WEBVTT 00:00:18.616 --> 00:00:22.576 こんにちは しばらくの間 私の言う通りにしてください 00:00:22.576 --> 00:00:24.246 目を閉じて 楽な姿勢で 00:00:24.696 --> 00:00:26.106 椅子にかけてください 00:00:26.146 --> 00:00:27.756 次に 00:00:27.756 --> 00:00:30.936 美術館に関わる最初の思い出を 心に浮かべてください 00:00:31.206 --> 00:00:33.476 何を思い出しますか 00:00:34.256 --> 00:00:35.593 美術館の建物でしょうか 00:00:35.916 --> 00:00:37.478 その建築様式でしょうか 00:00:37.866 --> 00:00:40.086 一緒に行った人でしょうか 00:00:40.176 --> 00:00:41.720 展示物でしょうか 00:00:41.787 --> 00:00:45.516 私の話の間 その思い出を 頭の片隅に置いておいてください 00:00:45.516 --> 00:00:47.386 また後で その話をしましょう 00:00:47.396 --> 00:00:49.719 さて 目を開けてください 00:00:51.226 --> 00:00:53.076 最初に私が美術館に 恋したのは 00:00:53.076 --> 00:00:54.306 子供の頃のことです 00:00:54.306 --> 00:00:56.866 父は 双子の私たちを ミズーリ州カンザスシティの 00:00:56.866 --> 00:01:00.556 ネルソン・アトキンス美術館に よく連れて行ってくれました 00:01:00.556 --> 00:01:02.286 家族が無料になる日のことでした 00:01:02.296 --> 00:01:04.956 車の後部座席に座って 00:01:04.956 --> 00:01:06.966 広場を通りすぎたことを覚えています 00:01:07.386 --> 00:01:09.326 父が車を運転している間 00:01:09.326 --> 00:01:11.546 私は彫刻庭園を見ていました 00:01:11.686 --> 00:01:13.396 私はとてもワクワクしていました 00:01:13.396 --> 00:01:15.756 なぜなら 何が起こるかを知っていたからです 00:01:16.246 --> 00:01:19.206 父が駐車スペースを探している間 00:01:19.266 --> 00:01:21.436 その興奮はますます高まりました 00:01:22.136 --> 00:01:26.186 ロダンの『考える人』が 美術館の外に座っているのを見ました 00:01:26.186 --> 00:01:28.316 彼は 頬杖をついていて 00:01:28.456 --> 00:01:32.206 集中しているため筋肉は緊張し 膝に肘をついています 00:01:32.324 --> 00:01:34.594 そして 私たちは 『考える人』を通り過ぎ 00:01:34.596 --> 00:01:36.856 美しい列柱の下を通って 00:01:36.856 --> 00:01:39.826 誘われるようにして 入口の扉をくぐったのです 00:01:40.606 --> 00:01:42.866 それから かなりの時間 美術館にいたと思います 00:01:42.866 --> 00:01:44.396 というのも 00:01:44.396 --> 00:01:46.506 私が 美術館に詳しくなって 00:01:46.506 --> 00:01:49.416 本当に美しい作品を見つけたことを 覚えているからです 00:01:49.416 --> 00:01:53.166 その一つが ヤン・ファン・ハイスムの 花を描いた静物画です 00:01:53.166 --> 00:01:55.756 これは死を考えさせる絵で タイトルは 『花』です 00:01:55.756 --> 00:01:58.846 私はこんな風に考えました そこにずっと立っていられたら 00:01:58.846 --> 00:02:01.466 ハチがブンブンうなる音が聞こえ 00:02:01.486 --> 00:02:03.876 柔らかい花びらに 触れられるようになり 00:02:03.896 --> 00:02:05.296 そのうち 00:02:06.536 --> 00:02:08.886 花の香りまで 嗅げるかもしれないって 00:02:09.756 --> 00:02:12.536 他にも カラヴァッジョの 『荒野の洗礼者聖ヨハネ』の 00:02:12.536 --> 00:02:15.576 完璧な美しさを覚えています 00:02:15.576 --> 00:02:19.816 そして 彼の肌や髪 赤いマントの 柔らかな質感や 00:02:19.816 --> 00:02:23.186 足の爪の間に入っている泥を 思い浮かべます 00:02:23.186 --> 00:02:24.986 そんなことを思い出すのです 00:02:25.076 --> 00:02:29.236 思い返してみると 信じられないことに 00:02:29.256 --> 00:02:32.626 私は 作品が私のためだけに 飾られていると思ったのです 00:02:32.626 --> 00:02:34.036 私は6歳の女の子でした 00:02:34.036 --> 00:02:36.626 そんな私だけのために 飾られたと思ったのです 00:02:37.046 --> 00:02:40.616 今までに 私は美術館で 20年間働いてきました 00:02:40.616 --> 00:02:43.436 