1 00:00:00,917 --> 00:00:03,825 この新型コロナウイルスに どうやって打ち勝てるのでしょう? 2 00:00:04,317 --> 00:00:06,948 私たちの持つ最良の道具 3 00:00:06,972 --> 00:00:09,201 科学とテクノロジーを使います 4 00:00:09,594 --> 00:00:12,726 私の研究室では人工知能(AI)と 5 00:00:12,750 --> 00:00:14,329 合成生物学を使って 6 00:00:14,353 --> 00:00:17,413 今回のパンデミックと戦う スピードを上げています 7 00:00:18,078 --> 00:00:19,941 この技術の本来の用途は 8 00:00:19,965 --> 00:00:22,818 抗生物質への耐性という 危機的状況への対策でした 9 00:00:22,842 --> 00:00:27,531 このプロジェクトで探っているのは 機械学習の力を使って 10 00:00:27,555 --> 00:00:29,401 抗生物質という武器を補強し 11 00:00:29,425 --> 00:00:33,263 世界にとって壊滅的な 抗生物質時代後の世界を回避することです 12 00:00:33,685 --> 00:00:36,505 ここで重要なのは 同じテクノロジーを使って 13 00:00:36,529 --> 00:00:38,601 抗ウイルス化合物を探し 14 00:00:38,625 --> 00:00:41,303 今のパンデミックとの戦いに 役立てられることです 15 00:00:42,080 --> 00:00:43,502 機械学習により 16 00:00:43,522 --> 00:00:47,379 従来の治療薬発見モデルが 完全な様変わりを遂げようとしています 17 00:00:47,414 --> 00:00:48,659 このアプローチでは 18 00:00:48,683 --> 00:00:52,761 苦労して何千もの既存の分子について 19 00:00:52,785 --> 00:00:54,221 一つひとつ 研究室で 20 00:00:54,245 --> 00:00:55,832 その効用を検査せずに 21 00:00:55,856 --> 00:01:00,513 コンピューターに学習させることで はるかに大きな規模での探索をして 22 00:01:00,537 --> 00:01:04,121 合成可能なすべての分子を あたることができます 23 00:01:04,145 --> 00:01:09,759 したがって 干し草の山の中にある 1本の針を探すのではなく 24 00:01:09,783 --> 00:01:13,543 計算能力という巨大な磁石を使って 25 00:01:13,567 --> 00:01:17,482 複数の干し草の山で 同時に たくさんの針を見つけられるのです 26 00:01:18,423 --> 00:01:20,415 すでに初期的な成功がいくつか出ています 27 00:01:21,010 --> 00:01:26,475 最近 機械学習を使ってコロナ感染と 同時に発生する可能性がある 28 00:01:26,499 --> 00:01:29,059 細菌感染症に効果が期待される 29 00:01:29,083 --> 00:01:32,694 新しい抗生物質を発見しました 30 00:01:33,181 --> 00:01:37,350 2か月前に TEDの 「Audacious Project」の助成で 31 00:01:37,374 --> 00:01:39,562 私たちの研究を大幅に スケー ルアップでき 32 00:01:39,586 --> 00:01:44,214 7つの新しいクラスの 抗生物質の発見を目的として 33 00:01:44,238 --> 00:01:47,721 世界中の7つの致死率の高い 細菌病原体との戦いを 34 00:01:47,745 --> 00:01:49,800 今後7年かけて行うことになりました 35 00:01:50,206 --> 00:01:51,939 この背景として 36 00:01:51,963 --> 00:01:53,891 新しいクラスの抗生物質が 37 00:01:53,915 --> 00:01:57,150 過去30年以上の間に 1つも発見されていません 38 00:01:58,030 --> 00:02:01,601 新しい抗生物質を探す旅は 中期的な未来のためのものですが 39 00:02:01,625 --> 00:02:06,277 新型コロナウイルスは 差し迫った 死の脅威をもたらします 40 00:02:06,291 --> 00:02:10,084 喜ばしいことに 同じテクノロジーを使って 41 00:02:10,118 --> 00:02:12,927 このウイルスと闘う治療薬を 探せそうなのです 42 00:02:13,486 --> 00:02:15,205 どのようにするのでしょうか? 