WEBVTT 00:00:05.888 --> 00:00:08.954 こんにちは Every Frame a Paintingのトニーです 00:00:09.102 --> 00:00:11.058 あなたはこんなことを 考えていますね? 00:00:11.160 --> 00:00:12.962 「なんでコイツの話するの?」って 00:00:13.050 --> 00:00:14.904 なんてこと! マイケル・ベイね! 00:00:15.020 --> 00:00:16.580 そうなんです 私がマイケル・ベイ 00:00:16.700 --> 00:00:18.332 僕はこの人の映画が嫌いです 00:00:18.440 --> 00:00:20.518 しかしこの人の映画は 研究しなければいけない 00:00:20.830 --> 00:00:21.686 なぜでしょうか 00:00:21.770 --> 00:00:26.950 実は最近「レッスル・マニア」を テレビで見始めたんだけど 00:00:27.560 --> 00:00:32.120 やってくるものに対して 目をそむけてはいけないと思う 00:00:32.384 --> 00:00:40.480 これがマジョリティが TVで見たいものなんだよ 00:00:40.628 --> 00:00:44.011 「レッスル・マニア」「アナ・ニコール」 「ジャッカス」のように 00:00:44.110 --> 00:00:45.970 マイケル・ベイもまた何かを 作り上げました 00:00:46.080 --> 00:00:48.394 人々が欲しているのは スペクタクルだ! 00:00:48.490 --> 00:00:51.286 ローマ人もルイ・クチュールも ウルフウィッツも知っていた 00:00:51.370 --> 00:00:52.674 1・2・3! 00:00:52.780 --> 00:00:54.976 ドカーン!ベイヘム! 00:00:55.057 --> 00:00:56.884 とても俗悪なテーマだと思いますが 00:00:56.960 --> 00:00:58.338 いい映画を作ろうと思えば 00:00:58.430 --> 00:01:01.074 そのイメージを 理解しなければならない 00:01:02.296 --> 00:01:04.148 なのでベイヘムについて 考えてみましょう 00:01:04.252 --> 00:01:06.984 あれは独特な撮影方法なのでしょうか 00:01:09.854 --> 00:01:11.254 マイケル・ベイを理解するなら 00:01:11.330 --> 00:01:14.054 もっともよいのは そのコピー作品を見ることです 00:01:14.164 --> 00:01:15.786 「バトルシップ」のこのショットでは 00:01:15.903 --> 00:01:19.023 カメラを円状に動かす 有名な方法を取り入れています 00:01:19.236 --> 00:01:20.440 しかし上手くいっていません 00:01:20.546 --> 00:01:21.576 なぜでしょう 00:01:21.656 --> 00:01:22.620 答えは単純です 00:01:22.710 --> 00:01:24.823 まず背景が青空しかありません 00:01:24.930 --> 00:01:28.186 背景がなければ視差が生まれず 動いているのが分かりません 00:01:28.310 --> 00:01:29.844 違いが分かりますか? 00:01:30.790 --> 00:01:32.436 レンズの選択が 1番の問題です 00:01:32.523 --> 00:01:34.710 ベイは望遠レンズを多用して 00:01:34.800 --> 00:01:36.133 空間を圧縮しています 00:01:36.223 --> 00:01:38.176 背景にあるものが より近くに写るのです 00:01:38.536 --> 00:01:40.583 また役者は止まって 頭を回しているだけです 00:01:40.680 --> 00:01:43.460 ベイヘムでは役者は 縦方向にも動きます 00:01:43.553 --> 00:01:44.493 これとか 00:01:44.600 --> 00:01:45.800 これもですね 00:01:45.903 --> 00:01:50.276 そしてローアングルと スローモーションで大きさを強調します 00:01:50.880 --> 00:01:54.609 ベイのショットでは様々な動きが 合成されています 00:01:54.710 --> 00:01:57.960 カメラや背景 役者の動きです 