WEBVTT 00:00:00.730 --> 00:00:03.614 起こり得る最悪のことは何だと思いますか 00:00:04.336 --> 00:00:06.558 ちょうど10年ほど前 00:00:06.582 --> 00:00:10.307 ものすごく寒い診察室に座って 00:00:10.331 --> 00:00:12.828 初めて会う腫瘍医を待っていました 00:00:12.852 --> 00:00:14.787 おびえていました 00:00:14.811 --> 00:00:18.788 当時の私のパートナーが すぐそばに座っていたのにもかかわらず 00:00:18.812 --> 00:00:20.787 完全に孤独な気分でした 00:00:21.298 --> 00:00:24.284 乳癌と診断されたばかりだったのです 00:00:24.308 --> 00:00:25.934 その当時見た限りでは 00:00:25.958 --> 00:00:30.131 右肺のスキャン画像に映っていた 白い影が 00:00:30.155 --> 00:00:33.090 癌が既に広がっていることを 意味していました 00:00:33.719 --> 00:00:36.159 転移性乳癌でした 00:00:36.701 --> 00:00:39.166 当時の私はまだ医学を学ぶ前でしたが 00:00:39.190 --> 00:00:41.743 本当に癌なのなら どういうことなのかは知っていました 00:00:42.076 --> 00:00:44.360 不治の乳癌です 00:00:45.745 --> 00:00:48.263 末期の乳癌です 00:00:48.988 --> 00:00:51.390 私は27歳で 00:00:51.414 --> 00:00:54.075 医大に入学を 許可されたばかりでしたが 00:00:54.099 --> 00:00:57.357 もう人生は終わりなのか と思いました NOTE Paragraph 00:00:58.438 --> 00:01:03.006 新しく担当になった腫瘍医は 温かい人柄の持ち主ではありませんでした 00:01:04.047 --> 00:01:06.371 多くの優秀な医師がするように 00:01:06.395 --> 00:01:08.774 シンプルな事実にしか興味がなく 00:01:09.747 --> 00:01:13.673 「私達の体は細胞でできています」 と彼女は話し始めました 00:01:14.311 --> 00:01:15.941 私は話を遮りました 00:01:16.385 --> 00:01:18.574 「私はじきに医大で勉強し始めるので 00:01:18.598 --> 00:01:19.828 そんな事は知っています」 00:01:20.796 --> 00:01:25.493 彼女は これを振り出しに戻れという 合図として受け取る代わりに 00:01:25.517 --> 00:01:27.227 話を進めました 00:01:27.251 --> 00:01:31.188 癌の進行を制御するために 化学療法を始める必要があると言い 00:01:31.212 --> 00:01:34.744 さらに薬と副作用と 治療スケジュールについての 00:01:34.768 --> 00:01:35.989 詳細を話し始めました 00:01:36.542 --> 00:01:40.504 私は まだ肺の白い影の 生検してさえいないのだと指摘し 00:01:40.528 --> 00:01:44.474 確かに癌なのかと尋ねました NOTE Paragraph 00:01:45.282 --> 00:01:50.748 私の質問に対し 彼女が苛立ちを隠せない 様子だったのを はっきり憶えています 00:01:50.772 --> 00:01:54.266 おそらく私が彼女の説明に ついてこれないと思ったか 00:01:54.290 --> 00:01:57.129 それどころか 現実を否定しているように 思ったのでしょう 00:01:57.935 --> 00:02:01.372 患者として 私は単に 理解してほしかったのです― 00:02:01.396 --> 00:02:06.730 この生検は わかりきった結論を証明する ただの形式的なものである以上に 00:02:06.754 --> 00:02:11.057 鋼の針で皮膚 筋肉 骨を貫き 00:02:11.081 --> 00:02:13.866 私の体の奥深くの組織の一部を取り出して 00:02:13.866 --> 00:02:18.251 問う必要がなければどんなに良かったか という問いに答えてしまうものである と 00:02:18.251 --> 00:02:20.663 生検を受ける前の私は 00:02:20.687 --> 00:02:25.578 転移性乳癌を患っている 可能性があるかもしれない27歳の女性 00:02:25.602 --> 00:02:29.023 というより 転移性乳癌を患っている 可能性の高い女性に過ぎませんでした 00:02:29.047 --> 00:02:31.427 これは重要な違いなのです 00:02:31.451 --> 00:02:35.970 しかし 最高の腫瘍学研修においてさえも 重要視されていません 00:02:36.774 --> 00:02:40.771 代わりに 私はほんの数週間先に 