WEBVTT 00:00:00.232 --> 00:00:01.773 はい!どうもアバタローです。 00:00:01.773 --> 00:00:03.734 本日は外山滋比古(とやましげひこ)さんの 00:00:03.734 --> 00:00:06.385 [思考の整理学]を 紹介させていただきます。 00:00:06.385 --> 00:00:09.264 1986年に刊行されてから 00:00:09.264 --> 00:00:12.144 200万部を突破した 異例のロングセラーであり 00:00:12.144 --> 00:00:17.328 更に、東大・京大で一番読まれた本、という キャッチコピーでも、大変有名な 00:00:17.328 --> 00:00:19.494 ”思考法のバイブル” でございます。 00:00:19.494 --> 00:00:22.530 学ぶことに対して 意欲的な方は勿論のこと。 00:00:22.530 --> 00:00:25.673 物を考えることに 苦手意識を持っている方 00:00:25.673 --> 00:00:27.759 一人で考え込みすぎてしまう方。 00:00:27.759 --> 00:00:32.645 焦ると頭が真っ白になってしまうという方に 特にお勧めしたい1冊です。 00:00:32.645 --> 00:00:34.632 そこで、この動画では 本書の内容を 00:00:34.632 --> 00:00:37.951 [集中力を爆発させる「朝」の過ごし方] 00:00:37.951 --> 00:00:40.344 [アイデアを生み出す時間の使い方] 00:00:40.344 --> 00:00:42.600 [思考力を上げる忘却システム] 00:00:42.600 --> 00:00:45.337 [かかわってはいけないタイプの人] というように 00:00:45.337 --> 00:00:49.200 大きく4つのテーマに沿って 分かりやすく紹介をしてまいります。 00:00:49.200 --> 00:00:53.846 30年以上前に書かれた作品とは思えないほど 鮮度が保たれているのは 00:00:53.846 --> 00:00:57.860 コンテンツそのものの力もありますが 著者である外山先生が 00:00:57.860 --> 00:01:03.009 本書に込めた、ある一つの願いという要素も 大きな役割を果たしています。 00:01:03.136 --> 00:01:05.472 それが一体 どういうものなのか、ということは 00:01:05.472 --> 00:01:07.976 動画の後半に行きますと 見えて参りますので 00:01:07.976 --> 00:01:10.241 どうぞ、最後まで お付き合いいただければと思います。 00:01:10.241 --> 00:01:11.466 それでは、参りましょう。 00:01:11.466 --> 00:01:13.930 外山滋比古『思考の整理学』 00:01:13.930 --> 00:01:17.489 さぁ、まずはこの動画の 全体像について、お示し致します。 00:01:17.489 --> 00:01:20.310 はじめに、著者である 外山滋比古さんが何者で 00:01:20.310 --> 00:01:25.428 本書がどんな意図をもって書かれているのか という、前提知識を整理いたします。 00:01:25.453 --> 00:01:28.556 その後、冒頭に申し上げた 4つのテーマに沿って 00:01:28.556 --> 00:01:31.710 『思考の整理学』の要点について お伝えしたいと思います。 00:01:31.710 --> 00:01:34.618 では、早速1つ目。 著者について見て行きましょう。 00:01:34.618 --> 00:01:39.113 『外山滋比古さん』と言えば お茶の水女子大学で教授を務められていた 00:01:39.113 --> 00:01:41.964 『英米文学』『言語学』の専門家です。 00:01:41.964 --> 00:01:44.285 ただ、ご自身の研究分野に止まらず 00:01:44.285 --> 00:01:49.603 『教育論』『ジャーナリズム論』といった 幅広い分野で、評論・執筆活動を続け 00:01:49.603 --> 00:01:51.564 幅広くご活躍をされていました。 00:01:51.564 --> 00:01:56.453 また、いま画面に出しておりますのが 外山先生が執筆された書籍の一部です。 00:01:56.453 --> 00:01:59.433 このように、たくさんの作品を 残されているのですが 00:01:59.433 --> 00:02:03.093 その中でも脅威的なヒット作として 殿堂入りしているのが 00:02:03.093 --> 00:02:05.193 [思考の整理学]と、いうわけです。 00:02:05.193 --> 00:02:08.674 今回の各論に入る前に まず、押さえておいていただきたいのは 00:02:08.674 --> 00:02:11.786 外山先生が持たれている 問題意識です。 