00:01:58.040 --> 00:01:59.600 時間感覚の拡張です 00:01:59.700 --> 00:02:03.090 そして静止しスクリーンの外を睨んで 静寂感を作ります 00:02:03.190 --> 00:02:05.550 フレーム内で1点を見つめていても 00:02:05.640 --> 00:02:07.893 広大な感じがしますね 00:02:08.160 --> 00:02:10.092 なんてこった 00:02:11.860 --> 00:02:15.010 マイケル・ベイはあらゆるシーンで この技法を用いています 00:02:15.120 --> 00:02:18.440 深い背景レイヤーと 人物と環境の視差 00:02:18.550 --> 00:02:20.630 これらが壮大さを創りだすのです 00:02:20.840 --> 00:02:23.250 これらの技術は特別なものではありません 00:02:23.350 --> 00:02:25.010 実際 写真家の多くは 00:02:25.080 --> 00:02:28.640 背景を深く取り 視差をとってカメラを動かします 00:02:28.720 --> 00:02:30.940 それからヒーローショット 00:02:33.440 --> 00:02:37.230 ベイの特徴はレイヤー数の多さと 動きの複雑さです 00:02:37.320 --> 00:02:38.630 よいショットにはならないにしても 00:02:38.700 --> 00:02:41.216 コンペで評価されるでしょう 00:02:41.530 --> 00:02:43.920 なのでベイのシーンでは 色々なことが一度に起こります 00:02:44.030 --> 00:02:47.820 ほこり 泥 煙 爆発が レイヤーの間を埋めていきます 00:02:48.050 --> 00:02:49.660 街灯もそうですね 00:02:51.960 --> 00:02:53.747 街灯はよく出てきます 00:02:55.120 --> 00:02:56.420 「バッドボーイズ」第1作では 00:02:56.510 --> 00:02:58.220 オープニングでこれが見られます 00:02:58.320 --> 00:03:00.303 車が一方向に動き 飛行機は別方向へ 00:03:00.380 --> 00:03:03.600 街灯がフレームに入っているのを 望遠レンズで撮っています 00:03:04.010 --> 00:03:07.030 物語の後半でも 同じテクニックが見られます 00:03:07.510 --> 00:03:08.910 爆発も同じ 00:03:10.160 --> 00:03:13.210 これを抑えておけば 後の分析は簡単です 00:03:13.320 --> 00:03:14.979 その限界も見えてきます 00:03:15.060 --> 00:03:18.750 ベイはこのテクニックの 使いどころが区別できていません 00:03:18.860 --> 00:03:22.210 登場人物が大事なことを言っている時の カメラの動きと 00:03:22.296 --> 00:03:24.314 金は持っているのか? 00:03:25.322 --> 00:03:26.718 そしてただのおしゃべりの時 00:03:26.809 --> 00:03:29.589 俺が何て言ったか聞いてたのか? 00:03:29.710 --> 00:03:32.730 俺はここに立ってたから聞いてたぞ 00:03:32.841 --> 00:03:35.344 すべてのショットは 視覚的インパクトのために設計され 00:03:35.450 --> 00:03:37.264 適当かどうかは問われません 00:03:40.765 --> 00:03:43.794 他にもこんな 面白いアイディアを使っています 00:03:43.927 --> 00:03:46.119 あるものを大きく見せるには どうするか 00:03:46.217 --> 00:03:48.892 同じショットの中に 色々なサイズのものを置き 00:03:49.000 --> 00:03:51.172 カメラを動かして強調するのです 00:03:51.275 --> 00:03:53.875 「ジュラシック・パーク」でも 使われていました 00:03:56.048 --> 00:03:58.103 恐竜だ 00:03:58.412 --> 00:04:00.535 スクリーン外のスペースも大事です 00:04:00.655 --> 00:04:04.330 この役者は背景の飛行機を見ていません 00:04:04.468 --> 00:04:07.090 