1 00:00:02,000 --> 00:00:06,000 その殺人事件は約21年前に起こりました. 2 00:00:06,000 --> 00:00:10,000 1991年1月18日 3 00:00:10,000 --> 00:00:13,000 舞台は 4 00:00:13,000 --> 00:00:15,000 ロスから数キロしか離れていない 5 00:00:15,000 --> 00:00:18,000 カリフォルニア州リンウッドの 6 00:00:18,000 --> 00:00:20,000 小さなベッドタウンです 7 00:00:20,000 --> 00:00:23,000 一人の父親が 8 00:00:23,000 --> 00:00:27,000 自宅の前で遊んでいた 9 00:00:27,000 --> 00:00:29,000 彼の10代の息子とその5人の友人達に 10 00:00:29,000 --> 00:00:32,000 そろそろ遊ぶのを止めて家に帰って 11 00:00:32,000 --> 00:00:35,000 宿題をして寝る準備をするように 12 00:00:35,000 --> 00:00:38,000 促すために家から出てきました 13 00:00:38,000 --> 00:00:41,000 父親が子ども達に声をかけているとき 14 00:00:41,000 --> 00:00:45,000 1台の車がゆっくりと近づいてきました 15 00:00:45,000 --> 00:00:48,000 そして父親と子ども達の横を通り過ぎると 16 00:00:48,000 --> 00:00:52,000 助手席の窓から手が伸びて・・・ 17 00:00:52,000 --> 00:00:57,000 バン!!バン!! 父親を射殺しました 18 00:00:57,000 --> 00:01:00,000 車はそのまま去りました 19 00:01:00,000 --> 00:01:02,000 警察は 20 00:01:02,000 --> 00:01:06,000 すばらしく素早い動きをしました 21 00:01:06,000 --> 00:01:08,000 札付きどもの中から 22 00:01:08,000 --> 00:01:13,000 24時間以内に容疑者を特定しました 23 00:01:13,000 --> 00:01:16,000 フランシスコ・カリヨ 17歳 24 00:01:16,000 --> 00:01:18,000 銃撃現場から 数ブロックのところに 25 00:01:18,000 --> 00:01:21,000 住んでいた少年です 26 00:01:21,000 --> 00:01:26,000 警察は彼の写真を手に入れて 面割りの写真に混ぜたのです 27 00:01:26,000 --> 00:01:29,000 それを事件翌日に 28 00:01:29,000 --> 00:01:32,000 目撃者の少年の一人に見せました 29 00:01:32,000 --> 00:01:35,000 「この写真の男です。 30 00:01:35,000 --> 00:01:40,000 銃撃犯はこの男です。」 31 00:01:40,000 --> 00:01:43,000 予審判事にとってはこれだけ聞けば十分で 32 00:01:43,000 --> 00:01:48,000 カリヨ氏は第一級殺人で 33 00:01:48,000 --> 00:01:50,000 被告席に立つことになりました 34 00:01:50,000 --> 00:01:54,000 裁判が始まる前の捜査で 35 00:01:54,000 --> 00:01:57,000 残る5人の少年たちも 36 00:01:57,000 --> 00:02:01,000 同じ写真で面割りをしました 37 00:02:01,000 --> 00:02:04,000 これら顔写真の中で 38 00:02:04,000 --> 00:02:06,000 最もよく判別しやすい顔写真は 39 00:02:06,000 --> 00:02:10,000 おそらく皆さんから見て左下の写真でしょうね 40 00:02:10,000 --> 00:02:13,000 私たちが絶対的確信を持てない理由は 41 00:02:13,000 --> 00:02:18,000 司法制度における証拠保存の本質に関わる問題ですが 42 00:02:18,000 --> 00:02:20,000 司法制度における証拠保存の本質に関わる問題ですが 43 00:02:20,000 --> 00:02:25,000 またそれは 別の TEDx の機会に (笑) 44 00:02:25,000 --> 00:02:28,000 裁判では 45 00:02:28,000 --> 00:02:31,000 6人の目撃者の少年全員が 46 00:02:31,000 --> 00:02:34,000 写真を指差して 47 00:02:34,000 --> 00:02:38,000 証言をしました 48 00:02:38,000 --> 00:02:43,000 彼は有罪となり終身刑を宣告され 49 00:02:43,000 --> 00:02:48,000 フォルサム刑務所に収監されました 50 00:02:48,000 --> 00:02:50,000 どこもおかしなところはありません 51 00:02:50,000 --> 00:02:55,000 十全な捜査と公正な裁判です すべて順調に進みました 52 00:02:55,000 --> 00:02:58,000 ただ凶器の銃は見つかりませんでした 53 00:02:58,000 --> 00:03:03,000 犯行に使われた車は特定されず 54 00:03:03,000 --> 00:03:06,000 誰も 55 00:03:06,000 --> 00:03:09,000 犯人の車を運転していた者として 56 00:03:09,000 --> 00:03:12,000 起訴されることはありませんでした 57 00:03:12,000 --> 00:03:16,000 カリヨ氏のアリバイですが 58 00:03:16,000 --> 00:03:22,000 殺人事件の捜査において 59 00:03:22,000 --> 00:03:24,000 容疑者の両親のアリバイ証言はあてにできません 60 00:03:24,000 --> 00:03:28,000 容疑者の両親のアリバイ証言はあてにできません 61 00:03:30,000 --> 00:03:33,000 刑務所に入れられてから21年間 62 00:03:33,000 --> 00:03:37,000 刑務所に入れられてから21年間 63 00:03:37,000 --> 00:03:41,000 彼は断固として無実を訴えてきました 64 00:03:41,000 --> 00:03:45,000 何が問題か? 65 00:03:45,000 --> 00:03:48,000 この類の事件では とりわけ問題があることが 66 00:03:48,000 --> 00:03:51,000 記憶に関わる何十年もの研究から知られています 67 00:03:51,000 --> 00:03:55,000 記憶に関わる何十年もの研究から知られています 68 00:03:55,000 --> 00:03:58,000 イノセンス・プロジェクトには 69 00:03:58,000 --> 00:04:00,000 誤って有罪判決を受けた 死刑囚を含む囚人について 70 00:04:00,000 --> 00:04:03,000 誤って有罪判決を受けた 死刑囚を含む囚人について 71 00:04:03,000 --> 00:04:07,000 後のDNA鑑定による冤罪証明がなされた 72 00:04:07,000 --> 00:04:11,000 250以上の事例に関して 73 00:04:11,000 --> 00:04:17,000 さまざまに統計解析を行いました 74 00:04:17,000 --> 00:04:21,000 そのうちの実に4分の3の事例は 75 00:04:21,000 --> 00:04:27,000 有罪判決を下した裁判において 76 00:04:27,000 --> 00:04:31,000 目撃証言だけを根拠としています 77 00:04:31,000 --> 00:04:36,000 目撃証言による人物の特定はあてになりません 78 00:04:36,000 --> 00:04:38,000 もう一つの問題は 79 00:04:38,000 --> 00:04:41,000 人間の脳の持つ様々な機能についての 80 00:04:41,000 --> 00:04:44,000 興味深い点から生じます 81 00:04:44,000 --> 00:04:46,000 簡単に言うと 82 00:04:46,000 --> 00:04:51,000 脳は「空白」を嫌います 83 00:04:51,000 --> 00:04:55,000 最もよい観察環境においてさえ 84 00:04:55,000 --> 00:04:57,000 最もよい観察環境においてさえ 85 00:04:57,000 --> 00:05:01,000 我々は目の前で起こっている出来事を 86 00:05:01,000 --> 00:05:04,000 断片として扱いそれぞれの断片を 87 00:05:04,000 --> 00:05:07,000 脳の様々な場所にしまい込みます 88 00:05:07,000 --> 00:05:11,000 では不完全で断片的な記憶で 89 00:05:11,000 --> 00:05:14,000 では不完全で断片的な記憶で 90 00:05:14,000 --> 00:05:19,000 自分の経験を思い出さねばならないとき 91 00:05:19,000 --> 00:05:22,000 何が起こるか? 92 00:05:22,000 --> 00:05:24,000 無意識のうちに 93 00:05:24,000 --> 00:05:30,000 何の動機づけすらなくても 脳は 94 00:05:30,000 --> 00:05:32,000 当初は記憶されていなかった情報を 95 00:05:32,000 --> 00:05:34,000 当初は記憶されていなかった情報を 96 00:05:34,000 --> 00:05:37,000 推測や憶測 97 00:05:37,000 --> 00:05:40,000 目撃した時点よりも後に得た情報を基に 98 00:05:40,000 --> 00:05:43,000 補ってしまうのです 99 00:05:43,000 --> 00:05:45,000 これは人が全く気付かない内に起こります 100 00:05:45,000 --> 00:05:49,000 これは人が全く気付かない内に起こります 101 00:05:49,000 --> 00:05:51,000 いわば「再構成された記憶」です 102 00:05:51,000 --> 00:05:55,000 これは生活のあらゆる場面でいつも起きています 103 00:05:55,000 --> 00:05:58,000 再構成された記憶と 104 00:05:58,000 --> 00:06:03,000 目撃証言の不確かさの2点を 105 00:06:03,000 --> 00:06:06,000 考慮することをきっかけに 106 00:06:06,000 --> 00:06:08,000 すご腕の法律家であるエレン・エガースに― 107 00:06:08,000 --> 00:06:12,000 率いられた弁護士たちは 108 00:06:12,000 --> 00:06:16,000 経験と才能を持ちより 109 00:06:16,000 --> 00:06:18,000 上訴審にフランシスコ・カリヨの 110 00:06:18,000 --> 00:06:23,000 再審請求を行うことにしました 111 00:06:23,000 --> 00:06:27,000 私は目撃証人の記憶について 112 00:06:27,000 --> 00:06:30,000 専門知識を有する 113 00:06:30,000 --> 00:06:32,000 神経生理学者として裁判に 114 00:06:32,000 --> 00:06:35,000 参加することになりました 持ってこいの役回りですね 115 00:06:35,000 --> 00:06:38,000 また暗いところでの人間の視覚についても 116 00:06:38,000 --> 00:06:43,000 専門家として証言しました 117 00:06:43,000 --> 00:06:46,000 カリヨ氏の事案とどう関係するでしょうか 118 00:06:46,000 --> 00:06:49,000 事件の記録で注目すべきことのひとつは 119 00:06:49,000 --> 00:06:52,000 捜査員たちが銃撃の現場の明るさについて 120 00:06:52,000 --> 00:06:54,000 捜査員たちが銃撃の現場の明るさについて 121 00:06:54,000 --> 00:06:58,000 十分に明るかったと証言していたことです 122 00:06:58,000 --> 00:07:01,000 十分に明るかったと証言していたことです 123 00:07:01,000 --> 00:07:05,000 少年たちも全員がよく見えたと裁判で証言をしています 124 00:07:05,000 --> 00:07:08,000 少年たちも全員がよく見えたと裁判で証言をしています 125 00:07:08,000 --> 00:07:11,000 しかしこの事件が起こったのは 126 00:07:11,000 --> 00:07:17,000 1月中旬の北半球 夜の7時です 127 00:07:17,000 --> 00:07:20,000 私は銃撃のあった当夜の 128 00:07:20,000 --> 00:07:22,000 私は銃撃のあった当夜の 129 00:07:22,000 --> 00:07:26,000 現地の太陽と月の位置を計算しました 130 00:07:26,000 --> 00:07:28,000 現地の太陽と月の位置を計算しました 131 00:07:28,000 --> 00:07:30,000 夕暮れ時はとうに過ぎた時刻で 132 00:07:30,000 --> 00:07:33,000 その日は月も出ていませんでした 133 00:07:33,000 --> 00:07:35,000 つまり事件当夜の現場で 134 00:07:35,000 --> 00:07:37,000 太陽や月からの光は皆無 135 00:07:37,000 --> 00:07:40,000 現場の明かりは 136 00:07:40,000 --> 00:07:44,000 人工的な光源のみによるもののはずです 137 00:07:44,000 --> 00:07:46,000 そこで私は現場におもむき 138 00:07:46,000 --> 00:07:49,000 光度計を手に状況の再現を試みました 139 00:07:49,000 --> 00:07:51,000 照明や 色の認識に関わる条件を― 140 00:07:51,000 --> 00:07:56,000 変えながら 特別なカメラと高感度フィルムで記録しました 141 00:07:56,000 --> 00:07:58,000 あらゆる条件を試みて 142 00:07:58,000 --> 00:08:01,000 全てを記録しました 143 00:08:01,000 --> 00:08:03,000 そして写真にも残しました 144 00:08:03,000 --> 00:08:04,000 当時の現場の見取り図に基づき 145 00:08:04,000 --> 00:08:07,000 少年たちがいた場所から 146 00:08:07,000 --> 00:08:11,000 車が走りながら銃撃するのを見るとどうなるでしょう 147 00:08:11,000 --> 00:08:13,000 これは 