食べ物は長持ちしません 数日や 早ければ数時間で パンにはカビが生え リンゴの切り口は茶色く変色し マヨネーズには 細菌が繁殖してしまいます でも こういう食品が スーパーの棚に並んでいるときは まず 品質は保たれています 保存料のおかげです では 保存料とは一体 何なのでしょうか? どんな仕組みで食べ物を長持ちさせるのか そもそも安全なのでしょうか 食べ物がいたむ要因は 主に2つあります 微生物と酸化です 細菌やカビなどの微生物は 食べ物に侵入し その栄養分をエサとします 微生物には 食中毒を起こす リステリアやボツリヌス菌から 悪臭、ヌメり、カビの元になり 食べ物を腐らせるものまであります 一方 酸化とは 食べ物の分子に起こる 化学変化のことです 酵素やフリーラジカル(遊離基)が原因で 脂質を劣化させたり リンゴやジャガイモなどの 青果物を褐色に変色させたりします 保存料を使えば どちらのタイプの 品質低下も防ぐことができます 人工冷蔵の技術が発達する前には 食べ物にカビや細菌が はびこりがちでした そこで人は微生物が住みにくい 環境を作る方法を発見しました 例えば 食べ物の酸性度を上げて 微生物の生存に必要な酵素が 分解されるようにしてしまうといった策です 菌の種類によっては 人の役に立つものもあります 何千年にもわたり 人間は 乳酸を生み出す細菌を使って 食べ物の保存をしてきました 乳酸のおかげで 腐りやすい野菜や牛乳が 日持ちのする保存食品になります ヨーロッパのザワークラウト 韓国のキムチ 中東のヨーグルトなどがそうです 更に このような発酵食品を摂ると 消化器官に善玉菌が住み着きます 合成保存料も多くは酸の一種です ドレッシングに含まれる安息香酸 チーズに含まれるソルビン酸 洋菓子やパンに含まれる プロピオン酸などがありますが 安全性はどうなのでしょうか? 一部の研究では 安息香酸から作られた 安息香酸エステルは 多動性行動を起こす一因子であることを 示唆していますが はっきりとした結論は出ていません それ以外では 完全に無害であるといえるようです 微生物に対抗する もう1つの対策は ジャムや肉の塩漬けのように 砂糖や塩を大量に加えるという方法です 砂糖や塩は 微生物が成長するのに 必要な水と結合し 更に 周りにある どんな細胞からも 水分を吸い取り 結果として破壊してしまうのです もちろん 砂糖や塩の摂り過ぎは 心臓病や 糖尿病 高血圧を起こす危険があるため 適度に摂るようにするのが一番です 加工肉によく含まれる 抗菌性の硝酸塩や亜硝酸塩は ボツリヌス中毒症を起こす菌を遠ざけますが 他の健康障害の原因になることがあります 塩漬け肉と癌との関係を示した研究では 保存料が主な原因ではないかと 述べています 一方で 酸化防止効果のある保存料は 食べ物が異臭を放ったり 変色させたりする 化学変化を抑制します 人類は何千年もの間 燻製法で食料保存をしてきました 燻煙に含まれる芳香族化合物に 抗酸化作用があるためです 塩漬けと燻製法の組み合わせは 肉を保存する有効な方法として 冷蔵法が登場する前から使われていました 保存料を使えば食べ物に煙の匂いを付けずに 酸化防止効果が得られます BHTやトコフェロールといった 化合物が使われます 後者はビタミンEとして知られています 燻煙に含まれる化合物同様 フリーラジカルを吸い取り 酸化臭を防ぎます つまり 油や チーズ シリアルなどに よく発生する臭いです クエン酸やアスコルビン酸など 他の抗酸化物質は 青果物の切り口の色を保ってくれます 褐色に変色させる酵素の作用を 阻害するためです 亜硫酸のような化合物には いくつも機能があります 抗菌と酸化防止の 両方の作用があるのです 亜硫酸はアレルギー症状を 引き起こすこともありますが 酸化防止剤のほとんどは たいてい無害であると見られています では私たちは 保存料を 気にするべきなのでしょうか? 通常 保存料は原材料表示ラベルの 最後のほうに載っていますが 政府機関が定めた 使用量基準に従っており 分量が非常に少ないためです それでも 中には保存料に 代わる保存方法を求める— 消費者や会社もあります 食品に接する酸素を減らすというような 包装の工夫は有効ですが 何かしら化学に頼らなければ 日持ちが効く食べ物は ほとんどないものなのです