00:02:11.786 --> 00:02:15.402 つまり、どんな意図をもって この本を書いたのかという 00:02:15.402 --> 00:02:18.985 出発点をきちんと 理解しておくことが重要なんです。 00:02:18.985 --> 00:02:20.706 それは一体、何かというと 00:02:20.706 --> 00:02:23.228 これまでの学校教育です。 00:02:23.228 --> 00:02:25.361 学校は誰もが行くべき場所だ! 00:02:25.361 --> 00:02:29.608 そこでは誰もが、教師に従い 決められたカリキュラムに従い 00:02:29.608 --> 00:02:33.394 教科書に従って 学習をしなければならないのだ。 00:02:33.715 --> 00:02:36.524 こういった、学校信仰的な考え方は 00:02:36.524 --> 00:02:40.430 「もう、やめましょうよ」、というのが 外山先生のスタンスなんです。 00:02:40.445 --> 00:02:43.655 自分の力ではなく 誰かの力によって 00:02:43.655 --> 00:02:47.084 一生懸命、知識を得ている 学校の生徒たちを 00:02:47.084 --> 00:02:51.054 外山先生は、憐れみを込めて [グライダー人間]と名付けます。 00:02:51.054 --> 00:02:54.244 グライダーというのは ”空の女王” とも呼ばれるぐらい 00:02:54.484 --> 00:02:58.073 音もたてずに、優雅に空を 飛ぶことのできる乗り物です。 00:02:58.073 --> 00:03:02.176 ただグライダーは、飛行機のように 大きな音は、立てないものの 00:03:02.176 --> 00:03:06.013 自分の力で 空に舞い上がることができないのです。 00:03:06.013 --> 00:03:08.958 そして、学校というのは 引っ張られるがまま 00:03:08.958 --> 00:03:13.515 何処にでもついて行くような 従順なグライダー人間を作り出す訓練所だ。 00:03:13.515 --> 00:03:17.268 決して、自ら飛ぶ 『飛行機人間』を作る場所ではないのだ。 00:03:17.268 --> 00:03:21.303 「それに早く、気づいてください」と 外山先生は、そのように言うわけです。 00:03:21.303 --> 00:03:25.053 つまり、詰込み型教育によって 自分で物を考え 00:03:25.344 --> 00:03:29.446 新しい事を生み出すことができない 『グライダー人間』が 00:03:29.446 --> 00:03:34.186 量産されてしまっている、という現状に 強い問題意識を持たれていたのです。 00:03:34.401 --> 00:03:37.117 ただ、誤解のないように 申し上げておきますと、本書では 00:03:37.117 --> 00:03:39.616 グライダーとしての 能力なんかもう要らない!とか。 00:03:39.616 --> 00:03:41.518 学校なんか、不要だ!とか。 00:03:41.668 --> 00:03:44.589 そういった、極端な 批判しているわけではありません。 00:03:44.589 --> 00:03:48.778 人間には『グライダー能力』と 『飛行機能力』という、2つの力があって 00:03:48.778 --> 00:03:54.289 この両者を持っておくことが、大事なのだ という、バランスの取れた主張を展開しているんです。 00:03:54.289 --> 00:03:58.035 具体的には 受動的に知識を得るために必要なのが 00:03:58.035 --> 00:03:59.151 『グライダー能力』 00:03:59.151 --> 00:04:04.362 一方、自力で物事を発明・発見する際に 求められるのが『飛行機能力』です。 00:04:04.423 --> 00:04:08.049 じゃあ、なぜ『グライダー能力』を 全否定していないか、と言えば 00:04:08.049 --> 00:04:12.392 何を学ぶにしても、基本的 知識の習得が必須だからです。 00:04:12.460 --> 00:04:15.496 基礎というのは 『グライダー能力』によって築かれる為 00:04:15.496 --> 00:04:17.868 決して、「要らない」と 言ってるわけではないです。 00:04:17.868 --> 00:04:21.045 もしかしたら 30年以上前の学校教育も 00:04:21.045 --> 00:04:24.306 そういった、理想を 掲げていたのかもしれませんし 00:04:24.306 --> 00:04:25.600 詳細は分かりません。 00:04:25.600 --> 00:04:28.532 ただ、外山先生から見た 当時の社会というのは 00:04:28.532 --> 00:04:30.473 『グライダー能力』ばかりが発達し 00:04:30.473 --> 00:04:32.815 自から飛行できない人が、五万といて 00:04:32.815 --> 00:04:36.204 更に、そういった人間こそが 社会では必要とされ 00:04:36.487 --> 00:04:38.656 優秀とみなされているじゃないか、と。 