少年たちのところから 148 00:08:13,000 --> 00:08:15,000 通りの向かいをまっすぐ見た写真です 149 00:08:15,000 --> 00:08:18,000 捜査官の報告では 150 00:08:18,000 --> 00:08:20,000 光は十分とのことでしたね 151 00:08:20,000 --> 00:08:22,000 また少年たちもよく見えたと言っていました 152 00:08:22,000 --> 00:08:25,000 この東向きの写真は 153 00:08:25,000 --> 00:08:29,000 犯人の車が走り去った方向を撮りました 154 00:08:29,000 --> 00:08:34,000 父親と少年たちの背後の照明の 155 00:08:34,000 --> 00:08:36,000 状況の写真です 156 00:08:36,000 --> 00:08:40,000 ご覧の通り控えめに言っても乏しい光です 157 00:08:40,000 --> 00:08:44,000 これでは誰も十分な明るさとは言わないでしょう 158 00:08:44,000 --> 00:08:47,000 実際の光はこの写真の通りです 159 00:08:47,000 --> 00:08:51,000 私は法廷で証言するために この写真を撮りました 160 00:08:51,000 --> 00:08:54,000 というのも国際的な照度の単位であるルクスや 161 00:08:54,000 --> 00:08:56,000 石原式色覚検査のスコアについて 162 00:08:56,000 --> 00:09:00,000 非専門家に伝えたいときに 163 00:09:00,000 --> 00:09:05,000 一枚の写真は千の言葉を費やすよりも効果的だからです 164 00:09:05,000 --> 00:09:08,000 そうした抽象概念について 165 00:09:08,000 --> 00:09:11,000 科学的側面に詳しくない人たちに話すときは 166 00:09:11,000 --> 00:09:14,000 まさに百聞は一見に如かずなのです 167 00:09:14,000 --> 00:09:16,000 視覚の正接についての話なんて 168 00:09:16,000 --> 00:09:19,000 実に退屈でぼうっとなりますよ 169 00:09:19,000 --> 00:09:24,000 法廷における優れた専門家は教えることや 170 00:09:24,000 --> 00:09:26,000 コミュニケーションに秀でていなければなりません 171 00:09:26,000 --> 00:09:28,000 写真で見せることで 172 00:09:28,000 --> 00:09:31,000 光源の場所や光の届き方だけでなく 173 00:09:31,000 --> 00:09:33,000 事実を検証する人にとって 174 00:09:33,000 --> 00:09:37,000 状況をわかりやすくするのです 175 00:09:37,000 --> 00:09:40,000 これらは私が実際に証言の時に使った写真ですが 176 00:09:40,000 --> 00:09:43,000 これらは私が実際に証言の時に使った写真ですが 177 00:09:43,000 --> 00:09:45,000 それよりも重要なのが 科学者として私が 178 00:09:45,000 --> 00:09:47,000 計測した光度計の示した値です 179 00:09:47,000 --> 00:09:51,000 その結果を使って 実際の状況下で 180 00:09:51,000 --> 00:09:55,000 肉眼で何が見えるかを推測できます 181 00:09:55,000 --> 00:09:57,000 肉眼で何が見えるかを推測できます 182 00:09:57,000 --> 00:10:01,000 同じ太陽と月の条件で 183 00:10:01,000 --> 00:10:03,000 同時刻など条件を揃えて 184 00:10:03,000 --> 00:10:06,000 私が現場で計測した値から 185 00:10:06,000 --> 00:10:07,000 顔の認識に不可欠な色の認識については 186 00:10:07,000 --> 00:10:10,000 顔の認識に不可欠な色の認識については 187 00:10:10,000 --> 00:10:12,000 はなはだ心許ない夜目の状態だったと言えます 188 00:10:12,000 --> 00:10:14,000 はなはだ心許ない夜目の状態だったと言えます 189 00:10:14,000 --> 00:10:16,000 ものの輪郭をはっきりと捉えることも 190 00:10:16,000 --> 00:10:18,000 ほとんどできない状況です 191 00:10:18,000 --> 00:10:21,000 さらにこの光の下では瞳孔は開いた状態で 192 00:10:21,000 --> 00:10:25,000 50センチ未満の奥行きについてしか 193 00:10:25,000 --> 00:10:28,000 目の焦点を合わせて細部を見ることはできません 194 00:10:28,000 --> 