0:00:07.275,0:00:10.726 象は とても大きな生き物です 0:00:10.726,0:00:16.454 しかし その大きな体も1000兆以上もの[br]とても小さな細胞に負っています 0:00:16.454,0:00:18.765 また とても小さな生き物としては 0:00:18.765,0:00:21.966 おそらく何百万種もの[br]単細胞生物がいますが 0:00:21.966,0:00:25.476 肉眼で見えるものはほとんどありません 0:00:25.476,0:00:26.585 それは何故でしょう? 0:00:26.585,0:00:28.867 なぜ単細胞の象や 0:00:28.867,0:00:29.997 シロナガスクジラや 0:00:29.997,0:00:31.657 ヒグマはいないのでしょうか? 0:00:31.657,0:00:34.929 答えを探すには 細胞の内側を[br]覗く必要があります 0:00:34.929,0:00:37.986 ここで細胞のほとんどの営みが[br]起きています 0:00:37.986,0:00:40.247 細胞は細胞膜に包まれていて 0:00:40.247,0:00:43.876 物質が細胞を出入りする際の[br]出入り口となっています 0:00:43.876,0:00:46.037 細胞が消費する必要のある物質や 0:00:46.037,0:00:48.736 排出すべき老廃物は 0:00:48.736,0:00:51.497 先ずはこの細胞膜を通る必要があります 0:00:51.497,0:00:54.477 しかし 細胞の構造は 生物学上の[br]風変わりな特徴を有しています 0:00:54.477,0:00:58.476 細胞の表面積と体積は異なる[br]割合で大きくなります 0:00:58.476,0:01:00.717 細胞はいろんな形をしていますが 0:01:00.717,0:01:05.427 立方体だと考えると 計算が簡単になります 0:01:05.427,0:01:07.036 立方体には6つの面があります 0:01:07.036,0:01:11.545 これらの面が細胞膜を表していて[br]表面積となる部分です 0:01:11.545,0:01:14.636 立方体の1辺の長さは1マイクロメートル 0:01:14.636,0:01:16.757 つまり 1メートルの100万分の1です 0:01:16.757,0:01:21.137 全表面積は6平方マイクロメートルです 0:01:21.137,0:01:24.068 また体積は1立方マイクロメートルです 0:01:24.068,0:01:26.171 つまり表面積6単位で 0:01:26.171,0:01:28.601 体積1個分になり 0:01:28.601,0:01:30.787 6:1の比率です 0:01:30.787,0:01:38.086 しかし 比率は各辺の長さを10倍の[br]10マイクメートルにすると劇的に変化します 0:01:38.086,0:01:41.973 この細胞の表面積は[br]600平方マイクロメートルで 0:01:41.973,0:01:45.541 体積は1千立方マイクロメートルになります 0:01:45.541,0:01:48.457 わずか0.6:1の比率です 0:01:48.457,0:01:53.388 体積1単位分に対する面積は[br]1より小さくなっています 0:01:53.388,0:01:58.367 立方体が大きくなるにつれ 体積の方が[br]表面積より ずっと速く大きくなります 0:01:58.367,0:02:02.132 内部の体積が細胞膜の面積を上回り 0:02:02.132,0:02:08.088 表面積が小さすぎるため 物質が[br]素早く出入りすることができません 0:02:08.088,0:02:13.900 大きい細胞には老廃物が溜まり[br]遂に死滅し分解します 0:02:13.900,0:02:18.038 より小さい細胞が複数存在することには[br]別の利点もあります 0:02:18.038,0:02:22.768 もし1つの細胞に穴が開いたり 感染[br]あるいは破壊されても大きな問題になりません 0:02:22.768,0:02:26.320 しかし例外的に大きい細胞もいくつかあり 0:02:26.320,0:02:28.868 巧妙に生物の仕組みに適応してきました 0:02:28.868,0:02:30.889 その一つが身体の中で最も長い細胞 0:02:30.889,0:02:35.090 脊柱の基部から足まで伸びている[br]神経細胞です 0:02:35.090,0:02:37.621 長さを相殺するために[br]この神経はすごく細く 0:02:37.621,0:02:40.020 直径は数マイクロメートルしかありません 0:02:40.020,0:02:43.619 別の例は小腸にあります 0:02:43.619,0:02:47.450 そこでは絨毛という組織が折り畳まれ[br]小指状になっています 0:02:47.450,0:02:51.860 一つ一つの絨毛は[br]密に折り畳まれた膜組織でできていて 0:02:51.860,0:02:56.513 そこには微絨毛という小さなでこぼこがあり[br]表面積を増やしています 0:02:56.513,0:02:59.690 では単細胞生物の場合はどうでしょう? 0:02:59.690,0:03:05.450 30センチメートルに達することもある[br]イチイヅタという緑藻は 0:03:05.450,0:03:10.001 世界一大きい単細胞生物だと言われています 0:03:10.001,0:03:12.819 独特な生物学的進化を遂げたおかげです 0:03:12.819,0:03:16.222 シダの葉のような構造により[br]大きな表面積をもっています 0:03:16.222,0:03:20.513 イチイヅタは光合成により[br]栄養素を作ります 0:03:20.513,0:03:22.671 また 多核体でもあります 0:03:22.671,0:03:26.171 つまり 一つの細胞に[br]多数の核が含まれています 0:03:26.171,0:03:31.471 多細胞生物のように見えますが[br]細胞内部を隔てるものがありません 0:03:31.471,0:03:35.161 しかし最も大きい単細胞生物にも[br]限界があります 0:03:35.161,0:03:40.061 象 クジラ 熊ほど大きくはなりません 0:03:40.061,0:03:44.321 大きい生物にある[br]何兆個もの非常に小さな細胞は 0:03:44.321,0:03:47.152 その小ささゆえに全体として 0:03:47.152,0:03:50.251 地球上の巨大な生物が動き回るのに[br]まさに適しているのです