はい!どうもアバタローです。
本日は外山滋比古(とやましげひこ)さんの
[思考の生理学]を紹介させていただきます。
1986年に刊行されてから
200万部を突破した異例のロングセラーであり
更に東大・京大で一番読まれた本
というキャッチコピーでも大変有名な
思考法のバイブルであります。
学ぶことに対して、意欲的な方は勿論の勿論
物を考えることに苦手意識を持っている方
一人で考え込みすぎてしまう方。
焦ると頭が真っ白になってしまうという方に
特にお勧めしたい1冊です。
そこで、この動画では本書の内容を
[集中力を爆発させる「朝」の過ごし方]
[アイデアを生み出す時間の使い方]
[思考力を上げる忘却システム]
[かかわってはいけないタイプの人]
というように、大きく4つのテーマに沿って
分かりやすく紹介をしてまいります。
30年以上前に書かれた作品とは思えないほど
鮮度が保たれているのは
コンテンツそのものの力もありますが
著者である外山先生が、本書に込めた
ある一つの願いという要素も
大きな役割を果たしています。
それが一体、どういうモノな、ということは
動画の後半に行きますと見えて参りますので
どうぞ、最後まで
お付き合いいただければと思います。
それでは、参りましょう。
外山滋比古『思考の生理学』
さぁ、まずはこの動画の全体像について
お示し致します。
はじめに、著者である外山滋比古さんが
何者で、本書がどんな意図をもって書かれているのか
という、前提知識を整理いたします。
その後、冒頭に申し上げた
4つのテーマに沿って
『思考の整理学』の要点について
お伝えしたいと思います。
では、早速1つ目。
著者について見て行きましょう。
外山滋比古さんと言えば
お茶の水女子大学で教授を務められていた
英米文学・言語学の専門家です。
ただ、ご自身の研究分野に止まらず
教育論・ジャーナリズム論といった、幅広い分野で
経論、執筆活動を受け
幅広くご活躍をされていました。
また、いま画面に出しておりますのが
外山先生が執筆された書籍の一部です。
このように、たくさんの作品を
残されているのですが
その中でも脅威的なヒット作として
殿堂入りしているのが
『思考の整理学』というわけです。
今回の各論に入る前に
まず、押さえていただきたいのは
外山先生が持たれている
問題意識です。
つまり、どんな意図をもって
この本を書いたのかという
出発点をきちんと
理解しておくことが重要なんです。
それは一体、何かというと
これまでの学校教育です。
学校は誰もが行くべき場所だ!
そこでは誰もが、教師に従い
決められたカリキュラムに従い
教科書に従って
学習をしなければならないのだ。
こういった、学校信仰的な考え方は
もうやめましょうよ、というのが
外山先生のスタンスなんです。
自分の力ではなく
誰かの力によって
一生懸命、知識を得ている
学校の生徒たちを外山先生は
憐れみを込めて
[グライダー人間]と名付けます。
グライダーというのは
空の女王と呼ばれるぐらい
音もたてずに優雅に
空を飛ぶことのできる乗り物です。
ただグライダーは、飛行機のように
大きな音は立てないものの
自分の力で空に舞い上がることが
できないのです。
そして、学校というのは
引っ張られるがまま
何処にでもついて行くような
従順なグライダー人間を作り出す訓練所だ。
そして、自ら飛ぶ飛行機人間を
作る場所ではないのだ。
それに早く、気づいてくださいと
外山先生はそのように言うわけです。
つまり、詰込み型教育によって
自分でものを考え
新しい事を生み出すことができない
グライダー人間が
量産されてしまっているという現状に
強い問題意識を持たれていたのです。
ただ、誤解の内容に申し上げておきますと
本書では、グライダーとしての能力なんか
もう要らないとか
学校なんか不要だとか、
