1 00:00:12,746 --> 00:00:15,980 (ハープ独奏) 2 00:00:22,375 --> 00:00:24,937 私は アン・ホブソン・パイロットです 3 00:00:24,937 --> 00:00:25,937 (演奏終) 4 00:00:25,937 --> 00:00:27,488 幸運にも 私は 5 00:00:27,488 --> 00:00:34,255 ハープのクラッシック奏者として 成功し 実り多い人生を歩んできました 6 00:00:34,255 --> 00:00:38,551 まず ワシントンの国立交響楽団に3年間 7 00:00:38,551 --> 00:00:40,550 そして ボストン交響楽団での40年間のうち 8 00:00:40,550 --> 00:00:43,350 そして ボストン交響楽団での40年間のうち 9 00:00:43,350 --> 00:00:46,875 29年間を首席奏者として務めました 10 00:00:47,249 --> 00:00:49,227 今 私たちの国は 11 00:00:49,227 --> 00:00:51,366 今 私たちの国は 12 00:00:51,366 --> 00:00:55,799 人種差別の過去と向き合い始めました 13 00:00:56,827 --> 00:00:59,778 皆さんは 1960年代半に 初めてのアフリカ系アメリカ人として 14 00:00:59,778 --> 00:01:03,816 2つのオーケストラの団員になった 私の人生に興味をお持ちのことと思います 15 00:01:03,816 --> 00:01:06,911 2つのオーケストラの団員になった 私の人生に興味をお持ちのことと思います 16 00:01:07,596 --> 00:01:12,188 私は ボストン交響楽団での 仕事の初日を忘れられません 17 00:01:12,628 --> 00:01:15,078 初めてのリハーサルの時 18 00:01:15,078 --> 00:01:17,376 私は早めに着いて 19 00:01:17,376 --> 00:01:20,291 ハープの音合わせと 音出しをしようとしていると 20 00:01:21,226 --> 00:01:24,819 楽団の先輩の団員が 私のところに駆け寄って来ました 21 00:01:24,819 --> 00:01:29,370 私はてっきり 「楽団へようこそ」などの 22 00:01:29,370 --> 00:01:32,502 社交辞令を言われると思っていたら 23 00:01:32,502 --> 00:01:34,379 彼は真っ直ぐに私の目を見て 24 00:01:34,379 --> 00:01:35,823 こう言いました 25 00:01:35,823 --> 00:01:39,137 「場末でフライドチキンを揚げとけ」と 26 00:01:40,617 --> 00:01:41,619 このフレーズの意味を 知らない人に解説するなら 27 00:01:41,619 --> 00:01:44,081 このフレーズの意味を 知らない人に解説するなら 28 00:01:44,751 --> 00:01:51,116 「フライドチキン」は 黒人差別そのものの言葉です 29 00:01:52,966 --> 00:01:55,688 私がボストン交響楽団のオーディションに 受かる時代が来たと思ったら 30 00:01:55,688 --> 00:02:00,289 私がボストン交響楽団のオーディションに 受かる時代が来たと思ったら 31 00:02:00,289 --> 00:02:05,696 団員の一言で 過去の立ち位置に 押し戻されそうになりました 32 00:02:06,876 --> 00:02:11,251 幸いなことに 私は 持ち前のユーモアのセンスを 33 00:02:11,251 --> 00:02:15,268 その時も 後にも度々活用してきました 34 00:02:15,918 --> 00:02:20,609 特にワシントン交響楽団は 人種差別の問題が多くありました 35 00:02:20,609 --> 00:02:25,127 その主な理由は 私たちのツアーの行先の ほとんどが南部だったからです 36 00:02:26,637 --> 00:02:28,535 当時 ごく当たり前のこととして 37 00:02:28,535 --> 00:02:32,465 私が食事できないレストランがありましたが 38 00:02:32,855 --> 00:02:35,802 私は 楽団の投宿するホテルに 泊まることはできました 39 00:02:36,042 --> 00:02:41,522 当時ほぼ白人だった クラッシック音楽の世界を 40 00:02:41,522 --> 