治療初日の予約を入れられ 00:02:40.795 --> 00:02:42.487 退室させられました NOTE Paragraph 00:02:43.531 --> 00:02:47.185 この初診日以降 本当にたくさんのことが起きました 00:02:47.209 --> 00:02:50.459 皮肉なことに この生検はやはり 単なる形式的なものではありませんでした 00:02:50.483 --> 00:02:53.514 当時の担当腫瘍医は正しかったのです NOTE Paragraph 00:02:53.538 --> 00:02:54.661 (笑) NOTE Paragraph 00:02:54.685 --> 00:02:56.273 生検の結果 癌でしたが 00:02:56.297 --> 00:03:00.237 全く違う場所に存在する 肺癌でした 00:03:00.261 --> 00:03:02.256 おかしな言い方をしますが 00:03:02.280 --> 00:03:04.996 これは素晴らしいニュースでした 00:03:05.020 --> 00:03:07.596 転移性乳癌はなかったのです 00:03:07.620 --> 00:03:09.909 2つの異なる癌が見つかりましたが 00:03:09.933 --> 00:03:12.377 でもどちらも限局性で 00:03:12.401 --> 00:03:14.655 肺癌は手術で取り除けるほど 00:03:14.679 --> 00:03:16.563 局部に限定されていました 00:03:16.587 --> 00:03:18.899 そして目まぐるしい 「攻め」の治療が始まりました 00:03:18.909 --> 00:03:21.996 肺の手術に続く化学療法 00:03:22.020 --> 00:03:26.228 最後は 28歳の誕生日直後の 乳房手術でした NOTE Paragraph 00:03:26.925 --> 00:03:28.623 そして2週間後 00:03:29.298 --> 00:03:31.431 医大での勉強が始まったのです 00:03:32.360 --> 00:03:34.675 今度の新しい担当腫瘍医は — NOTE Paragraph 00:03:34.699 --> 00:03:35.733 (笑) NOTE Paragraph 00:03:35.757 --> 00:03:40.626 事実と 事実に伴うニュアンスの両方を もっと柔軟に考えてくれる人で 00:03:40.650 --> 00:03:42.323 もっともな提案をしてくれました 00:03:42.323 --> 00:03:46.195 医大への入学を一年間延長して 00:03:46.219 --> 00:03:49.954 休養し 回復するための時間を 取ってはどうか というものです 00:03:49.978 --> 00:03:51.793 その通りだと思いました 00:03:51.817 --> 00:03:56.442 集中的な化学療法のセッションを ひどくつらいと感じていました 00:03:56.466 --> 00:03:58.077 それで学長に手紙を書きました 00:03:58.101 --> 00:04:00.125 私の置かれた状況を説明したところ 00:04:00.149 --> 00:04:02.648 入学の延期は迅速に許可されました NOTE Paragraph 00:04:03.460 --> 00:04:06.910 しかし化学療法の副作用が落ち着き 正気にかえった私は 00:04:06.117 --> 00:04:09.232 これから1年 何をすればいいんだろうと思いました 00:04:09.804 --> 00:04:12.201 ビーチで過ごすとか? NOTE Paragraph 00:04:12.225 --> 00:04:13.257 (笑) NOTE Paragraph 00:04:13.281 --> 00:04:15.704 私はそんなに ビーチ好きでもありませんでした 00:04:15.728 --> 00:04:16.806 (笑) NOTE Paragraph 00:04:16.830 --> 00:04:20.851 それにどっちみち人生は あと何年残されているのでしょう? 00:04:20.875 --> 00:04:23.029 私は本当に医大へ 行きたかったのです 00:04:23.053 --> 00:04:26.300 それが私の人生のパズルに欠けている 1つのピースでした NOTE Paragraph 00:04:26.474 --> 00:04:30.018 そんな訳で ぐずぐずと 決断しないでいるのはやめて 00:04:30.042 --> 00:04:33.044 自分に問いかけました 「起こり得る最悪のことって何?」 00:04:33.068 --> 00:04:36.882 仕事ができなくなるほど弱ったり 病気になったりするかもしれません 00:04:36.906 --> 00:04:39.328 精神的にとても辛いかもしれません 00:04:39.352 --> 00:04:42.279 医大を退学になるかもしれません 00:04:42.279 --> 00:04:45.209 でも 改めて その年起きた 人生最悪の出来事に比べたら 00:04:45.209 --> 00:04:47.990 大したことないだろうと思いました 00:04:47.115 --> 00:04:50.380 だったら始めれば? 