WEBVTT 00:00:01.097 --> 00:00:03.134 昨年の4月のことです 00:00:03.714 --> 00:00:06.775 ある晩 友人の誕生日祝いに 何人かで外出しました 00:00:07.677 --> 00:00:09.664 みんなで会うのは 数週間ぶりで 00:00:09.684 --> 00:00:12.600 久々の再会には ぴったりの夜でした NOTE Paragraph 00:00:13.220 --> 00:00:14.473 その夜の帰り道 00:00:14.497 --> 00:00:18.182 私はロンドンの反対側へと戻る 地下鉄の最終列車に乗りました 00:00:18.663 --> 00:00:20.455 道中は何事もなく 00:00:20.479 --> 00:00:21.987 最寄り駅に到着した私は 00:00:22.011 --> 00:00:24.038 家まで徒歩10分の道のりを 歩き始めました 00:00:25.159 --> 00:00:27.523 角を曲がって 自宅のある通りに入り 00:00:27.547 --> 00:00:29.303 家が視界に入ったところで 00:00:29.596 --> 00:00:30.824 背後で足音がしました 00:00:30.824 --> 00:00:32.821 不意に現れたその足音は 00:00:32.821 --> 00:00:34.241 急に迫ってきました 00:00:35.778 --> 00:00:38.305 何が起きているのか 把握する余裕もないうちに 00:00:38.329 --> 00:00:41.460 手で口をふさがれ 息ができなくなりました 00:00:41.484 --> 00:00:44.274 背後にいた若い男に 地面へと引きずり倒され 00:00:44.284 --> 00:00:46.334 頭を何度も 歩道に打ち付けられて 00:00:46.358 --> 00:00:48.340 顔から血が流れ出しました 00:00:48.364 --> 00:00:50.622 私の背中や首を蹴り飛ばしながら 00:00:50.636 --> 00:00:52.248 暴行に及び始めた男は 00:00:52.272 --> 00:00:54.734 助けを呼ぼうと 懸命にもがく私の 服を引きはがしながら 00:00:54.758 --> 00:00:56.637 「黙れ」と命令しました 00:00:57.423 --> 00:00:59.643 コンクリートの地面に 頭を叩き付けられるたびに 00:00:59.653 --> 00:01:02.773 意識の中で こだました思いは 今でも忘れることができません 00:01:03.118 --> 00:01:05.427 「これで私の人生は終わりなの?」 NOTE Paragraph 00:01:06.828 --> 00:01:09.740 まったく気づかなかったのですが 私は駅を出てから 00:01:09.764 --> 00:01:11.715 ずっと後をつけられていたのです 00:01:11.739 --> 00:01:13.002 数時間後 00:01:13.012 --> 00:01:16.510 私は上半身裸の下着一枚で 警察の前に立たされ 00:01:16.534 --> 00:01:19.366 体に残った切り傷や痣を 犯行の証拠として 00:01:19.380 --> 00:01:20.852 写真に撮られました NOTE Paragraph 00:01:21.956 --> 00:01:25.195 この瞬間から数週間にわたって 私を支配し 苦しめた― 00:01:25.219 --> 00:01:28.424 心の痛みや恥 動揺や憤りなどが ない交ぜになった気持ちは 00:01:28.448 --> 00:01:30.614 とても言葉では表せません 00:01:31.868 --> 00:01:34.492 でも こうした様々な気持ちを 何らかの形にすることで 00:01:34.516 --> 00:01:36.838 少しずつ消化していけるように 整理したいと思い 00:01:36.862 --> 00:01:38.997 一番自然に思える方法を とることにしました 00:01:39.292 --> 00:01:40.757 文章に書くことにしたのです NOTE Paragraph 00:01:41.149 --> 00:01:43.582 最初は気持ちを吐き出す 練習として始めました 00:01:43.606 --> 00:01:46.664 暴行犯に宛てた手紙を書き 00:01:46.688 --> 00:01:48.783 犯人に1人の人間である 「あなた」と呼びかけ 00:01:48.807 --> 00:01:51.684 あの晩 彼が激しく侵害した コミュニティの 00:01:51.708 --> 00:01:53.946 一員としての彼に話しかけました NOTE Paragraph 00:01:54.991 --> 00:01:57.265 彼の行いがもたらした 様々な余波を強調しながら 00:01:57.289 --> 00:01:58.505 こう書きました 00:01:58.820 --> 00:02:01.410 「周囲の人々について 考えたことはありましたか? 