WEBVTT 00:00:12.163 --> 00:00:16.485 そもそも 外の世界に 色は存在しません 00:00:17.266 --> 00:00:20.394 色は目のある生物の 心の中にだけ存在するものです 00:00:20.426 --> 00:00:22.114 そして外界の映像が 00:00:22.114 --> 00:00:24.664 どう作り上げられるのか まだ十分には分かっていませんが 00:00:25.264 --> 00:00:26.934 自然からすれば問題ではありません 00:00:26.934 --> 00:00:29.261 自然は物事の仕組みを 理解する必要がありません 00:00:29.261 --> 00:00:33.962 ただ試行錯誤やランダムな変異によって 物事を発明し続けているのです 00:00:35.379 --> 00:00:38.518 どうやってこれらの2つの事実に気づき 00:00:38.518 --> 00:00:41.460 バイオミメティクス(生体模倣)を 研究するようになったかお話しします 00:00:41.460 --> 00:00:43.850 自然から学び 着想を得て 産業に応用する分野の研究です 00:00:43.850 --> 00:00:47.352 自然から学び 着想を得て 産業に応用する分野の研究です 00:00:48.512 --> 00:00:50.956 20年前にきっかけとなったのは 00:00:50.956 --> 00:00:55.751 ウミホタル あるいは貝虫と呼ばれる生物を 研究していたときのことです 00:00:57.783 --> 00:01:01.235 トマトの種ほどの大きさの目立たない 生き物で あまり知られていませんが 00:01:01.235 --> 00:01:04.158 オーストラリアの海岸では とてもありふれています 00:01:04.340 --> 00:01:08.168 また 生物発光によっても知られています 00:01:08.261 --> 00:01:11.277 反射できる光が無い闇の中で 光を発するのです 00:01:11.277 --> 00:01:14.052 シドニー近辺の海岸でも夜には見つかります 00:01:14.462 --> 00:01:16.392 この写真のような感じです 00:01:16.753 --> 00:01:18.234 ここまでは良く知られていました 00:01:18.238 --> 00:01:22.413 私の研究は緑の閃光とともに始まったという 話をよくしています 00:01:23.154 --> 00:01:25.397 緑ないし青色の光です 00:01:26.257 --> 00:01:30.553 保存してあったウミホタルを顕微鏡で 観察していたときに 00:01:30.553 --> 00:01:34.028 私が試料をつつきまわすと 青や緑の光が見えたのです 00:01:34.034 --> 00:01:37.672 ウミホタルでは未知のことだったので 何が起きているんだろうと思いました 00:01:38.240 --> 00:01:42.606 それから生きたウミホタルの求愛を ビデオ撮影していると 00:01:42.606 --> 00:01:45.440 この虹色の発光を利用して 00:01:45.443 --> 00:01:47.843 相手を惹きつけていました 00:01:48.443 --> 00:01:52.699 そこで どうなっているのか調べるために 00:01:52.699 --> 00:01:55.139 ウミホタルを電子顕微鏡で 観察してみました 00:01:55.141 --> 00:01:59.134 この写真が触角の表面に見られる 回折格子です 00:01:59.134 --> 00:02:00.394 この写真が触角の表面に見られる 回折格子です 00:02:00.394 --> 00:02:03.465 白色の光から それを構成する色を分離することができます 00:02:04.524 --> 00:02:08.317 回折格子は物理の分野や 産業界でよく目にするものです 00:02:08.317 --> 00:02:10.726 工学的にさまざまに用いられます 00:02:10.906 --> 00:02:13.706 しかしウミホタルや動物一般では 知られていませんでした 00:02:15.116 --> 00:02:17.033 ここで面白いことは 00:02:17.038 --> 00:02:19.817 これが求愛のための ディスプレイに用いられるという点です 00:02:19.825 --> 00:02:21.085 ある機能を有しているので 00:02:21.088 --> 00:02:23.582 進化の結果 極めて効率的になりました 00:02:23.998 --> 00:02:27.168 自然が何百万年もこの進化に携わり 00:02:27.168 --> 00:02:30.286 最適に働くよう 微調整を加えてきました 00:02:30.524 --> 00:02:32.391 私は自分が何を探しているのか 分かりました 