00:04:38.656 --> 00:04:40.739 本書で、そのように嘆いたわけです。 00:04:40.739 --> 00:04:44.826 もちろん、立派な指導者がいて 目標がハッキリしている、という 00:04:44.826 --> 00:04:49.694 一定の条件が満たされているのであれば 『グライダー能力』は必要ですし 00:04:49.694 --> 00:04:52.180 高く評価されて 然るべきものです。 00:04:52.180 --> 00:04:55.550 しかし、少なくとも 本書が書かれた1980年代には 00:04:55.550 --> 00:04:58.580 ”もう直ぐ、そんな時代は終わる” という事が 分かっていました。 00:04:58.580 --> 00:05:01.970 つまり、コンピューターという 『グライダー能力』に優れた存在が 00:05:02.171 --> 00:05:08.103 近い将来、人間の仕事を奪うことは予想できており その上で、外山先生は警鐘を鳴らしていたんです。 00:05:08.200 --> 00:05:12.102 しかし、当時の社会の中で 完全にグライダー人間をやめてしまえば 00:05:12.102 --> 00:05:13.929 当然、生きづらくなってしまいます。 00:05:13.929 --> 00:05:17.055 かといって、グライダー専業を 続けるのも無理があるんです。 00:05:17.055 --> 00:05:20.615 その上で、外山先生は本書で 自前のグライダーに 00:05:20.615 --> 00:05:23.843 エンジンを搭載してみてはどうか、と 提案したんです。 00:05:23.843 --> 00:05:28.809 つまり、『グライダ―能力』と『飛行機能力』を 兼ね備えた人間になるべきだ、と言ったわけです。 00:05:28.917 --> 00:05:30.861 ただ、そのために どうすればいいか、なんて 00:05:30.861 --> 00:05:34.867 誰も知りませんし、正解なんかありません。 その上で、外山先生は 00:05:34.867 --> 00:05:38.246 「じゃあ、この本を通じて 一緒に考えようじゃないか」と言って 00:05:38.246 --> 00:05:40.668 本題がスタートする という流れになるわけです。 00:05:40.668 --> 00:05:44.072 さぁ、ここまでよろしいでしょうか。 では、以上の点を踏まえて 00:05:44.072 --> 00:05:48.359 さっそく本書を、4つのテーマに沿って 見ていきたいと思います。では、1つ目。 00:05:48.359 --> 00:05:52.255 [集中力を爆発させる「朝」の過ごし方] から見ていきましょう。 00:05:52.255 --> 00:05:56.829 人間の頭は、夜よりも朝の方が 優秀であるように思える。 00:05:56.829 --> 00:06:00.610 昨晩、散々手こずった仕事が 一晩寝て朝になって 00:06:00.610 --> 00:06:05.116 もう一度やったら、嘘のように片付いてしまった。 そんな経験はないだろうか? 00:06:05.152 --> 00:06:08.500 実は、40歳ぐらいまで 私は、夜型だったのだが 00:06:08.500 --> 00:06:11.963 朝の効能に気づき始めてから 朝方に切り替えた。 00:06:11.963 --> 00:06:16.770 若い時は体力もあるので、ムリも効くが 年齢と共にそれが、できなくなる。 00:06:16.905 --> 00:06:20.283 つまり、人は年齢と共に 自然に還っていくのだ。 00:06:20.283 --> 00:06:24.409 勿論、極端な早起きは厳しいが 出来れば、朝食の前には 00:06:24.409 --> 00:06:26.771 なるべく、たくさんのことを 片付けておきたい。 00:06:26.771 --> 00:06:29.009 その為には、どうすればいいのだろうか。 00:06:29.009 --> 00:06:31.972 答えは簡単だ。 朝食を抜いてしまえばいい。 00:06:31.972 --> 00:06:34.533 そして、朝食と昼食を同時に取る。 00:06:34.533 --> 00:06:36.624 所謂、ブランチにすればいいのだ。 00:06:36.624 --> 00:06:41.640 腹が満たされた状態というのは 消化のために血液が採られ、頭はボーッとする。 00:06:41.830 --> 00:06:45.482 一方、空腹であれば 全てを忘れて仕事に没頭できる。 00:06:45.622 --> 00:06:49.202 つまり、ブランチにしてしまえば ランチタイムまで、集中して 00:06:49.202 --> 00:06:51.667 一気に仕事を片付けることができる。 