WEBVTT 00:00:02.097 --> 00:00:06.569 その殺人事件は約21年前に起こりました 00:00:06.569 --> 00:00:10.848 1991年1月18日 00:00:10.848 --> 00:00:13.109 舞台は 00:00:13.109 --> 00:00:15.483 ロスから数キロしか離れていない 00:00:15.483 --> 00:00:18.318 カリフォルニア州リンウッドの 00:00:18.318 --> 00:00:20.816 小さなベッドタウンです 00:00:20.816 --> 00:00:23.651 一人の父親が 00:00:23.651 --> 00:00:27.058 自宅の前で遊んでいた 00:00:27.058 --> 00:00:29.837 彼の10代の息子とその5人の友人達に 00:00:29.837 --> 00:00:32.747 そろそろ遊ぶのを止めて家に帰って 00:00:32.747 --> 00:00:35.655 宿題をして寝る準備をするように 00:00:35.655 --> 00:00:38.401 促すために家から出てきました 00:00:38.401 --> 00:00:41.971 父親が子ども達に声をかけているとき 00:00:41.971 --> 00:00:45.309 1台の車がゆっくりと近づいてきました 00:00:45.309 --> 00:00:48.211 そして父親と子ども達の横を通り過ぎると 00:00:48.211 --> 00:00:52.199 助手席の窓から手が伸びて・・・ 00:00:52.199 --> 00:00:57.461 バン!!バン!! 父親を射殺しました 00:00:57.461 --> 00:01:00.620 車はそのまま去りました 00:01:00.620 --> 00:01:02.461 警察は 00:01:02.461 --> 00:01:06.291 すばらしく素早い動きをしました 00:01:06.291 --> 00:01:08.721 札付きどもの中から 00:01:08.721 --> 00:01:13.288 24時間以内に容疑者を特定しました 00:01:13.288 --> 00:01:16.866 フランシスコ・カリヨ 17歳 00:01:16.866 --> 00:01:18.903 銃撃現場から 数ブロックのところに 00:01:18.903 --> 00:01:21.638 住んでいた少年です 00:01:21.638 --> 00:01:26.286 警察は彼の写真を手に入れて 面割りの写真に混ぜたのです 00:01:26.286 --> 00:01:29.870 それを事件翌日に 00:01:29.870 --> 00:01:32.763 目撃者の少年の一人に見せました 00:01:32.763 --> 00:01:35.082 「この写真の男です。 00:01:35.082 --> 00:01:40.469 銃撃犯はこの男です。」 00:01:40.469 --> 00:01:43.046 予審判事にとってはこれだけ聞けば十分で 00:01:43.046 --> 00:01:48.155 カリヨ氏は第一級殺人で 00:01:48.155 --> 00:01:50.842 被告席に立つことになりました 00:01:50.842 --> 00:01:54.049 裁判が始まる前の捜査で 00:01:54.049 --> 00:01:57.460 残る5人の少年たちも 00:01:57.460 --> 00:02:01.508 同じ写真で面割りをしました 00:02:01.508 --> 00:02:04.332 これら顔写真の中で 00:02:04.332 --> 00:02:06.604 最もよく判別しやすい顔写真は 00:02:06.604 --> 00:02:10.301 おそらく皆さんから見て左下の写真でしょうね 00:02:10.301 --> 00:02:13.737 私たちが絶対的確信を持てない理由は 00:02:13.737 --> 00:02:18.170 司法制度における証拠保存の本質に関わる問題ですが 00:02:18.170 --> 00:02:20.454 司法制度における証拠保存の本質に関わる問題ですが 00:02:20.454 --> 00:02:25.202 またそれは 別の TEDx の機会に (笑) 00:02:25.202 --> 00:02:28.108 裁判では 00:02:28.108 --> 00:02:31.108 6人の目撃者の少年全員が 00:02:31.108 --> 00:02:34.866 写真を指差して 00:02:34.866 --> 00:02:38.342 証言をしました 00:02:38.342 --> 00:02:43.123 彼は有罪となり終身刑を宣告され 00:02:43.123 --> 00:02:48.582 フォルサム刑務所に収監されました 00:02:48.582 --> 