00:02:32.391 --> 00:02:35.427 自然界で他のどこに 回折格子はあるのだろうと考え 00:02:35.432 --> 00:02:37.148 あらゆる種類の動物を調べたところ 00:02:37.151 --> 00:02:38.992 様々な種類で見つかりました 00:02:38.997 --> 00:02:40.992 ここに示すような蠕虫(ぜんちゅう)や 00:02:41.001 --> 00:02:45.169 節足動物 ―コシオリエビ科の ロブスターのはさみも 00:02:45.589 --> 00:02:48.911 見る方向ごとに違った色を呈します 00:02:49.124 --> 00:02:51.595 鮮やかで金属光沢のある色で 00:02:51.595 --> 00:02:54.775 ハチドリや甲虫類も同じ色を示します 00:02:56.174 --> 00:02:59.359 これは骨のような構造をしています 00:02:59.380 --> 00:03:02.470 そこで化石の中にも 見つかるのではないかと考えました 00:03:02.830 --> 00:03:03.910 そして確かにありました 00:03:03.910 --> 00:03:05.432 化石を調べてみると 00:03:05.432 --> 00:03:09.364 4500万年前の 石から出てきた甲虫は 00:03:09.364 --> 00:03:12.186 あたかも生きているかのような 00:03:12.186 --> 00:03:14.246 金属的な光沢を示しました 00:03:14.246 --> 00:03:17.585 ここに示した8500万年前の アンモナイトもそうです 00:03:18.455 --> 00:03:20.503 ご覧のように層状の反射体から 00:03:20.503 --> 00:03:22.633 光が反射するのです 00:03:22.633 --> 00:03:26.490 それぞれの層は髪の毛の 100分の1ほどの厚みで 00:03:26.490 --> 00:03:29.980 極めて微細なナノ構造にすぎません 00:03:30.650 --> 00:03:33.641 もっとも古いものはバージェス頁岩の化石で 00:03:33.641 --> 00:03:36.771 5億8百万年前のカンブリア紀の化石です 00:03:37.611 --> 00:03:41.652 そこでこんなことを考えました 色の歴史をここまで辿れたが 00:03:41.886 --> 00:03:44.027 どれほど昔まで遡ることができるのだろう 00:03:44.097 --> 00:03:46.557 地球上で色が登場したのはいつなのか 00:03:46.647 --> 00:03:50.225 こうして 最初に誕生した眼を 探すことにしました 00:03:51.258 --> 00:03:55.126 そして ある種の三葉虫が まさに初期の眼を持っていたことがわかりました 00:03:55.126 --> 00:03:56.521 ここに示すような種類です 00:03:56.521 --> 00:03:59.428 この尾根状の形態の一つが 眼の上を通っています 00:03:59.428 --> 00:04:01.006 実際かなり良い眼で 00:04:01.014 --> 00:04:03.594 今の我々と同じように像を結ぶことができます 00:04:03.594 --> 00:04:07.114 ただこの生物は5億2100万年前に 生きていたものです 00:04:08.945 --> 00:04:12.588 それ以前には視覚は存在せず 色は意味がありませんでした 00:04:13.091 --> 00:04:16.369 色などというものはなく 光の波長だけがありました 00:04:16.396 --> 00:04:18.878 その時代に生きていた生物を見てみると 00:04:18.878 --> 00:04:21.946 三葉虫は固い殻で武装しており 00:04:21.946 --> 00:04:24.376 非常に進んだスタイルの生き物でした 00:04:24.388 --> 00:04:25.547 素早く移動し 00:04:25.552 --> 00:04:27.622 生物を切り裂く固い武器を 備えていました 00:04:27.626 --> 00:04:28.856 捕食者だったのです 00:04:28.856 --> 00:04:31.016 周りの生物を見ることができました 00:04:31.153 --> 00:04:33.942 これより少し前までは すべての生物の体はやわらかく 00:04:33.942 --> 00:04:36.222 三葉虫の祖先もやわらかい生き物でした 00:04:36.222 --> 00:04:38.970 全ての生物は海底をゆっくりと動き回り 周囲にはぶつかるだけでした 00:04:38.970 --> 00:04:42.424 反応しあうことは たいして起こりません 00:04:42.424 --> 00:04:44.222 