00:04:50.580 --> 00:04:54.123 自分の生きたいように 生き続ければいいじゃない 00:04:54.571 --> 00:04:56.218 そうすることにしました NOTE Paragraph 00:04:56.242 --> 00:04:58.221 髪は全部抜けガリガリに痩せましたが 00:04:58.245 --> 00:05:01.894 一番いいイヤリングと お気に入りのワンピースを身に着け 00:05:01.918 --> 00:05:03.624 医大に入学しました 00:05:03.648 --> 00:05:05.807 最初は無理していましたが 00:05:05.831 --> 00:05:07.480 だんだん馴染み始めました 00:05:07.888 --> 00:05:11.029 それがどれだけ大変だったか 言葉では説明し尽くせません 00:05:11.053 --> 00:05:13.509 時には こんなの無理だと 思う日もありました 00:05:13.533 --> 00:05:17.847 将来何の役の立たないことを やっているような気までしました 00:05:18.312 --> 00:05:21.780 しかし毎日 自問自答しました 「これ 今でも楽しい?」 00:05:21.804 --> 00:05:23.963 「これはまだやりたいことなの?」 00:05:24.451 --> 00:05:26.651 そして毎日 答えは「はい」でした 00:05:26.675 --> 00:05:29.175 時々はかなり条件の厳しい 「はい」でしたが 00:05:29.199 --> 00:05:30.619 それでも「はい」でした NOTE Paragraph 00:05:31.079 --> 00:05:33.465 やっと落ち着いてきた頃 00:05:33.489 --> 00:05:37.208 医大を退学しないで 済むかもと思い始めた頃 00:05:37.232 --> 00:05:40.377 もっと衝撃的なことが判明しました 00:05:40.401 --> 00:05:47.032 私のTP53又は略してp53と呼ばれる 遺伝子に変異があると分かったのです 00:05:47.056 --> 00:05:50.934 ゲノムの守護者として知られる p53遺伝子の変異です 00:05:50.958 --> 00:05:55.782 p53遺伝子はDNAの修復を司ります 00:05:56.166 --> 00:05:59.666 この遺伝子の変異は DNAの間違いが 修正されないことを意味します 00:05:59.690 --> 00:06:03.702 正常な細胞が癌細胞になってしまう確率が はるかに高いということなのです 00:06:04.358 --> 00:06:06.250 それを知って 突如 00:06:06.274 --> 00:06:09.351 私の病歴と 残酷なほどに 辻褄が合うことに気づきました 00:06:09.524 --> 00:06:14.044 私は7歳で横紋筋肉腫という 小児癌にかかったことがあります 00:06:14.068 --> 00:06:16.074 10代の頃再発しました 00:06:16.098 --> 00:06:19.709 これらはすべてp53が研究室で 発見される前のことでした 00:06:20.221 --> 00:06:23.661 そして若年成人乳癌と肺癌を患いました NOTE Paragraph 00:06:24.373 --> 00:06:26.368 この遺伝子変異について知り 00:06:26.386 --> 00:06:29.023 私が将来患うかもしれない癌は 00:06:29.047 --> 00:06:32.164 限りなくあるように思えました 00:06:33.414 --> 00:06:34.749 それでも 00:06:34.773 --> 00:06:38.753 私は放射線腫瘍医になることを 決心したのです NOTE Paragraph 00:06:38.777 --> 00:06:39.841 (笑) NOTE Paragraph 00:06:39.865 --> 00:06:43.885 うまくいけば 研修医としての病院勤務も あと数ヶ月で修了し 00:06:43.909 --> 00:06:45.384 新しい都市に引越し 00:06:45.408 --> 00:06:50.560 医師そして研究者として 実質初めての仕事に就くつもりです 00:06:50.882 --> 00:06:53.265 私には闘志があるし 00:06:53.289 --> 00:06:54.910 恵まれてもいる 00:06:54.934 --> 00:06:57.317 治療の助けもあるし 00:06:57.341 --> 00:07:01.864 治療に当たってくれる医療チームと 家族と先生達もいます 00:07:02.595 --> 00:07:06.704 それに 遺伝子診断が前に進む為の知識を 00:07:06.728 --> 00:07:08.496 与えてくれるはずでもあるからです NOTE Paragraph 00:07:08.683 --> 00:07:11.701 それでも 2020年においてでさえ 00:07:11.725 --> 