43 00:02:15,229 --> 00:02:17,850 まず 化合物トレーニング ライブラリを作って 44 00:02:17,850 --> 00:02:23,743 共同研究者とともに これらの分子を コロナに感染した細胞の培養に加えて 45 00:02:23,767 --> 00:02:27,661 どれが効果的に働くかを 確認します 46 00:02:28,175 --> 00:02:31,367 これらのデータは機械学習モデルの 精度を向上するのに用いられ 47 00:02:31,391 --> 00:02:35,461 10億を超える分子からなる コンピュータライブラリに適用され 48 00:02:35,485 --> 00:02:39,689 可能性のある 新しい 抗ウイルス化合物を探し出します 49 00:02:40,324 --> 00:02:42,982 上位の予測を統合して検証し 50 00:02:43,006 --> 00:02:45,895 最も有望な候補に臨床試験を行います 51 00:02:46,356 --> 00:02:48,134 話がうますぎますか? 52 00:02:48,158 --> 00:02:49,590 いや そんなことはありません 53 00:02:49,614 --> 00:02:52,939 抗生物質AIプロジェクトは 概念実証研究に基づいており 54 00:02:52,963 --> 00:02:56,364 新しい広域抗生物質の 発見につながりました 55 00:02:56,388 --> 00:02:57,573 ハロシンと呼ばれるものです 56 00:02:58,443 --> 00:03:01,256 ハロシンは強力な 抗菌活性を持っていて 57 00:03:01,280 --> 00:03:05,382 ほとんどすべての抗生物質耐性のある 細菌性病原体に対抗できます 58 00:03:05,406 --> 00:03:09,047 治療不可能な汎耐性感染症も 含めてです 59 00:03:09,862 --> 00:03:12,132 重要なのは 現在の抗生物質とは対照的に 60 00:03:12,156 --> 00:03:15,850 細菌がハロシンに対して 耐性を生じる頻度は 61 00:03:15,874 --> 00:03:17,358 顕著に低いのです 62 00:03:18,303 --> 00:03:23,013 細菌が耐性をつくる能力が あるかどうかを ハロシンと 63 00:03:23,037 --> 00:03:24,825 シプロに対して 研究室で検証しました 64 00:03:25,299 --> 00:03:26,841 シプロの場合は 65 00:03:26,865 --> 00:03:29,690 たった一日で 耐性が見られました 66 00:03:30,213 --> 00:03:31,691 ハロシンの場合は 67 00:03:31,715 --> 00:03:33,830 一日たった後では 耐性は全く見られませんでした 68 00:03:34,479 --> 00:03:37,781 驚くべきことに 30日後でも 69 00:03:37,805 --> 00:03:40,406 ハロシンに対する耐性は 全く見られなかったのです 70 00:03:41,098 --> 00:03:46,624 予備プロジェクトでは まずO-157に 対する約2,500の化合物を検証しました 71 00:03:47,259 --> 00:03:50,039 このトレーニングセットには 良く知られた抗生物質 72 00:03:50,063 --> 00:03:51,809 つまりシプロやペニシリン 73 00:03:51,833 --> 00:03:54,105 さらに抗生物質以外の 多くの薬物が含まれていました 74 00:03:54,984 --> 00:03:57,571 これらのデータで モデルをトレーニングし 75 00:03:57,595 --> 00:04:01,573 抗菌作用に関連する 分子の特徴を学ばせました 76 00:04:02,269 --> 00:04:04,970 そして このモデルを 数千の分子から構成された 77 00:04:04,994 --> 00:04:07,472 薬物再利用ライブラリに適用し 78 00:04:07,496 --> 00:04:10,114 抗菌作用をもつと予測されるが 79 00:04:10,138 --> 00:04:12,922 既存の抗生物質とは似ていない分子を 80 00:04:12,946 --> 00:04:15,419 見つけるよう そのモデルに指示しました 81 00:04:16,427 --> 00:04:21,224 面白いのは そのライブラリの中で この基準に当てはまった唯一の 82 00:04:21,248 --> 00:04:23,584 分子がハロシンだったのです 83 00:04:24,444 --> 00:04:27,532 ハロシンは既存の抗生物質とは 全く似ていないため 84 00:04:27,556 --> 00:04:31,710 抗生物質の専門家であっても 人間には この方法でハロシンを 85 00:04:31,734 --> 00:04:33,918 見つけるのは不可能だったでしょう 86 00:04:34,574 --> 00:04:39,099 この技術によって コロナウイルスに対して 何ができるか想像してください 87 00:04:39,783 --> 00:04:41,148 それだけではありません 88 00:04:41,172 --> 00:04:43,992 合成生物学の手法を使って 89 00:04:44,016 --> 00:04:46,627 DNAや細胞内分子を模倣して いろいろな分子を合成し 90 00:04:46,651 --> 00:04:50,561 コロナウイルスとの戦いのような 人類の目的に貢献します 91 00:04:50,585 --> 00:04:54,232 さらに注目すべきは 迅速な診断検査にも役立てられる 92 00:04:54,256 --> 00:04:57,688 保護マスクを開発していることです 93 00:04:58,192 --> 00:04:59,664 どのように機能するのでしょう? 94 00:04:59,688 --> 00:05:00,893 最近 私たちは 95 00:05:00,917 --> 00:05:03,860 生きている細胞から 細胞内容物を取り出し 96 00:05:03,884 --> 00:05:07,976 紙の上にRNAのセンサーと ともに凍結乾燥し 97 00:05:08,000 --> 00:05:12,916 低コストでエボラやジカの 診断キットを作れることを証明しました 98 00:05:13,503 --> 00:05:18,730 センサーが 患者のサンプル 例えば 血液や唾液などで 99 00:05:18,754 --> 00:05:21,576 湿潤されると活性化されます 100 00:05:21,600 --> 00:05:24,861 実は このテクノロジーは 紙に限らず 101 00:05:24,885 --> 00:05:27,771 布を含む別の素材にも 応用可能なのです 102 00:05:28,671 --> 00:05:30,613 コロナウイルス・パンデミックに対しては 103 00:05:30,627 --> 00:05:34,897 ウイルス検出を目的として RNAセンサーをデザインし 104 00:05:34,907 --> 00:05:38,117 必要な細胞内容物とともに 凍結乾燥して 105 00:05:38,241 --> 00:05:40,948 マスクの布地に組み込みます 106 00:05:40,972 --> 00:05:43,201 そうすると呼吸するだけで 107 00:05:43,225 --> 00:05:45,502 呼吸に伴って生じる水分で 108 00:05:45,526 --> 00:05:47,286 RNAセンサーを活性化できます 109 00:05:47,804 --> 00:05:52,064 したがって 患者が コロナウイルスに感染していると 110 00:05:52,088 --> 00:05:54,161 マスクが蛍光シグナルを生成し 111 00:05:54,185 --> 00:05:58,015 単純で安価な手持ち機器で 検出できるようになります 112 00:05:58,534 --> 00:06:03,018 このようにして 1~2時間のうちに患者は 113 00:06:03,042 --> 00:06:06,014 安全に 離れた場所で そして正確に診断されます 114 00:06:06,735 --> 00:06:09,255 また 私たちは合成生物学を使って 115 00:06:09,279 --> 00:06:11,999 コロナウイルスのワクチン候補の デザインもしています 116 00:06:13,014 --> 00:06:15,667 私たちは結核の予防に 百年近く使われていた 117 00:06:15,691 --> 00:06:18,561 BCGワクチンを再利用しています 118 00:06:18,585 --> 00:06:20,126 これは弱毒生ワクチンで 119 00:06:20,150 --> 00:06:24,807 コロナウイルス抗原を 発現するようにデザインし 120 00:06:24,831 --> 00:06:27,645 免疫機能による防御抗体の生産を 121 00:06:27,669 --> 00:06:29,304 誘発します 122 00:06:29,328 --> 00:06:32,062 重要なのは BCGが非常に大量生産しやすく 123 00:06:32,086 --> 00:06:36,659 報告されているワクチンの中で 最良の安全性を持つことです 124 00:06:37,881 --> 00:06:42,986 合成生物学とAIという手法を用いて 125 00:06:43,010 --> 00:06:46,358 新型コロナウイルスとの戦いに 勝つことができるのです 126 00:06:47,018 --> 00:06:49,999 この研究はごく初期の段階ですが 実に将来性があります 127 00:06:50,798 --> 00:06:54,243 科学技術は我々に 重要なアドバンテージを与え 128 00:06:54,267 --> 00:06:57,428 人知と超耐性菌の遺伝子との 戦いにおいて 129 00:06:57,452 --> 00:06:59,199 勝利をもたらしてくれます 130 00:06:59,990 --> 00:07:01,223 ありがとうございました