00:10:33,000 目の焦点を合わせて細部を見ることはできません 195 00:10:33,000 --> 00:10:36,000 私は法廷でこのことを証言しました 196 00:10:36,000 --> 00:10:38,000 判事は本当に熱心に耳を傾けてくれましたが 197 00:10:38,000 --> 00:10:41,000 再審請求の大変長い 198 00:10:41,000 --> 00:10:45,000 意見聴取を経てきていたこともあり 199 00:10:45,000 --> 00:10:47,000 数字だけではなく 200 00:10:47,000 --> 00:10:51,000 何かもう一押しが必要なのではないかと 201 00:10:51,000 --> 00:10:53,000 何かもう一押しが必要なのではないかと 202 00:10:53,000 --> 00:10:56,000 なんとなく感じました 203 00:10:56,000 --> 00:10:58,000 そこで私は大胆にも 204 00:10:58,000 --> 00:11:00,000 判事に向かってこう願い出ました 205 00:11:00,000 --> 00:11:02,000 判事に向かってこう願い出ました 206 00:11:02,000 --> 00:11:04,000 「裁判官 ご自身で一度現場を ご覧になっては如何でしょうか?」 207 00:11:04,000 --> 00:11:07,000 「裁判官 ご自身で一度現場を ご覧になっては如何でしょうか?」 208 00:11:07,000 --> 00:11:10,000 お願いというより少し挑戦的な 口調だったかもしれませんが・・・(笑) 209 00:11:10,000 --> 00:11:13,000 お願いというより少し挑戦的な 口調だったかもしれませんが・・・(笑) 210 00:11:13,000 --> 00:11:17,000 にもかかわらず判事は誇りと勇気をもって言いました 211 00:11:17,000 --> 00:11:21,000 「行きましょう」 212 00:11:21,000 --> 00:11:25,000 これはアメリカの法の世界では驚くべきことです 213 00:11:25,000 --> 00:11:27,000 そして実際に私たちが事件と全く同じ状況下で 214 00:11:27,000 --> 00:11:29,000 現場の状況をふたたび再現し 215 00:11:29,000 --> 00:11:33,000 判事は郡保安官に護衛され 216 00:11:33,000 --> 00:11:38,000 仰々しい車列を組んで現れました (笑) 217 00:11:38,000 --> 00:11:44,000 我々は判事に 218 00:11:44,000 --> 00:11:47,000 実際に目撃者の少年たちが立っていた位置よりも 219 00:11:47,000 --> 00:11:49,000 少し銃撃犯の車に近い位置に立ってもらい 220 00:11:49,000 --> 00:11:52,000 彼は道路に向かって歩道の縁石から 数十センチの位置に立っていました 221 00:11:52,000 --> 00:11:54,000 彼は道路に向かって歩道の縁石から 数十センチの位置に立っていました 222 00:11:54,000 --> 00:11:57,000 そして少年たちが証言したとおりの車を走らせました 223 00:11:57,000 --> 00:12:02,000 そして少年たちが証言したとおりの車を走らせました 224 00:12:02,000 --> 00:12:04,000 運転席と助手席に人が乗っており 225 00:12:04,000 --> 00:12:08,000 判事の横を通り過ぎざま助手席の同乗者が 226 00:12:08,000 --> 00:12:11,000 判事に向けて手を伸ばし 227 00:12:11,000 --> 00:12:16,000 手は判事を指したまま 車は走り去ります 228 00:12:16,000 --> 00:12:18,000 少年たちの証言に従って行いました 229 00:12:18,000 --> 00:12:21,000 実物の銃ではなく 230 00:12:21,000 --> 00:12:23,000 証言された銃に似せた黒いものを 231 00:12:23,000 --> 00:12:25,000 手にしていました 232 00:12:25,000 --> 00:12:28,000 これがその時に判事が見た光景です 233 00:12:28,000 --> 00:12:35,000 これは判事から約9メートル先で 234 00:12:35,000 --> 00:12:38,000 助手席の窓からこちらに向かって腕が出ています 235 00:12:38,000 --> 00:12:41,000 助手席の窓からこちらに向かって腕が出ています 236 00:12:41,000 --> 00:12:43,000 これは約9メートルですが 237 00:12:43,000 --> 00:12:45,000 約4.5メートルと証言した少年もいました 238 00:12:45,000 --> 00:12:47,000 約4.5メートルと証言した少年もいました 239 00:12:47,000 --> 