00:06:51.667 --> 00:06:54.620 更に、ブランチの後に 一眠りしてしまい 00:06:54.620 --> 00:06:57.215 3時ごろ起きれば 頭はスッキリ冴えわたり 00:06:57.215 --> 00:07:00.819 今度は夕食までの時間を 有意義に使うことができる。 00:07:00.819 --> 00:07:05.792 物を考えるという作業は、いつ 如何なる時もすればいい、というわけではない。 00:07:05.792 --> 00:07:08.199 食後や体が疲れている時など 00:07:08.199 --> 00:07:12.153 明らかに物事を考えるに適していない時間があることに 注意しなければならないのだ。 00:07:12.153 --> 00:07:13.701 00:07:13.701 --> 00:07:15.146 はい!ここで止めます。 00:07:15.146 --> 00:07:20.075 つまり、人間には思考に適した時間と 適していない時間があるので 00:07:20.075 --> 00:07:23.845 それを理解した上で、一日を過ごすべきだと言ってるわけです。 00:07:23.845 --> 00:07:31.162 外山先生の場合は、朝食を抜くことで 意図的に施行に適した集中できる時間を増やす工夫をしているようです。 00:07:31.162 --> 00:07:33.744 また、ブランチの後に、思いっきり昼寝をして 00:07:33.744 --> 00:07:39.048 第二の朝をもう一度作って 更に、もうひと踏ん張りするというのは面白いですね。 00:07:39.048 --> 00:07:43.435 工夫次第で、一日ブースターを2カ所設けると言うわけです。 00:07:43.435 --> 00:07:44.996 はい!続きを見ていきます。 00:07:44.996 --> 00:07:49.281 2つ目のテーマ―は [アイデアを生み出す時間の使い方]についてです。 00:07:49.281 --> 00:07:50.561 では、いきましょう。 00:07:50.561 --> 00:07:54.849 外国の諺に、『煮詰める鍋は煮えない』というのがある。 00:07:54.849 --> 00:07:59.490 要するに、まだか、まだかと。 物事に注意を向けすぎるのではなく 00:07:59.490 --> 00:08:02.036 しばらく放っておきなさい!と言っているのだ。 00:08:02.036 --> 00:08:05.255 これは、人間の思考についても同じことが言える。 00:08:05.255 --> 00:08:09.634 考え詰めすぎてしまっては かえって問題の方が引っ込んでしまい 00:08:09.634 --> 00:08:12.345 でるべきものも、結局でなくなってしまう。 00:08:12.345 --> 00:08:16.843 だから、一晩寝て時間をおいてから 鍋のフタを開けてやればいいのだ。 00:08:16.843 --> 00:08:22.654 しかし、自分が考えてるテーマによっては 一晩ではまだまだ短すぎるという場合がある。 00:08:22.654 --> 00:08:27.569 大きな問題であればあるほど 寝かせる時間の長さが重要になって来るのだ。 00:08:27.659 --> 00:08:33.848 逆に、直ぐに答えが出るような問題というのは 初めから大した問題ではなかったということだ。 00:08:33.926 --> 00:08:40.677 本当の大問題は、じっくりと長い間 心の中で温めておかないと、形にならない。 00:08:40.727 --> 00:08:45.636 思考の整理において 何が最も大切かと言えば、寝させることなのだ。 00:08:45.761 --> 00:08:51.931 この世の中には、どんなに努力をしても どんなに意思の力が強くてもできないことがある。 00:08:52.017 --> 00:08:56.823 そういう時、唯一できる事があるとすれば それは時間をかけるしかない。 00:08:56.887 --> 00:09:02.162 すると、時間が自然のうちに 意識を超えたところで、我々を導いてくれる。 00:09:02.227 --> 00:09:07.870 つまり、考えを生み出すにあたって 関心を抱くべきは、無意識の時間なのである。 00:09:07.886 --> 00:09:09.084 はい!ここで止めます。 00:09:09.172 --> 00:09:13.046 思考の整理において、もっとも重要なことは 寝させること。 00:09:13.112 --> 00:09:15.833 つまり、時間を置くことだ、と 言っているわけです。 00:09:15.922 --> 00:09:20.790 これは、以前紹介しました 『アイデアのつくり方』のプロセスと同じですね。 00:09:20.790 --> 00:09:24.037 限界まで考えたら 後は放ったらかしにしておく。 00:09:24.037 --> 00:09:26.145 『果報は寝て待て』と言うわけです。 00:09:26.155 --> 00:09:29.765 因みに余談ですが、私たち人間が ボーっとしてるとき 00:09:29.765 --> 00:09:34.547 脳は、何も働いていないわけではなく [デフォルト・モード・ネットワーク]と呼ばれる 00:09:34.602 --> 00:09:38.515 神経活動が活発に行われている、と いうことが分かっています。 