皆さんが 互いに知り合ったり 00:02:43.436 --> 00:02:46.416 美術や文化に触れ合ったりする 機会を作っています 00:02:46.416 --> 00:02:48.466 人が美術館に 行きたいと思う理由を 00:02:48.466 --> 00:02:50.376 私はたくさん思い浮かべられます 00:02:50.376 --> 00:02:52.896 同様に 人が美術館に 行きたくない理由も 00:02:52.896 --> 00:02:54.436 かなりたくさん考えつきます 00:02:54.496 --> 00:02:57.006 私は 21世紀に美術館で 00:02:57.006 --> 00:02:59.176 何が起こるかに興味があります 00:03:00.336 --> 00:03:02.246 ここで 皆さんに質問があります 00:03:02.446 --> 00:03:04.126 よく アメリカの美術館は 00:03:04.126 --> 00:03:06.756 他の2種類の施設と比べられます 00:03:06.886 --> 00:03:08.476 何だと思いますか? 00:03:08.486 --> 00:03:10.521 大きな声で言ってみてください 00:03:12.336 --> 00:03:13.566 観客: 銀行 00:03:13.566 --> 00:03:17.396 ダナ: 銀行 なるほど 何か他にありませんか 00:03:17.566 --> 00:03:19.336 観客: 図書館 00:03:19.336 --> 00:03:22.416 ダナ: 図書館ですね 教会と図書館がそうです 00:03:23.056 --> 00:03:25.206 このことは大きな意味があります 00:03:25.476 --> 00:03:28.836 これら3つはどれも 文化の集積地です 00:03:28.836 --> 00:03:31.186 それぞれに専門があり 00:03:31.186 --> 00:03:34.946 私達が探している感動と知識を 持っているのです 00:03:36.276 --> 00:03:38.586 これらの施設は 私たちの文化の豊かさを 00:03:38.586 --> 00:03:41.956 知性的に 精神的に そして創造的に 象徴しているのです 00:03:41.986 --> 00:03:45.786 しかし かなり多くの人にとって これらの施設は 退屈で 00:03:46.196 --> 00:03:49.606 変化がなく 静かな場所です 00:03:49.886 --> 00:03:51.446 私たちは皆 規則を知っています 00:03:51.466 --> 00:03:52.761 「話さないでください」 00:03:53.056 --> 00:03:54.259 「触らないでください」 00:03:54.416 --> 00:03:55.745 「飲食禁止」 00:03:56.026 --> 00:03:57.066 「撮影禁止」 00:03:57.066 --> 00:03:59.356 もっと言えますが やめておきます 00:04:00.022 --> 00:04:02.666 このような規則があるのには 理由があります 00:04:02.666 --> 00:04:03.856 作品を守って 00:04:03.856 --> 00:04:06.466 全てをよい状態に しておかなければなりません 00:04:06.666 --> 00:04:11.086 しかし これらの規則は 皆さんを遠ざけてしまいます 00:04:11.436 --> 00:04:13.016 これも もっともなことです 00:04:13.016 --> 00:04:15.926 美術館は アメリカにおいてでさえ 00:04:15.926 --> 00:04:20.486 王族の遺産を 集めています 00:04:20.776 --> 00:04:24.010 これらの作品は かしこまった部屋に 00:04:24.010 --> 00:04:26.994 信じられないような 凝った 建物の中に飾られています 00:04:27.006 --> 00:04:30.636 このような世界を 私たちの多くは 夢見るしかないのです 00:04:31.296 --> 00:04:35.626 これらは 社会権力や 00:04:35.626 --> 00:04:37.566 国家権力の象徴なのです 00:04:38.106 --> 00:04:41.826 ですから 当然 多くの人が 美術館は つまらなくて 00:04:41.866 --> 00:04:45.096 エリート主義的で 必要ないとさえ思うのです 00:04:45.776 --> 00:04:48.796 しかし 私が ここに来たのは 美術館は 皆さんなしでは 00:04:48.796 --> 00:04:51.536 今あるようには 存在できないと 言うためなのです 00:04:51.536 --> 00:04:53.776 さらに 私たちは 今 00:04:53.776 --> 00:04:56.706 常に新しい経験を探し求め 00:04:56.706 --> 00:05:00.506 新しい情報を探し出し 誰かとつながりたいと思っています 00:05:01.486 --> 00:05:04.476 ですから 皆さんは 美術館なしでは いられないのです 00:05:04.896 --> 00:05:07.116 さて 全米芸術基金は 00:05:07.116 --> 00:05:09.270 数年前に ある調査結果を公表しました 00:05:09.270 --> 00:05:13.376 それによると 芸術的な催しへの参加が 00:05:13.376 --> 00:05:15.946 ここ20年間で 