00:02:50.671 どこもおかしなところはありません 00:02:50.671 --> 00:02:55.437 十全な捜査と公正な裁判です すべて順調に進みました 00:02:55.437 --> 00:02:58.978 ただ凶器の銃は見つかりませんでした 00:02:58.978 --> 00:03:03.132 犯行に使われた車は特定されず 00:03:03.132 --> 00:03:06.356 誰も 00:03:06.356 --> 00:03:09.641 犯人の車を運転していた者として 00:03:09.641 --> 00:03:12.883 起訴されることはありませんでした 00:03:12.883 --> 00:03:16.764 カリヨ氏のアリバイですが 00:03:16.764 --> 00:03:22.058 殺人事件の捜査において 00:03:22.058 --> 00:03:24.877 容疑者の両親のアリバイ証言はあてにできません 00:03:24.877 --> 00:03:28.774 容疑者の両親のアリバイ証言はあてにできません 00:03:30.874 --> 00:03:33.596 刑務所に入れられてから21年間 00:03:33.596 --> 00:03:37.094 刑務所に入れられてから21年間 00:03:37.094 --> 00:03:41.831 彼は断固として無実を訴えてきました 00:03:41.831 --> 00:03:45.302 何が問題か? 00:03:45.302 --> 00:03:48.026 この類の事件では とりわけ問題があることが 00:03:48.026 --> 00:03:51.935 記憶に関わる何十年もの研究から知られています 00:03:51.935 --> 00:03:55.837 記憶に関わる何十年もの研究から知られています 00:03:55.837 --> 00:03:58.651 イノセンス・プロジェクトには 00:03:58.651 --> 00:04:00.858 誤って有罪判決を受けた 死刑囚を含む囚人について 00:04:00.858 --> 00:04:03.555 誤って有罪判決を受けた 死刑囚を含む囚人について 00:04:03.555 --> 00:04:07.336 後のDNA鑑定による冤罪証明がなされた 00:04:07.336 --> 00:04:11.408 250以上の事例に関して 00:04:11.408 --> 00:04:17.754 さまざまに統計解析を行いました 00:04:17.754 --> 00:04:21.415 そのうちの実に4分の3の事例は 00:04:21.415 --> 00:04:27.686 有罪判決を下した裁判において 00:04:27.686 --> 00:04:31.333 目撃証言だけを根拠としています 00:04:31.333 --> 00:04:36.508 目撃証言による人物の特定はあてになりません 00:04:36.508 --> 00:04:38.728 もう一つの問題は 00:04:38.728 --> 00:04:41.931 人間の脳の持つ様々な機能についての 00:04:41.931 --> 00:04:44.497 興味深い点から生じます 00:04:44.497 --> 00:04:46.881 簡単に言うと 00:04:46.881 --> 00:04:51.629 脳は「空白」を嫌います 00:04:51.629 --> 00:04:55.539 最もよい観察環境においてさえ 00:04:55.539 --> 00:04:57.411 最もよい観察環境においてさえ 00:04:57.411 --> 00:05:01.124 我々は目の前で起こっている出来事を 00:05:01.124 --> 00:05:04.819 断片として扱いそれぞれの断片を 00:05:04.819 --> 00:05:07.148 脳の様々な場所にしまい込みます 00:05:07.148 --> 00:05:11.303 では不完全で断片的な記憶で 00:05:11.303 --> 00:05:14.324 では不完全で断片的な記憶で 00:05:14.324 --> 00:05:19.602 自分の経験を思い出さねばならないとき 00:05:19.602 --> 00:05:22.055 何が起こるか? 