光センサーはありましたが 00:04:44.222 --> 00:04:46.912 その当時のもっとも進んだ光センサーで 捉えた映像も 00:04:46.912 --> 00:04:49.531 こんな様子だったでしょう 00:04:49.531 --> 00:04:52.811 当時のセンサーで環境を眺めたら 良くてこの程度です 00:04:52.811 --> 00:04:54.224 当時のセンサーで環境を眺めたら 良くてこの程度です 00:04:54.643 --> 00:04:57.219 光がどちらの方向からやってくるか わかるので 00:04:57.219 --> 00:05:00.353 水中でどちらが上でどちらが下かぐらいは わかります 00:05:00.353 --> 00:05:04.187 しかし身の回りの敵も味方もわかりません 00:05:04.187 --> 00:05:07.219 他の生物を特定することはできず 何がいるかも分かりません 00:05:07.334 --> 00:05:11.235 そして 生命の歴史上 最も劇的な出来事が起きたのでしょう 00:05:11.505 --> 00:05:14.709 光センサーが進化してレンズを獲得したのです 00:05:15.309 --> 00:05:19.022 像が眼底に投影されるようになりました 00:05:19.422 --> 00:05:21.722 地球で初めての像です 00:05:21.722 --> 00:05:23.868 こんな世界が見えたのでしょう 00:05:23.868 --> 00:05:26.003 周りの生物が全て見えます 00:05:26.003 --> 00:05:27.953 餌になりそうな生物を見分けられます 00:05:28.362 --> 00:05:32.565 すると 選択圧つまり淘汰圧が その動物にはたらいて 00:05:32.565 --> 00:05:34.945 行きたいところへ泳げるような運動器官や 00:05:34.945 --> 00:05:36.673 餌を食いちぎるための固い器官を獲得し 00:05:36.673 --> 00:05:39.153 体の柔らかい動物を全て 餌とするようになります 00:05:39.153 --> 00:05:42.703 要するに食べられるのを待っている タンパク質の塊というわけです 00:05:42.773 --> 00:05:44.973 このことがカンブリア紀の生物大爆発という 00:05:44.973 --> 00:05:46.217 進化のビッグバンを促し 00:05:46.220 --> 00:05:48.364 ここであらゆる生物が 蠕虫やクラゲのような軟体から進化して 00:05:48.369 --> 00:05:49.859 ここであらゆる生物が 蠕虫やクラゲのような軟体から進化して 00:05:50.193 --> 00:05:53.677 今 目にするような 様々な体を持ち 00:05:53.687 --> 00:05:55.277 様々な行動をするようになりました 00:05:55.277 --> 00:05:57.276 生命は突然複雑になりました 00:05:57.276 --> 00:06:00.236 世界に視覚が与えられ それは今も残っています 00:06:00.516 --> 00:06:03.588 今では 95%の動物が目を持っています 00:06:03.588 --> 00:06:05.965 視覚は地上で最も強力な刺激です 00:06:05.965 --> 00:06:08.426 どこに行っても そのイメージを網膜に写し取ります 00:06:08.426 --> 00:06:11.196 そうなると 動物は適応しなければなりません 00:06:11.196 --> 00:06:14.502 いつ何時でも捕食者に捕らえられる 可能性が出てきたのです 00:06:15.042 --> 00:06:21.023 進化によるデザインプロセスは 00:06:21.053 --> 00:06:24.673 何兆ものDNAの鎖の変異の中から 00:06:24.693 --> 00:06:28.733 無限の組み合わせを試して 新しい色を作り出してきました 00:06:29.543 --> 00:06:32.701 何百万年もかけた取り組みです 00:06:32.711 --> 00:06:35.823 何億年もかけて最適な色を作り出してきました 00:06:36.333 --> 00:06:38.803 産業的な設計だったら 新しい色を開発するのに 00:06:38.806 --> 00:06:40.246 1年もあれば恵まれています 00:06:40.911 --> 00:06:44.411 それなら 自然界を探して 何かコピーできるものがあるかどうか 00:06:44.411 --> 00:06:46.263 見てみようじゃないですか 00:06:46.273 --> 00:06:49.258 その色が生じる仕組みが分からなくても 00:06:49.261 --> 00:06:50.584 それは問題ではありません 00:06:50.591 --> 