そういった、極端な批判しているわけではありません。
人間には、グライダー能力と
飛行機能力という、2つの力があって
この両者を持っておくことが大事なのだ、という
バランスの取れた主張を展開しているんです。
具体的には、受動的に知識を得るために必要なのが
グライダー能力。
一方、自力で物事を発明、発見する際に求められるのが
飛行機能力です。
じゃあ、なぜグライダー能力を
全否定していないかと言えば
何を学ぶにしても基本的知識の習得が必須だからです。
基礎というのは、グライダー能力によって
築かれる為、決して要らないと言ってるわけではないです。
もしかしたら、30年前の学校教育も
そういった理想を掲げていたのかもしれませんし
詳細は分かりません。
ただ、外山先生から見た当時の社会というのは
グライダー能力ばかりが発達し
水から飛行できない人が五万といて
更に、そういった人間こそが
社会では必要とされ
優秀とみなされているじゃないか、と。
本書でそのように嘆いたわけです。
もちろん、立派な指導者が居て
目標がはっきりしているという
一定の条件が満たされているのであれば
グライダー能力は、必要ですし
高く評価されて然るべきものです。
しかし、少なくとも本書が書かれた1980年代には
もう直ぐ、そんな時代は終わるという事が分かっていました。
つまり、コンピューターという
グライダー能力に優れた存在が
近い将来、人間の仕事を
奪うことは予想できており
その上で、外山先生は警鐘を鳴らしていたんです。
しかし、当時の社会の中で
完全にグライダー人間をやめてしまえば
当然、生きづらくなってしまいます。
かといって、グライダー専業を続けるのも無理があるんです。
その上で、外山先生は本書で自前のグライダーに
エンジンを搭載してみてはどうか、と提案したんです。
つまり、グライダ―能力と飛行機能力を
兼ね備えた人間になるべきだ、と言ったわけです。
ただ、そのためにどうすればいいか、なんて誰も知りませんし
正解なんかありません。
その上で、外山先生は
じゃあ、この本を通じて一緒に考えようじゃないか、と言って
本題がスタートする流れになる、というわけです。
さぁ、ここまでよろしいでしょうか。
では、以上の点を踏まえて
早速、本書を4つのテーマに沿って見ていきたいと思います。
では、1つ目。
[集中力を爆発させる「朝」の過ごし方]から見ていきましょう。
人間の頭は、夜よりも朝の方が優秀であるように思える。
昨晩さんざん、手こずった仕事が
一晩寝て朝になって、もう一度やったら嘘のように片付いてしまった。
そんな経験はないだろうか?
実は、40歳ぐらいまで
私は夜型だったのだが
朝の効能に気づき始めてから
朝方に切り替えた。
若い時は体力もあるので、ムリも聞くが
年齢とともに、それができなくなる。
つまり、人は年齢と共に
自然に還っていくのだ
勿論、極端な早起きは厳しいが、出来れば朝食の前には
なるべくたくさんのことを片付けておきたい。
その為には、どうすればいいのだろうか。
答えは簡単だ。
朝食を抜いてしまえばいい。
そして、朝食と昼食を同時に採る。
所謂、ブランチにすればいいのだ。
腹が満たされた状態というのは
消化のために血液が採られ
頭は、ボーッとする。
一方、空腹であれば
全てを忘れて仕事に没頭できる。
つまり、ブランチにしてしまえば
ランチタイムまで集中して一気に仕事を片付けることができる。
更に、ブランチの後に一眠りしてしまい
3時ごろ起きれば、頭はスッキリ冴えわたり
今度は夕食までの時間を有意義に使うことができる。
物を考えるという作業は
いつ、如何なる時もすればいい、というわけではない。
食後や体が疲れている時など
明らかに物事を考えるに適していない時間があることに
注意しなければならないのだ。
はい!ここで止めます。