00:12:51,000 これで約4.5メートルです 240 00:12:51,000 --> 00:12:55,000 この時点で私は少し心配になっていました 241 00:12:55,000 --> 00:13:00,000 この判事は絶対に ポーカーの相手にはしたくない人物です 242 00:13:00,000 --> 00:13:04,000 まったく感情が表に出ないのです 眉一つ動かさず 243 00:13:04,000 --> 00:13:08,000 首を傾げることもありません 244 00:13:08,000 --> 00:13:11,000 まったく反応を読み取れませんでした 245 00:13:11,000 --> 00:13:14,000 この再現の後に 246 00:13:14,000 --> 00:13:15,000 彼は私に向き直って尋ねました 247 00:13:15,000 --> 00:13:18,000 「他に何か見せたいものはある?」 248 00:13:18,000 --> 00:13:23,000 手元にある科学的な計測データと 249 00:13:23,000 --> 00:13:26,000 正確な知識に励まされたのか 250 00:13:26,000 --> 00:13:30,000 あるいは被告弁護人の思うとおり 251 00:13:30,000 --> 00:13:32,000 私の完全な愚かさからか(笑) 252 00:13:32,000 --> 00:13:35,000 私の完全な愚かさからか(笑) 253 00:13:35,000 --> 00:13:36,000 私は言いました 254 00:13:36,000 --> 00:13:39,000 「はい裁判官 そちらでお立ちください 255 00:13:39,000 --> 00:13:43,000 車をもう一回りさせて目の前 256 00:13:43,000 --> 00:13:47,000 約1メートルのところで止めます 257 00:13:47,000 --> 00:13:51,000 そのまま助手席から腕を出して 258 00:13:51,000 --> 00:13:54,000 黒い物体をあなたに向けますから 259 00:13:54,000 --> 00:13:56,000 お気の済むまでそれをご覧下さい。」 260 00:13:56,000 --> 00:14:02,000 お気の済むまでそれをご覧下さい。」 261 00:14:02,000 --> 00:14:07,000 これが裁判官の目にした光景です (笑) 262 00:14:07,000 --> 00:14:10,000 皆さんもお気づきでしょうし 私も報告書に書きましたが 263 00:14:10,000 --> 00:14:13,000 光は主に北側からさしています 264 00:14:13,000 --> 00:14:15,000 つまり銃撃犯の顔は逆光になって見えないのです 265 00:14:15,000 --> 00:14:17,000 つまり銃撃犯の顔は逆光になって見えないのです 266 00:14:17,000 --> 00:14:19,000 さらに車の屋根が影になって 267 00:14:19,000 --> 00:14:24,000 車内をさらに暗くしています 268 00:14:24,000 --> 00:14:27,000 車内をさらに暗くしています 269 00:14:27,000 --> 00:14:31,000 これは約1メートル先の見え方です 270 00:14:31,000 --> 00:14:34,000 なぜわざわざこんなことをしたのか? 271 00:14:34,000 --> 00:14:38,000 視界が50センチもないことを知っていたからです 272 00:14:38,000 --> 00:14:40,000 それでは1メートル先というのは 273 00:14:40,000 --> 00:14:45,000 フットボールグラウンドの向こう側と同じことです 274 00:14:45,000 --> 00:14:47,000 判事はこれを見て 275 00:14:47,000 --> 00:14:51,000 法廷に戻りました 276 00:14:51,000 --> 00:14:53,000 証言を聴く時間が まだ数日残っていましたが 277 00:14:53,000 --> 00:14:56,000 結局判事は再審請求を受理しました 278 00:14:56,000 --> 00:14:59,000 結局判事は再審請求を受理しました 279 00:14:59,000 --> 00:15:01,000 さらに検察が再び彼を訴追する場合 280 00:15:01,000 --> 00:15:04,000 その弁護に備えられるよう 281 00:15:04,000 --> 00:15:10,000 カリヨ氏を釈放しました 282 00:15:10,000 --> 00:15:12,000 検察は彼を再び訴追することなく 283 00:15:12,000 --> 00:15:17,000 彼は晴れて自由の身となりました (拍手) 284 00:15:17,000 --> 00:15:21,000 (拍手) 285 00:15:21,000 --> 00:15:26,000 義理の祖母を抱きしめているところです 286 00:15:26,000 --> 00:15:31,000 裁判中に妊娠していた彼の恋人は 287 00:15:31,000 --> 00:15:35,000 男の子を生んでいました 288 00:15:35,000 --> 00:15:37,000 彼は今 息子と一緒に 289 00:15:37,000 --> 00:15:44,000 カリフォルニア州立大の ロングビーチ校で学んでいます(拍手) 290 00:15:44,000 --> 00:15:47,000 さて この事例で 291 00:15:47,000 --> 00:15:52,000 我々が心に留めておくべきことは何でしょうか? 