00:06:54.413 自然の中にあるナノ構造を ただ模倣すれば良いのです 00:06:54.413 --> 00:06:56.623 そうすれば同じ色が手に入るでしょう 00:06:57.193 --> 00:07:01.334 結局 どちらも目指すゴールは同じです 00:07:01.485 --> 00:07:03.345 視覚に及ぼす効果です 00:07:03.436 --> 00:07:05.559 まず 産業の面から考えてみましょう 00:07:05.560 --> 00:07:07.505 どんな種類の色がお望みでしょうか 00:07:07.505 --> 00:07:10.626 暗いところでも鮮やかに目立つ色で 00:07:10.626 --> 00:07:13.866 陽の光が無くても光を生じるタイプは いかがですか 00:07:14.646 --> 00:07:16.530 例えばケミカルライトとして 00:07:16.530 --> 00:07:20.480 あるいは農業分野での応用もあります 00:07:20.480 --> 00:07:23.513 作物がウイルスに感染すると 夜になって光を放ち 00:07:23.516 --> 00:07:26.542 どこが感染しているかを 農家に伝えることができます 00:07:26.542 --> 00:07:29.669 私たちが生体発光の材料で 取り組んでいることです 00:07:30.169 --> 00:07:34.658 生体発光では2種類の化学物質が 有酸素の条件で相互作用して 00:07:34.728 --> 00:07:36.794 その際の副産物として光を生じます 00:07:36.924 --> 00:07:38.439 これは大変効率的な光です 00:07:38.439 --> 00:07:41.049 ほとんどすべてのエネルギーが光に変換され 00:07:41.099 --> 00:07:44.023 たとえば白熱電球と違って 熱はほとんど生じません 00:07:45.311 --> 00:07:49.948 生物発光はホタルなど発光性の生物が 光を出す仕組みです 00:07:49.948 --> 00:07:51.588 深海ではありふれた現象で 00:07:51.588 --> 00:07:55.452 深海生物の90パーセント以上は 生物発光をします 00:07:55.461 --> 00:07:57.690 産業界は色素を求めているでしょうか? 00:07:57.690 --> 00:08:02.458 これは自然界ではありふれたもので たとえばこのミルクスネークにも色素があります 00:08:02.482 --> 00:08:06.824 この場合にはオレンジ色の色素です 00:08:06.824 --> 00:08:11.786 ここで何が起きているかというと あらゆる波長の光を含む白色光が 00:08:11.786 --> 00:08:14.096 色素分子にあたります 00:08:14.096 --> 00:08:17.294 大半の波長は吸収されて熱に変換されますが 00:08:17.795 --> 00:08:20.621 吸収されなかった残りのエネルギーが 00:08:20.621 --> 00:08:23.535 逆向きの反射や散乱によって 周りに放出されます 00:08:23.535 --> 00:08:25.393 その色が見えるわけです 00:08:25.523 --> 00:08:28.576 また自然が産業界に色素を提供する 別の方法もあります 00:08:28.576 --> 00:08:31.526 それは色素胞あるいは色素細胞と 呼ばれるものです 00:08:31.888 --> 00:08:34.115 これは拡大したり縮小したりできる細胞で 00:08:34.115 --> 00:08:35.712 色素をたくさん含んでいます 00:08:35.880 --> 00:08:37.100 これが広がると 00:08:37.100 --> 00:08:40.179 画素として見えるほど大きくなり 00:08:40.179 --> 00:08:42.597 これが縮むと 見えなくなります 00:08:42.988 --> 00:08:47.908 カメレオンやコウイカなどイカの仲間が 色を変える仕組みです 00:08:47.908 --> 00:08:51.378 赤や青や緑の色素胞を並べて 00:08:51.378 --> 00:08:55.558 これを拡張させたり縮小させたりすれば どんな所望の色でも作れるでしょう 00:08:55.834 --> 00:08:57.989 今 ジョージア工科大と共同で 00:08:57.989 --> 00:09:00.768 色変化をする表面と材料を研究しています 00:09:00.768 --> 00:09:03.458 例えば迷彩色として役立つでしょう 00:09:03.588 --> 00:09:06.638 また多く見つかる蛍光色素も 00:09:06.638 --> 00:09:08.350 産業界に提供できるでしょう 00:09:08.350 --> 00:09:11.740 