つまり、人間には思考に適した時間と
適していない時間があるので
それを理解した上で、一日を過ごすべきだと言ってるわけです。
外山先生の場合は、朝食を抜くことで
意図的に施行に適した集中できる時間を増やす工夫をしているようです。
また、ブランチの後に、思いっきり昼寝をして
第二の朝をもう一度作って
更に、もうひと踏ん張りするというのは面白いですね。
工夫次第で、一日ブースターを2カ所設けると言うわけです。
はい!続きを見ていきます。
2つ目のテーマ―は
[アイデアを生み出す時間の使い方]についてです。
では、いきましょう。
外国の諺に、『煮詰める鍋は煮えない』というのがある。
要するに、まだか、まだかと。
物事に注意を向けすぎるのではなく
しばらく放っておきなさい!と言っているのだ。
これは、人間の思考についても同じことが言える。
考え詰めすぎてしまっては
かえって問題の方が引っ込んでしまい
でるべきものも、結局でなくなってしまう。
だから、一晩寝て時間をおいてから
鍋のフタを開けてやればいいのだ。
しかし、自分が考えてるテーマによっては
一晩ではまだまだ短すぎるという場合がある。
大きな問題であればあるほど
寝かせる時間の長さが重要になって来るのだ。
逆に直ぐに答えが出る問題というのは
初めからたいしたもんだいではなかったということだ。
本当の大問題は、じっくりと長い間
心の中で温めておかないと形にならない。
思考の整理において、何が最も大切かと言えば
寝させることなのだ。
この世の中には、どんなに努力をしても
どんなに意思の力が強くてもできないことがある。
そういう時、唯一できる事があるとすれば
それは時間をかけるしかない。
すると、時間が自然のうちに
意識を超えたところで、我々を導いてくれる。
つまり、考えを生み出すにあたって
関心を抱くべきは、無意識の時間なのである。
はい!ここで止めます。
思考の整理において、もっとも重要なことは
寝させること。
つまり時間を置くことだ、といっているわけです。
これは、以前紹介しました
アイデアのつくり方のプロセスと同じですね。
限界まで考えたら
後はほったらかしにしておく。
『果報は寝て待て』と言うわけです。
因みに余談ですが、私たち人間が
ボーっとしてるとき、脳は何も働いていないわけではなく
[デフォルト・モード・ネットワーク]と呼ばれる
神経活動が活発に行われてる、ということが分かっています。
具体的には、人間の脳に収められた雑然とした情報類が
この働きによって、整理されるのです。
なので、外山先生が最後に
「無意識の時間を使いましょう」と言っていたのは
恐らく、デフォルト・モード・ネットワーク
という、人間に元々備わった
脳機能を使うことを
意味しているものと思われます。
さぁ、出は次のテーマに移ります。
3つ目は、思考力を上げる
忘却システムについてです。では、いきましょう。
子供の頃から忘れてはいけない
ちゃんと覚えておきなさい、と
学校や親から色んなことを教えられてきた。
忘れてしまった、と言おうものなら
良く叱られたものだ。
しかし私は、『忘れる』ということに対する
偏見を改めるべきだと思っている。
従来の教育では、頭の中にたくさんの知識が詰まっていることを
よしとしてきた。
つまり、人間の頭を倉庫のようなものとしてみて来たのである。
人間の頭が倉庫であるならば
忘却というのは、在庫が消えることを意味する。
したがって、忘れることは
怖い事、悪い事だと教えられてきたのだ。
ところが今や、コンピューターが倉庫の代わりとなり
人間は創造性を求められるようになっている。
つまり、我々の頭は、倉庫の役割も一部で果たしつつ
新しいものを生み出すための工場としての役割も果たさなければならないのだ。
では、脳内工場の作業効率を上げるには
どうすればよいのだろうか?