292 00:15:52,000 --> 00:15:56,000 アメリカの法曹界では法学と科学は 293 00:15:56,000 --> 00:15:58,000 長い間犬猿の仲でした 294 00:15:58,000 --> 00:16:00,000 長い間犬猿の仲でした 295 00:16:00,000 --> 00:16:03,000 何十年と法廷に関わってきた専門家としての経験の中で 296 00:16:03,000 --> 00:16:08,000 法廷に科学を持ち込もうとして 297 00:16:08,000 --> 00:16:12,000 相手にされないというひどい話は尽きません 298 00:16:12,000 --> 00:16:17,000 相手方の法律家たちがいつも頑として反対するのです 299 00:16:17,000 --> 00:16:21,000 ここで提起したいのは 300 00:16:21,000 --> 00:16:23,000 我々が政策や手続きを通じて 301 00:16:23,000 --> 00:16:26,000 もっと法廷に科学を取り入れる必要性を 302 00:16:26,000 --> 00:16:29,000 支持することです 303 00:16:29,000 --> 00:16:31,000 それに向けての大きな一歩は 304 00:16:31,000 --> 00:16:33,000 全く失礼を言うようですが 305 00:16:33,000 --> 00:16:35,000 ロースクールにおいて 306 00:16:35,000 --> 00:16:41,000 科学・技術・工学・数学の 307 00:16:41,000 --> 00:16:43,000 必修科目としての比重を高めることです 308 00:16:43,000 --> 00:16:46,000 皆そこで学んで裁判官になるのですから 309 00:16:46,000 --> 00:16:49,000 我々がこの国で裁判官を選ぶ方法は 310 00:16:49,000 --> 00:16:53,000 他の国々とは大きく違っています 311 00:16:53,000 --> 00:16:55,000 もう一つ注意しなければならないと思うことは 312 00:16:55,000 --> 00:16:57,000 もう一つ注意しなければならないと思うことは 313 00:16:57,000 --> 00:16:59,000 私自身もいつも意識していることですが 314 00:16:59,000 --> 00:17:02,000 我々が真実だと信じて疑わない 315 00:17:02,000 --> 00:17:08,000 記憶についてです 316 00:17:08,000 --> 00:17:11,000 何十年にも及ぶ研究があり 317 00:17:11,000 --> 00:17:15,000 今回のような事例は実にたくさんあります 318 00:17:15,000 --> 00:17:17,000 すなわち一人ひとりは 319 00:17:17,000 --> 00:17:21,000 心底信じています 証言した少年たちは誰も 320 00:17:21,000 --> 00:17:23,000 間違った人物を選んでいるとは・・ 321 00:17:23,000 --> 00:17:26,000 犯人の顔を見られていないなどとは・・ 322 00:17:26,000 --> 00:17:29,000 全く思っていませんでした 323 00:17:29,000 --> 00:17:31,000 私たちは皆注意する必要があります 324 00:17:31,000 --> 00:17:35,000 私たちの記憶は全て再構成された記憶なのです 325 00:17:35,000 --> 00:17:37,000 それは元々の経験と 326 00:17:37,000 --> 00:17:40,000 その後に起こった全ての出来事によって作られ 327 00:17:40,000 --> 00:17:42,000 変化し続けるものです 328 00:17:42,000 --> 00:17:45,000 そして時には悪い作用も生み出します 329 00:17:45,000 --> 00:17:49,000 またそれは不安定で 我々はみな注意深くあらねばなりません 330 00:17:49,000 --> 00:17:52,000 我々の記憶はいかに鮮明であっても 331 00:17:52,000 --> 00:17:55,000 正しいとどれほど信じていても 332 00:17:55,000 --> 00:18:01,000 その正確さは測れないのです 333 00:18:01,000 --> 00:20:30,000 ご清聴ありがとうございました (拍手)