(ハープ独奏) 私は アン・ホブソン・パイロットです (演奏終) 幸運にも 私は ハープのクラッシック奏者として 成功し 実り多い人生を歩んできました まず ワシントンの国立交響楽団に3年間 そして ボストン交響楽団での40年間のうち そして ボストン交響楽団での40年間のうち 29年間を首席奏者として務めました 今 私たちの国は 今 私たちの国は 人種差別の過去と向き合い始めました 皆さんは 1960年代半に 初めてのアフリカ系アメリカ人として 2つのオーケストラの団員になった 私の人生に興味をお持ちのことと思います 2つのオーケストラの団員になった 私の人生に興味をお持ちのことと思います 私は ボストン交響楽団での 仕事の初日を忘れられません 初めてのリハーサルの時 私は早めに着いて ハープの音合わせと 音出しをしようとしていると 楽団の先輩の団員が 私のところに駆け寄って来ました 私はてっきり 「楽団へようこそ」などの 社交辞令を言われると思っていたら 彼は真っ直ぐに私の目を見て こう言いました 「場末でフライドチキンを揚げとけ」と このフレーズの意味を 知らない人に解説するなら このフレーズの意味を 知らない人に解説するなら 「フライドチキン」は 黒人差別そのものの言葉です 私がボストン交響楽団のオーディションに 受かる時代が来たと思ったら 私がボストン交響楽団のオーディションに 受かる時代が来たと思ったら 団員の一言で 過去の立ち位置に 押し戻されそうになりました 幸いなことに 私は 持ち前のユーモアのセンスを その時も 後にも度々活用してきました 特にワシントン交響楽団は 人種差別の問題が多くありました その主な理由は 私たちのツアーの行先の ほとんどが南部だったからです 当時 ごく当たり前のこととして 私が食事できないレストランがありましたが 私は 楽団の投宿するホテルに 泊まることはできました 当時ほぼ白人だった クラッシック音楽の世界を すんなりと歩めたとは言いませんが 嬉しいことに ごくゆっくりながら 社会は良くなってきています 嬉しいことに ごくゆっくりながら 社会は良くなってきています 人種間の平等を求める街頭デモを見ると 人種問題改善の未来に いくらかの希望が持てます 今日お贈りする美しい曲は アルゼンチン人作曲家の アストル・ピアソラ(ピアッツォーラ)による 『チキリン・デ・バチン (バチンの小僧)』です この曲をはじめとするピアソラの作品に 私が初めて惹かれたのは ボストン楽団引退後の 今から10年ほど前のことです 初めてこの曲を聞いた時 歌がついていました そういう曲なのです 私にはスペイン語の歌詞の 意味が分かりませんでしたが 英語訳が見つかりました それはとても悲しげで暗澹とした物語で 主人公の少年は あまりに貧しく 裸足で ゴミを漁って食べています 少年がバラを売って小銭を稼ぐのは ブエノスアイレスのカフェ 「カフェ・バチン」です この曲にはハープ用に編曲された 譜面がなかったので マイケル・マガヌーコに編曲を依頼しました 作曲家でもあるハープ奏者のマイケルが この曲をハープ独奏のために 美しく編曲してくれました この曲は ハープによくなじみ 温かく心に残る音色の曲だと思います 私は 様々な技法を用いて 音色を変化させながら いつものように弦の中央部を弾いたり いつものように弦の中央部を弾いたり 弦の下の部分を弾いたり ベルのような音の出る ハーモニック奏法を用いたり ワイヤー弦の開放弦で低音を奏でたりします この心悲しく瞑想的な曲を聞いて パンデミックと社会的不安による 緊張が多く難しい時期に 少しの平穏をお届けできたら 幸いです [ アストル・ピアソラ作曲 『チキリン・デ・バチン』(1968年) マイケル・マガヌーコによる ソロ・ハープのための編曲 アン・ホブソン・パイロット女史を讃えて] (ハープ独奏) (演奏終了)