00:09:38.552 --> 00:09:42.908 具体的には、人間の脳に収められた 雑然とした情報類が 00:09:42.908 --> 00:09:45.208 この働きによって、整理されるのです。 00:09:45.218 --> 00:09:47.108 なので、外山先生が最後に 00:09:47.108 --> 00:09:50.074 「無意識の時間を使いましょう」と 言っていたのは 00:09:50.143 --> 00:09:52.503 恐らく、デフォルト・モード・ネットワーク という 00:09:52.503 --> 00:09:56.524 人間に元々備わった、脳機能を使うことを 意味しているものと思われます。 00:09:56.524 --> 00:09:58.609 さぁ、では 次のテーマに移ります。 00:09:58.689 --> 00:10:02.015 3つ目は、 [思考力を上げる忘却システム]についてです。 00:10:02.015 --> 00:10:03.089 では、いきましょう。 00:10:03.194 --> 00:10:07.531 子供の頃から、忘れてはいけない ちゃんと覚えておきなさい、と 00:10:07.604 --> 00:10:10.718 学校や親から、色んなことを教えられてきた。 00:10:10.764 --> 00:10:14.251 忘れてしまった、と言おうものなら よく叱られたものだ。 00:10:14.251 --> 00:10:20.023 しかし私は、『忘れる』ということに対する 偏見を改めるべきだと思っている。 00:10:20.104 --> 00:10:25.175 従来の教育では、頭の中にたくさんの知識が 詰まっていることを良しとしてきた。 00:10:25.175 --> 00:10:28.985 つまり、人間の頭を 倉庫のようなものとしてみて来たのである。 00:10:29.050 --> 00:10:34.079 人間の頭が倉庫であるならば 忘却というのは、在庫が消えることを意味する。 00:10:34.079 --> 00:10:38.338 したがって、忘れることは 怖い事、悪い事だと教えられてきたのだ。 00:10:38.390 --> 00:10:41.384 ところが今や、コンピューターが倉庫の代わりとなり 00:10:41.384 --> 00:10:44.627 人間は創造性を求められるようになっている。 00:10:44.627 --> 00:10:48.174 つまり、我々の頭は、倉庫の役割も一部で果たしつつ 00:10:48.174 --> 00:10:53.293 新しいものを生み出すための工場としての役割も果たさなければならないのだ。 00:10:53.350 --> 00:10:57.799 では、脳内工場の作業効率を上げるには どうすればよいのだろうか? 00:10:57.820 --> 00:11:02.030 それは、普段から倉庫の中を整理しておけばいいだけの話しだ。 00:11:02.034 --> 00:11:06.492 余計なものを倉庫の中に、極力入れず 必要なものを取り込み 00:11:06.492 --> 00:11:08.912 そして、いつでも 使えるように整理しておく。 00:11:08.974 --> 00:11:12.855 こういった心がけによって、頭の中に広いスペースを 00:11:12.855 --> 00:11:14.813 常時、確保しておけばよいのだ。 00:11:14.813 --> 00:11:19.175 頭の倉庫を整理するにあたって 何が大切か、と言えば『睡眠』だ。 00:11:19.234 --> 00:11:23.521 人間には、忘れるべきものと 覚えておくべきものを振り分ける 00:11:23.564 --> 00:11:26.204 自然忘却と呼ばれるシステムが備わっている。 00:11:26.204 --> 00:11:28.909 つまり、睡眠がその役割を果たしているのだ。 00:11:28.909 --> 00:11:33.665 朝、目を覚ましたら、頭の中がきれいさっぱり 整理されてる経験があるだろう。 00:11:33.714 --> 00:11:38.004 これこそ、神が人間に与えた 自然の忘却作用と言える。 00:11:38.004 --> 00:11:40.004 ところが現代人はどうだろうか。 00:11:40.004 --> 00:11:44.499 最早、睡眠の忘却作用だけでは、処理しきれない状態にあると言っていい。 00:11:44.531 --> 00:11:47.826 それほどまでに、今の人は たくさんの情報に触れ 00:11:47.826 --> 00:11:50.096 そして、多忙の中に暮らしているのだ。 00:11:50.096 --> 00:11:53.568 足の踏み場もないほど 頭の倉庫が散らかった状態で 00:11:53.568 --> 00:11:57.426 新しいものを生み出せと 工場としての機能までも求められたら 00:11:57.426 --> 00:11:58.699 溜まったものじゃない。 