー…うーわ、ダメだ あのポテト! 何やってんだ? だが GDC の開催期間になると できるだけ大勢にゲームを渡した 親睦会でも、交流会でも 自作ゲーム持ち込み会でも、会議でも 朝食で山盛りのアメリカ風パンケーキを 食べてるときでも アメリカ風じゃなくてただのアメリカンパンケーキだと思う ここはアメリカだ それでデモ版の感想は 本当にかなり良かった 「これは本当のビデオゲームみたいだ」 と何度も言われ デモを全部終えるまで Steam Deck を返してくれない人もいた それで、このゲームは簡単すぎたのか? いや、ゲームは実際には ちょうど良いくらいの難易度だった 例えばさっき話したパズルでは プレイヤーは1〜2分考え込んで それから解法を見つけ出して 僕がいつも追求している「目を丸くしたアハ体験」を得る 混乱もイライラも全くなかった 彼らは良質な楽しい満足パズルだと思っただけだ えっ !? 結局、それは完全に正し… なんてこった、デカい蜘蛛だ ああ〜… あぁ…どこまで話した? 結局、ゲームを簡単にしたのは完全に正しい判断だったし 実際もっと簡単にしてもよかった デモ版には面倒なステージが まだ1つあった ある熱中したアメリカ人は 「げぇ、これは本当に難問だ」と言った しかもゲームの中にある 基本的、基礎的な仕掛けには ちゃんと教えてないものが大量にあり それが彼らを困らせていた 例えば磁石を使って高い足場に上がったり 遠くから磁石の極性を変えたりできる これらは僕のゲームでは ごく当たり前の仕様だったから それをパズルの解法や チュートリアルにする必要性を感じてなかった だが僕のゲームを初めて遊ぶ人にとっては 知る由もない つまりこの動画の一番の教訓はこうだ アメリカ料理はかなりマズイが 彼らは美味しい朝食を作れる 待て、すまん、動画を間違えた これがこの動画の一番の教訓だ プレイヤーに対する思い込みを 常に疑うことだ 僕は自分のゲームはプレイヤーにとって 簡単すぎると思い込んで ステージをイライラするような 複雑で入り組んだものにしてしまった そして僕のゲームの遊び方は 皆知ってるだろうと思い込んで 仕掛けの約半分をチュートリアルで 教えるのを忘れていた 今はあまり気にしてない これはゲーム設計では 本当によくある失敗だと知っているのでね 本当にありがちなのは プレイヤーが持っている技量、知識、理解力が 自分と同じだという思い込みだ つまりデザイナーのことだ そのゲームを何ヶ月も毎日ぶっ続けでプレイしていて 文字通り全部のパズルの全部の解法を知っていて 文字通りそのゲームのルールを書いた人間のことだ 愚かなマークめ! だから開発者がゲームを 過剰に難しく調整してしまったり 仕様の一部をちゃんと伝えなかったりしても 不思議ではない ゲーム開発者としての 重要な仕事の1つは この衝動と戦いながら プレイヤーの立場になって考えてみることだ そこで動画の締めに 僕が学んだコツや技術を紹介したい この仕事をより効果的にやれるはずだ まずマリオの生みの親、宮本茂は新人開発者に対して ゲームをプレイするときに 左右の手を入れ替えて コントローラーを持つよう指示している 上手くいけば不慣れなプレイヤーになった経験が 得られるはずだ かなり大胆なアイデアだが そのゲームに関する—— 技量や知識が全くない人の経験を 擬似的に作り出せるかもしれない あと Patrick だが、僕たちは GDC で実際に会って 彼に飲み物をおごった Patrick はプレイヤーの立場で考えることは 時間をかけて磨ける技能だと保証してくれた そしてこの動画で見せたように、一番の方法は 他人がプレイする様子を見ることだと思う できれば同じ部屋にいたほうがいい 自分のゲームの趣旨を全然理解してない人の 隣に座ることほど屈辱的なことはない そしてあらゆる種類の経験値や 腕前の人とプレイしたい 僕の中で最高のプレイテストは 2人の甥によるものだ 年は7歳と 10 歳だが 偏りには十分注意しないといけない 「ジャック、ゲームの感想は?」 「100 万点の…」 「大好き!」 「ありがとう、ローリーはどう思う?」 「最高」 「ありがとう」 もちろんテスターの意見を聞くことよりも プレイの観察に より多くの時間を費やしたほうがいい おっ、Tシャツとかに印刷したほうがいいな もう1つのコツは ゲームの対象者について考えることだ どんな人で、どんな腕前で、経験値で どんなゲームが好きなのか考えておくことだ それを念頭に置いて 彼らのためにゲームを設計する そして適切なプレイテスターを 選ぶようにする この問題の大部分を占めたのは—— パズルゲームの達人のことが 本当に心配になってきたことだった 『Stephen's Sausage Roll』や『Baba is You』を プレイして完全クリアした人たちが 僕のゲームをプレイしたら 単純でアホで不良品だと思うだろう でも彼らは僕の対象者じゃない 僕はこのゲームを もっと幅広い層に訴求したいし もっとゆるいパズルアドベンチャーを 楽しんだ人にも訴えたい 『Toki Tori』『ハコボーイ!』 『Inside』『Limbo』『Portal』とかだ 対象者を念頭に置けば 設計を順調に進めることができる もちろん、より幅広い層に 訴求する方法もある 高難度ゲームには 補助モードを追加してもいいし ゲームがとても簡単なら、任意の高難度コンテンツや クリア後の要素を追加してもいい そして最後に、ゼロから作り直すことを 恐れないでほしい ステージを作っていると たくさんの発見がある すると、そのステージが何なのか 考えているうちに 大量のくだらない要素やゴミが 溜まってしまうことがよくある 僕のお勧めは そのステージをまた作り直すことだが 最初の草案を急いで作ってたときに 学んだ知識を使うようにする 間違いなく、より簡潔で一貫性のある ステージになるだろう というか、僕はいつもこれを GMTK の動画でやってる 録画ボタンを押す前に 台本を5〜6回は修正している なんでステージ設計でも これをやらなかったんだ? というわけで GDC からやる気満々で帰国したが ゲームの次の作業に関するアイデアと ひどい時差ボケがあった GDC で挨拶してくれた人や 付き合ってくれた皆には本当に感謝してる 驚きだったのは GMTK を見てくれたり ゲームジャムに参加してくれたり このゲーム開発の旅を見ている 大勢の人と会えたことだった NFT をしつこく見せてきた男に 会ったのもクールだった クール野郎、イケてるぜ、兄弟 それにこの素晴らしいゲーム開発者コミュニティの 一員であることを実感できた だから来年また参加するのが待ちきれない そのときはできれば完成したゲームか 今よりも完成に近いものを持っていきたい それまでの間 僕の次の仕事は一歩下がって 僕のゲームのもっと基本的、基礎的概念を 探求するデモ版を作って そのデモ版を主要な対象者の前で 披露することだ 当面は、僕がこの動画で説明した 3つのデモ版はいずれも itch.io で無料でプレイできるぞ このデモ版の感想はもう受け付けないが ゲームの進歩具合を見るのは興味深いかもしれない 本当にご視聴ありがとう また近いうちに (字幕翻訳:Nekofloor)