00:02:01.841 --> 00:02:04.178 あなたの人生にどんな人が 関わっているかは知りません 00:02:04.202 --> 00:02:06.159 あなたのことは何も知りません 00:02:06.183 --> 00:02:07.815 でも これだけはわかっています 00:02:07.839 --> 00:02:10.030 その晩 あなたが暴行したのは 私だけではないのです 00:02:10.323 --> 00:02:11.906 私は娘であり 友人であり 00:02:11.920 --> 00:02:13.545 姉妹であり 生徒であり 00:02:13.569 --> 00:02:14.871 従姉妹であり 姪であり 00:02:14.895 --> 00:02:16.062 隣人でもあります 00:02:16.086 --> 00:02:18.135 高架下のカフェで コーヒーを出している― 00:02:18.159 --> 00:02:19.792 従業員でもあります 00:02:20.362 --> 00:02:22.848 私とこうした関係で つながっている人たち 全員が 00:02:22.872 --> 00:02:24.585 私のコミュニティを作っています 00:02:24.629 --> 00:02:26.734 あなたはその全員に 暴行を働いたのです 00:02:27.418 --> 00:02:30.254 あなたは私が決して あきらめない真実を踏みにじった 00:02:30.278 --> 00:02:32.215 私の周囲の誰もが体現している真実— 00:02:32.239 --> 00:02:35.509 世界には悪人よりも善人の方が 圧倒的にたくさんいるという真実を」 NOTE Paragraph 00:02:36.790 --> 00:02:38.823 しかし 決して この1件のせいで 00:02:38.843 --> 00:02:42.500 自分のコミュニティや人類全体の 連帯感への信頼を失うまいと 00:02:42.530 --> 00:02:47.058 私は2005年7月の ロンドン同時爆破テロを思い起こしました 00:02:47.062 --> 00:02:49.946 あの時は 当時のロンドン市長や そして私の両親さえも 00:02:49.976 --> 00:02:52.777 翌日から地下鉄を利用すべきだと 主張したのでした 00:02:52.787 --> 00:02:54.894 自分たちを 不安に陥れた人々によって 00:02:54.914 --> 00:02:57.033 定義されたり 変えられたりしないためです NOTE Paragraph 00:02:57.490 --> 00:02:59.224 そこで暴行犯に こう語りかけました 00:02:59.680 --> 00:03:01.453 「あなたのしたことは爆破テロと同じ 00:03:01.463 --> 00:03:03.503 でも 私は今後も地下鉄に乗ります 00:03:04.122 --> 00:03:07.469 私のコミュニティの人々は 夜道を帰ることに不安を覚えたりしません 00:03:07.483 --> 00:03:09.116 私たちは終電に乗って帰宅するし 00:03:09.116 --> 00:03:10.674 帰り道を独りで歩きます 00:03:10.688 --> 00:03:13.198 これが自らを危険にさらす行動だ という考えなど 00:03:13.218 --> 00:03:16.166 受け入れるつもりはないし 社会にも根付かせたくないからです 00:03:16.190 --> 00:03:18.790 コミュニティの誰かに 危険が及びそうになったら 00:03:18.814 --> 00:03:21.761 私たちは軍隊のように団結し 戦い続けるでしょう 00:03:21.785 --> 00:03:24.115 この戦いに あなたの勝ち目はありません」 NOTE Paragraph 00:03:25.621 --> 00:03:27.428 この手紙を書いた時には― NOTE Paragraph 00:03:27.452 --> 00:03:28.827 (拍手) NOTE Paragraph 00:03:28.851 --> 00:03:29.996 ありがとう NOTE Paragraph 00:03:30.020 --> 00:03:32.020 (拍手) NOTE Paragraph 00:03:32.717 --> 00:03:33.921 この手紙を書いた時は 00:03:33.921 --> 00:03:35.900 オックスフォード大学での 試験期間中で 00:03:35.910 --> 00:03:38.098 大学の学生新聞で働いていました 00:03:38.098 --> 00:03:40.802 幸いなことに 家族や友人が 支えてくれましたが 00:03:40.812 --> 00:03:42.804 孤独な時期でもありました 00:03:42.814 --> 00:03:44.865 こんな経験をした人を 他に知らなかったし 00:03:44.895 --> 00:03:46.653 少なくとも 知らないと思っていました 00:03:46.663 --> 00:03:50.181 ニュースや統計から 性暴力が どれほどありふれているかは知っていましたが 00:03:50.211 --> 00:03:52.902 こうした経験を公にしている人を 00:03:52.932 --> 00:03:54.845 実際1人も知らなかったのです NOTE Paragraph 00:03:55.429 --> 00:03:57.886 そこで ちょっとした思いつきでは ありましたが 00:03:57.900 --> 00:04:00.946 書いた手紙を学生新聞に載せることで 00:04:00.970 --> 00:04:02.842 オックスフォード大学に いるであろう― 00:04:02.852 --> 00:04:06.273 似たような経験や同じ気持ちを持つ 誰かに届くことを願いました 00:04:06.297 --> 00:04:07.077 手紙の最後で 00:04:07.087 --> 00:04:09.107 経験談の投稿を読者に呼びかけました 00:04:09.127 --> 00:04:11.659 #NotGuilty(#私は悪くない) というハッシュタグで 00:04:11.673 --> 00:04:14.213 性暴力の被害者が 自分に起きた事件について 00:04:14.233 --> 00:04:16.983 恥や罪悪感を感じることなく 考えを述べていいのだと強調し 00:04:16.993 --> 00:04:20.209 私たち全員で性暴力に 立ち向かえると示すためです NOTE Paragraph 00:04:20.233 --> 00:04:23.085 全く想定外だったのですが ほんのひと晩のうちに 00:04:23.109 --> 00:04:25.107 この手紙は 一気に話題になりました 00:04:25.619 --> 00:04:28.145 あっという間に 世界中の男性や女性から 00:04:28.169 --> 00:04:29.756 何百もの体験談が寄せられ 00:04:29.776 --> 00:04:32.688 自分で立ち上げたウェブサイトに 掲載することにしました 00:04:32.702 --> 00:04:34.940 ハッシュタグは キャンペーンへと発展しました NOTE Paragraph 00:04:35.612 --> 00:04:39.342 子持ちの40代オーストラリア人女性は 夜の外出中に 00:04:39.366 --> 00:04:41.012 トイレまで男についてこられて 00:04:41.026 --> 00:04:43.272 何度も股間をつかまれたと 書きました 00:04:43.296 --> 00:04:44.742 オランダの ある男性は 00:04:44.752 --> 00:04:46.738 ロンドン訪問中に デートレイプに遭い 00:04:46.738 --> 00:04:50.174 被害を訴えても 誰も 取り合ってくれなかったそうです 00:04:50.184 --> 00:04:53.472 インドや南米の人々から フェイスブックでメッセージが届き 00:04:53.472 --> 00:04:56.793 どうしたらキャンペーンを 現地で広められるか相談されました 00:04:56.817 --> 00:04:59.971 当初 寄せられた体験談のひとつは ニッキーという女性からで 00:04:59.995 --> 00:05:02.812 自分の父親に性的虐待を 受けて育ったというものでした 00:05:02.836 --> 00:05:04.369 友人たちも話してくれました 00:05:04.383 --> 00:05:07.436 