00:05:22.055 --> 00:05:24.879 無意識のうちに 00:05:24.879 --> 00:05:30.050 何の動機づけすらなくても 脳は 00:05:30.050 --> 00:05:32.475 当初は記憶されていなかった情報を 00:05:32.475 --> 00:05:34.925 当初は記憶されていなかった情報を 00:05:34.925 --> 00:05:37.469 推測や憶測 00:05:37.469 --> 00:05:40.281 目撃した時点よりも後に得た情報を基に 00:05:40.281 --> 00:05:43.416 補ってしまうのです 00:05:43.416 --> 00:05:45.490 これは人が全く気付かない内に起こります 00:05:45.490 --> 00:05:49.124 これは人が全く気付かない内に起こります 00:05:49.124 --> 00:05:51.391 いわば「再構成された記憶」です 00:05:51.391 --> 00:05:55.690 これは生活のあらゆる場面でいつも起きています 00:05:55.690 --> 00:05:58.954 再構成された記憶と 00:05:58.954 --> 00:06:03.459 目撃証言の不確かさの2点を 00:06:03.459 --> 00:06:06.515 考慮することをきっかけに 00:06:06.515 --> 00:06:08.964 すご腕の法律家であるエレン・エガースに― 00:06:08.964 --> 00:06:12.436 率いられた弁護士たちは 00:06:12.436 --> 00:06:16.564 経験と才能を持ちより 00:06:16.564 --> 00:06:18.401 上訴審にフランシスコ・カリヨの 00:06:18.401 --> 00:06:23.471 再審請求を行うことにしました 00:06:23.471 --> 00:06:27.859 私は目撃証人の記憶について 00:06:27.859 --> 00:06:30.001 専門知識を有する 00:06:30.001 --> 00:06:32.121 神経生理学者として裁判に 00:06:32.121 --> 00:06:35.316 参加することになりました 持ってこいの役回りですね 00:06:35.316 --> 00:06:38.660 また暗いところでの人間の視覚についても 00:06:38.660 --> 00:06:43.037 専門家として証言しました 00:06:43.037 --> 00:06:46.070 カリヨ氏の事案とどう関係するでしょうか 00:06:46.070 --> 00:06:49.372 事件の記録で注目すべきことのひとつは 00:06:49.372 --> 00:06:52.094 捜査員たちが銃撃の現場の明るさについて 00:06:52.094 --> 00:06:54.924 捜査員たちが銃撃の現場の明るさについて 00:06:54.924 --> 00:06:58.414 十分に明るかったと証言していたことです 00:06:58.414 --> 00:07:01.948 十分に明るかったと証言していたことです 00:07:01.948 --> 00:07:05.405 少年たちも全員がよく見えたと裁判で証言をしています 00:07:05.405 --> 00:07:08.884 少年たちも全員がよく見えたと裁判で証言をしています 00:07:08.884 --> 00:07:11.724 しかしこの事件が起こったのは 00:07:11.724 --> 00:07:17.723 1月中旬の北半球 夜の7時です 00:07:17.723 --> 00:07:20.748 私は銃撃のあった当夜の 00:07:20.748 --> 00:07:22.960 私は銃撃のあった当夜の 00:07:22.960 --> 00:07:26.139 現地の太陽と月の位置を計算しました 00:07:26.139 --> 00:07:28.187 現地の太陽と月の位置を計算しました 00:07:28.187 --> 00:07:30.804 夕暮れ時はとうに過ぎた時刻で 00:07:30.804 --> 00:07:33.060 その日は月も出ていませんでした 00:07:33.060 --> 00:07:35.339 つまり事件当夜の現場で 00:07:35.339 --> 00:07:37.923 太陽や月からの光は皆無 00:07:37.923 --> 00:07:40.837 現場の明かりは 00:07:40.837 --> 00:07:44.107 人工的な光源のみによるもののはずです 00:07:44.107 --> 00:07:46.875 そこで私は現場におもむき 00:07:46.875 --> 00:07:49.672 光度計を手に状況の再現を試みました 00:07:49.672 --> 00:07:51.646 照明や 色の認識に関わる条件を― 00:07:51.646 --> 00:07:56.113 変えながら 特別なカメラと高感度フィルムで記録しました 00:07:56.113 --> 00:07:58.242 あらゆる条件を試みて 00:07:58.242 --> 00:08:01.171 全てを記録しました 00:08:01.171 --> 00:08:03.328 そして写真にも残しました 00:08:03.328 --> 00:08:04.763 当時の現場の見取り図に基づき 00:08:04.763 --> 00:08:07.229 少年たちがいた場所から 00:08:07.229 --> 00:08:11.051 