観客には見えていない大量の飛行機が あるということです 00:04:07.211 --> 00:04:10.525 非常に巨大でスケール感あふれる ショットになるのです 00:04:10.638 --> 00:04:13.015 このようなイメージは どこからやってきたのでしょうか 00:04:13.131 --> 00:04:14.411 マイケル・ベイの場合は 00:04:14.510 --> 00:04:16.315 彼のお気に入りの映画から 00:04:22.618 --> 00:04:25.903 ニューヨーク・タイムズは以前彼の 「ウェストサイド・ストーリー」のレビューを掲載しました 00:04:26.020 --> 00:04:28.160 それによると これがすごいショットで 00:04:28.613 --> 00:04:30.489 これがすごいカットだそうです 00:04:30.586 --> 00:04:33.576 その理由について彼は「ダイナミックだ」以外に 説明することができませんでした 00:04:33.690 --> 00:04:34.973 たぶんそれだけなのでしょう 00:04:35.076 --> 00:04:37.600 「ウェストサイド・ストーリー」のショットを ベイの作品に当てはめてみると 00:04:37.700 --> 00:04:39.826 その類似性が分かるでしょう 00:04:40.360 --> 00:04:43.026 ベイのゴールとは彼なりの 「よいショット」を撮ることであり 00:04:43.140 --> 00:04:45.326 それを彼流の「よいカット」で つなぐことなのです 00:04:45.438 --> 00:04:48.368 ハワード・ホークスはよい映画を 「良いシーン3つ・悪いシーンなし」と定義しましたが 00:04:48.480 --> 00:04:50.045 ベイの考える「良い映画」は 00:04:50.160 --> 00:04:53.389 ダイナミックなショット3000に 動きのないショットなし というもののようです 00:04:57.026 --> 00:04:58.294 ウェストサイド・ストーリー以外では 00:04:58.400 --> 00:05:01.032 ベイは他のブロックバスターに 影響を受けています 00:05:01.135 --> 00:05:04.207 他のシークエンスにおいて 「語彙」を借りているのです 00:05:04.330 --> 00:05:05.771 たとえばこんなもの 00:05:07.946 --> 00:05:09.207 こうなります 00:05:11.591 --> 00:05:14.480 タイトなショットは よりタイトに 00:05:14.676 --> 00:05:16.781 ワイドなショットは よりワイドに 00:05:16.904 --> 00:05:19.015 動きのレイヤーはどんどん追加されますが 00:05:19.132 --> 00:05:21.185 基本は同じです 00:05:27.043 --> 00:05:29.196 借りてくるのは他人からだけではありません 00:05:29.315 --> 00:05:31.646 自分自身の表現も 借りてくることがあります 00:05:31.737 --> 00:05:33.109 たとえばこれ 00:05:34.082 --> 00:05:35.530 こうなります 00:05:40.540 --> 00:05:42.782 元ネタのすべての動きが 00:05:42.880 --> 00:05:46.722 たとえばカメラが反時計回り 爆弾が時計回りですが 00:05:46.838 --> 00:05:48.946 こちらでも同じです 00:05:52.032 --> 00:05:53.622 すなわち「ベイヘム」とはなにか? 00:05:53.720 --> 00:05:58.004 動きと構図と編集で 壮大さを持たせることです 00:05:58.134 --> 00:06:02.392 すべてのフレームは広大で さらに外側には巨大なものを感じさせます 00:06:02.508 --> 00:06:06.644 動きのレイヤーをたくさん重ね 超望遠あるいは超ワイドレンズで撮影します 00:06:06.978 --> 00:06:09.670 一瞬で多くのものを見せ 画面からすべて消し去ります 00:06:09.784 --> 00:06:13.424 何かが動いている感じはあるのですが はっきりしたことは何も分かりません 00:06:13.528 --> 00:06:16.758 作るのに人手がかかる映画ですね 00:06:16.948 --> 00:06:20.714 しかし基本的には既存の