つい先週起こった出来事から 00:05:07.460 --> 00:05:10.757 何年も前の出来事まで 想像だにしなかったことばかりでした NOTE Paragraph 00:05:11.326 --> 00:05:13.529 こうしたメッセージが 送られてくるにつれ 00:05:13.559 --> 00:05:16.293 希望に満ちたメッセージも 送られてくるようになりました 00:05:16.317 --> 00:05:19.102 性暴力や被害者非難に立ち向かう コミュニティの声が 00:05:19.112 --> 00:05:20.930 人々に力を与えたのです 00:05:21.304 --> 00:05:22.643 オリヴィアという女性は 00:05:22.667 --> 00:05:24.792 長い間 信頼して 大切に思ってきた人に 00:05:24.802 --> 00:05:27.302 暴行を受けた時のことを 打ち明けてくれました 00:05:27.616 --> 00:05:29.658 「ここに投稿された話を たくさん読みました 00:05:29.678 --> 00:05:32.302 こんなに多くの女性が 前進できるのなら 私にもできると 00:05:32.312 --> 00:05:33.554 希望が持てました 00:05:33.588 --> 00:05:35.119 多くの話に心を動かされたし 00:05:35.129 --> 00:05:36.976 私も彼女たちのように 強くなりたいです 00:05:36.986 --> 00:05:38.310 きっと なってみせます」 NOTE Paragraph 00:05:39.082 --> 00:05:41.422 世界中の人々がツイッターで このハッシュタグを使い始め 00:05:41.452 --> 00:05:44.373 私の手紙は全国紙に取り上げられ 再掲載されました 00:05:44.393 --> 00:05:47.489 世界中で数カ国語に 翻訳もされました NOTE Paragraph 00:05:48.682 --> 00:05:51.016 ところで この手紙への メディアの注目について 00:05:51.040 --> 00:05:52.651 気になったことがありました 00:05:52.675 --> 00:05:54.753 何かが一面を飾るからには— 00:05:54.777 --> 00:05:57.744 「ニュース」と称されるからには 00:05:57.768 --> 00:06:01.148 目新しい または驚くべきこととして 扱われていることになります 00:06:01.172 --> 00:06:03.438 でも 性暴力は 目新しいものではありません 00:06:03.870 --> 00:06:06.781 他のタイプの不当行為と同じように 00:06:06.815 --> 00:06:08.753 常にメディアで報じられてきました 00:06:09.154 --> 00:06:10.382 しかし キャンペーンを通して 00:06:10.402 --> 00:06:12.983 こうした不当行為が 単なるニュースではなく 00:06:13.007 --> 00:06:16.329 実在の人々に影響を与えた 実体験として報じられました 00:06:16.349 --> 00:06:18.619 そこでは当事者同士が団結し 必要でありながらも 00:06:18.643 --> 00:06:20.934 存在しなかったものが 作り上げられていきました 00:06:20.958 --> 00:06:22.335 経験を打ち明ける場所や 00:06:22.359 --> 00:06:25.441 自分は独りではない 自分が悪いのではないという安心感 00:06:25.455 --> 00:06:29.424 そして この問題が被害者に与える 不名誉の軽減につながる開かれた議論です 00:06:29.458 --> 00:06:33.156 記事の前面に出ていたのは 実際に暴行を受けた人々の声であって 00:06:33.186 --> 00:06:36.416 ジャーナリストやソーシャルメディアの コメントではありませんでした 00:06:36.793 --> 00:06:39.246 だからこそ この話が ニュースであったのです NOTE Paragraph 00:06:40.229 --> 00:06:42.546 ネット社会である現代では あらゆる人同士がつながっており 00:06:42.556 --> 00:06:44.294 ソーシャルメディアが繁栄しています 00:06:44.304 --> 00:06:48.011 もちろん 社会に変革を起こすのに 素晴らしいツールではありますが 