00:07:16.406 それが奇跡的な治療法や 医学的な新発見を約束するわけではありません 00:07:16.993 --> 00:07:20.043 ひどく打ちのめされるような 遺伝子診断を下されるのは 00:07:20.067 --> 00:07:23.381 不確実性と共に 生きることを学ぶということです 00:07:24.028 --> 00:07:26.059 それは病に冒された自分も診断結果も 00:07:26.059 --> 00:07:29.805 起こり得る最悪のことではないと 学ぶという意味です 00:07:30.291 --> 00:07:32.393 不確実性と共存することを 学ぶということは 00:07:32.417 --> 00:07:35.811 美しくも難しい課題に満ちた人生に 00:07:35.837 --> 00:07:39.564 歩み出すという意味です 00:07:39.911 --> 00:07:44.856 癌は人生の物語のほんの一部に過ぎないと 経験をもって知るという意味です 00:07:44.880 --> 00:07:47.392 人生最悪なことは 癌ではないかもしれません 00:07:47.416 --> 00:07:49.323 そうだったとしても いいんです 00:07:49.347 --> 00:07:51.724 それも人生の一部だと認め 引き受けてください 00:07:51.780 --> 00:07:55.572 ただし 自分で創作し 自らこれでいいと 認める物語にしましょう 00:07:55.596 --> 00:07:58.634 他の誰かに書かれた物語ではなくです 00:07:58.658 --> 00:08:02.896 他の人のアドバイスに従ってもいいですが 最終的には自分で決断してください NOTE Paragraph 00:08:04.353 --> 00:08:07.075 腫瘍科の研修も終わりに差しかかり 00:08:07.099 --> 00:08:10.537 患者としての経験から 次のような場面で 何度も既視感を覚えます 00:08:10.561 --> 00:08:12.531 患者が癌を患っています 00:08:12.555 --> 00:08:14.317 幾つかの選択肢があります 00:08:14.341 --> 00:08:20.286 どの程度の治療をすることによって どの程度生活の質が損なわれるかのバランスや 00:08:20.310 --> 00:08:24.166 苦しみを和らげる可能性と 00:08:24.190 --> 00:08:27.098 苦しみをもたらす可能性の バランスはすべて異なります 00:08:27.122 --> 00:08:29.202 腫瘍医が選択肢を説明しますが 00:08:29.226 --> 00:08:32.540 話が進むうちにおかしな話になってきます 00:08:32.564 --> 00:08:34.614 選択肢が限られてきてしまうのです 00:08:34.638 --> 00:08:37.957 「あなたは治療を受けることも選んでも 00:08:37.981 --> 00:08:40.566 治療しないことを選んでも構いません 00:08:41.394 --> 00:08:45.735 攻めの癌治療をしてもいいですし 00:08:45.759 --> 00:08:47.157 経過観察してもいいです」 00:08:47.844 --> 00:08:50.412 そして10回のうち9.9回は 00:08:50.436 --> 00:08:54.050 「受けられる治療はすべて受けたいです」 と患者は言います 00:08:54.655 --> 00:08:56.350 もちろんです 00:08:56.374 --> 00:08:59.815 「すべて」を欲しがらない人がいますか? NOTE Paragraph 00:09:00.446 --> 00:09:02.219 でも 「すべて」とは何でしょうか 00:09:02.601 --> 00:09:08.424 自宅で窓の前に座ることのできる健康状態で 00:09:08.448 --> 00:09:11.677 陽射しを浴びて家族に囲まれることですか? 00:09:12.041 --> 00:09:16.043 それとも 指とつま先の 感覚を失っていないということですか ― 00:09:16.067 --> 00:09:18.749 化学療法で麻痺してしまわずに? 00:09:19.609 --> 00:09:24.181 腫瘍医にとって「すべて」とは 癌治療のことです 00:09:24.672 --> 00:09:29.962 放射線と手術と化学療法と 新しい治療法のことです 00:09:29.986 --> 00:09:32.383 そして腫瘍医にとって 起こり得る最悪のこととは — 00:09:32.407 --> 00:09:35.121 複数の腫瘍医がこう言うのを 聞いたことがありますが ― 00:09:35.145 --> 00:09:36.731 起こり得る最悪のこととは 00:09:36.755 --> 00:09:39.715 患者の転移性疾患が広がることです 00:09:39.739 --> 00:09:43.306 または 今から5年経ったら 00:09:43.330 --> 00:09:46.583 癌が進行し 治療の放射線量を 増やさないといけなくなることです NOTE Paragraph 00:09:47.047 --> 00:09:49.667 患者であり 腫瘍医でもある私は 00:09:49.691 --> 00:09:53.843 これらの結果が悲惨ではないとは 決して言いません 00:09:53.867 --> 00:09:55.929 でもこれらは最悪のことでしょうか? 