アクションシーンの文法です 00:06:20.830 --> 00:06:23.610 個別のショットはやや雑でブレがあり 00:06:23.724 --> 00:06:25.554 複雑でレイヤーが多い 00:06:25.750 --> 00:06:30.520 それをカットアップして 目はついていけても脳は無理なくらい速くするのです 00:06:30.694 --> 00:06:33.768 これは別に革命的でもなんでもなく ありふれたやり方です 00:06:36.980 --> 00:06:39.044 このやり方をもっと見たければ 00:06:39.140 --> 00:06:41.056 トニー・スコットの後期の作品があります 00:06:41.958 --> 00:06:45.132 滑らかな動きのものが見たければ アニメーションがあります 00:06:45.468 --> 00:06:46.866 グレン・キーンの作品などですね 00:06:47.160 --> 00:06:50.440 ベイのものより分かりやすい感じですが 基本のところは同じです 00:06:50.722 --> 00:06:53.534 登場人物と環境がレイヤーを作り 大きなスイングを行っている 00:06:53.634 --> 00:06:55.396 世界は広く見えます 00:06:58.836 --> 00:07:00.852 マイケル・ベイスタイルの模倣で 好きなのは 00:07:00.970 --> 00:07:02.716 こんな風に小さくしたものですね 00:07:02.856 --> 00:07:06.104 ベイヘムは電車のおもちゃで育った 子どもの想像の産物に近く 00:07:06.190 --> 00:07:08.758 皮肉にも小さいものを撮るとチャーミングです 00:07:09.898 --> 00:07:11.194 世界を吹き飛ばすのではなく 00:07:11.300 --> 00:07:13.086 小さな英国の街とかね 00:07:21.340 --> 00:07:24.374 しかしこの大衆性はとても大事だと思います 00:07:24.668 --> 00:07:25.796 好き嫌いはあるでしょうが 00:07:25.890 --> 00:07:27.436 私たちの視覚は洗練されていても 00:07:27.552 --> 00:07:30.988 そこから意味を読み取るのは とても困難なのです 00:07:31.118 --> 00:07:34.664 現在 私たちは視覚情報を 超高速で処理できます 00:07:34.800 --> 00:07:37.186 しかしそのイメージの意味を考えるのは 00:07:37.336 --> 00:07:38.816 そんなのいらねぇ! 00:07:38.930 --> 00:07:39.948 それほど速くありません 00:07:40.072 --> 00:07:41.290 ヴェルナー・ヘルツォークが言うように 00:07:41.400 --> 00:07:45.408 「やってくる未来から 目をそらしてはいけません」 00:07:45.494 --> 00:07:46.636 奇妙なことですが 00:07:46.750 --> 00:07:50.182 最も多くを失ったのは マイケル・ベイ自身です 00:07:50.304 --> 00:07:52.224 彼は彼自身の目の 奴隷なのです 00:07:52.310 --> 00:07:54.528 彼はすべての映像を ダイナミックにしてしまいます 00:07:54.626 --> 00:07:57.170 たとえその映画のテーマに 反していようとも 00:07:57.693 --> 00:08:01.790 じっと睨みつけているから いいものに気づかない人だっているわ 00:08:05.806 --> 00:08:08.063 その通りだ 人生におけるシンプルなルールとは 00:08:08.173 --> 00:08:09.156 そう ちいさなことです 00:08:09.270 --> 00:08:12.086 ドック付きの家から 水辺を眺めるみたいなね 00:08:12.170 --> 00:08:16.216 もし2人の偉大なるストーリーテラーが 同じ内容を表現するとこうなります 00:08:16.753 --> 00:08:19.417 私たち うまくやってるわよね 00:08:22.880 --> 00:08:24.533 愛してるよ マージー 00:08:25.646 --> 00:08:27.273 私もよ ノーム 00:08:30.250 --> 00:08:31.944 あと2ヶ月だね 00:08:35.576 --> 00:08:37.214 そうね あと2ヶ月