WEBVTT

00:00:00.726 --> 00:00:03.416
我々は人類史の分岐点にいて

00:00:03.416 --> 00:00:08.943
新たな星を手に入れるか 
故郷の星を失うかの間で揺れています

NOTE Paragraph

00:00:09.332 --> 00:00:11.212
ほんのこの数年だけでも

00:00:11.212 --> 00:00:16.392
宇宙における地球の位置づけについて
私たちの知識は大きく広がりました

00:00:16.392 --> 00:00:18.090
NASAのケプラー計画で

00:00:18.090 --> 00:00:21.839
他の恒星系の惑星候補が
何千も見つかり

00:00:21.839 --> 00:00:26.273
地球はこの銀河系にある何十億という惑星の
１つにすぎないことを示唆しています

00:00:26.273 --> 00:00:28.013
ケプラーというのは宇宙望遠鏡で

00:00:28.013 --> 00:00:32.653
恒星の前を惑星が横切る際に
光が遮られることで起きる

00:00:32.653 --> 00:00:35.502
星の明るさの微妙な変化を
観測しています

00:00:35.732 --> 00:00:37.072
ケプラーのデータは

00:00:37.072 --> 00:00:40.958
惑星の大きさや
その親星(恒星)までの距離を明らかにし

00:00:40.958 --> 00:00:42.758
それによって その惑星が

00:00:42.758 --> 00:00:45.793
岩石で出来た小型の
地球型惑星なのかどうか

00:00:45.793 --> 00:00:51.079
また どれほどの光を親星である太陽から
受けているのかが分かります

00:00:51.079 --> 00:00:54.957
これは その惑星が
居住に適しているかの

00:00:54.957 --> 00:00:57.418
ヒントを与えてくれます

NOTE Paragraph

00:00:57.418 --> 00:00:58.631
残念なことに

00:00:58.631 --> 00:01:03.344
居住可能かもしれない世界の
宝の山が発見されている一方で

00:01:03.344 --> 00:01:07.054
我々自身の惑星は
人類の重みによって疲弊しています

00:01:07.054 --> 00:01:11.466
2014年は 観測史上
最も暑い年でした

00:01:11.466 --> 00:01:14.809
悠久の時を我々と共にあった
氷河や海氷が

00:01:14.809 --> 00:01:17.944
ほんの数十年で
消失しています

00:01:17.944 --> 00:01:22.305
我々が引き起こしている
この惑星規模の環境変化は

00:01:22.305 --> 00:01:26.527
我々には軌道修正できないほど
急速に進行しつつあります

NOTE Paragraph

00:01:27.347 --> 00:01:31.062
しかし私は気象学者ではなく
天文学者です

00:01:31.062 --> 00:01:34.432
私は惑星の居住適性を
研究していて

00:01:34.432 --> 00:01:37.670
地球外で生命の
存在しうる惑星を

00:01:37.670 --> 00:01:39.862
見つけようとしています

00:01:39.862 --> 00:01:43.402
異星で良い物件探しをしている
と言ったところです

NOTE Paragraph

00:01:43.902 --> 00:01:48.244
宇宙の生命の探索に深く関わる者として
私に言えるのは

00:01:48.244 --> 00:01:51.361
地球のような惑星を
探せば探すほど

00:01:51.361 --> 00:01:55.257
地球の有り難みを
強く感じるということです

00:01:55.257 --> 00:01:57.949
新しい惑星が
見つかるごとに

00:01:57.949 --> 00:01:59.212
その惑星と

00:01:59.212 --> 00:02:03.202
我々の一番良く知る
太陽系の惑星の比較を促されます

NOTE Paragraph

00:02:03.202 --> 00:02:05.644
お隣りさんである
火星を考えてみましょう

00:02:05.644 --> 00:02:09.518
火星は岩石でできた小型の惑星で 
太陽から少し遠いですが

00:02:09.518 --> 00:02:10.834
ケプラーで見つかれば

00:02:10.834 --> 00:02:13.936
居住可能性ありと判断される
タイプの惑星です

00:02:13.936 --> 00:02:17.303
実際 火星は過去に
居住可能だった可能性があり

00:02:17.303 --> 00:02:20.740
これまで火星の調査が
数多く行われてきたのもそれが理由です

00:02:20.740 --> 00:02:22.430
キュリオシティのような
探査ローバーが

00:02:22.430 --> 00:02:27.120
生命の起源の痕跡を探して
火星表面を走り回り

00:02:27.120 --> 00:02:30.886
MAVEN のような探査機は
火星大気のサンプルを採取し

00:02:30.886 --> 00:02:34.578
火星が住めない環境になった理由を
解明しようとしています

00:02:34.578 --> 00:02:39.143
民間の宇宙旅行会社は
地球周辺の短期間の旅行だけでなく

00:02:39.143 --> 00:02:42.844
魅惑的な火星での生活の可能性まで
提示しています

NOTE Paragraph

00:02:42.844 --> 00:02:44.794
火星の光景は

00:02:44.794 --> 00:02:47.349
地球上の砂漠を思わせ

00:02:47.349 --> 00:02:52.921
開拓者や新世界といったイメージを
喚起するにしても