00:06:48.021 --> 00:06:50.698 おかげで 「反応」する文化が どんどん浸透してもいます 00:06:50.708 --> 00:06:54.119 「電車が遅れている」といった 些細な不平から 00:06:54.133 --> 00:06:58.524 戦争、大量虐殺、テロ攻撃といった 深刻な非道行為に対してまで 00:06:58.558 --> 00:07:02.056 何か不満の表明を見ると すぐに飛びついて「反応」し 00:07:02.056 --> 00:07:04.362 ツイートにフェイスブック投稿 ハッシュタグなど 00:07:04.382 --> 00:07:07.004 自分も反応したと 他人に見せるというものです NOTE Paragraph 00:07:07.798 --> 00:07:09.845 このように集団で 反応することの問題は 00:07:09.865 --> 00:07:12.600 時に 何の反応もしなかったことに 等しいということです 00:07:12.620 --> 00:07:14.989 結局 何もしていないのと 同じですからね 00:07:15.003 --> 00:07:16.535 気分は良くなるかもしれませんし 00:07:16.555 --> 00:07:19.510 悲しみや怒りの共有に 貢献したと思うかもしれませんが 00:07:19.520 --> 00:07:21.852 実際には何の変化も 起こしていないのです 00:07:21.876 --> 00:07:22.864 さらには 00:07:22.874 --> 00:07:24.942 本当に世間に 訴えかけようとしているような 00:07:24.952 --> 00:07:26.990 実際に悪事の影響を 被った人々の声を 00:07:27.014 --> 00:07:28.593 かき消してしまいさえします NOTE Paragraph 00:07:29.780 --> 00:07:32.667 同様に心配なのは 不正義に対する反応の一部が 00:07:32.687 --> 00:07:35.334 より多くの壁を作ってしまう傾向にあり 00:07:35.348 --> 00:07:37.404 複雑な問題に対して 簡単な解決策を出そうと 00:07:37.424 --> 00:07:39.857 性急に犯人探しをしてしまうことです 00:07:40.328 --> 00:07:42.981 イギリスのタブロイド紙のひとつは 私の手紙を掲載する際 00:07:42.991 --> 00:07:44.470 こういう見出しをつけました 00:07:44.474 --> 00:07:48.351 「オックスフォードの学生 暴行犯を辱める オンラインキャンペーンを開始」 00:07:49.567 --> 00:07:52.394 でも キャンペーンの目的は 決して誰かを辱めることではなく 00:07:52.407 --> 00:07:55.654 人々が発言し 耳を傾ける場を 作ることでした 00:07:56.186 --> 00:07:59.600 挑発的なツイッター荒らしは すぐに さらなる害を生みました 00:07:59.624 --> 00:08:02.574 暴行犯の人種や階級を書き立てて 00:08:02.598 --> 00:08:04.995 自分の偏見に満ちた考えを 広めようとしたのです 00:08:05.381 --> 00:08:09.522 中には 全部がでっち上げだと 決めつけてくる人もいました 00:08:09.546 --> 00:08:10.692 その人によると 00:08:10.956 --> 00:08:14.920 「男性嫌悪のフェミニズムの 拡散を狙った自作自演」だそうです NOTE Paragraph 00:08:14.974 --> 00:08:15.896 (笑) NOTE Paragraph 00:08:15.960 --> 00:08:16.780 笑えますよね 00:08:16.794 --> 00:08:19.103 まるで私が 「みんな! 