車が走りながら銃撃するのを見るとどうなるでしょう 00:08:11.051 --> 00:08:13.356 これは 少年たちのところから 00:08:13.356 --> 00:08:15.684 通りの向かいをまっすぐ見た写真です 00:08:15.684 --> 00:08:18.037 捜査官の報告では 00:08:18.037 --> 00:08:20.270 光は十分とのことでしたね 00:08:20.270 --> 00:08:22.704 また少年たちもよく見えたと言っていました 00:08:22.704 --> 00:08:25.955 この東向きの写真は 00:08:25.955 --> 00:08:29.651 犯人の車が走り去った方向を撮りました 00:08:29.651 --> 00:08:34.543 父親と少年たちの背後の照明の 00:08:34.543 --> 00:08:36.884 状況の写真です 00:08:36.884 --> 00:08:40.795 ご覧の通り控えめに言っても乏しい光です 00:08:40.795 --> 00:08:44.668 これでは誰も十分な明るさとは言わないでしょう 00:08:44.668 --> 00:08:47.862 実際の光はこの写真の通りです 00:08:47.862 --> 00:08:51.323 私は法廷で証言するために この写真を撮りました 00:08:51.323 --> 00:08:54.515 というのも国際的な照度の単位であるルクスや 00:08:54.515 --> 00:08:56.915 石原式色覚検査のスコアについて 00:08:56.915 --> 00:09:00.187 非専門家に伝えたいときに 00:09:00.187 --> 00:09:05.363 一枚の写真は千の言葉を費やすよりも効果的だからです 00:09:05.363 --> 00:09:08.524 そうした抽象概念について 00:09:08.524 --> 00:09:11.640 科学的側面に詳しくない人たちに話すときは 00:09:11.640 --> 00:09:14.019 まさに百聞は一見に如かずなのです 00:09:14.019 --> 00:09:16.933 視野角の正接についての話なんて 00:09:16.933 --> 00:09:19.718 実に退屈でぼうっとなりますよ 00:09:19.718 --> 00:09:24.077 法廷における優れた専門家は教えることや 00:09:24.077 --> 00:09:26.236 コミュニケーションに秀でていなければなりません 00:09:26.236 --> 00:09:28.531 写真で見せることで 00:09:28.531 --> 00:09:31.331 光源の場所や光の届き方だけでなく 00:09:31.331 --> 00:09:33.960 事実を検証する人にとって 00:09:33.960 --> 00:09:37.995 状況をわかりやすくするのです 00:09:37.995 --> 00:09:40.868 これらは私が実際に証言の時に使った写真ですが 00:09:40.868 --> 00:09:43.283 これらは私が実際に証言の時に使った写真ですが 00:09:43.283 --> 00:09:45.148 それよりも重要なのが 科学者として私が 00:09:45.148 --> 00:09:47.131 計測した光度計の示した値です 00:09:47.131 --> 00:09:51.731 その結果を使って 実際の状況下で 00:09:51.731 --> 00:09:55.251 肉眼で何が見えるかを推測できます 00:09:55.251 --> 00:09:57.627 肉眼で何が見えるかを推測できます 00:09:57.627 --> 00:10:01.275 同じ太陽と月の条件で 00:10:01.275 --> 00:10:03.515 同時刻など条件を揃えて 00:10:03.515 --> 00:10:06.507 私が現場で計測した値から 00:10:06.507 --> 00:10:07.913 顔の認識に不可欠な色の認識については 00:10:07.913 --> 00:10:10.105 顔の認識に不可欠な色の認識については 00:10:10.105 --> 00:10:12.419 はなはだ心許ない夜目の状態だったと言えます 00:10:12.419 --> 00:10:14.731 はなはだ心許ない夜目の状態だったと言えます 00:10:14.731 --> 00:10:16.691 ものの輪郭をはっきりと捉えることも 00:10:16.691 --> 00:10:18.939 ほとんどできない状況です 00:10:18.939 --> 00:10:21.254 さらにこの光の下では瞳孔は開いた状態で 00:10:21.254 --> 00:10:25.059 50センチ未満の奥行きについてしか 00:10:25.059 --> 00:10:28.217 