00:02:52.921 --> 00:02:54.513
地球と比べたら

00:02:54.513 --> 00:02:57.140
火星は住むには
ひどい場所です

00:02:57.140 --> 00:02:59.474
考えてみてください

00:02:59.474 --> 00:03:02.408
地球には 人の住まない
砂漠が広がっていますが

00:03:02.408 --> 00:03:05.361
それでさえ 火星と比べたら
豊かなものです

00:03:05.361 --> 00:03:08.777
地球上で最も乾燥し
最も高地にある場所でも

00:03:08.777 --> 00:03:12.707
何千キロも離れた熱帯雨林の
もたらす酸素に満ちた

00:03:12.707 --> 00:03:15.374
濃くておいしい空気があります

NOTE Paragraph

00:03:15.374 --> 00:03:20.388
火星やその他の惑星に植民するという
バラ色のアイデアが投げかける

00:03:20.388 --> 00:03:24.049
長く暗い影を
私は懸念しています

00:03:24.049 --> 00:03:26.909
我々の知る唯一
本当に居住可能な惑星に

00:03:26.909 --> 00:03:30.262
自ら招いた破滅から
火星が人類を救ってくれる

00:03:30.262 --> 00:03:34.135
そんな思い込みが どんな結果を
もたらすことになるのか

00:03:34.135 --> 00:03:36.573
惑星間探査は好きですが

00:03:36.573 --> 00:03:38.918
そういう考えには
まったく反対です

00:03:38.918 --> 00:03:41.611
火星に行くべき素晴らしい理由が
たくさんあるとしても

00:03:41.611 --> 00:03:45.025
人類の待避場所として
火星があると言うのは

00:03:45.025 --> 00:03:48.133
タイタニック号の船長が
本当のパーティーは

00:03:48.133 --> 00:03:50.714
後で救命ボートで行われますと
言うようなものです

00:03:50.714 --> 00:03:53.453
(笑)

00:03:53.453 --> 00:03:56.355
(拍手)

NOTE Paragraph

00:03:56.355 --> 00:03:59.142
どうも

NOTE Paragraph

00:03:59.142 --> 00:04:01.958
惑星間探査と惑星保護は

00:04:01.958 --> 00:04:04.839
対極にあるものではなく

00:04:04.839 --> 00:04:07.640
むしろ１つの目的の
表と裏なのです

00:04:07.640 --> 00:04:11.982
未来に向けて生命を理解し
保護し 改善するということです

00:04:11.982 --> 00:04:16.045
地球上で最も苛酷な環境は
異星の光景のようで

00:04:16.045 --> 00:04:17.926
ただ 近くにある
というだけです

00:04:17.926 --> 00:04:21.235
その居住に適さない
荒涼とした地に

00:04:21.235 --> 00:04:25.495
居住可能な空間を作り
維持する方法が分かれば

00:04:25.495 --> 00:04:28.142
それは地球環境の保護にも

00:04:28.142 --> 00:04:31.161
他の惑星への進出にも
役立てられます

NOTE Paragraph

00:04:31.161 --> 00:04:33.221
最後にフェルミの
パラドックスという

00:04:33.221 --> 00:04:35.166
思考実験の話をしましょう

00:04:35.166 --> 00:04:39.088
ずっと以前に物理学者の
エンリコ・フェルミは問いました

00:04:39.088 --> 00:04:41.635
宇宙は長らく存在し

00:04:41.635 --> 00:04:45.405
たくさんの惑星がある
と考えられるので

00:04:45.405 --> 00:04:48.763
地球外生命の証拠が見つかっていても
良さそうなものだが

00:04:48.763 --> 00:04:50.676
それはどこにあるのか？

00:04:50.676 --> 00:04:54.043
フェルミのパラドックスへの
考えられる答えの１つは

00:04:54.043 --> 00:04:56.486
他の恒星系に
進出しようとするほど

00:04:56.486 --> 00:04:59.848
技術的に進歩した文明は

00:04:59.848 --> 00:05:03.832
その発展をそもそも育んでくれた
故郷を守ることの重要性を

00:05:03.832 --> 00:05:06.860
見失っていく というものです

00:05:06.860 --> 00:05:09.178
他の惑星への植民だけで

00:05:09.178 --> 00:05:13.129
自ら招いた破滅から人類を救える
などと考えるのは傲慢です

00:05:13.129 --> 00:05:16.658
しかし惑星保護と
惑星間探査を

00:05:16.658 --> 00:05:18.552
ともに進めることは
可能なのです

NOTE Paragraph

00:05:18.552 --> 00:05:22.405
もし人類が 火星の苛酷な環境を
住めるように変えられると

00:05:22.405 --> 00:05:24.181
本当に思っているなら

00:05:24.181 --> 00:05:27.107
まず地球の可住性を
維持するという

00:05:27.107 --> 00:05:29.940
はるかに容易な課題を
克服すべきでしょう

NOTE Paragraph

00:05:29.940 --> 00:05:30.986
ありがとうございました

NOTE Paragraph

00:05:30.996 --> 00:05:37.516
(拍手)