悪いけど会えない 00:08:19.113 --> 00:08:23.682 三十路までに全ての男を嫌悪するのに 忙しいの」とでも言ってるかのようです NOTE Paragraph 00:08:23.691 --> 00:08:24.929 (笑) NOTE Paragraph 00:08:24.993 --> 00:08:27.171 これは確信があるんですが 00:08:27.195 --> 00:08:30.077 そういう人だって面と向かっては 言ってこないはずです 00:08:30.091 --> 00:08:31.637 でも ソーシャルメディア上では 00:08:31.657 --> 00:08:35.050 画面の向こう側にいて 自宅からアクセスしているせいか 00:08:35.065 --> 00:08:37.503 自分がしていることが 公的な行いであり 00:08:37.513 --> 00:08:40.509 他人に読まれ 影響を与えるということを 忘れているかのようです NOTE Paragraph 00:08:41.043 --> 00:08:43.942 地下鉄に乗ろうという 話に戻りますが 00:08:44.670 --> 00:08:45.897 もうひとつの大きな懸念は 00:08:45.907 --> 00:08:48.977 不当なことに対するネットでの反響が 増幅する「騒音」が 00:08:48.997 --> 00:08:52.656 いとも簡単に私たちを「被害者」として 描いてしまうことでした 00:08:52.666 --> 00:08:54.330 これは敗北主義につながります 00:08:54.350 --> 00:08:58.583 否定的な状況の後に 前向きになったり 変われる機会を見えにくくする— 00:08:58.603 --> 00:09:00.398 心理的な壁のようなものです NOTE Paragraph 00:09:01.092 --> 00:09:02.807 キャンペーンが始まる数ヶ月前 00:09:02.821 --> 00:09:04.316 いえ 全てが起こる前に 00:09:04.326 --> 00:09:06.562 私はオックスフォードの TEDxに行き 00:09:06.586 --> 00:09:08.631 ゼルダ・ラグレインジの 講演を聴きました 00:09:08.645 --> 00:09:10.806 ネルソン・マンデラの 元個人秘書です 00:09:10.830 --> 00:09:13.325 話の中で あるエピソードが 非常に心に残りました 00:09:13.755 --> 00:09:15.678 マンデラが 南アフリカ・ラグビー協会に 00:09:15.698 --> 00:09:16.968 訴えられた時のことです 00:09:17.002 --> 00:09:19.863 スポーツ不正について 協会の取り調べを要求したためでした 00:09:20.037 --> 00:09:20.862 法廷で 00:09:20.892 --> 00:09:24.203 マンデラはラグビー協会側の 弁護士団に歩み寄って 00:09:24.227 --> 00:09:25.191 握手をし 00:09:25.201 --> 00:09:27.728 それぞれの人と 相手の言語で 会話したといいます 00:09:27.748 --> 00:09:29.092 ゼルダは抗議しました 00:09:29.112 --> 00:09:31.189 協会が行った不正を考えれば 00:09:31.213 --> 00:09:33.448 敬意を払うべき相手ではないと NOTE Paragraph 00:09:33.897 --> 00:09:35.949 マンデラは振り向いて こう言ったそうです 00:09:36.374 --> 00:09:40.653 「決して敵に戦いのルールを 決めさせてはいけない」と NOTE Paragraph 00:09:41.900 --> 00:09:43.314 この言葉を耳にした時は 00:09:43.324 --> 00:09:45.996 これがなぜ そこまで大事なのかは わかりませんでしたが 00:09:46.026 --> 00:09:48.727 大事な気がして ノートに書き留めました 00:09:49.231 --> 00:09:51.998 以来 この言葉について 何度も考えています NOTE Paragraph 00:09:52.238 --> 00:09:54.809 自分に対して 不当な仕打ちをした人に 00:09:54.829 --> 00:09:56.715 復讐したり 憎悪を示したりすることは 00:09:56.739 --> 00:09:59.713 不正義に直面した際の 人間の本能のように思えるでしょうが 00:09:59.737 --> 00:10:01.731 この悪循環を断ち切る必要があります 00:10:01.755 --> 00:10:04.783 不正義という否定的な出来事を 肯定的な社会の変革へと 00:10:04.807 --> 00:10:06.620 転換しようと思うのならば 00:10:06.976 --> 00:10:07.999 さもなければ 00:10:08.013 --> 00:10:11.412 敵に戦いのルールを 決めさせ続けることになり 00:10:11.426 --> 00:10:12.722 二項対立を生みます 00:10:12.736 --> 