WEBVTT

00:00:01.938 --> 00:00:05.185
私が左右で違う靴を履いているのに
気付かれたかもしれません

00:00:06.720 --> 00:00:08.390
見た目がおかしいし

00:00:08.414 --> 00:00:10.136
履き心地が
すごく変ですが

00:00:10.160 --> 00:00:12.280
これで示したいことが
あったんです

00:00:12.571 --> 00:00:16.884
左の靴は 持続可能な
フットプリントを示していて

00:00:16.908 --> 00:00:18.470
天然資源を

00:00:18.470 --> 00:00:22.348
地球が再生できる
範囲内で利用し

00:00:22.348 --> 00:00:27.250
二酸化炭素を 森や海が吸収できる
範囲内で排出します

00:00:27.532 --> 00:00:29.838
安定した健全な状態です

00:00:30.374 --> 00:00:33.642
今日の状況は 
むしろもう一方の靴のようです

00:00:33.666 --> 00:00:35.443
大きすぎます

00:00:35.982 --> 00:00:39.421
2017年には 
地球が再生できる１年分の資源を

00:00:39.421 --> 00:00:43.680
8月2日の時点で
すでに使い切っていました

00:00:44.764 --> 00:00:48.275
これはいわば ひと月分のお金を
18日までに使い切ってしまい

00:00:48.299 --> 00:00:51.531
その月の残りは
借金で暮らすようなものです

00:00:51.531 --> 00:00:53.982
そのようにして何ヶ月か
過ごすことはできるでしょうが

00:00:54.006 --> 00:00:55.826
暮らし向きを改めなければ

00:00:55.826 --> 00:00:58.823
そのうち大きな問題を
抱えることになります

NOTE Paragraph

00:00:59.219 --> 00:01:03.826
この過剰利用の破壊的影響については
みんな知っての通りです

00:01:03.826 --> 00:01:05.322
地球温暖化

00:01:05.346 --> 00:01:07.029
海面の上昇

00:01:07.029 --> 00:01:09.360
氷河や極地の氷の融解

00:01:09.360 --> 00:01:13.105
ますます極端になっていく気候

00:01:14.417 --> 00:01:17.469
この問題の大きさには
苛立ちを禁じ得ません

00:01:18.306 --> 00:01:20.303
これが余計に苛立たしいのは

00:01:20.303 --> 00:01:24.446
解決法があるというのに
みんなやり方を変えようとしないことです

00:01:24.549 --> 00:01:26.523
今日は 新しいソーラー技術が

00:01:26.523 --> 00:01:31.641
持続可能な建物の未来に
いかに貢献できるかという話をします

NOTE Paragraph

00:01:32.504 --> 00:01:36.515
エネルギー需要の４割は
建物で消費されているため

00:01:36.515 --> 00:01:38.279
この消費に取り組むことで

00:01:38.279 --> 00:01:41.333
地球温暖化ガス排出を
大幅に減らせます

00:01:41.336 --> 00:01:43.825
持続可能性の原則に沿って
設計された建物は

00:01:43.825 --> 00:01:46.423
必要な電力を
自分で作り出します

00:01:46.694 --> 00:01:47.964
これを実現するには

00:01:47.988 --> 00:01:51.210
たとえば断熱性の高い
壁や窓を使うなどして

00:01:51.210 --> 00:01:54.533
まずエネルギー消費を
極力抑える必要があります

00:01:54.541 --> 00:01:57.219
そのような技術は
既に商品化されています

00:01:57.738 --> 00:02:01.030
それから温水や暖房のための
エネルギーが必要です

00:02:01.030 --> 00:02:03.714
これは太陽熱利用システムや

00:02:03.714 --> 00:02:05.648
ヒートポンプで
地面や大気から

00:02:05.672 --> 00:02:07.999
再生可能な形で
得ることができます

00:02:08.023 --> 00:02:10.743
この技術も既に
利用可能になっています

NOTE Paragraph

00:02:10.972 --> 00:02:13.653
あと必要なのは電気です

00:02:13.964 --> 00:02:17.744
再生可能な発電方法は
原理的にいくつかありますが

00:02:17.744 --> 00:02:21.474
屋根に風車のある建物や 
水力発電設備のある庭というのを

00:02:21.474 --> 00:02:23.450
どれほどご存じでしょうか

00:02:23.450 --> 00:02:26.493
たぶんあまりないでしょう
理に適わないからです

00:02:26.493 --> 00:02:30.792
でも太陽は 屋根や壁面に
豊富なエネルギーを送ってくれています

00:02:31.390 --> 00:02:36.240