目の焦点を合わせて細部を見ることはできません 00:10:28.217 --> 00:10:33.611 目の焦点を合わせて細部を見ることはできません 00:10:33.611 --> 00:10:36.115 私は法廷でこのことを証言しました 00:10:36.115 --> 00:10:38.548 判事は本当に熱心に耳を傾けてくれましたが 00:10:38.548 --> 00:10:41.155 再審請求の大変長い 00:10:41.155 --> 00:10:45.899 意見聴取を経てきていたこともあり 00:10:45.899 --> 00:10:47.659 数字だけではなく 00:10:47.659 --> 00:10:51.804 何かもう一押しが必要なのではないかと 00:10:51.804 --> 00:10:53.867 何かもう一押しが必要なのではないかと 00:10:53.867 --> 00:10:56.375 なんとなく感じました 00:10:56.375 --> 00:10:58.667 そこで私は大胆にも 00:10:58.667 --> 00:11:00.187 判事に向かってこう願い出ました 00:11:00.187 --> 00:11:02.579 判事に向かってこう願い出ました 00:11:02.579 --> 00:11:04.987 「裁判官 ご自身で一度現場を ご覧になっては如何でしょうか?」 00:11:04.987 --> 00:11:07.691 「裁判官 ご自身で一度現場を ご覧になっては如何でしょうか?」 00:11:07.691 --> 00:11:10.832 お願いというより少し挑戦的な 口調だったかもしれませんが・・・(笑) 00:11:10.832 --> 00:11:13.236 お願いというより少し挑戦的な 口調だったかもしれませんが・・・(笑) 00:11:13.236 --> 00:11:17.683 にもかかわらず判事は誇りと勇気をもって言いました 00:11:17.683 --> 00:11:21.299 「行きましょう」 00:11:21.299 --> 00:11:25.291 これはアメリカの法の世界では驚くべきことです 00:11:25.291 --> 00:11:27.763 そして実際に私たちが事件と全く同じ状況下で 00:11:27.763 --> 00:11:29.804 現場の状況をふたたび再現し 00:11:29.804 --> 00:11:33.814 判事は郡保安官に護衛され 00:11:33.814 --> 00:11:38.971 仰々しい車列を組んで現れました (笑) 00:11:38.971 --> 00:11:44.025 我々は判事に 00:11:44.025 --> 00:11:47.205 実際に目撃者の少年たちが立っていた位置よりも 00:11:47.205 --> 00:11:49.947 少し銃撃犯の車に近い位置に立ってもらい 00:11:49.947 --> 00:11:52.171 彼は道路に向かって歩道の縁石から 数十センチの位置に立っていました 00:11:52.171 --> 00:11:54.783 彼は道路に向かって歩道の縁石から 数十センチの位置に立っていました 00:11:54.783 --> 00:11:57.700 そして少年たちが証言したとおりの車を走らせました 00:11:57.700 --> 00:12:02.651 そして少年たちが証言したとおりの車を走らせました 00:12:02.651 --> 00:12:04.588 運転席と助手席に人が乗っており 00:12:04.588 --> 00:12:08.411 判事の横を通り過ぎざま助手席の同乗者が 00:12:08.411 --> 00:12:11.925 判事に向けて手を伸ばし 00:12:11.925 --> 00:12:16.499 手は判事を指したまま 車は走り去ります 00:12:16.499 --> 00:12:18.718 少年たちの証言に従って行いました 00:12:18.718 --> 00:12:21.571 実物の銃ではなく 00:12:21.571 --> 00:12:23.989 証言された銃に似せた黒いものを 00:12:23.989 --> 00:12:25.968 手にしていました 00:12:25.968 --> 00:12:28.814 これがその時に判事が見た光景です 00:12:28.814 --> 00:12:35.913 これは判事から約9メートル先で 00:12:35.913 --> 00:12:38.825 助手席の窓からこちらに向かって腕が出ています 00:12:38.825 --> 00:12:41.198 助手席の窓からこちらに向かって腕が出ています 00:12:41.198 --> 00:12:43.163 これは約9メートルですが 00:12:43.163 --> 00:12:45.355 約4.5メートルと証言した少年もいました 00:12:45.355 --> 00:12:47.931 