00:10:15.210 つまり 不正を被った我々は 「被害者」となり 00:10:15.214 --> 00:10:17.704 彼ら「加害者」と 対立させられるのです 00:10:18.143 --> 00:10:20.097 テロ事件の後も 地下鉄に乗り続けたように 00:10:20.127 --> 00:10:23.143 人々をつなげ コミュニティを作る プラットフォームを 00:10:23.167 --> 00:10:25.669 決して敗北に甘んじることのない場に することが重要です NOTE Paragraph 00:10:27.072 --> 00:10:30.502 私はソーシャルメディアで 反応をするなと言っているのではありません 00:10:30.522 --> 00:10:32.943 #NotGuilty キャンペーンを 広められたのは 00:10:32.963 --> 00:10:34.991 ほぼ完全にソーシャルメディアの おかげです 00:10:35.011 --> 00:10:36.940 でも 不正義に対しての反応は 00:10:36.950 --> 00:10:39.017 もっとよく考えて 行ってほしいと思います NOTE Paragraph 00:10:39.057 --> 00:10:41.522 まずは 2つのことを 自問してみましょう 00:10:41.542 --> 00:10:44.334 1つ目は 「なぜ これが不正義だと思うのか?」 00:10:44.648 --> 00:10:46.944 私の場合 いくつか理由があります 00:10:46.998 --> 00:10:49.161 誰かが私や私の愛する人々を 傷つけたから― 00:10:49.185 --> 00:10:52.029 責任を問われたり 与えた損害を認識する必要がないという 00:10:52.049 --> 00:10:53.532 前提の下に実行したからです 00:10:53.546 --> 00:10:56.268 それだけでなく 何千人もの男女が日々 00:10:56.298 --> 00:10:58.110 性暴力を受け 泣き寝入りしているのに 00:10:58.140 --> 00:11:01.732 社会は 他の問題と同じようには 時間を割いて報道しません 00:11:01.766 --> 00:11:04.356 そして未だに被害者が責められます NOTE Paragraph 00:11:04.760 --> 00:11:08.122 2つ目に自問すべきは 「理由を踏まえた上で どうしたら 00:11:08.146 --> 00:11:09.912 これを変えられるだろうか?」 00:11:10.183 --> 00:11:13.831 私たちにとっての答えは 暴行犯や他の人々の責任を問うことでした 00:11:13.835 --> 00:11:16.471 彼らが引き起こした結果を 突きつけることでした 00:11:16.485 --> 00:11:19.203 そして 性暴力の問題が 報道で扱われる時間を増やし 00:11:19.233 --> 00:11:21.788 あまりに長い間 避けられてきた議論を 00:11:21.808 --> 00:11:23.813 友人や家族の間、メディアで再開し 00:11:23.833 --> 00:11:26.244 被害者には 自分を責めないようにと 00:11:26.244 --> 00:11:27.475 強調することでした 00:11:27.829 --> 00:11:30.931 問題を根絶するには この先 長い時間がかかるかもしれませんが 00:11:30.961 --> 00:11:31.746 こうすることで 00:11:31.766 --> 00:11:34.871 ソーシャルメディアを 社会正義のための有用なツールとして 00:11:34.891 --> 00:11:37.459 教育するツールとして 対話を生み出すツールとして 00:11:37.483 --> 00:11:40.393 権力を持つ人々に問題を訴え 実際に影響を受けた人々の声に 00:11:40.412 --> 00:11:43.403 耳を傾けさせるための ツールとして用いることができます NOTE Paragraph 00:11:44.112 --> 00:11:48.632 こうした問いへの答えは 容易に見つからないこともあり 00:11:48.646 --> 00:11:50.472 実際は まず見つかりません 00:11:50.755 --> 00:11:54.309 だからといって よく考えた上での 反応ができないわけではありません 00:11:54.420 --> 00:11:56.568 不正義に対する憤りを どうやって転換できるか 