00:11:58.741 --> 00:12:01.703 だからもし、あなたが頭を働かせたいのであれば 00:12:01.703 --> 00:12:06.192 自分にとって不必要なものをどんどん忘れていかなければならないのだ。 00:12:06.261 --> 00:12:07.546 はい!ここで止めます。 00:12:07.551 --> 00:12:11.581 一般的に睡眠には、要らない記憶を削除する一方で 00:12:11.581 --> 00:12:16.519 必要な記憶を整理し、それを固定する仕組みが備わっていると言われています。 00:12:16.519 --> 00:12:21.111 ところが、多くの人は、睡眠の忘却システムが機能しないほどに 00:12:21.111 --> 00:12:25.549 脳みそがビジー状態にあると、外山先生は指摘しているわけです。 00:12:25.576 --> 00:12:29.726 今から30年以上前のスマホが存在していなかった時代でも 00:12:29.726 --> 00:12:33.513 こんな話が出ているということは、 現代人の頭の倉庫は 00:12:33.513 --> 00:12:36.347 最早カオス状態と言っても いいかもしれません。 00:12:36.406 --> 00:12:41.886 ですから、頭の倉庫に何を入れるのか 何を入れないのか、といった基準を定めた上で 00:12:41.946 --> 00:12:46.589 睡眠の忘却システムが、正常に働くような生活リズムを手に入れる。 00:12:46.636 --> 00:12:50.905 これが思考を十分に働かせる土壌づくりとして 大事なんだ、というわけです。 00:12:50.956 --> 00:12:53.879 さっ、次で最後です。 4つ目のテーマ。 00:12:53.879 --> 00:12:57.178 [かかわってはいけないタイプの人]について 見ていきましょう。 00:12:57.237 --> 00:13:01.288 考えても、考えても 解決の糸口やアイデアが浮かばず 00:13:01.347 --> 00:13:05.078 もうダメかもしれないと、思い詰めてしまうことがあるだろう。 00:13:05.147 --> 00:13:08.464 しかし、そのような暗示を自分にかけてしまえば 00:13:08.464 --> 00:13:10.486 出来るものもできなくなってしまう。 00:13:10.547 --> 00:13:15.260 そんな時は、プラスに考え きっと上手くいく!私なら絶対にできる、と 00:13:15.307 --> 00:13:19.631 自分に語り掛け、行き詰った心に 風を入れてみてはどうだろう? 00:13:19.717 --> 00:13:24.331 ただ、そうやってポジティブに思い込めば 十分かと言えば、もちろんそうじゃない。 00:13:24.417 --> 00:13:27.577 それに加えて、あと2つのことを意識するといいだろう。 00:13:27.577 --> 00:13:33.006 まず1つが、自分だけではなく 他人に対しても肯定的な態度を示すことだ。 00:13:33.016 --> 00:13:37.341 どんなことであっても探せば1つや2つ 良いとこくらい、あるものだ。 00:13:37.372 --> 00:13:40.684 それを見つけたら、ただそれを認め 賞賛してやればいい。 00:13:40.722 --> 00:13:45.055 そして、もう1つが、自分をほめてくれる人間と付き合うことだ。 00:13:45.142 --> 00:13:48.136 逆に、どんなに鋭く正しい批評ができても 00:13:48.136 --> 00:13:51.176 人の好い所を何も見つけようとしない人間とは 00:13:51.232 --> 00:13:53.268 距離を置いた方が良いだろう。 00:13:53.332 --> 00:13:56.961 ただ、こんな事を言うと、お世辞ばっかり聞いたって しょうがないじゃないか。 00:13:56.992 --> 00:13:58.804 もっと現実を見るべきだ。 00:13:58.804 --> 00:14:01.808 といった、厳しい意見を言いたくなる人もいるだろう。 00:14:01.882 --> 00:14:07.613 しかし、そんな勇ましい理屈が通用するのは 超人的な勇者の話ではないだろうか。 00:14:07.613 --> 00:14:12.549 多くの人間は、たとえ見え透いた言葉であっても 褒められれば勇気づけられる。 00:14:12.592 --> 00:14:15.144 お世辞だと分かっていても 気分が良くなる。 00:14:15.183 --> 00:14:17.187 それが人情というものだろう。 00:14:17.213 --> 00:14:21.368 だから、考えがまとまらない時 なんて私はダメな人間なんだ、と 00:14:21.413 --> 00:14:23.681 一人で自分を責める必要なんかない。 00:14:23.703 --> 00:14:28.773 自分ならきっとできる!と信じ あなたならできる!と言ってくれる人と付き合えばいいのだ。 