00:02:44,596 すんなりと歩めたとは言いませんが 41 00:02:44,596 --> 00:02:48,220 嬉しいことに ごくゆっくりながら 社会は良くなってきています 42 00:02:48,220 --> 00:02:50,186 嬉しいことに ごくゆっくりながら 社会は良くなってきています 43 00:02:50,186 --> 00:02:55,030 人種間の平等を求める街頭デモを見ると 44 00:02:55,030 --> 00:03:00,378 人種問題改善の未来に いくらかの希望が持てます 45 00:03:01,548 --> 00:03:04,248 今日お贈りする美しい曲は 46 00:03:04,248 --> 00:03:09,364 アルゼンチン人作曲家の アストル・ピアソラ(ピアッツォーラ)による 47 00:03:09,364 --> 00:03:12,851 『チキリン・デ・バチン (バチンの小僧)』です 48 00:03:13,861 --> 00:03:19,184 この曲をはじめとするピアソラの作品に 私が初めて惹かれたのは 49 00:03:19,874 --> 00:03:23,044 ボストン楽団引退後の 50 00:03:23,044 --> 00:03:25,078 今から10年ほど前のことです 51 00:03:25,078 --> 00:03:28,013 初めてこの曲を聞いた時 歌がついていました 52 00:03:28,013 --> 00:03:30,318 そういう曲なのです 53 00:03:30,913 --> 00:03:34,310 私にはスペイン語の歌詞の 意味が分かりませんでしたが 54 00:03:34,310 --> 00:03:37,486 英語訳が見つかりました 55 00:03:37,496 --> 00:03:41,248 それはとても悲しげで暗澹とした物語で 56 00:03:41,258 --> 00:03:45,987 主人公の少年は あまりに貧しく 57 00:03:45,987 --> 00:03:50,979 裸足で ゴミを漁って食べています 58 00:03:50,979 --> 00:03:54,023 少年がバラを売って小銭を稼ぐのは 59 00:03:54,023 --> 00:03:58,903 ブエノスアイレスのカフェ 60 00:03:58,903 --> 00:04:00,903 「カフェ・バチン」です 61 00:04:01,543 --> 00:04:04,702 この曲にはハープ用に編曲された 譜面がなかったので 62 00:04:04,702 --> 00:04:09,857 マイケル・マガヌーコに編曲を依頼しました 63 00:04:10,517 --> 00:04:14,788 作曲家でもあるハープ奏者のマイケルが 64 00:04:14,788 --> 00:04:18,672 この曲をハープ独奏のために 美しく編曲してくれました 65 00:04:18,672 --> 00:04:22,612 この曲は ハープによくなじみ 66 00:04:22,612 --> 00:04:25,607 温かく心に残る音色の曲だと思います 67 00:04:25,912 --> 00:04:31,486 私は 様々な技法を用いて 音色を変化させながら 68 00:04:32,276 --> 00:04:34,044 いつものように弦の中央部を弾いたり 69 00:04:34,044 --> 00:04:35,657 いつものように弦の中央部を弾いたり 70 00:04:35,657 --> 00:04:38,929 弦の下の部分を弾いたり 71 00:04:38,929 --> 00:04:43,554 ベルのような音の出る ハーモニック奏法を用いたり 72 00:04:43,554 --> 00:04:49,212 ワイヤー弦の開放弦で低音を奏でたりします 73 00:04:50,292 --> 00:04:54,690 この心悲しく瞑想的な曲を聞いて 74 00:04:54,690 --> 00:05:01,454 パンデミックと社会的不安による 緊張が多く難しい時期に 75 00:05:01,454 --> 00:05:05,132 少しの平穏をお届けできたら 幸いです 76 00:05:05,132 --> 00:05:07,198 [ アストル・ピアソラ作曲 『チキリン・デ・バチン』(1968年) 77 00:05:07,198 --> 00:05:09,242 マイケル・マガヌーコによる ソロ・ハープのための編曲 78 00:05:09,242 --> 00:05:11,063 アン・ホブソン・パイロット女史を讃えて] 79 00:05:11,063 --> 00:05:14,060 (ハープ独奏) 80 00:09:41,297 --> 00:09:44,297 (演奏終了)