WEBVTT 00:00:06.880 --> 00:00:09.123 食べ物は長持ちしません 00:00:09.123 --> 00:00:12.652 数日や 早ければ数時間で パンにはカビが生え 00:00:12.652 --> 00:00:14.582 リンゴの切り口は茶色く変色し 00:00:14.582 --> 00:00:17.283 マヨネーズには 細菌が繁殖してしまいます 00:00:17.683 --> 00:00:21.772 でも こういう食品が スーパーの棚に並んでいるときは 00:00:22.112 --> 00:00:23.792 まず 品質は保たれています 00:00:23.792 --> 00:00:25.313 保存料のおかげです 00:00:25.713 --> 00:00:27.943 では 保存料とは一体 何なのでしょうか? 00:00:27.943 --> 00:00:31.392 どんな仕組みで食べ物を長持ちさせるのか そもそも安全なのでしょうか 00:00:31.822 --> 00:00:34.902 食べ物がいたむ要因は 主に2つあります 00:00:34.902 --> 00:00:36.963 微生物と酸化です 00:00:37.443 --> 00:00:40.854 細菌やカビなどの微生物は 食べ物に侵入し 00:00:40.854 --> 00:00:42.714 その栄養分をエサとします 00:00:42.714 --> 00:00:43.683 微生物には 00:00:43.683 --> 00:00:46.922 食中毒を起こす リステリアやボツリヌス菌から 00:00:47.232 --> 00:00:52.883 悪臭、ヌメり、カビの元になり 食べ物を腐らせるものまであります 00:00:52.883 --> 00:00:57.242 一方 酸化とは 食べ物の分子に起こる 化学変化のことです 00:00:57.242 --> 00:01:02.025 酵素やフリーラジカル(遊離基)が原因で 脂質を劣化させたり 00:01:02.025 --> 00:01:05.504 リンゴやジャガイモなどの 青果物を褐色に変色させたりします 00:01:05.504 --> 00:01:09.084 保存料を使えば どちらのタイプの 品質低下も防ぐことができます 00:01:09.574 --> 00:01:12.334 人工冷蔵の技術が発達する前には 00:01:12.334 --> 00:01:15.567 食べ物にカビや細菌が はびこりがちでした 00:01:16.117 --> 00:01:21.166 そこで人は微生物が住みにくい 環境を作る方法を発見しました 00:01:21.166 --> 00:01:23.954 例えば 食べ物の酸性度を上げて 00:01:23.954 --> 00:01:27.744 微生物の生存に必要な酵素が 分解されるようにしてしまうといった策です 00:01:27.744 --> 00:01:30.504 菌の種類によっては 人の役に立つものもあります 00:01:30.504 --> 00:01:34.685 何千年にもわたり 人間は 乳酸を生み出す細菌を使って 00:01:34.685 --> 00:01:37.165 食べ物の保存をしてきました 00:01:37.165 --> 00:01:40.055 乳酸のおかげで 腐りやすい野菜や牛乳が 00:01:40.055 --> 00:01:42.075 日持ちのする保存食品になります 00:01:42.075 --> 00:01:43.804 ヨーロッパのザワークラウト 00:01:43.804 --> 00:01:45.235 韓国のキムチ 00:01:45.235 --> 00:01:47.105 中東のヨーグルトなどがそうです 00:01:47.365 --> 00:01:53.185 更に このような発酵食品を摂ると 消化器官に善玉菌が住み着きます 00:01:53.185 --> 00:01:56.724 合成保存料も多くは酸の一種です 00:01:56.724 --> 00:01:58.905 ドレッシングに含まれる安息香酸 00:01:58.905 --> 00:02:00.695 チーズに含まれるソルビン酸 00:02:00.695 --> 00:02:03.416 洋菓子やパンに含まれる プロピオン酸などがありますが 00:02:03.416 --> 00:02:04.853 安全性はどうなのでしょうか? 