このエネルギーを建物の表面で集めることの
可能性は とても大きなものです

00:02:36.679 --> 00:02:38.822
ヨーロッパを例に見てみましょう

00:02:39.166 --> 00:02:41.244
太陽に対して
適切な向きで

00:02:41.244 --> 00:02:45.187
あまり陰にならない面を
すべて使うなら

00:02:45.187 --> 00:02:48.020
太陽電池から得られる電力で

00:02:48.020 --> 00:02:51.715
総エネルギー需要の
３割を賄えます

NOTE Paragraph

00:02:52.303 --> 00:02:55.211
でも 現在の太陽電池には
問題があります

00:02:55.610 --> 00:02:58.180
費用効率は良いのですが

00:02:58.204 --> 00:03:00.872
デザイン的には
あまり柔軟性がなく

00:03:00.896 --> 00:03:03.109
美観という点で
問題になります

00:03:03.123 --> 00:03:05.575
太陽電池のある建物というと

00:03:05.599 --> 00:03:07.976
このようなものを
イメージするでしょう

00:03:07.976 --> 00:03:10.132
太陽光発電所には
良いでしょうが

00:03:10.132 --> 00:03:13.390
建物や通りや
建築物となると

00:03:13.414 --> 00:03:15.386
美観が問題になります

00:03:15.410 --> 00:03:19.543
太陽電池のある建物を あまり目にしない理由が
ここにあります

00:03:19.567 --> 00:03:21.352
単にそぐわないのです

NOTE Paragraph

00:03:21.765 --> 00:03:26.073
私たちのチームでは まったく異なる
太陽電池技術に取り組んでいます

00:03:26.097 --> 00:03:29.475
有機太陽電池です

00:03:29.475 --> 00:03:31.432
「有機」というのは

00:03:31.456 --> 00:03:33.500
光の吸収や電荷輸送に

00:03:33.500 --> 00:03:35.268
金属ではなく

00:03:35.268 --> 00:03:38.853
炭素を主体とした素材を
使っているということです

00:03:39.339 --> 00:03:40.827
私たちが使うのは

00:03:40.827 --> 00:03:44.580
真珠の首飾りみたいに
異なる繰り返し単位が連なった

00:03:44.580 --> 00:03:46.624
高分子化合物と

00:03:46.624 --> 00:03:49.284
フラーレンという 
サッカーボールみたいな形の

00:03:49.284 --> 00:03:51.730
小さな分子の
混合物です

00:03:51.730 --> 00:03:55.941
この２つを混ぜて溶かし 
インク状にします

00:03:56.263 --> 00:03:59.910
すると 柔軟な素材のロールに
連続的に塗装する

00:03:59.910 --> 00:04:03.330
スロットダイのような
印刷技術を使って

00:04:03.330 --> 00:04:05.755
印刷できるようになります

00:04:06.755 --> 00:04:08.374
印刷された薄い層は

00:04:08.374 --> 00:04:11.397
太陽エネルギーを吸収する
活性層になります

00:04:11.905 --> 00:04:14.791
この活性層は
とても効率的です

00:04:15.522 --> 00:04:18.927
ほんの 0.2μm の薄さで

00:04:18.931 --> 00:04:21.153
太陽エネルギーを
吸収できます

00:04:21.168 --> 00:04:24.207
髪の毛の太さの
100分の１という薄さです

00:04:24.876 --> 00:04:26.829
別のたとえをするなら

00:04:26.829 --> 00:04:29.566
この高分子１キロで

00:04:29.590 --> 00:04:32.021
インクを作ったなら

00:04:32.402 --> 00:04:35.021
その量で 
サッカー場の広さの

00:04:35.021 --> 00:04:38.121
太陽電池を
印刷できます

00:04:39.114 --> 00:04:42.798
有機太陽電池は
極めて少ない原料で製造でき

00:04:42.822 --> 00:04:46.652
これは持続可能性という点で
重要なことだと思います

NOTE Paragraph

00:04:47.354 --> 00:04:49.235
印刷すると このような

00:04:49.259 --> 00:04:52.270
太陽電池モジュールができます

00:04:52.898 --> 00:04:55.111
これはプラスチックフィルムのように見え

00:04:55.111 --> 00:04:57.175
性質も似ています

00:04:57.625 --> 00:04:59.015
軽量で

00:05:00.478 --> 00:05:01.918
曲げることができ

00:05:02.458 --> 00:05:04.501
半透明です

00:05:06.949 --> 00:05:09.313
それでも 屋外の太陽光や