00:14:28.773 --> 00:14:32.946 それによって、あなたの思考は 生き生きと活発に働き始めるだろう。 00:14:33.013 --> 00:14:34.282 はい!ここで止めます。 00:14:34.333 --> 00:14:37.319 思考力というのは、自分の努力だけではなく 00:14:37.383 --> 00:14:41.684 実は、かかわる人間によっても 左右されるのだ、というわけです。 00:14:41.743 --> 00:14:45.673 確かに、酷い労務環境で 更に毎日上司からけなされていたら 00:14:45.723 --> 00:14:47.883 頭が全然、回らなくなってしまいます。 00:14:47.883 --> 00:14:52.033 自分の思考を伸び伸びと 大空を翔るように活性化させるには 00:14:52.033 --> 00:14:57.666 ただ、自分のことを認めてくれる人 肯定し、賞賛し、自信を付けてくれるひと 00:14:57.678 --> 00:15:00.836 そういう存在も大事なんじゃないでしょうか。 と言っているわけです。 00:15:00.898 --> 00:15:03.761 さぁ、ココで4つ 全ての紹介が終わりました。 00:15:03.868 --> 00:15:05.653 えぇ、ここまで聞いていかがでしょうか。 00:15:05.698 --> 00:15:10.504 恐らく、How To系に近い印象を持たれた方 決して少なくないと思います。 00:15:10.608 --> 00:15:13.980 ただ、思考の整理学は、How To本ではありません。 00:15:13.980 --> 00:15:17.688 勿論、How Toとして使えるものも 多くあったと思います。 00:15:17.778 --> 00:15:21.266 それはそれで、ご参考いただく分には何ら問ございません。 00:15:21.266 --> 00:15:27.000 ただ、本書は今紹介させていただいたような 思考を整理するためのノウハウを 00:15:27.028 --> 00:15:31.100 良かったらマネしてみてくださいね、という作品では 本来ないのです。 00:15:31.148 --> 00:15:34.129 えっ!?どういうこと... そのように思われた方の為に 00:15:34.129 --> 00:15:36.384 最後に少しだけ、お話をさせてください。 00:15:36.394 --> 00:15:39.651 さて、皆さん冒頭の話し、覚えていますでしょうか? 00:15:39.703 --> 00:15:46.461 本書は、自前のグライダーにどうやったら 自由な思考というエンジンを取り付けられるのか。 00:15:46.505 --> 00:15:48.895 という、問題提起から始まりました。 00:15:48.993 --> 00:15:54.743 ということは、答えを教えるということを 本書のゴールとして設定してしまえば 00:15:54.783 --> 00:15:58.833 グライダー人間養成学校と 何ら変わらないわけです。 00:15:58.933 --> 00:16:03.352 そこで外山先生は、ご自身の経験 そして、知識に基づき 00:16:03.352 --> 00:16:05.932 私はこんなものの考え方をしています。 00:16:05.932 --> 00:16:09.136 そして、こんな工夫をしていますと 本書で披露しました。 00:16:09.136 --> 00:16:13.338 その上で、あなたはどうされているんですか?と 読者に問いを投げているんです。 00:16:13.373 --> 00:16:18.471 例えば、朝食を抜いて ブランチにするといいみたいな話しがありましたけれど 00:16:18.533 --> 00:16:23.849 これは、あくまで外山先生の理屈に基づいた 個人的な正解なんです。 00:16:23.913 --> 00:16:28.359 中にはこの話を聞いて 私は朝ご飯を絶対に抜かない 00:16:28.395 --> 00:16:32.698 それが、私の正解です!という方も多くいらっしゃったはずです。 00:16:32.755 --> 00:16:37.482 じゃあその、あなたの正解は、どうやって導き出されたものなのですか。 00:16:37.585 --> 00:16:40.556 何となくでしょうか? それとも、ご自身の経験や 00:16:40.556 --> 00:16:43.966 何らかの考えに、基づいているものなのでしょうか というように 00:16:43.966 --> 00:16:48.698 ごくごく普通の日常から 読者に対して思考の題材を与えているんです。 00:16:48.765 --> 00:16:52.092 なぜ、こういった題材があたえられているのかという言えば 00:16:52.092 --> 00:16:55.328 自分以外の誰かの物事の考え方 00:16:55.385 --> 00:16:59.320 見方に触れることで、普段自分は どれぐらい思考しているのか 00:16:59.385 --> 00:17:03.544 あるいは、どういった ものの考え方をする人間なのか 00:17:03.544 --> 00:17:06.170 といったことに気づきやすくなるんです。 