劇的に減少したということです 00:05:16.196 --> 00:05:17.506 つまり バレエや 00:05:17.506 --> 00:05:20.116 クラッシックコンサートや展覧会などです 00:05:20.386 --> 00:05:23.076 人々は歩いて行って 椅子に座ることもなく 00:05:23.076 --> 00:05:25.246 展示室の中を歩くこともないのです 00:05:25.246 --> 00:05:27.376 これは 確かに悩みの種です 00:05:27.376 --> 00:05:29.756 一方で その理由も 少し想像がつきます 00:05:29.776 --> 00:05:31.806 芸術的な催しに 00:05:31.806 --> 00:05:34.136 行ってはいないけれども 00:05:34.136 --> 00:05:36.526 行きたいとは思っている人たちは 00:05:36.526 --> 00:05:38.256 3つの大きな理由を挙げます 00:05:38.256 --> 00:05:39.828 一つめは 時間です 00:05:40.306 --> 00:05:43.956 私たちは必要なことをするのに 十分な時間がありません 00:05:43.956 --> 00:05:46.456 さらに したいことをする時間は ありません 00:05:46.716 --> 00:05:49.626 他にも 時に難しいのは 00:05:49.626 --> 00:05:51.926 美術館への交通手段や 00:05:51.926 --> 00:05:53.396 行き方を見つけることです 00:05:53.596 --> 00:05:54.736 二つめは 子供です 00:05:54.736 --> 00:05:57.472 幼いお子さんをお持ちの方は 何のことかお判りでしょう 00:05:57.546 --> 00:06:00.536 もし 6歳以下のお子さんを お持ちなら 00:06:00.536 --> 00:06:04.446 大騒ぎで出かける準備をして 00:06:04.446 --> 00:06:07.226 車に乗せて 美術館へ なんとか連れていきます 00:06:07.246 --> 00:06:10.826 そして 美術館にやっと着いても 子供たちがすることはなにもないのです 00:06:10.826 --> 00:06:13.796 私も親なのでわかります 私ならこんなことはしません 00:06:13.796 --> 00:06:16.986 なぜなら 美術館で 子供がぐずるのを聞きたくないからです 00:06:16.986 --> 00:06:20.776 最後に 文化に関わりたいと思っていても 00:06:20.796 --> 00:06:23.136 できない理由の三つめは 00:06:23.136 --> 00:06:26.256 社会経験とその欠如です 00:06:26.566 --> 00:06:29.056 私はこの理由に 最も胸を刺される思いです 00:06:29.056 --> 00:06:32.276 一人では 美術館や コンサートホールに行きたくないのです 00:06:32.556 --> 00:06:36.326 もし お金が問題ならば 00:06:36.416 --> 00:06:38.316 解決することはできます 00:06:38.506 --> 00:06:41.526 しかし 孤独であるという社会的な問題を 00:06:41.526 --> 00:06:44.176 人は解決したがらないのです 00:06:45.466 --> 00:06:47.196 私も まだ取り組んでいません 00:06:47.236 --> 00:06:49.836 さて 全米芸術基金は 00:06:49.836 --> 00:06:51.936 もう一つの調査結果を公表しました 00:06:51.936 --> 00:06:54.176 これは矛盾しているように見えます 00:06:54.453 --> 00:06:56.856 その調査によると 芸術に触れている人の数は 00:06:56.856 --> 00:06:58.616 以前と変わらないということです 00:06:58.616 --> 00:07:00.126 皆さんはこうお思いでしょう 00:07:00.126 --> 00:07:02.806 「あなたは皆が美術館に 行かないと言ったのに 00:07:02.806 --> 00:07:04.426 何が起こっているの?」 00:07:04.426 --> 00:07:06.436 その「何か」とは テクノロジーです 00:07:06.436 --> 00:07:08.966 人々は テクノロジーでつながっています 00:07:08.966 --> 00:07:10.936 ポッドキャストをダウンロードして 00:07:10.936 --> 00:07:13.526 コンサートの動画を見ます 00:07:13.946 --> 00:07:15.999 Googleアートプロジェクトで検索し 00:07:16.046 --> 00:07:18.076 オンラインで展覧会を見ます 00:07:18.086 --> 00:07:21.616 このように文化と触れ合うことは 00:07:21.616 --> 00:07:23.786 時間や空間 00:07:23.786 --> 00:07:26.436 安全性やコストの面で 最も効率的なのです 00:07:26.976 --> 00:07:31.016 しかし この方法では 00:07:31.016 --> 00:07:34.256 ある種の経験はできないと思うのです 00:07:34.556 --> 00:07:40.981 それは 豊かで社会的で 興味深い場所に 行けば得られる経験です 00:07:41.026 --> 00:07:45.856 実際にその場所に行って 00:07:45.856 --> 00:07:49.356 他の人と一緒に過ごして 関わりを持ち 話し合いをする経験は 00:07:49.356 --> 00:07:51.946 他には変え難いことです 00:07:52.536 --> 00:07:56.336 美術館は私達の文化の中でも 豊かな空間となっていますが 00:07:56.346 --> 00:07:57.506 それには理由があります 00:07:57.506 --> 00:07:58.936 皆さんは 美術館へ行って 00:07:58.936 --> 00:08:01.626 今まで見たことがないものを 見られることです 00:08:01.626 --> 00:08:04.986 そこでは他の方法では想像できない 時間や空間 00:08:04.986 --> 00:08:06.846 そして 他の人々について学べます 00:08:06.846 --> 00:08:08.736 美術館はインスピレーションを与え 00:08:08.736 --> 00:08:09.866 私達が考えごとをし 00:08:09.866 --> 00:08:12.796 世の中でのそれぞれの居場所を 考える助けとなります 00:08:12.796 --> 00:08:16.476 今 私が話しているように この世界は 思考を必要としているのです 00:08:16.476 --> 00:08:20.131 いずれにせよ 皆さんは出かけなければなりません 00:08:20.396 --> 00:08:24.024 このことを経験するためには 行かなくてはならないのです 00:08:24.856 --> 00:08:28.186 先程触れた 全米芸術基金の調査によると 00:08:28.186 --> 00:08:31.016 実は 人々が美術館に行く主な理由は 00:08:31.016 --> 00:08:34.466 友人や家族と共に過ごし 00:08:34.466 --> 00:08:38.546 新しいことを学びたいからですが 実際に行かなければ それは不可能です 00:08:39.256 --> 00:08:42.135 今や 何でもインターネットで 調べることができます 00:08:42.135 --> 00:08:45.766 芸術家や絵画 彫刻 展覧会に関する 00:08:45.796 --> 00:08:50.446 情報にはこと欠きません 00:08:51.066 --> 00:08:54.386 しかし 実際に自分で美術館へ行かなければ 00:08:54.386 --> 00:08:55.957 経験することはできないのです 00:08:55.957 --> 00:08:57.196 言っておきますが 00:08:57.196 --> 00:08:58.976 私はテクノロジーは否定しません 00:08:58.986 --> 00:09:01.866 皆さんと同じように iPhone中毒です 00:09:01.866 --> 00:09:04.648 ここには私の知人もいますから わかりますよね 00:09:04.648 --> 00:09:08.426 実際 美術館では 教育的な取り組みとして 00:09:08.426 --> 00:09:10.936 テクノロジーを使って 00:09:10.936 --> 00:09:12.866 素晴らしいことが行われています 00:09:12.866 --> 00:09:14.356 そして 上手くいっています 00:09:14.356 --> 00:09:18.696 ただ ここで皆さんに 先程 思い出していただいた 00:09:18.756 --> 00:09:22.676 初めて美術館に 行った時の思い出を 00:09:22.676 --> 00:09:24.767 振り返ってほしいのです 00:09:25.226 --> 00:09:28.956 賭けてもいいですが コンピューターのスクリーンを 00:09:28.956 --> 00:09:31.286 通したものではなかったはずです 00:09:32.636 --> 00:09:37.766 今 美術館は 皆さんに御来館いただこうと 00:09:37.766 --> 00:09:41.546 園児・児童・生徒向けのツアーや 00:09:41.566 --> 00:09:43.676 大学生向けプログラム 00:09:43.706 --> 00:09:47.676 あるいは 音楽の演奏や 詩の朗読など あらゆることを行っています 00:09:47.946 --> 00:09:52.156 入園前の幼児のグループや 00:09:52.156 --> 00:09:54.206 読書会でも来ます 00:09:54.306 --> 00:09:57.006 これら全てが皆さんを 必要としているのです 00:09:57.676 --> 00:10:01.796 皆さんの考えやアイデア 世の中の見方 00:10:01.986 --> 00:10:06.146 お友達やご家族などは 全て美術館とともにあるのです 00:10:08.366 --> 00:10:14.006 6歳の カンザスから来た少女が 00:10:14.006 --> 00:10:19.236 この大きな美術館に行きたいと思い そこで見たものに感動して 00:10:19.236 --> 00:10:22.786 将来は美術館で働きたいと 思ったのですから 00:10:22.786 --> 00:10:25.016 皆さんも美術館で得られる経験について 00:10:25.016 --> 00:10:27.476 ぜひ考えてみてください 00:10:28.406 --> 00:10:29.830 ご拝聴有難うございました 00:10:29.830 --> 00:10:31.427 (拍手)