約4.5メートルと証言した少年もいました 00:12:47.931 --> 00:12:51.595 これで約4.5メートルです 00:12:51.595 --> 00:12:55.765 この時点で私は少し心配になっていました 00:12:55.765 --> 00:13:00.499 この判事は絶対に ポーカーの相手にはしたくない人物です 00:13:00.499 --> 00:13:04.787 まったく感情が表に出ないのです 眉一つ動かさず 00:13:04.787 --> 00:13:08.056 首を傾げることもありません 00:13:08.056 --> 00:13:11.557 まったく反応を読み取れませんでした 00:13:11.557 --> 00:13:14.597 この再現の後に 00:13:14.597 --> 00:13:15.677 彼は私に向き直って尋ねました 00:13:15.677 --> 00:13:18.935 「他に何か見せたいものはある?」 00:13:18.935 --> 00:13:23.430 手元にある科学的な計測データと 00:13:23.430 --> 00:13:26.387 正確な知識に励まされたのか 00:13:26.387 --> 00:13:30.083 あるいは被告弁護人の思うとおり 00:13:30.083 --> 00:13:32.338 私の完全な愚かさからか(笑) 00:13:32.338 --> 00:13:35.163 私の完全な愚かさからか(笑) 00:13:35.163 --> 00:13:36.915 私は言いました 00:13:36.915 --> 00:13:39.619 「はい裁判官 そちらでお立ちください 00:13:39.619 --> 00:13:43.955 車をもう一回りさせて目の前 00:13:43.955 --> 00:13:47.309 約1メートルのところで止めます 00:13:47.309 --> 00:13:51.499 そのまま助手席から腕を出して 00:13:51.499 --> 00:13:54.955 黒い物体をあなたに向けますから 00:13:54.955 --> 00:13:56.971 お気の済むまでそれをご覧下さい。」 00:13:56.971 --> 00:14:02.691 お気の済むまでそれをご覧下さい。」 00:14:02.691 --> 00:14:07.118 これが裁判官の目にした光景です (笑) 00:14:07.118 --> 00:14:10.958 皆さんもお気づきでしょうし 私も報告書に書きましたが 00:14:10.958 --> 00:14:13.603 光は主に北側からさしています 00:14:13.603 --> 00:14:15.346 つまり銃撃犯の顔は逆光になって見えないのです 00:14:15.346 --> 00:14:17.962 つまり銃撃犯の顔は逆光になって見えないのです 00:14:17.962 --> 00:14:19.864 さらに車の屋根が影になって 00:14:19.864 --> 00:14:24.138 車内をさらに暗くしています 00:14:24.138 --> 00:14:27.468 車内をさらに暗くしています 00:14:27.468 --> 00:14:31.580 これは約1メートル先の見え方です 00:14:31.580 --> 00:14:34.708 なぜわざわざこんなことをしたのか? 00:14:34.708 --> 00:14:38.937 視界が50センチもないことを知っていたからです 00:14:38.937 --> 00:14:40.604 それでは1メートル先というのは 00:14:40.604 --> 00:14:45.076 フットボールグラウンドの向こう側と同じことです 00:14:45.076 --> 00:14:47.284 判事はこれを見て 00:14:47.284 --> 00:14:51.084 法廷に戻りました 00:14:51.084 --> 00:14:53.388 証言を聴く時間が まだ数日残っていましたが 00:14:53.388 --> 00:14:56.016 結局判事は再審請求を受理しました 00:14:56.016 --> 00:14:59.094 結局判事は再審請求を受理しました 00:14:59.094 --> 00:15:01.572 さらに検察が再び彼を訴追する場合 00:15:01.572 --> 00:15:04.559 その弁護に備えられるよう 00:15:04.559 --> 00:15:10.578 カリヨ氏を釈放しました 00:15:10.578 --> 00:15:12.888 検察は彼を再び訴追することなく 00:15:12.888 --> 00:15:17.949 彼は晴れて自由の身となりました (拍手) 00:15:17.949 --> 00:15:21.892 (拍手) 00:15:21.892 --> 00:15:26.996 義理の祖母を抱きしめているところです 00:15:26.996 --> 00:15:31.071 裁判中に妊娠していた彼の恋人は 00:15:31.071 --> 00:15:35.156 男の子を生んでいました 00:15:35.156 --> 00:15:37.837 彼は今 息子と一緒に 00:15:37.837 --> 00:15:44.025 カリフォルニア州立大の ロングビーチ校で学んでいます(拍手) 00:15:44.025 --> 00:15:47.988 さて この事例で 00:15:47.988 --> 00:15:52.332 我々が心に留めておくべきことは何でしょうか? 