00:09:56.192 --> 00:09:58.691 癌のコントロールを 00:09:58.715 --> 00:10:01.942 いかなる時も中心に据えて 考えるべきなのでしょうか? NOTE Paragraph 00:10:03.567 --> 00:10:09.552 たくさんの言葉にできない 計り知れない痛みを伴う 残酷なことが 00:10:09.571 --> 00:10:14.507 癌と遺伝子変異のせいで 私に起こりました 00:10:14.845 --> 00:10:19.031 それでもまだ 私は本当に 幸運だと考えています 00:10:19.055 --> 00:10:22.153 最悪のことは決して起こらなかったからです 00:10:22.902 --> 00:10:28.183 私はむごたらしさと不確実性を 人生に迎え入れたものの 00:10:28.207 --> 00:10:30.712 それらを人生の中心には 置かなかったからです 00:10:30.736 --> 00:10:33.348 転移性乳癌を患っていると 診断された時 00:10:33.372 --> 00:10:37.539 別の医師の意見を求めボストンに行きました 他に失うものなんてないでしょう? 00:10:37.563 --> 00:10:41.935 新しい担当医が非常に良く 安全で 標準的な 入学延期の助言をくれたものの 00:10:41.959 --> 00:10:44.171 私は結局 医大での勉強を始めました 00:10:44.195 --> 00:10:47.207 積極的な癌治療中なのは おかまいなしでした NOTE Paragraph 00:10:48.390 --> 00:10:51.402 他の癌患者を敬遠する代わりに 00:10:51.426 --> 00:10:53.768 放射線腫瘍医になりました 00:10:53.792 --> 00:10:56.255 そして私と似た境遇の患者を 扱っています 00:10:56.279 --> 00:10:57.622 毎日です 00:10:58.325 --> 00:11:01.234 自分がもし癌で死んだ場合 00:11:01.234 --> 00:11:05.620 将来の伴侶に与える苦悩を想像する代わりに 00:11:05.644 --> 00:11:08.644 素晴らしい男性と結婚しました 00:11:09.278 --> 00:11:11.475 なぜなら起こり得る最悪のこととは 00:11:11.499 --> 00:11:14.728 いつでも ネガティブ思考の連鎖だからです 00:11:14.752 --> 00:11:18.974 やりたいことをやって埋めるべき 人生のページが空白になってしまいます NOTE Paragraph 00:11:20.351 --> 00:11:26.518 このようなまったくの不確かさに対して 私が向き合った最大のものは何でしょう? 00:11:27.656 --> 00:11:30.835 この子はウィリアムです 00:11:32.064 --> 00:11:37.830 私が出会った中で最も喜びに満ちた人間で 00:11:38.691 --> 00:11:43.937 1年余りで すでに周りの人々を 幸せな気持ちにしてくれました NOTE Paragraph 00:11:46.341 --> 00:11:50.263 腫瘍医として 私達は患者達に 00:11:50.287 --> 00:11:52.188 まるで起こり得る最悪のこととは 00:11:52.212 --> 00:11:54.490 彼らの癌が再発したり 00:11:54.514 --> 00:11:57.598 広がったり そのせいで 死ぬことであるかのように話します 00:11:58.071 --> 00:12:00.888 患者として これらのことは 最も重要なことだと知っています 00:12:00.912 --> 00:12:03.812 でも私は こんな 癌に人生を決められるような考え方を改め 00:12:03.836 --> 00:12:07.600 そして私達腫瘍医が患者とこれについて どう話し合うかを変えたいのです 00:12:08.171 --> 00:12:09.702 患者として 00:12:09.726 --> 00:12:14.545 起こり得る最悪のこととは 癌がチャンスを奪うことです 00:12:14.569 --> 00:12:16.564 なりたいものになる能力や 00:12:16.588 --> 00:12:17.901 やりたいことをやる機会や 00:12:17.925 --> 00:12:19.542 愛したいものを愛する力を 00:12:20.044 --> 00:12:21.474 癌は奪ってしまうでしょう 00:12:21.594 --> 00:12:24.276 少なくとも一時的には奪います 00:12:24.802 --> 00:12:28.032 でも この「人生の損失」を 生きていく上で最小限に抑えること 00:12:28.056 --> 00:12:34.262 それは