00:11:56.568 --> 00:11:58.527 考えつかないような場合でも 00:11:58.547 --> 00:12:01.371 何をできるかではなく 何を「しない」という選択ができるか 00:12:01.395 --> 00:12:03.314 考えることはできます 00:12:03.681 --> 00:12:08.477 さらなる偏見や憎悪で不正義を叩いて 壁を増やさないという選択はできます 00:12:08.894 --> 00:12:12.736 実際に被害を受けた人々の声を かき消さないようにすることはできます 00:12:13.121 --> 00:12:17.100 不正義について反応したはいいけれど 翌日には話題が移ったからと 00:12:17.124 --> 00:12:19.572 忘れてしまわないよう 気をつけることはできます NOTE Paragraph 00:12:20.078 --> 00:12:24.265 時には すぐに反応をしないことが 皮肉なことではありますが 00:12:24.289 --> 00:12:27.093 目下の最善策であることもあるのです 00:12:27.919 --> 00:12:31.859 不正義によって 怒り 動揺し 血がたぎっているかもしれませんが 00:12:32.219 --> 00:12:34.742 どう反応しようかと あえて考えてみましょう 00:12:35.413 --> 00:12:37.453 しかるべき責任を問いながらも 00:12:37.473 --> 00:12:41.659 不正義に飛びつき 他人を貶めて喜ぶ社会に 自ら陥らないようにしましょう 00:12:42.345 --> 00:12:43.726 インターネットのユーザーが 00:12:43.736 --> 00:12:46.214 あまりに忘れがちな 00:12:46.238 --> 00:12:48.818 「批判」と「罵倒」の区別を 忘れないようにしましょう 00:12:49.330 --> 00:12:51.110 画面を前にしているからといって 00:12:51.120 --> 00:12:53.541 発言する前に考えることを 忘れないようにしましょう 00:12:53.591 --> 00:12:55.742 ソーシャルメディアで 騒ぎを起こす時には 00:12:55.752 --> 00:12:58.114 実害を受けた人々の訴えを かき消すのではなく 00:12:58.148 --> 00:13:00.589 彼らの声を増幅させましょう 00:13:00.613 --> 00:13:03.569 インターネットを 自分の経験を語っても独りではないと 00:13:03.579 --> 00:13:05.737 思えるような場所に していきましょう NOTE Paragraph 00:13:06.521 --> 00:13:08.398 不正義に対する このような姿勢は 00:13:08.428 --> 00:13:11.544 インターネットの根本原理を 彷彿とさせます 00:13:12.317 --> 00:13:14.572 「情報網を築く」 「信号を出す」「接続する」― 00:13:14.596 --> 00:13:17.118 こうした言葉にはどれも 人々を「切り離す」のではなく 00:13:17.138 --> 00:13:18.985 「つなげる」という意味合いがあります NOTE Paragraph 00:13:19.443 --> 00:13:23.165 「正義」と言う言葉を 辞書で引いてみてください 00:13:23.977 --> 00:13:25.243 「罰」という定義より前に 00:13:25.267 --> 00:13:28.543 「法の執行」や 「司法権」よりも前に 00:13:29.529 --> 00:13:30.775 こう書いてあります 00:13:30.799 --> 00:13:33.061 「正しいことを持続させること」 00:13:33.794 --> 00:13:37.560 人々がつながり合い 団結すること以上に 00:13:37.584 --> 00:13:39.320 この世界で「正しい」ことは 00:13:39.344 --> 00:13:40.776 ほとんどないと思います 00:13:41.395 --> 00:13:43.892 ソーシャルメディアで それを可能にできれば 00:13:43.916 --> 00:13:47.954 実に力強い「正義」を もたらすことができるでしょう NOTE Paragraph 00:13:48.447 --> 00:13:49.776 どうもありがとうございました NOTE Paragraph 00:13:49.780 --> 00:13:52.455 (拍手)