00:15:52.332 --> 00:15:56.028 アメリカの法曹界では法学と科学は 00:15:56.028 --> 00:15:58.108 長い間犬猿の仲でした 00:15:58.108 --> 00:16:00.508 長い間犬猿の仲でした 00:16:00.508 --> 00:16:03.956 何十年と法廷に関わってきた専門家としての経験の中で 00:16:03.956 --> 00:16:08.292 法廷に科学を持ち込もうとして 00:16:08.292 --> 00:16:12.798 相手にされないというひどい話は尽きません 00:16:12.798 --> 00:16:17.732 相手方の法律家たちがいつも頑として反対するのです 00:16:17.732 --> 00:16:21.119 ここで提起したいのは 00:16:21.119 --> 00:16:23.988 我々が政策や手続きを通じて 00:16:23.988 --> 00:16:26.044 もっと法廷に科学を取り入れる必要性を 00:16:26.044 --> 00:16:29.228 支持することです 00:16:29.228 --> 00:16:31.539 それに向けての大きな一歩は 00:16:31.539 --> 00:16:33.381 全く失礼を言うようですが 00:16:33.381 --> 00:16:35.940 ロースクールにおいて 00:16:35.940 --> 00:16:41.051 科学・技術・工学・数学の 00:16:41.051 --> 00:16:43.028 必修科目としての比重を高めることです 00:16:43.028 --> 00:16:46.652 皆そこで学んで裁判官になるのですから 00:16:46.652 --> 00:16:49.700 我々がこの国で裁判官を選ぶ方法は 00:16:49.700 --> 00:16:53.060 他の国々とは大きく違っています 00:16:53.060 --> 00:16:55.470 もう一つ注意しなければならないと思うことは 00:16:55.470 --> 00:16:57.900 もう一つ注意しなければならないと思うことは 00:16:57.900 --> 00:16:59.740 私自身もいつも意識していることですが 00:16:59.740 --> 00:17:02.843 我々が真実だと信じて疑わない 00:17:02.843 --> 00:17:08.212 記憶についてです 00:17:08.212 --> 00:17:11.596 何十年にも及ぶ研究があり 00:17:11.596 --> 00:17:15.764 今回のような事例は実にたくさんあります 00:17:15.764 --> 00:17:17.732 すなわち一人ひとりは 00:17:17.732 --> 00:17:21.244 心底信じています 証言した少年たちは誰も 00:17:21.244 --> 00:17:23.076 間違った人物を選んでいるとは・・ 00:17:23.076 --> 00:17:26.352 犯人の顔を見られていないなどとは・・ 00:17:26.352 --> 00:17:29.706 全く思っていませんでした 00:17:29.706 --> 00:17:31.838 私たちは皆注意する必要があります 00:17:31.838 --> 00:17:35.478 私たちの記憶は全て再構成された記憶なのです 00:17:35.478 --> 00:17:37.876 それは元々の経験と 00:17:37.876 --> 00:17:40.609 その後に起こった全ての出来事によって作られ 00:17:40.609 --> 00:17:42.660 変化し続けるものです 00:17:42.660 --> 00:17:45.148 そして時には悪い作用も生み出します 00:17:45.148 --> 00:17:49.172 またそれは不安定で 我々はみな注意深くあらねばなりません 00:17:49.172 --> 00:17:52.492 我々の記憶はいかに鮮明であっても 00:17:52.492 --> 00:17:55.996 正しいとどれほど信じていても 00:17:55.996 --> 00:18:01.127 その正確さは測れないのです 00:18:01.127 --> 00:20:30.217 ご清聴ありがとうございました (拍手)