いっそう難しいことではありますが 腫瘍医のすべき仕事の本質に近いとも言えます 00:12:34.436 --> 00:12:36.910 つまり 持っているすべての手段を 00:12:36.934 --> 00:12:41.461 患者の生活全般にわたる状況に用いること 00:12:41.485 --> 00:12:45.505 どのように患者が苦痛を受け入れるかの 案内役となり 00:12:45.529 --> 00:12:47.713 苦痛と共存する難しさへの深い理解を見せ 00:12:47.737 --> 00:12:52.820 未来の苦痛への恐怖を 患者の人生の物語に入れさせないことです NOTE Paragraph 00:12:54.053 --> 00:12:58.615 私のメンターの1人はいつも 医学的な面は扱いやすいと言います 00:12:59.571 --> 00:13:03.491 若輩の医師である私は 決してそのようには感じませんが 00:13:03.515 --> 00:13:06.204 医学には明確な定義があります 00:13:06.695 --> 00:13:12.680 手引きとなる権威的な医学研究が多くあり それを研修医のうちに学びます 00:13:13.695 --> 00:13:18.181 医師にとってより難しいのは 各患者が 00:13:18.203 --> 00:13:22.876 自分の病気による幾多の試練を切り抜けるのを どうやって助けるかを学ぶことです NOTE Paragraph 00:13:24.548 --> 00:13:29.618 振り返ってみると 本当に面白いと思うのですが 00:13:29.642 --> 00:13:32.380 私の人生はきっちりとした 組み立てセットのように見えます 00:13:32.938 --> 00:13:37.134 まるで私自身が 連続するステップを それぞれ計画したかのようです 00:13:37.158 --> 00:13:41.693 もしかして癌は私の人生に良いものを もたらしてくれたのかもしれません 00:13:42.285 --> 00:13:45.672 まずステップ1で 医大に申し込み 00:13:45.696 --> 00:13:49.107 ステップ2で 癌だと診断され治療を受けました 00:13:49.131 --> 00:13:51.580 そしてステップ3で すべてを手に入れました 00:13:51.604 --> 00:13:54.085 仕事と家族の両方です 00:13:55.266 --> 00:13:57.520 でも聞いてください 00:13:57.941 --> 00:14:02.586 各ステップが大きな賭けでした 00:14:02.610 --> 00:14:07.028 どれに対しても 身のすくむような 不確実性を承知で飛び込みました 00:14:08.102 --> 00:14:09.798 そしてその勇気こそ 00:14:09.822 --> 00:14:12.698 私が自分の患者一人ひとりに 与えようとしているものです 00:14:13.287 --> 00:14:15.910 それを医療の技術的な詳細 つまり 00:14:15.910 --> 00:14:20.721 癌や 治療法の決定や 遺伝子変異などに 関係なく与えようと試みています 00:14:21.425 --> 00:14:25.940 当たるか外れるかわからない 「予後」という 想像の話は度外視します 00:14:26.637 --> 00:14:29.483 私は患者達が何を欲しがり 00:14:29.507 --> 00:14:31.444 何を必要とし 00:14:31.468 --> 00:14:35.224 何を望んで 何を心配しているのか 00:14:36.239 --> 00:14:39.232 何についての理想を持ち 00:14:40.400 --> 00:14:43.258 何が彼らをかつて 生き生きとさせていたのか 00:14:43.282 --> 00:14:49.901 そして何が癌治療のむごたらしい過程の間 彼らを支えるのかを知ろうと努めています 00:14:51.082 --> 00:14:54.538 それらを知るのに実際 それほど時間はかかりません 00:14:55.746 --> 00:15:00.252 意識して練習することで修得される 集中した 心静かな時間を何回か持てば 00:15:00.296 --> 00:15:03.233 知ることができます 00:15:04.956 --> 00:15:07.720 でもこれは医師と患者の共同作業であること 00:15:08.487 --> 00:15:10.482 それが重要なのです 00:15:11.538 --> 00:15:14.587 なぜなら起こり得る最悪のこととは 00:15:14.611 --> 00:15:18.468 すべてをやってくれる腫瘍医を 持つことだからです 00:15:18.951 --> 00:15:24.079 あらゆることを 癌の治療の為にしてくれますが 00:15:24.103 --> 00:15:26.919 患者が自分の人生を歩む援助は 00:15:26.984 --> 00:15:29.024 何もしてくれない医者なのです 00:15:30.587 --> 00:15:31.913 ありがとうございました 00:15:31.937 --> 00:15:36.460 (拍手)