00:02:04.853 --> 00:02:08.786 一部の研究では 安息香酸から作られた 安息香酸エステルは 00:02:08.786 --> 00:02:11.635 多動性行動を起こす一因子であることを 示唆していますが 00:02:11.635 --> 00:02:13.997 はっきりとした結論は出ていません 00:02:13.997 --> 00:02:17.556 それ以外では 完全に無害であるといえるようです 00:02:18.066 --> 00:02:22.836 微生物に対抗する もう1つの対策は ジャムや肉の塩漬けのように 00:02:22.836 --> 00:02:25.795 砂糖や塩を大量に加えるという方法です 00:02:25.795 --> 00:02:30.107 砂糖や塩は 微生物が成長するのに 必要な水と結合し 00:02:30.107 --> 00:02:35.006 更に 周りにある どんな細胞からも 水分を吸い取り 00:02:35.006 --> 00:02:36.949 結果として破壊してしまうのです 00:02:36.949 --> 00:02:40.736 もちろん 砂糖や塩の摂り過ぎは 心臓病や 00:02:40.736 --> 00:02:41.611 糖尿病 00:02:41.611 --> 00:02:43.146 高血圧を起こす危険があるため 00:02:43.146 --> 00:02:45.926 適度に摂るようにするのが一番です 00:02:46.506 --> 00:02:51.217 加工肉によく含まれる 抗菌性の硝酸塩や亜硝酸塩は 00:02:51.217 --> 00:02:56.207 ボツリヌス中毒症を起こす菌を遠ざけますが 他の健康障害の原因になることがあります 00:02:56.457 --> 00:02:59.047 塩漬け肉と癌との関係を示した研究では 00:02:59.047 --> 00:03:02.907 保存料が主な原因ではないかと 述べています 00:03:02.907 --> 00:03:05.347 一方で 酸化防止効果のある保存料は 00:03:05.347 --> 00:03:09.898 食べ物が異臭を放ったり 変色させたりする 化学変化を抑制します 00:03:10.438 --> 00:03:13.526 人類は何千年もの間 燻製法で食料保存をしてきました 00:03:13.526 --> 00:03:17.977 燻煙に含まれる芳香族化合物に 抗酸化作用があるためです 00:03:18.217 --> 00:03:22.600 塩漬けと燻製法の組み合わせは 肉を保存する有効な方法として 00:03:22.600 --> 00:03:24.607 冷蔵法が登場する前から使われていました 00:03:24.607 --> 00:03:27.909 保存料を使えば食べ物に煙の匂いを付けずに 酸化防止効果が得られます 00:03:27.919 --> 00:03:30.788 BHTやトコフェロールといった 化合物が使われます 00:03:30.788 --> 00:03:33.347 後者はビタミンEとして知られています 00:03:33.347 --> 00:03:37.028 燻煙に含まれる化合物同様 フリーラジカルを吸い取り 00:03:37.028 --> 00:03:39.258 酸化臭を防ぎます 00:03:39.258 --> 00:03:41.228 つまり 油や 00:03:41.228 --> 00:03:42.167 チーズ 00:03:42.167 --> 00:03:44.019 シリアルなどに よく発生する臭いです 00:03:44.119 --> 00:03:47.485 クエン酸やアスコルビン酸など 他の抗酸化物質は 00:03:47.485 --> 00:03:49.718 青果物の切り口の色を保ってくれます 00:03:49.718 --> 00:03:52.768 褐色に変色させる酵素の作用を 阻害するためです 00:03:53.128 --> 00:03:56.448 亜硫酸のような化合物には いくつも機能があります 00:03:56.448 --> 00:03:59.835 抗菌と酸化防止の 両方の作用があるのです 00:04:00.005 --> 00:04:03.369 亜硫酸はアレルギー症状を 引き起こすこともありますが 00:04:03.369 --> 00:04:08.115 酸化防止剤のほとんどは たいてい無害であると見られています 00:04:08.785 --> 00:04:11.419 では私たちは 保存料を 気にするべきなのでしょうか? 00:04:11.419 --> 00:04:14.588 通常 保存料は原材料表示ラベルの 最後のほうに載っていますが 00:04:14.588 --> 00:04:16.779 政府機関が定めた 使用量基準に従っており 00:04:16.779 --> 00:04:19.282 分量が非常に少ないためです 00:04:19.822 --> 00:04:22.748 それでも 中には保存料に 代わる保存方法を求める— 00:04:22.748 --> 00:04:24.430 消費者や会社もあります 00:04:24.840 --> 00:04:29.329 食品に接する酸素を減らすというような 包装の工夫は有効ですが 00:04:29.329 --> 00:04:31.899 何かしら化学に頼らなければ 00:04:31.899 --> 00:04:36.250 日持ちが効く食べ物は ほとんどないものなのです