例えばオーストラリアのインコの 蛍光色素を見てみましょう 00:09:12.860 --> 00:09:15.905 こちらはキバタンの冠羽で蛍光を発します 00:09:15.905 --> 00:09:17.298 こちらはキバタンの冠羽で蛍光を発します 00:09:17.811 --> 00:09:21.781 黄色の色素を示した写真と 蛍光だけを示した写真です 00:09:21.781 --> 00:09:24.630 黄色の色素を示した写真と 蛍光だけを示した写真です 00:09:24.630 --> 00:09:27.301 どういうことかというと 蛍光もまた黄色で 00:09:27.303 --> 00:09:30.898 黄色の色素の効果を増強しているのです 00:09:30.907 --> 00:09:35.533 蛍光を示す羽根と示さない羽根とが あることがわかりました 00:09:35.540 --> 00:09:36.950 蛍光を示す羽根と示さない羽根とが あることがわかりました 00:09:36.950 --> 00:09:39.010 求愛行動で使われる羽根 00:09:39.010 --> 00:09:41.838 つまり羽根飾りの部分で メスにアピールするのですが 00:09:41.838 --> 00:09:44.344 この羽根には蛍光色素があります 00:09:44.353 --> 00:09:47.150 つまり偶然によって 黄色の蛍光を発するのではありません 00:09:47.150 --> 00:09:48.547 ここには進化がはたらいていて 00:09:48.551 --> 00:09:51.770 極めて効率良く黄色の光を 発するようになっているのです 00:09:52.950 --> 00:09:57.260 蛍光は原子レベルの機構によるもので 00:09:57.642 --> 00:10:01.253 紫外線を含んだ白色光が来たときに生じます 00:10:01.852 --> 00:10:04.231 紫外線は目に見えませんが 00:10:04.245 --> 00:10:08.802 色素分子に吸収されて 長い波長の光が返ってくるのです 00:10:08.811 --> 00:10:12.630 紫外線の持っている 大きなエネルギーの一部を使って 00:10:12.638 --> 00:10:16.651 電子は より外側の軌道に移ります 00:10:16.651 --> 00:10:18.372 すぐに電子は元の軌道に落ちてきますが 00:10:18.392 --> 00:10:20.842 そのときにエネルギーを光として放射します 00:10:20.842 --> 00:10:23.683 一部は熱として失われるので エネルギーは小さくなり 00:10:23.684 --> 00:10:26.592 波長の長い光 例えば黄色の光が出てきます 00:10:26.592 --> 00:10:29.044 目に見えない紫外線から 00:10:29.046 --> 00:10:30.873 目に見える黄色の光になるのです 00:10:30.873 --> 00:10:34.824 さて 次は私の好きなテーマの 構造色です 00:10:34.824 --> 00:10:37.982 自然のナノテクノロジーと 言ってもよいでしょう 00:10:38.603 --> 00:10:43.645 これは完全に透明な物質で作られた 物理的な構造です 00:10:43.645 --> 00:10:46.825 ナノスケールの構造が重要で 00:10:46.825 --> 00:10:49.554 これでどんな色が反射されるか 00:10:49.554 --> 00:10:52.634 あるいはどんな光の効果が生じるかが 決まります 00:10:52.634 --> 00:10:55.869 これはシドニーの海辺で見つかる 00:10:55.869 --> 00:10:59.963 コガネウロコムシのトゲです 00:11:00.253 --> 00:11:04.154 奇妙な恰好の動物で 小さな虹色のマウスにも見えます 00:11:04.224 --> 00:11:05.764 しかしこれは海の生き物で 00:11:05.764 --> 00:11:07.874 虹色のトゲに覆われています 00:11:07.874 --> 00:11:09.413 このトゲの断面を見ると 00:11:09.419 --> 00:11:11.558 これらのナノチューブが 00:11:11.558 --> 00:11:14.598 フォトニック結晶の線維と なっていることが分かります 00:11:15.297 --> 00:11:19.105 物理の分野でフォトニック結晶が 発見されたのは1980年代ですが 00:11:19.120 --> 00:11:22.612 それ以来 さまざまな技術に応用されてきました 00:11:22.614 --> 00:11:25.146 未来のコンピューターは 電子素子の代わりに 00:11:25.152 --> 00:11:27.854 光素子を使って 革命をもたらすことでしょう 00:11:28.132 --> 00:11:30.335 このタイプのフォトニック結晶は すでに通信産業で使われています 00:11:30.335 --> 00:11:33.402 このタイプのフォトニック結晶は すでに通信産業で使われています 00:11:34.604 --> 00:11:37.484 しかし自然が行ったデザインには 物理学で未知のものがあり 00:11:37.484 --> 00:11:40.208 どういう仕組みか その物理が完全にはわかっていません 00:11:40.208 --> 00:11:43.864 とりあえず 自然が作った物を真似すれば良いのです 00:11:43.864 --> 00:11:45.644 これは私が見つけたのではありません 00:11:45.644 --> 00:11:48.175 自然界で見つかった最初のフォトニック結晶は 00:11:48.175 --> 00:11:50.948 私が2000年に見つけました 00:11:50.958 --> 00:11:53.058 もしもっと早くから自然界を 調べ始めていたら 00:11:53.058 --> 00:11:55.475 ずいぶんと時間を節約できたかもしれません 00:11:57.262 --> 00:12:00.667 蝶もフォトニック結晶の良い例です 00:12:00.667 --> 00:12:04.375 蝶の羽根には10万枚もの鱗粉が 00:12:04.375 --> 00:12:06.335 屋根の瓦のように並んでいます 00:12:06.485 --> 00:12:08.977 それぞれの鱗粉はナノ構造でできていて 00:12:08.978 --> 00:12:11.858 光の波とさまざまな相互作用を示します 00:12:12.625 --> 00:12:14.613 スライドでは 00:12:14.619 --> 00:12:19.558 この鱗粉の詳細を捉えた 電子顕微鏡の画像をお見せします 00:12:19.857 --> 00:12:22.687 これもまた 髪の毛の100分の1サイズです 00:12:22.707 --> 00:12:24.998 これらの構造の多様性は 00:12:24.998 --> 00:12:27.998 建物の形のように多種多様です 00:12:27.998 --> 00:12:31.948 光の波長程度のサイズの ナノスケールの構造によって 00:12:32.552 --> 00:12:35.208 光学的な効果が変わります 00:12:36.402 --> 00:12:39.818 さまざまな構造体によって 別の色を生じたり 00:12:39.818 --> 00:12:44.013 その色の変化の仕方が違ったりします 00:12:44.019 --> 00:12:45.960 この鱗粉を違った角度から見ると 00:12:45.971 --> 00:12:48.932 色が変化する構造も 一定の色が見える構造もあります 00:12:48.940 --> 00:12:52.632 彩度の高い鱗粉も 濁った色の鱗粉もあります 00:12:57.760 --> 00:13:01.441 フォトニック結晶の良い例はオパールです 00:13:01.571 --> 00:13:05.841 左上の写真は宝石のオパールです 00:13:06.101 --> 00:13:09.902 オパールにはナノサイズの球体が 詰まっています 00:13:09.906 --> 00:13:11.612 ぎっしりと詰まっています 00:13:11.616 --> 00:13:12.951 入ってきた光線は 00:13:12.953 --> 00:13:16.200 この構造の中であちこちで反射し 互いに作用して 00:13:16.204 --> 00:13:18.138 虹色の光を生み出します 00:13:19.224 --> 00:13:24.530 2005年には 面白いことに ゾウムシでオパール構造を見つけました 00:13:24.530 --> 00:13:26.973 生物がオパールを作るのです 00:13:27.543 --> 00:13:30.549 オパールも多くの応用技術で使われます 00:13:30.551 --> 00:13:32.509 例えばコンピューターの素子です 00:13:32.511 --> 00:13:35.160 工業的にはエネルギーを たくさん費やして製造します 00:13:35.180 --> 00:13:37.620 高温と高圧が必要なのです 00:13:37.620 --> 00:13:42.553 しかし自然界の動物は 室温と常圧でこれを作っています 00:13:43.221 --> 00:13:45.320 魔法のように化学材料を混ぜ合わせると 00:13:45.326 --> 00:13:48.835 とてもわずかなエネルギー消費で この完璧なオパール構造ができるのです 00:13:48.844 --> 00:13:51.231 今私たちもこれを目指しています 00:13:51.234 --> 00:13:53.677 生きたゾウムシの鱗粉を観察して 00:13:53.680 --> 