00:17:06.170 --> 00:17:08.170 そうして、こういった経験を通して 00:17:08.170 --> 00:17:12.870 考える、という行為そのものの楽しさに気づいて欲しい。 00:17:12.870 --> 00:17:15.311 大空を自由に駆け巡る飛行機のように 00:17:15.311 --> 00:17:18.990 自由で、ぜいたくな活動であることを知って欲しい。 00:17:19.005 --> 00:17:21.675 本書にはそういった願いが込められているんです。 00:17:21.775 --> 00:17:26.205 つまり、グライダー人間にどうしたらエンジンを 取付けることができるのか 00:17:26.205 --> 00:17:29.803 という問いに対し 外山先生の出した答えの一つは 00:17:29.803 --> 00:17:34.182 考えることの楽しさに気づいてもらう事だったと言うわけです。 00:17:34.192 --> 00:17:37.265 ですから、ご本人にとしては 思考の技術について 00:17:37.265 --> 00:17:39.742 初めから教えるつもりなんかなかったんです。 00:17:39.742 --> 00:17:43.112 こういった親心が内に秘められている作品だからこそ 00:17:43.112 --> 00:17:47.836 本書は30年以上も多くの世代の読者に愛されてきたのかもしれません。 00:17:47.922 --> 00:17:50.363 もし、まだ読んだことがないという方は 00:17:50.363 --> 00:17:52.759 是非一度、手に取ってみてはいかがでしょうか。 00:17:52.759 --> 00:17:55.960 はい!というわけで思考の整理学 以上でございます。 00:17:55.960 --> 00:17:57.295 いかがでしたでしょうか。 00:17:57.325 --> 00:18:00.625 勿論、HOW TO系の本としても十分使えるんですが 00:18:00.625 --> 00:18:04.064 実はそうではないという面白いコンセプトの作品なので 00:18:04.064 --> 00:18:05.694 今回取り上げてみました。 00:18:05.704 --> 00:18:07.628 また、最近はやっていないんですけど 00:18:07.628 --> 00:18:11.902 久々に哲学をやりたいなぁ、と思っておりまして その複線的な意味合いもあって 00:18:11.902 --> 00:18:13.444 今回のチョイスをしております。 00:18:13.472 --> 00:18:15.585 どうぞ、これからも楽しみにしていてください。 00:18:15.652 --> 00:18:17.885 また、コミュニティでもお伝えしましたが 00:18:17.885 --> 00:18:22.667 お蔭さまで[OUTPUT読書術]が 昨日、1月22日に発売となり 00:18:22.667 --> 00:18:25.033 更に、即日重版も決まりました。 00:18:25.084 --> 00:18:28.000 改めまして、皆さま 本当にありがとうございます。 00:18:28.074 --> 00:18:31.751 実は、発売前日の夜 何かトラブルが起きるんじゃないかと 00:18:31.751 --> 00:18:34.579 不安で寝れないくらい 心が張り詰めておりました。 00:18:34.579 --> 00:18:37.083 そんな中、皆さまから本が届きました。 00:18:37.083 --> 00:18:39.417 これから読みます、といった ご報告ですとか 00:18:39.417 --> 00:18:41.758 面白かったですといった、メッセージをいただき 00:18:41.758 --> 00:18:45.046 本当に勇気づけられました。 心から感謝しております。 00:18:45.046 --> 00:18:48.788 お読みいただいた方は、ご無理のない範囲で Amazonレビューや 00:18:48.788 --> 00:18:53.787 SNS、ブログなどで、ご感想を アウトプットしていただけますと、大変嬉しいです。 00:18:53.787 --> 00:18:57.077 それを励みに、今後の配信活動も活力にして 00:18:57.077 --> 00:18:59.978 より良いものを皆様にお届けしてまいりたいと思っております。 00:18:59.984 --> 00:19:01.863 どうぞ、これからもよろしくお願い致します。 00:19:01.863 --> 00:19:04.648 この動画が面白かった、参考になったという方は 00:19:04.648 --> 00:19:07.280 高評価・コメントなどいただけますと嬉しいです。 00:19:07.324 --> 00:19:09.566 また、チャンネル登録も鎧くお願い致します。 00:19:09.566 --> 00:19:12.621 ではまた、次の動画でお会いいたしましょう。