00:05:09.313 --> 00:05:10.874
室内の光を集めることができ

00:05:10.874 --> 00:05:14.124
ご覧のとおり 小さなLEDを灯せます

00:05:14.872 --> 00:05:16.780
これはプラスチックの形で使え

00:05:16.804 --> 00:05:20.090
軽量で 曲げられる点を
生かせます

00:05:20.938 --> 00:05:24.897
軽量という点は
暖かい地域の建物では重要です

00:05:25.185 --> 00:05:28.957
屋根が重い物を余分に載せられるようには
デザインされていないからです

00:05:28.981 --> 00:05:31.535
たとえば 冬期の積雪は
想定していません

00:05:31.535 --> 00:05:35.637
重いシリコン製の
太陽電池は使えませんが

00:05:35.637 --> 00:05:39.186
この軽量なソーラーフィルムなら
ぴったりです

00:05:40.067 --> 00:05:41.795
曲げられるという点は

00:05:41.795 --> 00:05:46.572
膜状の建築構造と太陽電池を
組み合わせる場合に 重要になります

00:05:46.802 --> 00:05:50.773
シドニーのオペラハウスの「帆」が
発電所になるところを想像してみてください

00:05:50.802 --> 00:05:53.102
この太陽電池フィルムはまた

00:05:53.102 --> 00:05:56.368
ガラスのような通常の建築資材と
組み合わせることもできます

00:05:56.368 --> 00:05:58.333
どのみち外壁のガラスは
多くの場合

00:05:58.333 --> 00:06:01.066
安全合わせガラスとして
膜を挟んだ構造になっているので

00:06:01.068 --> 00:06:04.667
製造プロセスでもう一層
膜を追加するのは大変ではなく

00:06:04.691 --> 00:06:07.467
それによって
太陽電池を含んでいて

00:06:07.467 --> 00:06:09.969
発電のできる
建築材料ができます

NOTE Paragraph

00:06:11.059 --> 00:06:12.749
見た目が良いという以外にも

00:06:12.773 --> 00:06:16.950
この統合型の太陽電池には
大きな利点が２つあります

00:06:17.595 --> 00:06:21.298
はじめにお見せした 屋根の上の
太陽電池を覚えていますか？

00:06:21.322 --> 00:06:23.965
この場合 最初に屋根を葺き

00:06:23.965 --> 00:06:26.117
それから２番目の層として
太陽電池を設置します

00:06:26.117 --> 00:06:28.388
これは設置のコストを
高くすることになります

00:06:28.388 --> 00:06:30.644
統合された太陽電池の場合

00:06:30.668 --> 00:06:34.021
建築現場で設置する物は
１つで済みます

00:06:34.021 --> 00:06:36.466
建物の外側と太陽電池を

00:06:36.466 --> 00:06:38.456
同時に取り付けられるのです

00:06:38.799 --> 00:06:40.753
設置コストを
節約できるだけでなく

00:06:40.753 --> 00:06:42.739
資源の節約にもなります

00:06:42.739 --> 00:06:46.117
２つの機能が１つの要素に
統合されているからです

NOTE Paragraph

00:06:46.117 --> 00:06:48.038
前に光利用の話をしました

00:06:48.038 --> 00:06:50.335
私はこの太陽電池パネルが
気に入っていますが

00:06:50.366 --> 00:06:53.747
皆さんの好みや デザイン上の必要は
違っているかもしれません

00:06:54.167 --> 00:06:55.318
でも大丈夫

00:06:55.342 --> 00:06:56.606
この太陽電池は

00:06:56.630 --> 00:07:01.125
印刷過程で形やデザインを
容易に変えることができます

00:07:01.574 --> 00:07:04.088
これは建築家や 
建物の所有者に

00:07:04.112 --> 00:07:05.838
柔軟に対応でき

00:07:05.838 --> 00:07:10.041
好きな形で この発電技術を
取り入れてもらえます

NOTE Paragraph

00:07:15.322 --> 00:07:18.665
これが研究所の中だけのものでないことを
強調しておきたいと思います

00:07:18.665 --> 00:07:21.367
広く普及するまでには
まだ何年か かかるでしょうが

00:07:21.391 --> 00:07:24.001
もう商品化の
間際に来ており

00:07:24.662 --> 00:07:28.410
すでに製造ラインを持つ
企業が何社かあります

00:07:28.461 --> 00:07:30.417
企業では製造能力を
拡大しており

00:07:30.441 --> 00:07:32.928
私たちもインクを
量産できるようにしています

NOTE Paragraph

00:07:36.613 --> 00:07:38.183
(靴を履き替える)