それは、普段から倉庫の中を整理しておけばいいだけの話しだ。
余計なものを倉庫の中に、極力入れず
必要なものを取り込み、そしていつでも使えるように整理しておく。
こういった心がけによって、頭の中に広いスペースを
常時確保しておけばよいのだ。
頭の倉庫を整理するにあたって
何が大切か、と言えば『睡眠』だ。
人間には、忘れるべきものと
覚えておくべきものを振り分ける
自然忘却というシステムが備わっている。
つまり、睡眠がその役割を渡しているのだ。
朝、目を覚ましたら、頭の中がきれいさっぱり
整理されてる経験があるだろう。
これこそ、神が人間に与えた自然の忘却作用と言える。
ところが現代人はどうだろうか。
最早、睡眠の忘却作用だけでは、処理しきれない状態にあると言っていい。
それほどまでに、今の人はたくさんの情報に触れ
そして、多忙の中に暮らしているのだ。
足の踏み場もないほど、頭の倉庫が散らかった状態で
新しいものを生み出せと、工場の機能までも求められたら
溜まったものじゃない。
だからもし、あなたが頭を働かせたいのであれば
自分にとって不必要なものをどんどん忘れていかなければならないのだ。
はい!ここで止めます。
一般的に睡眠には、要らない記憶を削除する一方で
必要な記憶を整理し、それを固定する仕組みが備わっていると言われています。
ところが、多くの人は、睡眠の忘却システムが機能しないほどに
脳みそがビジー状態にあると、外山先生は指摘しているわけです。
今から30年以上前のスマホが存在していなかった時代でも
現代人の頭の倉庫は、最早カウス状態と言ってもいいかもしれません。
ですから、頭の倉庫に何を入れるのか
何を入れないのか、といった基準を定めた上で
睡眠の忘却システムが、正常に働くような生活リズムを手に入れる。
これが思考を十分に働かせる土壌づくりとして
大事なんだ、というわけです。
さっ、次で最後です。
4つ目のテーマ。
[かかわってはいけないタイプの人]について見ていきましょう。
考えても、考えても
解決の糸口やアイデアが浮かばず
もうダメかもしれないと、思い詰めてしまうことがあるだろう。
しかし、そのような暗示を自分にかけてしまえば
出来るものもできなくなってしまう。
そんな時は、プラスに考え
きっと上手くいく!私なら絶対にできる、と
自分に語り掛け、行き詰った心に
風を入れてみてはどうだろう?
ただ、そうやってポジティブに思い込めば
十分かと言えば、もちろんそうじゃない。
それに加えて、あと2つのことを意識するといいだろう。
まず1つが、自分だけではなく
他人に対しても肯定的な態度を示すことだ。
どんなことであっても探せば1つや2つ
良いとこくらい、あるものだ。
それを見つけたら、ただそれを認め
賞賛してやればいい。
そして、もう1つが、自分をほめてくれる人間と付き合うことだ。
逆に、どんなに鋭く正しい批評ができても
人の好い所を何も見つけようとしない人間とは
距離を置いた方が良いだろう。
ただ、こんな事を言うと、お世辞ばっかり聞いたって
しょうがないじゃないか。
もっと現実を見るべきだ。
といった、厳しい意見を言いたくなる人もいるだろう。
しかし、そんな勇ましい意見が通用するのは
超人的な勇者の話ではないだろうか。
多くの人間は、たとえ見え透いた言葉であって
褒められれば勇気づけられる。
お世辞だと分かっていても
気分が良くなる。
それが人情というものだろう。
だから、考えがまとまらない時
なんて私はダメな人間なんだ、と
一人で自分を責める必要なんかない。
自分ならきっとできる!と信じ
あなたならできる!と言ってくれる人と付き合えばいいのだ。
それによって、あなたの思考は
生き生きと活発に働き始めるだろう。
はい!ここで止めます。
思考力というのは、自分の努力だけではなく
実は、かかわる人間によっても
左右されるのだ、というわけです。
確かに、酷い労務環境で
更に毎日上司からけなされていたら
頭が全然、回らなくなってしまいます。
自分の思考を伸び伸びと
大空を翔るように活性化させるには
ただ、自分のことを認めてくれる人
肯定し、賞賛し、自信を付けてくれるひと
そういう存在も大事なんじゃないでしょうか。
と言っているわけです。
さぁ、ココで4つ
全ての紹介が終わりました。
えぇ、ここまで聞いていかがでしょうか。
恐らく、How To系に近い印象を持たれた方
決して少なくないと思います。
ただ、思考の整理学は、How To本ではありません。
勿論、How Toとして使えるものも
多くあったと思います。
それはそれで、ご参考いただく分には何らもんだもございません。
ただ、本書は今紹介させていただいたような
思考を整理するためのノウハウを
良かったらマネしてみてくださいね、という作品では
本来ないのです。
えっ!?どういうこと...
そのように思われた方の為に
最後に少しだけ、お話をさせてください。
さて、皆さん冒頭の話し、覚えていますでしょうか?
本書は、自前のグライダーにどうやったら
自由な思考というエンジンを取り付けられるのか。
という、問題提起から始まりました。
ということは、答えを教えるということを
本書のゴールとして設定してしまえば
グライダー人間養成学校と、何ら変わらないわけです。