00:13:56.430 この素子がどうやって作られるのか 00:13:56.457 --> 00:13:59.588 そしてその仕組みをまねて 工業的に使えないか 研究しています 00:14:02.301 --> 00:14:05.577 また自然の光学素子の中には まったく色を生じないものもあります 00:14:05.582 --> 00:14:06.862 それどころか あらゆる反射を防ぎ 00:14:06.870 --> 00:14:08.960 それどころか あらゆる反射を防ぎ 00:14:09.062 --> 00:14:11.310 全ての光が表面を透過するようにします 00:14:11.310 --> 00:14:14.460 この琥珀の中から見つかった 4500万年前のハエの眼の構造がそうです 00:14:14.460 --> 00:14:15.970 この琥珀の中から見つかった 4500万年前のハエの眼の構造がそうです 00:14:15.970 --> 00:14:18.212 電子顕微鏡で捉えた微細構造は 00:14:18.212 --> 00:14:21.200 写真で見えるか見えないかの 非常に細い縞模様です 00:14:21.200 --> 00:14:25.840 この構造を右下の写真のように アクリル樹脂の表面に作りました 00:14:25.850 --> 00:14:28.052 中央部には この構造が作られているのです 00:14:28.052 --> 00:14:30.710 反射が低減していることがわかります 00:14:30.710 --> 00:14:34.090 光が反射されないで すべて透過するのです 00:14:34.096 --> 00:14:35.986 これでガラス窓を処理すれば 00:14:35.991 --> 00:14:38.393 自分の姿が写り込んだりしません 00:14:38.406 --> 00:14:42.963 また太陽電池パネルを処理すれば エネルギー効率が10パーセント向上します 00:14:45.532 --> 00:14:46.808 さて数年前に 00:14:46.815 --> 00:14:50.193 生体模倣分野の狙いを 光学や色だけでなく 00:14:50.193 --> 00:14:51.618 他の分野に広げ始めました 00:14:51.618 --> 00:14:55.978 甲虫やシャコ類の持つ強い材料 00:14:56.208 --> 00:14:58.973 水中でも機能する接着剤とか 00:14:58.973 --> 00:15:03.623 自然の動物や植物に基づいた建物 00:15:04.096 --> 00:15:07.334 アリ塚に見られるような ほとんどエネルギーの要らない空調システムは 00:15:07.336 --> 00:15:08.546 アリ塚に見られるような ほとんどエネルギーの要らない空調システムは 00:15:08.546 --> 00:15:10.079 ビルで使えます 00:15:10.738 --> 00:15:13.738 水の問題も私を捕らえました 00:15:13.738 --> 00:15:14.950 手短に話します 00:15:14.970 --> 00:15:17.752 例えばナミブ砂漠の 甲虫(サカダチゴミムシダマシ)は 00:15:17.752 --> 00:15:21.140 砂漠の霧から水を集める実に効率的な構造を 持っていることを見つけました 00:15:21.140 --> 00:15:23.461 この構造は空調機に用いられ 00:15:23.461 --> 00:15:26.111 水分を取り出してリサイクルするために 使われています 00:15:26.111 --> 00:15:27.511 自然が教えてくれたことは 00:15:27.511 --> 00:15:31.631 空中の水という水源があり 00:15:31.631 --> 00:15:34.441 砂漠の動物や植物は それを利用しているということです 00:15:34.441 --> 00:15:38.183 この技術については MIT と共同研究しており 00:15:38.195 --> 00:15:42.428 もうじき最初の装置をアフリカに届けて 00:15:42.445 --> 00:15:46.639 飲料水や医療用の水を 集められるようになるでしょう 00:15:48.182 --> 00:15:51.761 残念ながら今後の計画について 詳細をお話しすることはできませんが 00:15:51.761 --> 00:15:55.063 来年には 大変おもしろいものが 登場するはずです 00:15:55.160 --> 00:15:58.240 この研究分野についてご紹介してきました 00:15:58.240 --> 00:15:59.811 全ての始まりは と言えば 00:15:59.819 --> 00:16:02.955 5億2千万年前のできごとだったのです 00:16:03.246 --> 00:16:04.437 ありがとうございました 00:16:04.441 --> 00:16:06.803 (拍手)