NOTE Paragraph

00:07:41.004 --> 00:07:43.554
フットプリントは
小さい方が快適です

NOTE Paragraph

00:07:43.578 --> 00:07:45.046
(笑)

NOTE Paragraph

00:07:45.070 --> 00:07:47.925
適切な大きさ
適切な規模です

00:07:48.032 --> 00:07:52.338
私たちはエネルギー消費を
適切な規模に戻す必要があります

00:07:52.535 --> 00:07:56.138
建物をカーボン・ニュートラルにする
というのも重要です

00:07:56.261 --> 00:07:57.842
ヨーロッパでは
2050年までに

00:07:57.842 --> 00:08:01.303
既存の建築の脱炭素化をする
という目標を掲げています

00:08:01.324 --> 00:08:05.026
そのために有機太陽電池が
大きな役割を果たすと期待しています

NOTE Paragraph

00:08:05.882 --> 00:08:08.068
実例をいくつか
ご覧にいれましょう

00:08:08.068 --> 00:08:12.975
有機太陽電池を大々的に印刷した
初の商用事例です

00:08:13.276 --> 00:08:17.629
「商用」と言ったのは 太陽電池が
産業設備に印刷されたということです

00:08:17.803 --> 00:08:19.813
これは「ソーラーツリー」という名で

00:08:19.813 --> 00:08:23.983
2015年ミラノ万博の
ドイツ館です

00:08:24.532 --> 00:08:26.286
日中には日よけとなり

00:08:26.286 --> 00:08:29.467
また夜の照明のための
電気を作っています

00:08:29.716 --> 00:08:33.712
太陽電池の形に
六角形が選ばれた理由が分かりますか？

00:08:33.744 --> 00:08:34.956
簡単です

00:08:34.980 --> 00:08:38.313
建築家は 床に影で
模様を作りたいと思い

00:08:38.337 --> 00:08:39.604
そう依頼し

00:08:39.628 --> 00:08:41.925
その通りに
印刷されたのです

00:08:42.275 --> 00:08:45.637
実際の製品とはだいぶ違いますが
この自由な形の作例は

00:08:45.637 --> 00:08:47.013
私たちの予想以上に

00:08:47.013 --> 00:08:49.846
訪れた建築家達の想像力を
刺激したようです

NOTE Paragraph

00:08:49.846 --> 00:08:51.196
こちらの事例は

00:08:51.196 --> 00:08:54.917
私たちがターゲットとしているものに
より近い形のものです

00:08:54.941 --> 00:08:57.826
ブラジルのサンパウロにある
オフィスビルで

00:08:57.850 --> 00:09:01.595
半透明な有機太陽電池パネルが
ガラス外壁に統合されていて

00:09:01.619 --> 00:09:03.470
いくつもの役割を果たしています

00:09:03.470 --> 00:09:07.128
１つには 中の会議室に
日陰を提供すること

00:09:07.479 --> 00:09:12.519
もう１つは 革新的な方法で
会社のロゴを表示することです

00:09:12.574 --> 00:09:14.533
そしてもちろん 
発電によって

00:09:14.557 --> 00:09:17.310
建物のエネルギー消費を
抑えています

NOTE Paragraph

00:09:17.552 --> 00:09:19.398
これは建物が

00:09:19.422 --> 00:09:21.869
エネルギーの消費者でなく
生産者になる

00:09:21.893 --> 00:09:23.959
未来を指し示しています

00:09:23.960 --> 00:09:26.843
太陽電池が建物の外面に
調和して取り込まれて

00:09:26.843 --> 00:09:30.282
資源効率と見た目の良さを
両立している様を

00:09:30.282 --> 00:09:32.228
見たいと思います

00:09:32.612 --> 00:09:37.075
屋根用にはシリコン製の太陽電池が
適する場合もあるでしょう

00:09:37.112 --> 00:09:41.492
でも すべての外壁や
その他の部分も生かそうと思うなら—

00:09:41.492 --> 00:09:43.936
半透明な部分や

00:09:43.960 --> 00:09:46.512
曲面や 
日よけなどには

00:09:46.512 --> 00:09:50.915
建築家が望む
どのような形にもできる

00:09:50.915 --> 00:09:56.809
有機太陽電池が
大いに役に立つことでしょう

NOTE Paragraph

00:09:57.425 --> 00:09:58.576
ありがとうございました

NOTE Paragraph

00:09:58.600 --> 00:10:02.015
(拍手)